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奇才アラン・ブリュモンが未来を託したアントワン・ヴェイリー ~ドメーヌ・アラン・ブリュモンの過去、現在、そして未来~ [Zoom / ワイン]

トム・クルーズと言えば・・・ 
先日、2023年のアカデミー賞ノミネート者の為に開かれた昼食会で、スティーヴン・スピルバーグ監督が、トム・クルーズに「ハリウッドを救った」との言葉をかけたニュースが流れていましたが、今回ご紹介するのはトム・クルーズのお気入りだったワイン!! (文中敬称略)

  2007年4月/ photo by Fumiko

ワインの造り手はフランス南西地方のマディランとガスコーニュをブランドとして確立させたアラン・ブリュモンです。
2007年4月、輸入元三国ワインの招聘で彼が来日した折、トム・クルーズの件を質問してみました。「カンヌの映画祭では、23名のガードマンがエスコートしていたようですが、私のところに来た時は、ひとりのガードマンもいませんでした。自家用ジェットというのもないと思います。私は不在だったのですが、夜、家に戻ると、家族が一大事でもあったように大騒ぎしていました。私はトム・クルーズさんのことは知りませんでしたが、彼が私のワインを気に入ってくれていることは事実です」と語っていました。

その後、ブリュモンと会うチャンスはなかったのですが、コロナ渦中の昨年(2022年)、オンラインでメゾンの最新情報を伺うことが出来ました。

  
                                              
                🍷 🍷 🍷 🍷 🍷

   
     他のアイコンと呼ばれた人々が300年かけて築いた実績を、          彼はわずか30年で成し遂げてみせた
       ミッシェル・ベタンヌ/ワイン評論家  出典:BRUMONT 
      上記の一文はベタンヌがブリュモンを形容したものです。


ミッシェル・べタンヌ&ティエリー・ドゥソーヴのワイン評価本『ベタンヌ・エ・ドゥソーヴ2022』で、明日を担う天才10人のひとりに選ばれていたのがブログのタイトルに載せているアントワン・ヴェイリーです。

彼はブリュモンの現在の妻ローレンスの実子なので、ブリュモンにとって義息になります。ベタンヌとドゥソーヴが認める器量のアントワン・ヴェイリー!
ブリュモンがメゾンの全権を委ねたのは必然だと感じます。

昨夏、ヴェイリーは日本向けのZOOMセミナーに登場してコメンテーターを努めました。そつのない受け答えからブリュモンが認めた才覚の一部を垣間見ることが出来ました。


       出典:BRUMONT 左がヴェイリー、右がブリュモン

著名シャンパーニュメゾンや斬新な取り組みをしているワイナリーやファミリー企業で研鑽を積み、フランス本国だけでなく、海外(アメリカや南ア)でもワイン造りを学んできたヴェイリー


 ドメーヌ・アラン・ブリュモンの歴史 拡大可 
 資料提供:三国ワイン

1836年シャトー・ブースカッセ創業、1979年父からシャトーを相続、1980年にシャトー・モンテュス購入、1985年初のタナ種100%のワインをリリース、2000年土地の個性を生かしたメゾン最高のキュヴェ モンテュス ラ・ティルをリリース、2009年に妻ローレンス・ブリュモンが参画、2017年に義息アントワン・ヴェイリー参画、ワイン造りのエポックメイキングは2018年VTで樽熟成の期間を最低36ヶ月から60ヶ月に!

 メゾン・アラン・ブリュモンの過去と未来
 資料提供:三国ワイン

ブリュモンはテロワール至上主義、さまざまな再発見を重ね、常に自問自答してきました。ヴェイリーは彼のプロセスを踏襲。理解をより深めていくことを宣言し、「“知識としての知る”と“経験としての知る“のふたつの継承を続けていきたい」と語りました。
 
     ブリュモンが注目したタナ、プティ・クルビュ&プティ・マンサン
         南西地方に適している品種たち
         酸度が高く、樽での長期熟成に適したぶどう
         これら3品種で赤、辛口、甘口のワインを生産

        画像提供:三国ワイン

タナ種:密でコンパクトな房、果皮が厚くポリフェノール含有量が多い、温度変化への耐性が強い、ピレネー山脈一帯に生育。栽培は独自のスタイルとのこと。「8000本/㌶で1株につき6房残す(当初は4000本/㌶で12房)、芽吹きの時期から始めて、ぶどうの粒の大きさを揃えるように育てる。葉の調整が必要で、それを実行することで開花から15日要する日数が4日で終了、タンニンも完璧に熟す」とヴェイリー

プティ・クルビュ種:小ぶりで密にならない房、果皮が厚くポリフェノールが豊富、
白の辛口用品種として利用、SBの品種特性と似ているが、比較するとSBより果皮が厚い、ストラクチュア、アロマ、苦みが出る。温暖化でも酸味があるので耐性あり

プティ・マンサン種:小ぶりで密にならない房、果皮が厚くポリフェノールが豊富、アロマ豊か、20~30%は辛口白に仕上げ、プティ・クルビュとブレンド。長熟に耐えるぶどう



                🍷 🍷 🍷 🍷 🍷


 ブースカッセのテロワール
 資料提供:三国ワイン

 多様な粘土質の土壌から、
 丸みと繊細なタンニンを備えた深みのある優雅なワインが生まれる。

 モンテュスのテロワール
 資料提供:三国ワイン

 フレッシュさと長い余韻を備えたエレガントなワインが誕生する。
 これらの土壌ゆえに長い熟成能力を持つキュヴェを生み出すことができる。

ガレ(河原にあるような平たく丸い石)、メニール状の巨石、小石が混じる赤粘土質に灰色粘土質、白粘土質、砂利質・・・狭い範囲に多彩なテロワールが混在するマディラン。「このような土地は非常に珍しく、フランスでも他に類をみない」とブリュモンは語っています。



      
#1:ジャルダン・ド・ブースカッセ2017
プティ・クルビュ70%&プティ・マンサン30%のブレンド。粘土と石灰岩土壌、ステンレスタンクで発酵、12ヵ月シュルリーで熟成、3年瓶熟。外観はイエロー・ゴールド、豊かな粘性と熟度。香りの密度は高く、プティ・クルビュに由来する花の蜜、プティ・マンサン由来のエキゾチックフルーツ、黄桃やりんごのニュアンス。際だった酸味、石灰由来のミネラル感、調和が取れているので重くならず、料理の守備範囲も広い。

#2:シャトー・モンテュス・ブラン2014
プティ・クルビュ100%。赤色と灰色粘土質および小石の土壌、2年間澱とともに樽熟成、その後瓶熟成5年。ポテンシャルのあるぶどう品種。色調はゴールド、輝きがあり、高い熟度と安定感。フレッシュかつ複雑味。栗の花、花の蜜、ヘーゼルナッツ。ふくよか、ボリーム感、メリハリのある酸、果肉や蜜蝋のようなまろやかさ、完成度の高い白ワイン。鱒の塩焼きやムニエル、キジやしゃもの焼鳥と!

      清涼感があり、素直においしいワイン


IMG_0698.jpg
 左から3本目から順に

#3:ブースカッセ2016
タナ、CS、CFのブレンド。灰色・青色・赤色・黄色の粘土および石灰岩土壌、18ヶ月225㍑と228㍑の樽、その後タンクで12ヶ月熟成。色調は濃い目ながら濃さの質が違い、透明感がある。アロマは洗練されていてエレガンス、ブルーベリーやカシスのような果実、チャコールや木の葉、タバコのような熟成のニュアンスも。なめらかで石灰のもたらすフレッシュなミネラル感、味わい全体を包むようなタンニンもきめ細かく、収斂性はありつつも調和がとれているワイン。ヴェイリーいわく「2016年は春は涼しく、夏は暑く、収穫時は涼しかった。ワインはボリューム感と清涼感がある。色調の中央が明るいダークレッドなのが2016年VTの特徴。この年はブルゴーニュ以外、フランス全体が良かった」と

#4:シャトー・モンテュス2016
タナ80%、CS20%のブレンド。赤色と白色の粘土質および川の小石、2016年VTは18ヶ月の樽熟、12ヶ月のタンク熟成。色調は濃く密度が高い、きれいなグラデーションで、香りには凝縮感があり、洗練されていてフレッシュ、清涼感がある。ブラックベリーや木樽由来のトーストやバニラスパイス、層になって広がる香り。一貫性のある味わい、バランスよくスムース、なめらか、ジューシーで豊富なタンニン、心地良いフィニッシュ

#5:シャトー・ブースカッセ ヴィエイユ・ヴィーニュ2015 
樹齢80~90年のタナ100%。粘土および石灰岩土壌、新樽1年、樽熟成2~3年、その後瓶熟5年、香りは開いていて2015年VTのキャラクター(ばらつきがなく安定した味わい)が出ている。熟して柔らかくなった果実、樹皮、黒系キノコ、湿った土、たばこ、針葉樹、フレッシュさを備えた緻密なワイン。味わいはしなやかでスムース、タンニンは豊かなれどワインに溶け込んでいて熟成がもたらす旨味が余韻として続く、コレクター向きのアイテム! 
「余韻が消えた後に舌の奥に石灰的なミネラルが残り、新たな余韻となって残る」との石田副会長ならではのワイン表現、さすが!

 
#6:ラルム・セレスト2018
プティ・マンサン100%。粘土と石灰岩の土壌、収穫のタイミングを変えることでぶどうの個性を表現。具体的には9月、10月、11月、12月の4回に分けて実施。2018年VTは9月末から10月初旬に収穫。40g/Lの甘味でも酸味があるのでバランス良好。鮮やかなイエロー・ゴールド、アロマはパッションフルーツや花の蜜、華やかさがあり、味わいは濃密で豊かな甘美さ、中盤から直線的な酸、染み入る余韻。酸のレベルの高さが際立つ心地良い甘口

2018年VTからアントワン・ヴェイリーが手掛けています。醸造面で変化させた点について「ぶどうが過熟になることを避けているので、結果として、香りやタンニンの質の向上、清涼感が増したと感じている」とコメントしていました。


                🍷 🍷 🍷 🍷 🍷


 登場した6アイテム

 ワインのコメントはソムリエ協会の石田博副会長
 ※ブログ記載は要約のみ


                 🍷 🍷 🍷 🍷 🍷


サステイナビリティ関連
メゾンではぶどう畑1つにつき林を1つ確保、畑には必ず林が隣接しています。それにより各区画の生物多様性を維持し、それぞれのテロワールを保護しています。女性微生物学者に毎年熟成中のワインの品質を分析依頼しており、それによりSO2の量を減らし、タンニンやアロマも保つことが出来るとのこと。また、土着の雑草を残すことで、土壌のバランスを保持。通常と異なる雑草が生えてきたら、今までと違うことが起きていると判断して人的介入を行っているそうです。

 醸造責任者アントワン・ヴェイリーと通訳の熊田有希子女史
 今回、ボーヌ在住の熊田さんはブースカッセまで出向いてオンラインセミナーをサポート
 ご苦労様でした!

