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豪州に注目 第1部はグロセット&SC、第2部はヴァス・フェリックスのエレガントなワイン [クロージャー]

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イギリスのワイン専門誌『Decanter』の最新11月号の巻頭特集はニュー・エレガント・オーストラリア。かつては「フルーツ爆弾」とか「樽香ガンガンのワイン」というイメージが強かったオーストラリアワインも、今では食事とのマリアージュを最重視し、15度近かったAlcや樽のニュアンスも控えめになり、エレガントなスタイルのワインに変身しています。デキャンター誌の表紙を飾っているのは、『ジャコンダ シラーズ』と『モリー・ドゥーカー ザ・ボクサー・シラーズ』ですが、この好対象な2本の組み合わせも今の豪州を素直に表現していて面白いです。

折りしも、南オーストラリアのクレアヴァレーのグロセットからオーナー兼ワイン醸造家でスクリュー・キャップ(SC)の先駆者として知られているジェフリー・グロセットさんと、輸入元ジェロボームさんの招聘で西オーストラリア・マーガレットリバーヴァス・フェリックス のチーフワインメーカーのヴァージニア・ウィルコックさんが来日していたこともあり、オーストラリアのワイン最前線&SCについて再考する機会を得ました。

第1部 スクリュー・キャップを正しく理解する
グロセットさんは24日(月)AM、日本に到着! 東京2日間、関西方面2日間、その後(28日)中国に出向くというハードなスケジュールのなか、輸入元ヴィレッジ・セラーズさんのお計らいで東京事務所(東銀座)で再会することができました。コーエン社長&中村専務に感謝です。ちょうど当日の午後使うワインのチェックをなさっているところにお邪魔したのですが、ここでSCの存在を大いに意識させられる事態が・・・コルク栓のワイン(PNリザーヴ96、ガイア97)の一部がブショネだったのです! 素晴らしいワインなのにコルク臭のせいで実力を発揮できないまま終わってしまうワインたち。ワイン醸造家&関係者には到底納得できない、許せないことです。96年、97年は特にブショネが多かったそうで、グロセットさんは当時心底悩まされていた由。そのことを図らずも知ることになった瞬間でした。
来日前にグロセットさんからいただいていたお返事です
>>>http://non-solo-vino.blog.so-net.ne.jp/2011-10-12

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試飲ワインをチェック中のジェフリー・グロセットさん@ヴィレッジセラーズ銀座事務所

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グロセットさんにとっては今は昔・・・のコルクたち、現在すべてのワイン栓はSCです

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キャップ内側のライナーについての解説
グロセットさんは白い面をSaran/銀色の面をTin(錫すず)と呼んでいました。

錫すずを使うことがポイント
長年SCの研究を重ねてきた豪州ですが、1975年~1982年の間に商業ベースでSCが出回っていた時のライナーはスポンジ/アルミニウムの素材だったそうです。2000年にグロセットさんをはじめとするクレアヴァレーの14生産者がSC(Stelvin)のワインを一斉にリリースした時は、現在使用されている a:スポンジ/錫の組み合わせで、これは2002年から国際規格になっています。グロセットさんは「我々は過去20年間の調査・研究データによって、目の前に正しい答えがあることがわかっていました」とコメントしていました。

ちなみにフランス・シャブリ地方のミシェル・ラロッシュやアルザス地方のポール・ブランクが2001年に使用していたSC(Stelvin)のライナーは、b:スポンジ/プラスチックで、aより気密性に欠けていました。「我々もフランスと同じメーカーでしたが、“錫すずの使用”を指定していました。初年度のフランスはSC情報が徹底していなかったこともあり、旧来のプラスチックが使われていたようです。後に、両社の2001年ヴィンテージのSCワインを入手して味見してみたのですが、やはり気密性に問題があり、コルクと余り変わらない状態でした」とグロセットさん。

覚書2004年にミッシェル・ラロッシュさんが来日した時、インタビューする機会がありました。日本初、SC仕様の2002年ヴィンテージをお食事にあわせていただく趣向でした。この時、ラロッシュさんは「2002年ヴィンテージからトップレンジのシャブリ・グラン・クリュ『レゼルブ・ドゥ・ロベディアンス』にSCを導入しました」とコメントなさっていましたが、グロセットさんのお話から推察すると、ラロッシュさんは2002年ヴィンテージの正式リリースの前にSCのトライアルをなさっていたわけで、その時に使っていたSCとレゼルブ・ドゥ・ロベディアンスに使ったSCは<プラスチックvs錫>で素材が違っていたことになります。

独自の研究データ
グロセットさんが見せてくださった2004年発表の実験データ
縦軸は実験の回数、横軸はpermeability透過率で、右に行くほど空気が通りやすいことを示しています