セミナー後、草生栽培とぶどう畑の耕起に関して質問させていただきました。
後日届いた回答を以下に載せておきます。

Q1:ドメーヌ・アラン・ブリュモンでは、カバークロップと併せて、不耕起栽培を実践していますか?
A1:浸食や水分蒸発の現象、土壌を踏みしめる問題を回避するために、我々は一定の時期には鋤入れ(耕起)を制限しています。鋤入れを制限することで、微生物の活動は十分に保持されています。鋤入れはその年の状況によって、土壌のタイプやぶどうの樹齢で決めます。燃料使用量が減るので鋤入れを制限することで、CO2排出低減の効果もあります。


Q2:カバークロップの中に、いつもと違う種類の雑草が生えてくると「何らかの変化が起きていることが察知できる」と語っていましたが、基本的に通常のカバークロップにはどのような種類(マメ科植物、草花、アブラナ科等)があるのですか? それらはそれぞれの役目(マメ科なら窒素固定化や土壌の微生物増加、草花なら窒素保持や浸食抑制といったような)を担っていると思いますが・・・
A2:カバークロップについては、ぶどう畑全体に500以上の土着種が存在し、それぞれの植物が役割を担っています。私たちの仕事は、土壌の健康状態を理解するために、自然の植物を観察することです。区画ごとに異なり、自然の植物で覆われているエリアもあれば、土壌のバランスを保つために選択されたカバークロップを使用しているエリアもあります。カバークロップは土壌に対してある役割を担っていますが、また土壌も植物に対してある役割を果たしています。カバークロップとぶどう樹の間に直接の関係はありません。カバークロップは土壌に炭素をストックするために非常に重要です。


Q3:CO2削減への具体的な取り組みをしていると思いますが、ぶどう畑での実践、ガラス瓶や包装資材の軽減、貨物輸送への配慮等、教えていただけますか?
A3:鋤入れ(耕起)の制限、一度に2列作業ができる専用のトラクターを開発し、通路回数を削減、エンジンと燃料のコストパフォーマンスの高い最新の機器を導入。包装関連ではカートンは80%リサイクル、大量生産のキュヴェに関しては軽量ボトルを採用、フランスの環境認証HVEレベル3の取得、ダンボールやプラスチックのリサイクルを社内で油圧プレスにて実施等

【製品についてのお問い合わせ先】
三国ワイン株式会社マーケティング部 担当:須佐敏郎 電話:03-5542-3939

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2022年は缶ワイン&ノンアルワインに注目! [Zoom / ワイン]

 画像提供:SWI 
 サントリーワインインターナショナル(SWI)の2022年事業方針について、
 塚本環 輸入・カジュアルワイン事業部商品生産開発グループ部長
 吉雄敬子 代表取締役社長(左)が解説しました。
 記者会見の概要はSWIのHPでご確認いただけます。

 データ提供:SWI
 昨年の売上高は国内・海外併せて510億円(前年比107%)
 国内の業態別構成比は家庭用76:業務用24
 業務用は2年連続コロナ禍の影響で97%と前比割れ


 2022年事業方針の4つの柱
 データ提供:SWI

 缶商品にフォーカス
 データ提供:SWI
 缶ワイン市場は右肩上がり、1回あたりのワイン飲用量約8割がハーフサイズ以下


 2022年は“缶”で楽しむ新スタイルをさらに拡大
 画像提供:SWI
 昨年から引き続いて、幅広い年代層に向けたアイテムが登場します!

 2月15日から全国新発売
 ワインサワーは昨年サマーワインの一員としてデビュー
 ソーダで割ったワインを気軽に楽しめ、幅広い年齢層から好評価を得ていたので、
 よりワインらしさを高めた、味わい・デザイン・ネーミングへ

 ワインのソーダ割りとしての味わいを伝えていくため、サワーではなく、
 ワインソーダに改名し、サントリーワインカフェブランドとして展開することに!


 3月1日全国発売は“ノンアルでワインの休日”
 データ提供:SWI

アメリカではノンアルよりローアル(低アルコール)ワインのほうが人気ですが、昨今のノンアル、ローアル人気は、アルコールの代替品としてではなく、健康志向やライフスタイルの変化に起因しています。

SWIの "ノンアルでワインの休日”は、醸造したワインを蒸留し、アルコール分を取り除いて造ったワインエキスの使用と、同社に蓄積された商品設計の技術を反映させたアイテムで、”オールフリー” や ”のんある気分” 等のブランドでノンアル飲料市場をけん引してきた同社の自信に裏打ちされています。缶ワインだと、ノンアルビールと同じ棚に置けるので、消費者の目に留まりやすいというメリットも!


               o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。
 
                 缶入り輸入ワイン
           出典:酒販ニュース/第2112号 クリックで拡大

1月21日刊 酒販ニュースに『日本で流通している主な缶入り輸入ワイン』の一覧が掲載されていました。拙ブログと関連するので、参考資料として貼付させていただきました。

      SWIが昨年発売したスタイリッシュなボッリチーニ


 ボトル用ワインとは異なり、缶ワインの特徴を生かした造りをしたコッポラ、さすが!


   プレミアムワインを缶ワインで楽しむがコンセプト


               o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。
 

 メルシャンの自信作ボトル缶のシードル、290mlで330円は魅力[わーい(嬉しい顔)]


 いちごサンドと良く合いますよ!

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ドメーヌ・ツィント・フンブレヒトの当主フンブレヒトMWのアルザスまるごと解説 [Zoom / ワイン]

アルザスとオンラインで繋いで

アルザス地方ドメーヌ ツィント・フンブレヒトのオリヴィエ・フンブレヒト12代目当主による初Zoomセミナー。4種のワインの解説を交えながら、アルザスの多様な土壌形成やテロワール、ビオディナミ、カナダでのコンサルタント等について言及しました。
フンブレヒト氏は、26歳でフランス人初のマスターワイン(MW)取得者になった方です。ワインメーカーという肩書なら世界で2人目、今も昔も向上心の旺盛さは変わっていないようです。プロフィール写真が若い時のままなのも・・・気持ちは昔のままだと言いたいのでしょうかね

  特製ミニボトルで届いたワイン

 左から
 #1:ファントム・クリーク・エステーツ リースリング2017/カナダ産
 #2:ドメーヌ・ツィント・フンブレヒト リースリング ロッシュ・カルケール 2016
 #3:同ピノ・グリ2018
 #4:同ゲヴュルツトラミネール2016


アルザスの沿革
アルザスはフランスの北東部、ほぼシャンパーニュとブルゴーニュの中間、ヴォージュ山脈の東側に位置しています。ぶどう栽培面積は大幅に増大していて、70年前はわずか6,000㌶でしたが、現在は16,000㌶。夏暑く、冬寒い半大陸性気候下にあり、北西から吹いてくる風に含まれる湿気はヴォージュ山脈によって遮られています。アルザスはイメージ的に、冷涼な気候の産地と思われていますが、年間の降水量は500~650㎜、コルマールを例にするなら、年間1,800時間の日照に恵まれています。ぶどうの熟度に関しても日較差があるので、酸味の充実したぶどうが得られます。土質は複雑で多様性に富んでいるので、気候と地形から見ても、アルザス地方はフランスの他の地方とは違う特徴があります。


 地質の成り立ち画像協力:ドメーヌ ツィント・フンブレヒト
 ワイン産地の形成が始まったのは約3億年前の古生代/石炭紀
 ヘルシニア山脈の隆起により花崗岩が形成された。この時期、多くの火山活動があった。
 ヴォ―ジュ山脈の本体(基盤岩)をなすのは最下部の花崗岩と、それが変化した岩石
 海中生物や貝殻が堆積して形成された魚卵状石灰岩(ウーライト)
 貝殻石灰岩(ムッシェルカルク)、その他には、古い二畳紀の赤い砂岩
 三畳紀のピンク色をしたブレンド砂岩等があり、それらが複雑に入り組んでいる。

 ジュラ紀の末期に移動するプレートに押されて、中央部が隆起し、地上に出現。
 白亜紀と始新世初期にジュラ紀の地層は一部分浸食されて平らになった。
 始新世中期には、今までプレートで押されていた力が弱まり、
 隆起していた地形は少しずつ沈降し、周囲の地殻との間に断層が生じた。
 沈降はさらに激しくなり、ラインの両側は、ヴォ―ジュ山脈と黒い森となり、
 沈降した部分に、現在のライン地溝帯が形成された。



       地質時代と地層名 
       出典:武田弘先生作成の地質表
     古生代、中生代、新生代の区分けはこの表でご理解いただけると思います。

出典:アルザス地方の地質に関しては、フンブレヒトMWの解説に加えて、鉱物学の大家 武田弘先生(ソムリエ協会機関誌No81)からご教授いただいたデータを参考文献にしています。


 ワイナリーの概要
 ドメーヌ ツィント・フンブレヒトは1620年から続く家族経営のワイナリー
 次期当主(13代目)となる長男もワイナリーに参画
 6コミューンに41㌶のぶどう畑(すべて認証取得)を所有、伝統的なワイン造りを実施
 生産しているワインは25アイテム、年間の生産量は20万本(年によって若干の変動あり)
 5頭の馬で耕作。急斜面の畑では使えないので、困難な場所はウィンチによる手作業
 畑のぶどう樹はマサルセレクションのみ、クローンは使わない主義
 ぶどう品種はリースリング40%、PG28%、ゲヴュルツトラミネール20%、PN12%他


 オーガニック・ビオディナミ農法に関して
 オーガニックは1990年代から、ビオディナミは1998年から導入
 オーガニック認証エコセール(1998年~)/ビオディナミ認証ビオディヴァン(2002年~)

ルドルフ・シュタイナーに影響を与えたヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ
 1920年にビオディナミを始めたシュターナーは、ドイツの詩人、小説家、哲学者で、
 自然科学者でもあったゲーテから多くのことを学びました。
 Zoomセミナーでは、ゲーテが著した「植物を理解するための3つのキー」について、
 それぞれの例を挙げながら、フンブレヒトMWは次のように解説しました。

 (1)方向 (2)エレメント (3)惑星
 (1)方向の1つめは求心力。地球の中心に向かって動こうとする力で、良い例がオーク
  2つめは遠心力、求心力とは反対に宇宙に向かっていこうとする力、例で言えば大麦
  3つめは求心力や遠心力はないが、植物間での交換力のあるイラクサやスギナ
  生姜は求心力が強く、味の濃い果実は遠心力が強い。
  ぶどう樹は求心力や遠心力がほとんどないので
  強いパワーのあるものをぶどう樹のそばに置くことで効果が得られる


 (2)のエレメントは土/ミネラル、水/植物、空気/動物、火/意識
  地球は主に土と水から成るので、ぶどう栽培には地球が持つ要素が必要。
  地球のさまざな要素を増やすためにビオディナミのプレパラシオン(宇宙と植物を繋ぐ役目)
  を使用。火の要素を使うことで、強い味わいが得られる。
 