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一番左のグリーンがSC(錫使用)、SCの数値は内側が錫使用のカスクを利用して算出
中央(淡いオレンジ)と右端(黄色)は合成コルク
最下部の2本の横線がコルク(立てたボトル乾いた状態)

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コルク(寝かせたボトル湿らせた状態) 
立てておいた瓶より寝かせておいた瓶のほうが気密性はあるものの、コルクによってバラツキあり

プレミアムなコルクとSCは同じ働き
グロセットさんがインタビューの間、主張していたことは、「SCは気密性があるので空気を通さない」という理解のされ方に対する反論でした。「それは間違った解釈です。そうではなくて、SCで打栓したワインでもわずかな隙間を通して微量な酸素が入ってきています。その酸素の働きは、緻密な気孔を持つプレミアムな天然コルクと同じです。瓶のなかではゆっくりですが緩やかな熟成が行われているのです」と。

「ワインには酸素の影響を受けさせたくないので、できるだけ酸素が入らないように瓶詰していますが、それでも瓶詰後、すぐ抜栓して味見したワインと、数週間置いて味見したワインでは、味わいに変化が出ています。瓶内にあった酸素がワインに溶け込んでいる後者のほうが明らかに元気になっています。コルクは品質によって酸素量も違いますが、酸素がボトル内で循環しているわけで、これはSCでも同様です。熟成に関して新たな酸素は必要ないという答えは出ていますが、それでもワインの熟成段階で、“理想的な酸素量のスイート・スポット”があるのか、あるならそれはどこなのか、その点を考えなければなりません」

グロセットさんが自己資金で始めたオーストラリア・クロージャー・ファンド(ACF)には現在フランスと豪州のボトル会社がスポンサーになっており、審査はオーストラリアン・ワイン・プレスクラブの会長がサポートしています。もとよりACFを立ち上げた目的は、「瓶詰め後のワイン熟成における栓の役割」を研究・推進するためであり、ACFの今後の研究成果は世界中のワイン関係者が注視している事柄です。

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グロセットさん!
日本到着後のお疲れのところ、貴重な時間を本当にありがとうございました!
今後の成果を楽しみにしております。

へイツベリーの秀逸なワイン(SC)


続編です! ワイン・クロージャーについて グロセットさんからのお返事!! [クロージャー]

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ワイン栓、スクリュー・キャップの教育に今まで1500時間を費やしてしてきた
Jeffrey Grosset ジェフリー・グロセットさん
その時間の中には、『テイミング・ザ・スクリュー』の共同編者になった時間も含まれています。

9月20日にアップした栓の考察のスクリュー・キャップ(SC)編で、画期的な行動を起こしたグロセットさんについて触れました。長熟の赤ワインとスクリュー・キャップの関係についての考えを伺いたいという内容だったのですが、今月半ばに来日予定のグロセットさんから、とても丁寧なお返事をいただきました。これはお忙しいなか、輸入元ヴィレッジ・セラーズの中村芳子専務がご尽力してくださった結果です、ありがとうございました!!
ワインラバーの皆様には、グロセットさんの来日前にお返事をお読みいただき、スクリュー・キャップに対する新たな疑問・質問などございましたら、ご遠慮なく、おっしゃってください。

グロセットさんはワインの熟成における“栓の役割”について、「白・赤に関係なく、世界的に議論が混乱している」と前置きして、次のように答えています。
オーストラリア・クロージャー・ファンド(ACF)について
「瓶詰め後のワイン熟成における栓の役割」を研究・推進するために、2004年、オーストラリア・クロージャー・ファンド(以後ACF)を立ち上げました。私と数名の理解者が自己資金を出して費用をまかない運営している基金です。これが契機となり、「瓶詰め後のワインの熟成」に関する議論がさらに高まることを期待しました。

ACFは、「瓶詰めされたワインは熟成過程で酸素がどのような役割を果たすのか」、さらに明確に言えば、「瓶詰めされたワインの熟成に、酸素は必要か」という問いに対し、優秀な研究成果を出した個人または法人に合計6千豪ドルを授与するというものでした。審査は現在のオーストラリアン・ワイン・コミュニケーターズ、当時のオーストラリアン・ワイン・プレスクラブの会長と私が行いました。

最優秀賞を獲得した研究結果によると、「熟成に酸素の追加は必要ない」というものでした。
これについては来日時、もう少し詳しく伺いたいです(青木記)