 (3)の惑星に関しては、
  月は冬を象徴/オーク、水星は春/カモミール、金星は開花/西洋ノコギリソウ 
  太陽は結実/オトギリソウ、火星はベレゾン/欧州ヨモギ、木星は実が熟す/タンポポ
  土星は種が熟すエネルギー(次世代を生み出す)/西洋カノコソウ

 「ぶどうは放っておくとあまり実をつけない植物なので、冬に剪定を行い、
  ぶどう樹にストレスをかけることで良い実ができる
」とフンブレヒトMW
  求心力や遠心力を持たないぶどうは人が何もしないと実をつけようとしなくなる[がく~(落胆した顔)]


気候変動とビオディナミ
気候変動、これは問題なのか、それとも好機か?
フンブレヒトMWが提示した、このテーマを見て、真っ先に頭に浮かんだのは、シャンパンメゾン『ルイ・ロデレール』のジャン・バティスト・レカイヨン醸造責任者でした。彼は1974年にクリスタル・ロゼを発売して以来のアイテムとして『ブリュット・ナチュール フィリップ・スタルク』をリリースしていますが、ビオディナミの導入で、糖度の高いぶどうが収穫できるようになったことが、きっかけだったようで、「気候変動の影響を考え、ぶどう樹の仕立て方や新しいぶどう品種に取り組むこともひとつの選択肢ですが、シャンパーニュ地方のシャンパンという飲みもの、そのアイデンティティをきちんと表現することが大事であり、温暖化だからこそ造ることができたアイテムです」と語っていました。

フンブレヒト氏に話を戻すと・・・レカイヨン氏と同じく、彼も優れたワインメーカーであり、ビオディナミの認証も受けているので、温暖化を好機と捉えていると、私は推測しています。

✥アルザスは10年前と比べて、収穫の時期が3週間早まっている。
✥1970年代と比べると、降雨量が減っている/総雨量は10年ごとに4㎜減少

気候変動による影響
2021年は欧州の多くのワイン産出国が春の遅霜害を受けましたが、アルザスには及んでいません。
10年後にはアルコール度数が1%アップする可能性があるものの、酸の高いリースリングには好都合。
収穫が早まれば、腐敗は軽減されますが、甘口ワインの生産は難しくなります。

発生するさまざまな問題をビオデイナミ農法との関連で考えると、有機栽培をより効率的に行うことが可能になる由。生理的な熟度を得ることが大事なので、早い時期に収穫ができ、温暖化の影響下にあっても、よりフレッシュなタイプのワインを造ることができるとのこと。「畑で完璧なぶどうが収穫出来れば、セラーでの人為的な作業が減ります」とフンブレヒトMW



  4種のテイスティング


 カナダのファントム・クリーク・エステーツでの新たな活躍
 ブリティッシュ・コロンビア州オカナガン・ヴァレーにある新興ワイナリー

ファントム・クリーク・エステーツではボルドータイプの黒ぶどうやオカナガンの代表的な品種シラーやヴィオニエを栽培。白ワインはアルザスタイプに注力しているので、フンブレヒトMWがコンサルタントとしてサポート。今夏からベリンジャー家のマーク・ベリンジャー氏も新ワインメーカーとして就任しています。世界レベルの指導者たちが脇を固めているので、今後の発展が楽しみです。

 今年1月に日本上陸したニューフェイス
 北オカナガンの自社畑イースト・ケロウナのリースリング100%/8,000円

オカナガン湖の好影響下にある冷涼な気候のエリアで、土壌は砂質ローム、粘土、石灰質。土着酵母で4ヵ月かけて発酵させ、ステンレスタンクとフードルを併用して約10ヵ月熟成させたワイン。MWは「アルザスと同じ気候」と語っていましたが、香りはアルザスとは異なる印象。白い花や洋なしの白い果肉を連想、はちみつやミネラルのニュアンス。中盤以降に軽いビター感。


 ピュアさが魅力のリースリングとピノ・グリ
 リースリング ロッシュ・カルケール2016/4,500円

“ロッシュ・カルケール”はフランス語で“石灰岩”の意味”
テロワールはシリカを含む石灰質土壌、畑の向きは東と南、収量78hl/㌶、平均樹齢42年
オークの発酵槽で12ヵ月間発酵させ、オーク樽で18ヵ月間熟成、瓶詰時期2018年2月
石灰質土壌由来の柑橘系果実のニュアンス、凛として引き締まった酸味(オカナガンのワインには感じなかった)、今飲んでも、さらに熟成させても楽しめるワイン。上質な酒質、ポテンシャルあり。リースリング好きは是非! インダイス1


 ピノ・グリ ロッシュ・カルケール2018/4,500円

テロワールは貝殻石灰岩(ムッシェルカルク)、30㌶の森林のなかの7㌶がぶどう畑。畑を取得したのは1989年。ピノ・グリの畑は孤立していて、他との距離があるので、ビオディナミには最適。収量60hl/㌶、平均樹齢28年。オークの発酵槽で14ヵ月間発酵させ、オーク樽で18ヵ月間熟成、瓶詰時期2020年1月。
白い果実、トースティ、ドライ&クリーミー、和の要素に寄り添うワイン、インダイス1


 表情豊かなゲヴュルツトラミネール
 マイベストだったゲヴュルツトラミネール ロッシュ・カルケール2016/4,500円

テロワールはウーライト、収量47ha/㌶、平均樹齢35年、オークの発酵槽で約2週間発酵、オーク樽で12ヵ月間熟成。瓶詰時期は2017年8月、飲み頃は2019年から2028年
第一香から飲み手を魅了するピュアなアロマ、エキゾチックフルーツ、豊潤なテクスチュア、フェノール由来の心地良いビター感、グラス内の温度変化を楽しみたいワイン、インダイス3

インダイス:ドメーヌ ツィント・フンブレヒトでは、すべてのワインに1 から5 までの指標(インダイス)を使用しています。ラベルのAlc表示の下に記載。RSは残糖度。2001年から実施していますが、数値はあくまでも目安 1=RS<9g/L、2=9<RS<15g/L、3=15<RS<30g/L、4=30<RS<45g/L、5=RS>45g/L 


 90分の緻密な解説
 フンブレヒトMWの人となりが伝わってくる緻密な90分でした。

アルザスでビオディナミが発展した理由について、MWは「スイスとの近さにあると思います。1920 年代にルドルフ・シュタイナーが建てたゲーテアヌムはバーゼルにあり、ここはフランスとスイスの国境、かつアルザスにも近いです。バーゼルやライン川沿いでは、人智学の運動がとても盛んであり、フランスで最初のビオディナミワイン生産者もアルザス(1969年)、メゾン・ド・ラ・ビオディナミは当初からコルマールにあります。アルザスには数多くのシュタイナー学校もあり、人口比ではフランスの他の地域よりも多くなっています」と回答していました!


 モノローグ
 オンラインセミナーは5月後半に行われました。

セミナーの時間内では対応しきれないほどの多くの質問があったので、輸入元日本リカーでは、質問を一括してMWに送り、戻ってきた回答は参加者全員にフィードバックするという形式を取りました。フンブレヒト氏らしい、長文の丁寧なお答えばかりだったので、日本リカーの作業が完結するまでに、約1ヵ月かかりました(笑)

偉大な産地でありながら、日本では十分にその魅力が伝わっているとは思えないアルザス! 
オンラインセミナーの詳細な話を、わかりやすくまとめるのに少し苦労しましたが、ワインラバーの皆さまのお役に立てば幸いです。

製品についてのお問い合わせ先
日本リカー株式会社 03‐5643‐9772

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アースデイに合わせて開催されたカリフォルニアワイン・サステイナビリティ・メディアセミナー [Zoom / ワイン]

  カリフォルニアのサステイナブルに注目!
 カリフォルニアワイン協会(以後CWI)主催で、
 サステイナブルをテーマにしたオンラインメディアセミナーが開かれました。

 会場となったのは昨秋にオープンした東京エディション虎ノ門


 日程は4月22日のアースディと前日21日の2日間。基調セミナーを担当したのは、
 カリフォルニア・サステイナブル・ワイングローイング・アライアンス(CSWA)
 アリソン・ジョーダン事務局長

 一覧で見る活動の変遷
 CSWAのサステイナビリティ教育と認証活動
 ぶどう栽培とワイン造りに関わる人たちによって、2001年に定義付けされました。

 米国の環境問題の取り組みの素晴らしさは第三者による認証システム!
 2010年に立ち上げた第三者認証プログラム(CCSW)により、
 現在171のワイナリー/全体の80%が「ワイナリー認証」
 2,247の農地/全体の32%が「畑認証」を取得。
 米国には他に、ナパのエリアに限定したナパグリーン等、
 州内の別プログラムも設定されていて、厳格な認証ですべてが機能しています。


模範的な2つのワイナリーと繋いで
【シルヴァー・オーク アレキサンダー・ヴァレー】
ナパ・ヴァレーのオークヴィルを拠点にしていたシルヴァー・オークは、2013年にソノマのアレキサンダー・ヴァレーにも畑を購入、2017年から稼働させています。
ワイナリーのスタートは1972年、オイル業を生業にしていたレイ・ダンカン氏が創業し、初代ワインメーカーのジャスティン・メイヤー氏が唱えた「メイン品種はカベルネ・ソーヴィニヨン、樽はアメリカンオークを使って熟成させる」という2点を遵守し、今もそのスタイルを継承しています。

 LEEDは建築物の環境性能を評価する国際的な認証
 2018年、LEEDのEBOM(既存の建物・運営・保全)部門で世界初のプラチナ認証ワイナリーに!

 ソノマのアレキサンダー・ヴァレーにあるワイナリーは7棟から構成されています。
 すべてが認証の対象になっていて、昨年はリビング・ビルディングに認定されました。



     【リッジ・ヴィンヤーズ リットン・スプリングス】
     リッジのデイヴィッド・アマディア社長がナビゲート


 エコフレンドリーなリットン・スプリングスにあるワイナリー
 畑には超100年のジンファンデルの古樹も!


      ワイナリーの建て替え時、断熱壁に利用した藁(わら)ブロック



 ランチにはワイナリーのオリジナルレシピも登場
 左から供出順に
 #1:J Vineyards & Winery Cuvee 20 Brut
 #2:Sunny With A Chance of Flowers Chardonnay 2019
 #3:Ridge Vineyards Lytton Springs 2017
 #4:Silver Oak Alexander Valley Cabernet Sauvignon 2016

 サービスされた4アイテム


 バンケット担当の石井シェフがメニューについて解説@オンライン会場


 口開けは実習を交えたクロスティーニ
 蟹とアボカドを使ったクロスティーニ × キュヴェ 20 ブリュット
 輸入元:布袋ワイン

 CWIのオナー・コンフォート国際部長がクロスティ―ニの作り方を指導!


    第2フライトはローアルコール&ローカロリーのシャルドネ
    表ラベルには85カロリー、Alc9%の表示
    裏には85cal、炭水化物3.3g、タンパク質0.4g、糖質0gとの記載


健康志向を背景に
シャイド・ファミリー・ワインズは1972年にアル・シャイド氏がカリフォルニア州モントレー郡に土地を購入してスタートした家族経営のワイナリー。オンラインでナビゲートしてくれたのは2代目のハイディ・シャイドさん。ローアル・ローカロリーのワイン造りは自分の経験からの発想。「毎日ワインは飲みたい。でも翌日の仕事に差しさわりが出るようだと困るので、そのために、体に負担がなくておいしいワイン造りを」と。所有する畑はすべてサステイナブルの認証を受けており、モントレーは風が強い地域なので、風力発電を活用。ワイナリーで使う電力は100%まかなっているとのこと。また、ワインのみならず、1988年から奨学金制度を設けて学生の応援にも力を入れています。そんなシャイドさんの活躍を賞した関連記事をリンクしておきます。今後の益々の活躍に期待します!
Wine Business.com
Person of the year2020


 ハマチのタルタル、大根のピクルス、柚子ごまドレッシング × シャルドネ2019
 輸入元:オルカ・インターナショナル(株)



               第3フライトでリッジ登場   
     比率はZin74%、プティ・シラー15%、カリニャン9%、マタロ2%

ウインナーシュニッツェル、胡瓜のサラダ、アンチョビとケッパーのクリーム × リットン・スプリングス2017輸入元:大塚食品

メインダイニングのエグゼクティブシェフがドイツ人で、彼のシグネチャーメニューがウインナーシュニッツェルとのこと。リッジに合わせて供出されました。北海道産の仔牛、酸味のあるパン粉を使うことが隠し味のような…相性的にはワインのパワーが勝っていた印象

 第4フライトはワイナリーのお抱えシェフから届いたレシピ
 ファロット、マッシュルームとケール × アレキサンダー・ヴァレー CS 2016
 輸入元:JALUX


       カベルネとアメリカン・オーク重視のシルヴァー・オーク
           自社で樽工場を所有し製造しています!
乾燥したファロット(スペルト小麦)はオーブンで焼くとナッツのような香ばしさが出てくるのが特徴。樽由来の甘みと小麦を噛み込むと出てくる甘み。さらに、マッシュルームとワインのアーシーなニュアンスが相乗。それらをシルヴァー・オークの専属シェフは感じて欲しかったようです、なるほど!

 デザートはパブロバ、苺、クレームシャンティー、ライム
 メレンゲのさっくり感と苺の酸味、隠し味的に使ったライムの皮が爽やかでした。


Q&Aで
CWIの『B-Corp』に対する考えを伺ってみました。
Q:カリフォルニアでは、Fetzer Vineyards と Spottwoode Wineryの2ワイナリーだけが、B-Corpを取得していますが、B-Corpの認証についてどのようにお考えですか?
A:我々は、B-Corp認証を取得している、または取得中のワイナリーを非常に支持しています。これは、持続可能なビジネスを構築し、健全で協力的なコミュニティと労働力を創出するという基本原則に沿った、国際的に評価の高いプログラムです。

青木私感:日本でB-Corpはまだまだ浸透していませんが、昨年5月、食品業界で第1号の認証を受けたのがダノンでした。利益重視ではなく、国際基準での良い会社としての評価なので、SDGsとも大いに関連しています。ダノンに続く動きを注視していきます!


カリフォルニアでは干ばつがあるので、節水に力を入れています。
シルヴァー・オークでは、今まで1ガロンのワインを造るのに、7~8ガロンの水を必要としていましたが、今では「1ガロンのワインに1ガロンの水」との回答がありました。7~8分の1の削減、凄いです!

森林火災は、気候変動ともろに繋がるので困難も多いようです。どのように畑を守るかということでは、素朴な対策とは言え「消火訓練や避難訓練をしています」とのお返事でした。


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気候変動への危惧
直近の日経新聞によると、カリフォルニア州では2021年に入ってからの森林焼失面積は前年同期比で2.5倍増とのこと。今年は、欧州のギリシャやイタリアやスペイン、南米のブラジル、北アフリカのアルジェリア等、世界規模で山火事が広がっています。


   photo by Fumiko/2018年6月撮影

1977年にピーター・ニュートンが設立した『ニュートン・ヴィンヤード』はセントヘレナの西に位置するスプリング・マウンテンの斜面の土地約260㌶を有し、オーナー夫人は日本への造詣も深く、庭園には赤い鳥居も設えてありました。映画『ブラック・レイン』にはこの鳥居も登場しています。2018年に訪問し、自然と一体となった空間が印象的でしたが、昨年の森林火災で、メインの建物や中庭を消失、このニュースは衝撃でした。

国連の気候変動に関する政府間パネルICPPは、化石燃料の削減など抜本的な対策を取らない場合、気温は21世紀末に最大5.7度上昇するとの試算を出しており(出典:日経新聞)、異常気象や地球環境への対策を迅速に進めていかなければならないと危惧しています。
自分でも身近なところからエコ対策をしていますが、日本政府や環境大臣の言動からは、本気度を全然感じません!

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北ローヌを代表する『カーヴ・ド・タン』がウェビナーでエルミタージュ パーセル・テイスティング! [Zoom / ワイン]

  タン・レルミタージュの協同組合カーヴ・ド・タン
 
 (一社)日本ソムリエ協会とSOPEXA JAPONの協力で開催されたオンラインセミナー
 私はジャーナリスト枠で参加しました。
 テイスティング用のワインは6種類、50mlサイズのボトルで届きました。
 セミナーはフランス時間の8時(日本は15時)からスタート
 講師を務めたのはカーヴ・ド・タンのアンバサダー デヴィッド・キラン氏
 フランス語の通訳は素敵なマダム臼井久代さん (お顔が見えなくて残念)

 仏南東部を視察したエマニュエル・マクロン大統領
 
 オンラインセミナー前日、タン・レルミタージュを訪れたエマニュエル・マクロン大統領
(CNNで気になる報道がありましたが、お元気そうなので、安心しました!) 
 カーヴ・ド・タンを代表して4代目理事長のグザヴィエ・ゴマール氏がワインを贈呈
『エルミタージュ・ルージュ ガンベール・ド・ロシュ2015』
 創始者ガンベール・ド・ロシュの名を冠したオマージュワインです!


            カーヴ・ド・タンの沿革
        画像協力:Cave de Tain

VienneヴィエンヌからValenceヴァランセに南下すると、タン・レルミタージュを挟んで、ローヌ河の右岸に位置するアペラシオンがエルミタージュとクローズ・エルミタージュ。

カーヴ・ド・タン・レルミタージュは1933年にルイ・ガンベール・ド・ロシュによって設立されました。彼には後継者がいなかったので、1967年にエルミタージュに所有する6㌶をカーヴ・ド・タンに寄贈。その後、同協同組合は新たなぶどう畑を入手し、全部で22㌶を所有。優れた銘醸畑を有することで、エルミタージュの様々なテロワールを反映させたワインを造り出しています。
超260名のぶどう栽培家が属しており、栽培面積は1000㌶、ぶどう畑は半径15㎞以内にあります。偉大なワインを造ろうという思いを掲げた生産者たちは、88年の長きにわたり、この地で生まれた黒ぶどうのシラーと白ぶどうのマルサンヌをメインにしたワイン造りで高い評価を受けています。

タン・レルミタージュを拠点とする最大の生産者はM.シャプティエ、カーヴ・ド・タンは2番目、その後にはドメーヌ・ポール・ジャブレ・エネが控えており、両ドメーヌはネゴシアンとしても活動しています。


 5つのクリュ
 
  エルミタージュは136㌶のうち21%
  クローズ・エルミタージュは1818㌶のうち38%
  サン・ジョセフは1370㌶のうち11%
  コルナスは155㌶のうち10%
  サン・ペレは103㌶のうち18%
  生産量の90%を占め、残りの10%はIGP

 細分化された単一畑で栽培されたワイン
 フィロキセラ禍( 蔓延したのは1890年前後)以後に植樹されたぶどう樹
 100年近い歴史ある区画、古樹のマルサンヌを手摘みで収穫し、厳しい選果を実施

     エルミタージュ・ブラン オー・クール・デ・シエクル2019
 
デヴィッド:400㍑(新樽45%、一空樽35%、二空樽20%)の樽でアルコール発酵を行い、澱と共に8ヵ月熟成させ、定期的にバトナ―ジュ。マルサンヌ100%、色調は黄金色、種のある果実やアカシアのハチミツの香り、まろやかでねっとりとしていて、ボリューム感もあり、余韻に苦みのニュアンス。20年以上の熟成に耐えうるワイン。

 エルミタージュは世界でも稀なリア
IMG_7493.jpg
 エルミタージュは4つの異なる地層が出会う世界でも稀なエリア
 緑のゾーン/丸い小石が多い沖積土
 茶のゾーン/一番古い土壌、ローヌ河によって運ばれてきた小石、中間部は粘土
 黄のゾーン/柔らかい岩石が崩落して粘土に変化。上部は砂混じりのダスト、ロス土壌
 橙のゾーン/浸食による花崗岩、ローヌ河の流れの変遷によってわかれた中央山塊の一部


カーヴ・ド・タンの新醸造所
赤ワインはアルコール発酵後、木樽内でMLFを行い、ブレンドする前に(異なる樽年齢の)木樽で18ヵ月間熟成、その後、瓶熟させています。2014年、カーヴ・ド・タンは新醸造所に1000万€を投資。生産量を増やすためではなく、“質の向上”を目的としたもので、ベースとなる赤ワインを、区画ごとに醸造することでテロワールを反映させ、ヴィンテージ毎の個性をより鮮明に表現できるようになりました。区画に基づくセレクションが実現したことで、2015年には5アペラシオンの生産地区に50の区画が選別されました。


         エルミタージュ・ルージュラ・クロワ2015

デヴィッド:なだらかな台地、土壌は深みのある黄色味を帯びた茶色で、砂と粘土と泥土から成る。収穫は9月22日、22日間のマセラシオン、そのまま木樽内でMLF、400㍑の木樽(新樽100%)で18ヵ月熟成。(砂や粘土に由来する)酸味を含んだ酸っぱいプラム。アタックはしなやか、綺麗な酸味、余韻に残るスパイシーさ=シラーらしさ。エレガントで、シルクを連想させるしなやかさと軽やかさのあるワイン。

        エルミタージュ・ルージュ ボーム・ミュレ2015
 
デヴィッド:丘の斜面にある区画。ローヌ河の段丘の崩積土。珪岩質石灰岩の小石から成り、その下には砂と小石混じり茶色の土壌、畑は南向き。収穫は9月19日、26日間のマセラシオン、木樽内でのMLF、228㍑の木樽(新樽60%、一空樽40%)で熟成。ブラックチェリーのブランデー漬けの香り、アタックはすっきり、キルシュやシラーの特徴香の黒胡椒、存在感のあるタンニン、綺麗な酸味と長い余韻、(小石混じりの土壌由来の)果実感。 ガンベール・ド・ロシュにボーム・ミュレをブレンドすると力強さと毛皮のようなタッチが備わる。

          エルミタージュ・ルージュ メアル2015
 マイベストの区画がメアル、ワインはリッチで豊潤!

デヴィッド:最も急斜面、ぶどう畑は全て南向き、大きな石と小石は日中太陽からの熱を取り込み、夜間に放出。区画はメアルの最上部、西側に位置し、地層は花崗岩質と崩積土。収穫は9月21日、23日間のマセラシオン、木樽内でのMLF、228㍑の木樽(新樽3分の2、一空樽3分の1)で熟成。香りはシュガーローストしたイチジク、シナモンやスターアニス似のスパイス、アタックはまろやかで勢いがあり、カシミアのようなソフトタッチのワイン。


         エルミタージュ・ルージュ エルミト2015
 エルミタージュの由来となる区画エルミト

デヴィッド:100%花崗岩質(オレンジ色の酸化鉄を含む)、標高300m、段丘が多く、畑は南東向きなので朝の陽ざしを受ける。1982年から2000年まで18年かけて改植。収穫は9月21日、23日間のマセラシオン、木樽内でのMLF、228㍑の木樽(新樽3分の2、一空樽3分の1)で熟成。赤系果実、オリエンタルスパイスやクローヴ、ミネラル塩、輪郭のはっきりしたタンニン、きめ細かいレザー感、(花崗岩由来の)混じり気のないシラーらしいワイン。


       エルミタージュ・ルージュ ガンベール・ド・ロシュ2015
 
デヴィッド:ブレンドによって完成したワイン。我々は花崗岩の持つパワーと緻密さとまっすぐな印象をワインに表現したいと思っています。 1933年からのワインを2万本ストックしているヴィノテークを設け、1950年以降のワインを販売しています。2015年ヴィンテージはキルシュや野生のハーブ、ワイルドスパイスの香りがあり、しなやかでさわやか、口中ではねっとり感があり、花崗岩の明快さを感じます。長熟を予感させる骨格のあるタンニン、力強さと果実味、完璧な円熟味、ガンベール・ド・ロシュはエルミタージュの丘の品格を表わしています。

 豊かさと複雑さにあふれたグランヴァン
 エルミタージュ・ルージュ ガンベール・ド・ロシュ2015は、
 メアル14%、エルミト44%、ボーム・ミュレ13%、レ・シニュオー6%、
 ガンベール10%、ラ・クロワ13%の区画のワインをブレンドしています。 
 スターシェフや星付きレストラン、エアライン等でも愛用されていますし、
 先日は、タン・レルミタージュを視察中のマクロン大統領に贈呈!


 中華料理のスパイス(八角等)とシラー種の特徴香(黒胡椒、シナモン)とのバランス良好  
 口中に残る脂分はタンニンが洗い流してくれる印象

 
 昨今、ZoomやTeamsによるウェビナーがとても多くなっています。
 カーヴ・ド・タンの日本向けオンラインセミナーも今回が初めてだったようです。
 講師のデヴィッドさんの熱心さが画面を通して伝わってくる内容だったので、
 SOPEXA JAPONの佐藤コンサルタントにお声がけいただき、良かったと思いました。

 ただ、参加者のなかに、“マイクをオフにしていない人”がいたので、
 セミナー中に雑音が入り、話が聞き取り難くなる箇所があったことは残念でした。
 主催者側から、3回ほど、「マイクをオフに!」との忠告もありましたが、
 オフにしていないご当人たちは全く気が付いていない様子(苦笑)

 私は、今まで、プレス限定や人数制限のウェビナーばかりだったので、
 今回のような人数の多いオンラインセミナーは初めて、このような事態も初めて。
 今後、ますます増える可能性のあるオンラインセミナーなので、
 参加する側は、ビデオとマイクは必ず“オフにして!”
 他の参加者のためにも、これだけは、徹底すべき事項だと思っています。

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ボジョレーワイン委員会がクリュ・デュ・ボジョレーに特化したウェビナー開催!  [Zoom / ワイン]

  コロナ禍でも対日輸出量は増えているボジョレー
 ヌーヴォーだけじゃないボジョレー
 クリュ・デュ・ボジョレーの『ムーラン・ナ・ヴァン』と『ブルイィ』

 ボジョレーと聞くと、瞬時に連想してしまうのが“とんかつ”
 毎年ヌーヴォーの解禁日にお目にかかっているジョルジュ・デュブッフのアドリアンさん
 昨年はコロナ渦中だったのでオンラインでの対面でしたが、彼一押しの組み合わせがコレ
 ゆえに、反射的に「ボジョレー=アドリアン=とんかつ」という流れに(笑)


 ボジョレーワイン委員会主催のオンラインセミナー
 ボジョレー委員会初のウェビナー
 テイスティング用のワインはムーラン・ナ・ヴァンとブルイィが各3アイテムずつ
 参加者にはランダムにそれぞれのクリュのワインが1本ずつ送付されてくるシステム
 私の元に届いたのは・・・
 ドメーヌ・ポール・ジャナン・エ・フィスのムーラン・ナ・ヴァン サプロリット2018
 ドメーヌ・ド・テヌモンのブルイィ ヴィエイユ・ヴィーニュ2018

 
 昨年のボジョレー・ヌーヴォーの輸出先トップは
 日本[わーい(嬉しい顔)]
 輸出量は前年と比べて21.6%減でしたが、
 ボジョレー・ヌーヴォーとボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォーに関しては、
 全体の46%を占めており、依然として第1位の座を確保していました。


 ボジョレーの健闘に注目
 AOPボジョレー、同ボジョレー・ヴィラージュ、クリュ・デュ・ボジョレー
 の総量も加えると31,422ヘクトリットル、420万本を輸出しました。
 末尾にに掲載したデータ(主な輸出国)もご覧ください!


        セミナーではクリュ・デュ・ボジョレ―の「2村」に特化
         クリュ・デュ・ボジョレーは全部で10村あります。
 最も南に位置するブルイィ、コート・ド・ブリイィ、レニエ、モルゴン、シルーブル
 フルーリー、ムーラン・ナ・ヴァン、シェナ、ジュリエナ、最北部のサン・タムール

 登場したワインたち
 画像提供:ボジョレーワイン委員会
 #2:シャトー・デ・ジャック ムーラン・ア・ヴァン2018/日本リカー
 #3:ドメーヌ・ポール・ジャナン・エ・フィス ムーラン・ナ・ヴァン サプロリット2018
 稲葉
 #4:シャトー・カンボン ブルイィ2018/テラヴェール
 #5:ドメーヌ・ジュベール ブルイィ・ヴィエイユ・ヴィーニュ2018/木下インターナショナル
 #6: ドメーヌ・ド・テヌモンのブルイィ ヴィエイユ・ヴィーニュ2018
 ディス・エクスポール・ジャポン


  一番手はジョルジュ・デュブッフのアドリアンさん
  通訳とワインのコメントは石塚ソムリエが担当


        ムーラン・ア・ヴァン2018/サントリーワインインターナショナル


 ムーラン・ナ・ヴァン サプロリット2018
 若い樹で樹齢80年、最も古い樹で100年、収量も30ヘクトリットル/㌶と極めて低い。タンニンはきめ細かくソフト   酸味も心地良く、今飲んでも熟成させても楽しめるクリュ・デュ・ボジョレー
 ブルイィ ヴィエイユ・ヴィーニュ2018
 樹齢60~65年からなるヴィエイユ・ヴィーニュのワイン。赤系果実や赤いバラのアロマ
 ムーラン・ナ・ヴァンより酸味や渋味がまるく、エレガントさをまとった雰囲気のクリュ・デュ・ボジョレー


 左から
 ジョルジュ・デュブッフのアドリアン・デュブッフ・ラコンブさん
 Saint-Amour Bellevueの石塚裕介支配人兼ソムリエ
 ブルイィ生産者組合のロベール・ペルー副会長
 ボジョレーワイン委員会のフィリップ・バーデ副会長


4月第一週に発生した霜害は?
「40年間ぶどう栽培をしていますが、今回のようなひどい霜害は初めてでした」とバーデ副会長。3月末に27度まで気温が上がり、ぶどうは順調に育っていましたが、その後、マイナス8度まで降下し、回避することができませんでした。正確な被害の数字は出ていませんが、大きな影響が出ると予想しています。ボジョレー・ヌーヴォーの価格を少し値上げする可能性もあります。

ボジョレーにおける気候変動は?
ぶどうがしっかり熟すようになっているので温暖化の恩恵を受けていると思います。ただ、ぶどうの実が大きくなり水分が多くなることで収量は減っています。温暖化対策としてシラー種を栽培する試みもしています。2021年のぶどうの生育状況について語るにはまだ早いのですが、5月に雨が多く降ったので開花は6月の第2週以降。開花から収穫日が予測できるので、これはとても大事なことです。昨年の収穫は8月末でしたが、今年は9月中旬以降だと思います。

どのAOCがお好きですか?
バーデ副会長は「3~4年熟成させると色々な料理に合わせて楽しめるボジョレー・ヴィラージュ」
ペルー副会長は「生まれも育ちもブルイィなのでブルイィ、赤い花崗岩質から造るガメイ種が好き」
石塚ソムリエは「レストランの本拠地があるサン・タムールです」
そして・・・アドリアンさんは、
「12のAOCからひとつを選ぶのは難しいです。子供が12人いるのと同じなので、ひとつだけは選べません」
ボジョレーの帝王と言われた祖父デュブッフさんを彷彿とさせる回答でした!

ボジョレ―ワイン委員会の皆さまは解禁日に来日することを望んでいましたが、コロナ終息が見込めない状況であれば、近い将来、日本を訪問して、ボジョレーの伝道をしたいと語っていました。


 現地との中継役はボジョレーワイン委員会日本事務局の伊藤宏和代表
 今回はスタジオから参加していました!


 [NEW]ボジョレー・ヌーヴォー2021の新ポスター
 今年はこのポスターが日本市場にお目見えします!


               ボジョレー早わかり
      資料提供:ボージョレワイン委員会


  資料提供:ボージョレワイン委員会

【ボジョレー全般のお問い合わせ先】
ボジョレーワイン委員会 日本事務局 電話03‐5615‐8177
E-mail:beaujolais@audacejapan.com

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ルイ・ジャドが所有する『ドメーヌ J. A. フェレ』のオドレ・ブラチーニ醸造責任者が日本向けオンラインセミナーで初登場! [Zoom / ワイン]

 ドメーヌ・フェレとルイ・ジャドのプイイ・フュイッセ2018をテイスティング

2018年は冬から春にかけては涼しくて雨が多かったが、5月からは乾燥して暑い天気になった。8月からぶどうの熟度をチェックしたが、場所によって、差があり、収穫の時期の判断はかなり悩ましいものだった。結果的に、過去一番長い収穫期間になったが、待つことで、愛すべきワインになり、オドレさんは「デリケートでフレッシュ感もあり、長期熟成タイプのワインになった」とコメント


ドメーヌ J. A. フェレ プイイ・フュイッセ2018希望小売価格5,000円(税抜)
フュイッセのさまざまな区画の最良のぶどうをブレンド。平均樹齢は40年。土壌は花崗岩、泥灰土、石灰土。収穫は手摘みで早朝の涼しいうちに実施。古生代の花崗岩土壌から収穫したぶどうはステンレスタンク(50%)で醸造することで、果実味豊かで飲みやすいワインになり、泥灰土や石灰土壌のぶどうは使用樽(50%)でストラクチュアを表現。定期的にバトナージュを行い、約10カ月熟成、全量ブレンド後、ステンレスタンクで数カ月熟成。

ルイ・ジャド プイイ・フュイッセ2018希望小売価格4,600円(税抜)
フュイッセ村、ソリュトレ・プイイ村、ヴェルジソン村、シャントレ村の畑のぶどうを使用。土壌は白亜質と粘土の混合。収穫は手摘み、ステンレスタンク(60%)とオーク樽(40%)で数カ月熟成させ、全量ブレンド後、ステンレスタンクで澱とともに3カ月熟成。


 初登場のオドレ・ブラチーニ醸造責任者

ルイ・ジャドのピエール・アンリ・ガジェ社長の秘蔵っ子のオドレ・ブラチーニさん。
ワイン好きの父親の影響を受け、若い頃からワイン造りの道に進むことを決意。モンペリエ国立大学農学部で農業技師およびエノロジストの資格を取得。ボージョレにあるワイナリーでキャリアを積み、2008年にルイ・ジャド社がマコネ地区にある『ドメーヌ・フェレ』を買収した時に、醸造責任者に就任、現在に至る。今まで、来日するチャンスがなかったので、今回のオンラインセミナーがオドレさんの初登板になりました。


  地質について
 赤色は基盤を成す古生代(約3億年前)の花崗岩土壌
 青色は堆積した泥灰土や石灰質の土壌
 黄色は最近のもので、ぶどう栽培には適していない土壌

       参考資料 地質時代と地層名
       出典:ブドウ畑の自然環境/武田弘著


 マコネ地区
 ブルゴーニュ地方の栽培面積は28,000㌶
 コート・シャロネーズ地区とボージョレ地区の間に位置するマコネ地区は7,000㌶
 主要品種シャルドネはマコンの生産量の85%を占めている
 複雑な土壌と唯一のぶどう品種シャルドネが織りなす魅力


 プイイ・フュイッセ
 Les Crouxから撮影したヴェルジソン村の丘の写真
 プイイ・フュイッセの栽培面積は800㌶、北から南までは7km
 ブルゴーニュ地方のなかではシャブリに次いで2番目に大きなAOC
 フュイッセの村は18㌶で50区画あり、円形競技場型の形状で広がっている


4つのコミューン
ヴェルジソン 
中生代の地層で一番古い。西側には三畳紀の石灰質がある。面積193ha、標高250~430m、 完全な堆積土壌で、同村は北側に位置しており、標高も高い。
ソリュトレ・プイィ 
面積224ha、標高220~425m 、主たる土壌は、石灰岩、粘土、泥灰土、落石で、石灰岩が最もよく表れている村。収穫時期はフュイッセ村とほぼ同じ。
フュイッセ  
古代円形劇場のような形を成し、2つの斜面の畑はそれぞれ違ったワインを生み出す。面積274ha、標高210~390m 、土壌の複雑さで言えば最も変化にあふれた村。最も古い地層と最も若い地層の間には3億年以上の差がある。古生代(西向きの斜面)の土壌を見つけることができる唯一の村。フュイッセの反対側(東向き)は泥灰土、石灰岩 砂岩。フュイッセのプルミエ・クリュがある場所は、水捌けが良く「斜面の真ん中にある粘土質は将来的に偉大なテロワールになる」とオドレさん。
シャントレ
面積111ha、標高215~285m 、最初に収穫が始まる村。東向きの斜面の上には石灰岩を含む岩の多い区画があり、下の方に行けば行くほど粘土が多い。


 ジャンヌ・フェレの功績
 マダムが活躍していた伝統を受け継ぎ、オドレさんが醸造責任者に就任

ドメーヌの責任者はジャンヌ・フェレの夫ジャン・アルフレッドでしたが、彼は本業(歯科医師)で忙しく、妻ジャンヌが実質的にワイナリーを取り仕切っていました。手紙に「ワインの仕事に身を投じている」としたためています。

1974年にジャン・アルフレッドが他界し、周囲の人々は、初めてマダム・フェレがワイン業に関わっていたことを知ります。人生のすべてをプイイ・フュイッセに捧げてきたジャンヌ・フェレ。40年前に彼女が明確化していたプルミエ・クラスが、2020年に正式に認められたことになり、マダムの先見の明に、改めて敬意を表したいと思います。

1993年マダムが世を去り、ドメーヌはコレット・フェレに託されましたが、病弱の為、2006年に逝去。独り身だったので引継ぎが出来ず、2008年にルイ・ジャドが買収。両家には交流があり、1970年代にはルイ・ジャドで活躍した名醸造家ジャック・ラルディエールさんがマダム・フェレのドメーヌで研修していたという繋がりもありました。ドメーヌ・フェレへのリスペクトとして、今でも緑色のボトルが使われています。2008年にオドレ・ブラチーニさんがワイン・メーカーに任命され、2012年には新醸造所も完成しました。
 
生命力があれば良いぶどうができるという考え方から、ぶどう畑では土壌にエネルギーを持たせることに注力しています。作業をする人たちの健康面にも留意。畑では除草剤を廃止。ぶどう樹の選択もマサル・セレクションに戻しています。土壌や樹齢によって手入れは異なりますが、若い樹の畑には馬を活用。ぶどう樹の剪定はとても重要なので、ギュイヨ・プサールを導入中。


 マダム・フェレが行った3箇条
 
 (1) 1930年代半ばからぶどうの区画ごとに醸造 
 (2) 1942年から自社畑のぶどうを自分のメゾンでボトリング
 (3) 1970年代後半から独自の格付けを設定 
 キュヴェ・テート・ド・クリュはプルミエ・クリュ、キュヴェ・オール・クラッセはグラン・クリュとの認識


22のクリマがプルミエ・クリュに選ばれたことについて
オドレさんは「実際の使用状況(知名度、収量、販売量)や、技術的な面(土壌、地質、斜面、畑の向き、標高)等、さまざまな観点から総合的に見て判断されました。昔から素晴らしい、偉大な土地と認められていたところが、公式にプルミエ・クリュという形で認められたという理解です。プイイ・フュイッセに少しだけ光が当たったという気がしています。AOC プイイ・フュイッセについて良く知らなかったという人もいると思うので、いろいろなクリマやいろいろな味わいのワインがあること発見していただければ嬉しいです。また長期保存ができるワインがあることにも注目していただければ、プイイ・フュイッセに光が当たるように思います」とコメントしました。


 プルミエ・クリュに認められた22のクリマ 拡大可
 2020年11月に15年以上の努力が実ってPCに認められた
 PCはで囲ってあります。その多くは東向き、土壌は泥灰土質、石灰土質、粘土質

 
 Vergissonのコミューン
 Les Crays、 La Marechaude、Sur la Roche、En France
 Solutre-Pouillyのコミューン
 La Frerie、Le Clos de Solutre、Au Vignerais、En Servy、Aux Bouthieres、
 Aux Chailloux、Pouilly、Vers Cras(Solutre-PouillyとFuisseと重複)
 Fuisseのコミューン
 Le Clos、Les Brules、Les Menetrieres、Les Reisses、Les Vignes Blanches、
 Les Perrieres、Vers Cras(Solutre-PouillyとFuisseと重複)
 Chaintreのコミューン
 Le Clos de Monsieur Noly、Les Chevrieres、Aux Quarts、Le Clos Reyssier
 https://www.pouilly-fuisse.net/en/


 ドメーヌ・フェレのプルミエ・クリュのラベル
 2020年ヴィンテージからPCに昇格

  出典:ワールドアトラス

 ドメーヌ J. A フェレの所在地はで表示
 Les Perrieres、Les Menetrieres、Tournant de Pouillyは地図に四角で囲った場所
 Clos de Jeanneに関しては、「ル・クロは プルミエ・クリュ畑のル・クロではなく、
 ペリエール(Le Planの区画)に属し、昇格したル・クロとの差別化の為、
 ジャンヌ・フェレの名にちなみ、クロ・ ド・ジャンヌという名に変更」とオドレさん。

 春の霜害については「畑の被害はありましたが、ブルゴーニュの北のエリアに比べると、
 マコネやプイイ・フュイッセは影響も少なく、プルミエ・クリュの畑は問題ありません」
 とのお返事でした。ぶどう達は無事だったようです、良かったです!


   番外編マリアージュのお薦め
   安定感のある相性スモークサーモン、バターで! 

     和歌山県産南高梅で梅肉ソースを作り、豚肉とレンコンを漬け込む
 梅とプイイ・フュイッセ双方の上質な酸味が相乗し、食欲をそそる一品になります!
 ジメジメした梅雨時にぴったりの梅干し、日本人に受ける相性だと思っています。


【商品についての問い合わせ先】
 日本リカー株式会社 電話03- 5643-9770
 https://www.nlwine.com/

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ルイ・ジャドがオレゴンで手掛けるレゾナンス、ギョーム・ラルジュが仕切る本邦初のウェビナー [Zoom / ワイン]

  ルイ・ジャドがオレゴンで開始した新しい挑戦
 レゾナンスのキャップシュールはワインの特徴を表現した紫色


       ラベルも紫色で統一
       絵柄はもみの木、異なる木々の高さで“共鳴”を表現


抜栓した瞬間から豊潤な果実香が漂い、ブラックベリーや黒スグリ、甘草やクミン、スミレのアロマ。口中に広がる力強さ(生命力)、若干の塩味やミネラル、存在感のある酸味、長い余韻でフィニッシュ。コンサルタントワインメーカーとして年に2~3回来訪しているジャック・ラルディエールさんが「エネルギーを感じる場所」と形容しているレゾンナンス



                まずはプロローグ
1859年創業のルイ・ジャドは本拠地フランスのブルゴーニュでワインを造り続けてきましたが、2013年にその範囲を北米オレゴンのウィラメット・ヴァレーにあるヤムヒル・カールトンに広げました。
2016年にルイ・ジャドのオリビエ・マスモンデ輸出部長がプレスを対象に、プロジェクトについて語りました。2017年4月にはピエール・アンリ・ガジェ社長が来日して、同メゾンの熱い思いを語りました。そして・・・2018年にはオレゴンの仕切役チボー・ガジェ総括責任者とワインメーカーのジャック・ラルディエールさんの来日も! 
導入部として『レゾナンス』についてのブログをご笑覧いただけると嬉しいです。


 オレゴンでは3種のピノ・ノワールを生産
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 2018年11月撮影
 レゾナンスが生産している3つのピノ・ノワールと総括責任者のチボー・ガジェさん!

2018年バレルティスティングで.jpg
 #1:ダンディー・ヒルズのデクヴェルト・ヴィンヤード ピノ・ノワール(左)
 #2:ヤムヒル・カールトンのレゾナンス・ヴィンヤード ピノ・ノワール(中央)
 #3:ウィラメット・ヴァレーのレゾナンス ウィラメット・ヴァレー ピノ・ノワール(右)
  #1#2は自社の単一畑のワイン、#3は50%は自社畑で50%は買付けぶどうを使用



         2018年7月撮影
レゾナンス設立時から活躍してきたワインメーカーのジャック・ラルディエールさんが来日して開催したセミナー時のショット


  ギョーム・ラルジュさんによるZoomオンラインセミナー
 ワインメーカーのラルジュ講師による日本初Zoomセミナー
 2017年からレゾナンスのセラーマスターとして活躍しています。


  オレゴンの位置 クリックで拡大
  画像提供:レゾナンス 
 オレゴンのウィラメット・ヴァレーは北緯45度、フランスの主要産地と同じ緯度


  画像提供:レゾナンス
  左はウィラメット・ヴァレー内のサブAVA
  ルイ・ジャドはYamhil-CartonDundee Hillsに畑を所有。
  右はヤムヒル・カールトン(ウィラメット・ヴァレーの北側、その中でも西に位置し、太平洋にも近い)

 レゾナンス・ヴィンヤード
 ルイ・ジャド社の創立年とオレゴンが正式な州に昇格した年はともに1859年!
 2013年にレゾナンス・ヴィンヤードを購入&ファーストヴィンテージ
 2018年に自社ワイナリー、翌年にはテイスティングルーム竣工

 ヤムヒル・カールトンの畑
 画像提供:レゾナンス 
 ヤムヒル・カールトンの畑は全部で8㌶、ピノ・ノワールを栽培
 1981年に最初の植樹、貴重な自根によるぶどう樹で灌漑不要のぶどう畑
 標高は100~150m、古い海洋性の堆積土壌(母岩は花崗岩、その上に海からの堆積物)
 3000~4000万年前の地層で酸化鉄を含む土壌もある
 レゾナンス・ヴィンヤードもデクヴェルト・ヴィンヤードもオーガニックの認証取得
 
 デクヴェルト・ヴィンヤード
 画像提供:レゾナンス
 ダンディー・ヒルズにある5㌶の自社畑にピノ・ノワールを栽培(1㌶にシャルドネ)
 すり鉢状で自然の円形劇場のような地形
 1996年に最初の植樹を実施。標高は180~220m、赤い粘土のジョリー土壌
 火山性土壌由来の複雑なアロマ、豊かな果実味のあるワインなのでラベルには“”を採用


オンラインセミナーではレゾナンス・ヴィンヤード ピノ・ノワール2014をテイスティング
「ブルゴーニュのようなワインを造るのではなく、長年ブルゴーニュで培ってきた技術を生かし、オレゴンのテロワールを反映させたワインを造ることが信条」とラルジュさん。
手摘みでぶどうを収穫し、ワイナリーで丁寧に選別した後、除梗し、3~4週間の長いマセラシオンを行い、自然発酵。ルイ・ジャド社で使用しているのと同じカデュス社(ラドワにあるルイ・ジャド社の関連会社)製のフレンチオークで16ヶ月熟成、新樽率30%


  [NEW]日本初リリース:レゾナンス デクヴェルト・ヴィンヤーズシャルドネ2018
       2021年4月1日(木)から出荷開始、希望小売価格8,000円(税抜)

 試飲はしていませんが、生産者からの報告によると・・・
 初ヴィンテージとなる2018年は理想的な気候に恵まれた優れた収穫年。
 ダンディーヒルズの火山性ジョリーローム土壌の自社畑(1㌶)で栽培されたシャルドネ
 総生産量は200ケース、日本への入荷量はわずか120本の希少アイテム
 フレンチオーク(新樽比率は30%未満)で16ヶ月間熟成
 エレガントな香りをまとった躍動感のあるワイン


 2020年のヴィンテージ情報
「ぶどう畑の剪定が終わったところです」とラルジュさん

2020年ヴィンテージは現在樽で育成中。少収量ながらピノ・ノワールもシャルドネも凝縮感があり、とても良い状態。昨年はウィラメット・ヴァレーで山火事が発生しましたが、30㎞離れていたので、煙害(スモークテイント)はあったものの、直接の被害は受けずに済みました。ワインはエネルギーにあふれています。どのようなワインになるかは、もう少し時間がかかりますが、グレートヴィンテージと言えそうです。


     番外編マリアージュ:チキンビリヤニと合わせて
IMG_4958.jpg
          レゾナンスの果実風味はトマトと良い相性
     甘草やクミンの要素はチキンビリヤニのような料理と合せて楽しめました。

 
 製品に関するお問い合わせ先は 日本リカー株式会社
 電話03-5643-9770
 https://www.nlwine.com/winery/resonance/

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新登場 オーストリアの固有品種グリューナー・ヴェルトリーナーのニューフェイス『ニュー チャプター』 [Zoom / ワイン]

 
 レンツ・モーザー + マルクス・フーバー = New Chapter
 オーストリアの固有品種グリューナー・ヴェルトリーナー(以後 GV)
 私の大好きなぶどう品種です!
 2003年、初めてのオーストリア取材で、秀逸なGVと対面して恋に落ちました[わーい(嬉しい顔)]
 それ以来、GVの応援をしています。和食に合うのも魅力です!
 でも・・・消費はドイツ語圏が中心なので、圏外に出るのはわずか10%程度です。

 そんなGVを、“TOMORROW’S GRUNER TODAY”と表現してリリースさせたのが、 
 歴史ある レンツ・モーザー家のレンツ・モーザーと、
 ワイングート マルクス・フーバー の10代目 若き精鋭マルクス・フーバーのおふたり。
 4月初旬、オーストリアと東京をZoomで繋ぎ、そのワインが披露されました!

 2009年に訪問したレンツ・モーザー、オーストリアカラーのお洒落な外観



         15年の友情から誕生した「ニュー チャプター」
        レンツ・モーザー(左)、マルクス・フーバー(右)


1849年に創設されたワイナリー『レンツ・モーザー』。祖父のレンツ・モーザー3世はNew Trellising system(高垣式)の栽培法を考案。父は1978年に自国にビオディナミを紹介し、1980年代の初めにGVをメジャーにした功労者です。既にワイナリーはモーザー家の手を離れてしまいましたが、オーストリア最大のワイン製造会社として良質なワインを市場に提供しています。

マルクス・フーバーは10代目で、醸造学校を卒業後、南ア、ドイツ、フランス、ハンガリーで研鑽を積み、2000年にワイナリーを継承。2015年にはファルスタッフ誌のワインメーカーオブザイヤーを受賞、2020年にはIWCのベスト白ワインメーカーオブザイヤーを受賞するなど、才能を遺憾なく発揮している期待のワインメーカーです。


        ふたりの情熱を形にしたニュー チャプター2020
ふたりは1種類のワインだけに注力、総生産量5万本、次VTからはマグナムボトルも登場
ふたりがフォーカスするのはロンドン、チューリッヒ、ミラノ、NY、東京等のワインシティ


       トライゼン川の流域に広がるトライゼンタール
 ニュー チャプターの拠点はニーダーエスタライヒ州のトライゼンタール

大陸性気候とパノニア気候が交差するエリアで、森林もあり、自然の要塞のような景観。
土壌はトライゼンタールの東側がレスとローム、西側が石灰と花崗岩を含む礫岩。
トライゼンタールはGVの生産量が多く、65%を占めていますが、マルクス・フーバーの畑はオーストリアのなかで唯一“石灰質土壌”。そこから誕生するグリューナーです!

畑は丘陵の中腹にあり、すべてが東向き。樹齢は古いもので70年。オーガニック栽培、全部で120区画、ニュー チャプターに使用するぶどうは最高の畑、最高の区画のものを厳選。



    IMG_5343.jpg   IMG_5344.JPG 
 4週間(10月初旬~11月初旬)に分けて健全果のみを収穫
 収穫の初期は凛とした果実味のぶどう、後半は複雑味を備えたぶどう
 それらをブレンドすることで、ワインに厚味や風味が加わる。
 部分的に全房発酵、マセラシオンは6~7時間
 醸造はステンレスタンク、500㍑のブルゴーニュ樽、アカシアの大樽を使用



             コンセプトは“未来を読む”           

モーザー&フーバーのおふたりが提唱している“Tomorrow’s Gruener Today”とは「明日のGVのスタイルを今日飲んで欲しい」との意味で、その真意は“未来を読み込む”こと。それを具現化したのが、ONE WINE-TWO MENの『ニュー チャプター』です。

彼らは、スティーブ・ジョブズのスピーチ “The people who are crazy enough to think they can change the world are the ones who do.(世界を変えられると本気で思っているようなクレージーな人間が世界を変えていく人間なんだ)”を引用し、自分たちが完成させた新しいグリュナーについて解説。

  ニュー チャプターのポイント

✥ネーミングにもあるように、グリューナー・ヴェルトリーナーの新たな“チャプター(章)”
✥瓶型は従来のタイプではなく存在感のあるフォルム
✥単一ぶどう100%のワインを重視するオーストリアにあって、敢えてブレンドを実施
 リースリングを1%ブレンド
 収穫時期の異なるぶどうをブレンド


 Zoomミーティングでは3アイテムを試飲
 ミーティング用に送られてきた3ワイン

 ✥ニュージーランド、クラウディ・ベイのソーヴィニョン・ブラン2020
 ぶどう品種:SB100%、豊かな果実味、過去10年間のなかで最も秀逸と評されているVT
 ✥オーストリア、トライゼンタールのニューチャプター2020
 ぶどう品種:GV99%、リースリング1%のブレンド
 フローラルなアロマ、ピュア、溌剌とした酸味、ミネラル、飲み飽きしない味わい
 ✥フランス、ペサック・レオニャンのシャトー・カルボニュー・ブラン2018
 ぶどう品種:SB、SE。熟成によるアロマ、フレッシュさと層を成して広がる旨味


 世界のトップワインを検証しながら

ニュー チャプターが目指すのは、世界のトップワインと肩を並べること。
ふたりは、国内外の100以上のワインを利き酒し、検証を重ねながら、ニュー チャプターの方向性、スタイルを探り、ワインを完成させました。欧州で発売して約4週間余りですが、ドイツを中心に快調な動きを見せています。
今回テイスティングして、大いに魅了されました、素晴らしいGVです!

ニューチャプターについてのお問い合わせ先
Weingut Markus Huber / markus@weingut-huber.at 宛
https://www.newchapter.wine/



    グリューナーをNYで大ブレイクさせたジャンシス・ロビンソン
私がオーストリアでGVに夢中になっていた前年、GVはNYのソムリエたちを虜にしていました。GVを語る上で外すことができない重要な出来事なので、触れておきたいと思います。
仕掛人はジャンシス・ロビンソンMWでした。
2002年、まだマイナーな品種だったGVのポテンシャルをいち早く察知し、名だたるブルゴーニュの銘醸ワインとのブラインドテイスティングをロンドンで開催。結果、高評価のGVに世界中から注目が集まりました。審査員も錚々たるメンバーで、パリスの審判の故スティーヴン・スパリュアも加わっていました。このテイスティングの後、長い名前のグリューナーは“グルービー”という可愛いネーミングに(笑) ブームを後押ししたのはNYのソムリエたちで、かの地で大ブレークしました!

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       2002年11月のFinancial Timesの記事/クリックで拡大可


       クリックで拡大可
 オーストリアワインマーケティング協会(AWMB)が当時の出来事をまとめた記事には、
 供出されたワイン名や審査員名が!


 クリックで拡大可
 2003年9月、日本でもAWMB主催でGVとCHの対決をしました。
 ピュリニー・モンラッシェ、コルトン・シャルルマーニュ、ムルソー、シャブリと比較

 
           ☆☆☆☆☆
 【番外編】として和食とのマリアージュも加えておきます!
  冒頭にも書いたように、GVは和の食材とホント良く合います。

  いくらの醤油漬け
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 2003年以来、何度も試しているのが「いくらの醤油漬け」
 大根おろしを加えて2層にしたパターンと醤油漬けだけのパターン
 レモンのスライスをひとかけら添えて

  わさびとのマリアージュ
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 “みどり”の意味を持つグリューナーは色で合わせるマリアージュも楽しめます。
 上質なわさびとの相性は絶妙です。

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 魚介類とは文句なし!

  柑橘系果実と合せて
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 レモンピールのニュアンスを感じたニュー チャプターやカルボニューを、
 レモンをかじってから味わってみると、両ワインとも見事に釣り合いました。

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        クラウディ・ベイはレモンよりライムに寄り添う印象

 現地オーストリアで
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 食べ飽きしない組み合わせ
 旬のホワイトアスパラガスとグリューナー・ヴェルトリーナーは最高に美味!

 
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クロ・デュ・ヴァル “Now and Then” 10ヴィンテージを垂直テイスティング [Zoom / ワイン]

  パリ・テイスティングから45年

ワイナリーの創設者ジョン・ゴレの母親は、ボルドーの有名なワイン商ゲスティエの一族であり、初代ワインメーカーのベルナール・ポーテ氏はボルドー出身でワイン造りに関わってきた家柄。モンペリエ大学では醸造学を学びました。ともにフランスがルーツです!


クロ・デュ・ヴァルの名をワイン業界に知らしめるきっかけを作ったのは、英国のワイン評論家スティーヴン・スパリュア氏です。氏が仕掛けた1976年の歴史的な『パリ・テイスティング』で、赤ワイン部門の8位となり、世界に羽ばたきました。このテイスティングから10年経た1986年、NYで行われた“熟成を評価するリターンマッチ”では、堂々の1位になっています!

  画像データ:JALUX  クリックで拡大

30年目の記念テイスティングでは、5位にランク付けされ、「カリフォルニアワインは熟成しない」との風評を見事に覆しました。

  スティーヴン・スパリュア氏の訃報
  (C) Somm Films

スティーヴン・スパリュア氏(1941年‐2021年)の訃報が届きました。
3月9日のことでした。こころからご冥福を祈願しております。

今回クロ・デュ・ヴァルの輸入元JALUX様を介して上記画像の使用許可をいただきました。

JALUX様から「1976年のパリ・テイスティング(パリスの審判)で、ナパ・ヴァレーを世界的な産地として広めていただきました。弊社取り扱いのクロ・デュ・ヴァルも試飲ワインに選ばれ、1986年のテイスティングでは赤ワインでNo.1となり、クロ・デュ・ヴァルの名声はこの出来事でさらに世界に広がりました。スティーヴンの多大なる貢献に謝意を表するため、クロ・デュ・ヴァルではワイナリーの入り口からテイスティングルームへの道をSteven Supperier LN (スティーヴン・スパリュア レーン)と命名しています」との解説もありました。
改めまして、スパリュア氏が遺した数々の功績に敬意を表します。


  オンラインテイスティングに登場した10ヴィンテージ
 (左から右に)2000年~2008年、2015年の計10ヴィンテージ

ここからは、昨秋、JALUX様が主催した少人数でのZOOMセミナーの報告です。
ナパと東京を繋ぎ、現地からは3代目オーナーのオラス・ゴレ氏、ワインメーカーのテッド・ヘンリー氏がクロ・デュ・ヴァル クラシック・シリーズの熟成具合、ポテンシャルについて語りました。

   
  3代目オーナー オラス・ゴレ氏

 
    現職のワインメーカー テッド・ヘンリー氏
   

  クロ・デュ・ヴァルのぶどう畑
 スタッグス・リープ地区の中心部に位置しています。

同地区の名前の由来は、東側にある赤い岩の丘に出没する鹿から取ったと言われています。
ここはヨーントビルの東1マイルほどのシルバラード・トレイルに沿った非常に小さなエリアですが、カリフォルニアワインを代表するカベルネを産出しています!

 クロ・デュ・ヴァルの拠点は1972年に取得したヒロンデール・ヴィンヤード
 サンパブロ湾から涼しい風が吹き込む理想的な気候下で、上質なぶどうを生産


     歴代のワインメーカー
     1972年~2006年まではBernard Portet ベルナール・ポーテ氏
      2015年の収穫直前でワインメーカーが退職したので、2015年ヴィンテージはポーテ氏が関与
     2007年~ 2013年は John Clews ジョン・クルーズ氏
     2013年~ 2015年はKristy Melton クリスティ・メルトン氏
     2016年からは現職のTed Henry テッド・ヘンリー氏


       口開けのヴィンテージは2000年
       ブレンド:CS87%、CF7%、ME6% 発酵期間:ステンレスタンクで6~8日
       熟成:フレンチオークの小樽で17ヶ月、新樽比率25%


  第1フライトは2000、2001、2002、2003、2004右から左の順
 2001年はブレンド:CS94%、CF5%、ME1% 発酵:ステンレスタンクで8日
  熟成:フレンチオークの小樽で18ヶ月、新樽比率25%
 ✥2002年はブレンド:CS93%、CF7% 発酵:オープントップのタンクでスキンコンタクト32日
 熟成:フレンチオークの小樽で17ヶ月、新樽比率25%
 2003年はブレンド:CS92%、CF7%、ME1% 発酵:オープントップのタンクでスキンコンタクト32日
 熟成:フレンチオークの小樽で17ヶ月、新樽比率25%
 2004年はブレンド:CS82%、CF8%、ME8%、PV2% 発酵:オープントップのタンクでスキンコンタクト30日
 熟成:フレンチオークの小樽で17ヶ月、新樽比率25%


    
  第2フライトは2005年から右から左の順
 2005年はブレンド:CS85%、CF10%、ME3%、PV2% 発酵:ポンプオーバー、スキンコンタクト25日
 熟成:フレンチオークの小樽で17ヶ月、新樽比率25%
 2006年はブレンド:CS85%、CF6%、ME5%、PV4% 発酵:ポンプオーバー、スキンコンタクト30日
 熟成:フレンチオークの小樽で17ヶ月、新樽比率25%
 2007年はブレンド:CS86%、CF9%、ME3%、PV2% 1日2回ポンプオーバーしながら発酵
 熟成:フレンチオークの小樽で18ヶ月、新樽比率25%
 2008年はブレンド:CS84%、ME7%、CF6%、PV3% 1日2回ポンプオーバーしながら発酵
 熟成:フレンチオークの小樽で18ヶ月、新樽比率25%
 ✥♢20015年はブレンド:CS80%、ME12%、CF8% ステンレスの樽で1日3回ポンプオーバーしながら発酵
 熟成:フレンチオークの小樽で18ヶ月、新樽比率66%


 マイべスト3は2002年、2005年、2015年右から左の順
 
2002年:ヘンリー氏は「素晴らしいヴィンテージ」とコメント。夏は理想的な気候で、暑すぎることもなく、安定した気候は9月まで続いたとのこと。ワイン造りに関して、2000年から2004年まではほとんど同じなので、違いはヴィンテージ。2002年は深みのあるガーネットで、ワインが注がれた瞬間から凝縮した果実香が漂い、口中でも果実味豊か。タンニンやAlcの存在感もあり、更なる熟成の変化に期待!

2005年:例年より早い芽吹きからスタートし、春は雨が多く涼しい気候。5月は数日高温になり、6月は気温が下がり、歴史的な雨量を観測。8月下旬は記録的な高温になり、9月に再度気温が下降。気候の変化に富んだ2005年ヴィンテージのワインをひとことで表現するなら“バランス”、色調は黒紫色、黒系果実や黒胡椒、木目細かなタンニン、グラス内の温度変化で様々な要素、長い余韻。

2015年:クロ・デュ・ヴァルの次なるステップを感じさせるヴィンテージ。自社畑100%/最上級のぶどうをセレクト(他のヴィンテージはスタッグス・リープ地区以外のぶどうも使用)、ラベルもチェンジ、ワイン醸造では新樽比率66%と従来(25%)と比べて大きく変化。小樽のみ使用。ヘンリー氏は「ストラクチュアのあるぶどうだったので、新樽の比率を上げた」とコメント。収穫が早く始まり、早く終わった温暖年のヴィンテージで、ワインはフレッシュ、快活でパワーがあり、樽由来のヴァニラやカカオ、ヨーグルト的要素を残した味わい。今後の熟成が楽しみ!


 10ヴィンテージのグラス勢ぞろい
 
樹齢は、2000年、2001年、2003年、2004年は10年、2005年は12年、2002年は3~20年、2006年は8~25年、2007年は9~26年、2008年は10~27年。
ナパでは、20世紀後半、フィロキセラ禍で、ぶどう樹の植え替えを行いました。クロ・デュ・ヴァルは1990年~2000年代初めにぶどう樹を再植樹しているので、使う区画によって樹齢が異なっています。



    最後にチャドウィックさんからのお言葉を添えて
    2016年9月撮影@ADV

スパリュア氏はチリ『エラスリス』のエデュアルド・チャドウィック当主と組んで、ベルリン・テイスティングを行い、世界の銘醸ワインに比肩するチリワインの実力を証明しました。2016年に来日した当事者おふたりは世紀のイベントについて語りました。その時の内容はブログにまとめてあります。ご笑覧いただけると嬉しいです。

今回、スパリュア氏の訃報を聞いてすぐに、チャドウィック当主にメールをしました。早々にお返事が届きました。

「本当に悲しいニュースです。スティーヴンはとても素晴らしい人であり、寛大で、活気があり、チリワインを宣伝するために一緒に世界を旅する素晴らしい時間を共有することができました。彼は多くのインスピレーションを与えてくれました。たくさんの貴重な時間をともに過ごす機会を与えてくれたことにとても感謝しています」

とのお言葉がしたためられていました。
コロナ渦中で動きもままならない状況なので、チャドウィック当主の心労が気になりますが、お力落としなさらないように願っています。

製品についてのお問い合わせ先 (株)JALUX / Tel 03-6367-8756

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