間違った解釈!
最優秀賞の内容は、従来から受け入れられている間違った解釈に対峙するものです。「間違った解釈」とは、瓶詰め後の白ワインは熟成するのに酸素を必要としないか、または必要としてもごく少量ですが、「赤ワイン、特にボディが重い赤ワインは、瓶熟に酸素を必要とする」という意見です。今回受けた質問にも、そのような解釈が反映されています。

このような誤った解釈、一般的に蔓延している誤った解釈について、「なぜ、そうなのか」、その見解の裏づけとなるべき証拠は、私がACFで活動をしていた間には明らかにされませんでした。そのような見解の人達に、「なぜなのか」、「根拠を出して証明して欲しい」と言いましたが、マスター・オブ・ワイン(MW)の有資格者を含め、いまだそれに対する明確な回答は受けていません。また、ワインの熟成における酸素のメリットについても根拠はありませんでした。

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© 『テイミング・ザ・スクリュー』のプロフィール画像
 
スクリュー・キャップ導入
2000年に我々が導入を決めたスクリュー・キャップの気密性に話を繋いでいきます。スクリュー・キャップは空気のモレが非常に少ない栓で、その程度は、高品質コルクを使用したときとほぼ同等の高い気密性があります。ACFの発表以降、それに基づき、世界中で20冊以上の出版物が刊行されていますが、私の知る限り、酸素と熟成に関する新たな調査研究は発表されていません。

もし、酸素が不要であれば、我々が選んだ栓の構造、もっと厳密に言うと、アルミの蓋の下に使われている材料に起因して入ってくる少量の酸素は何かの役に立っているのか? さらには、少量の酸素が好ましいとされるのであれば、理想的な酸素量はワインのスタイルにより異なるのであろうか?
以上の疑問に対する研究は、残念ながら、私の知る限りにおいて全くなされていません。

グロセット・ガイアは長期間スクリュー・キャップを使用して瓶詰めされています。それ以外でもスクリュー・キャップで造られるトップレベルの高品質赤ワインの数は増えています。ガイアが最初にスクリュー・キャップになったのは2000年で、ステルヴァンを使用し、2002年に市場にリリースしました。

スクリュー・キャップのメリット
コルクからスクリュー・キャップに切り替えたことによるメリットは明白です。コルクのニオイがワインにつくことが排除され、熟成する以前に酸化してしまうことを防ぐことができます。また、コルクを使用したときにみられるボトル・ヴァリエーション、つまり瓶ごとのワイン差がなくなりました。

ワインは、コルク栓に比べ、多少速度は緩やかですが、一般的に良い状態で熟成が進んでいます。例外的に抜群の気密性を保つコルクもありますが、ほとんどのコルクがスクリュー・キャップより気密性が低く、コルクを使用したワインには酸化熟成、またはなんらかの変化が起こることは知られています。ただ、これは予測できることです。このような酸化によって引き起こされるワインの品質の変化が好ましいものであるかどうかは、そのワインにもよると思いますが、私の知る限り、どのようなスタイルのワインも、その酸化熟成が好ましいとする根拠はありません。

ワインの酸化と熟成に関して、私の知らない新しい研究が行なわれているのならば、是非、教えて頂きたいと思っています。今まで無償でおよそ1500時間を費やしてしてきましたが、そのなかには、他の生産者たちのお役に立てばとの思いから、『テイミング・ザ・スクリュー』の共同編者にもなった時間も含まれています。

スクリュー・キャップは実用面ではとても効率の良いものであり、欠点のある伝統(コルク)に取って代わっています。とは言え、スクリュー・キャップの究極の改良は、気密性に関する研究がより細部にわたり行なわれるべきであったと思いますし、これからも行なわれるべきであると思っています。特にワインのスタイルによって熟成の条件が異なるのであればなおさらです。現実の結果としては、11年以上にわたって白・赤80本ほどのワインにスクリュー・キャップを使用してきた経験から、現在、我々が使用しているスクリュー・キャップが完璧に近いものだと思っています。

ポイントのまとめ
■瓶詰め後のワインの熟成にさらなる酸素が追加されることは不要
■ワインのスタイルによって、熟成に必要な酸素量が異なるという考えは非科学的で根拠がない
■瓶内に存在する酸素がどのような役割を果たしているかについて科学的研究はなされていない
■研究成果によっては将来的に、スクリュー・キャップの気密性の程度を検討する必要もありえる
回答者:ジェフリー・グロセット

グロセットさんとは六本木の『小田島』で、ムッシュ小田島が作ってくださった和食とグロセットさんのワインとのマリアージュ体験で初めてお目にかかりました。今月2回目の対面が楽しみですが、「赤ワイン、特にボディが重い赤ワインは、瓶熟に酸素を必要とする」というのが、グロセットさんいわく「間違った解釈」とのこと。この部分をもう少し細かく探りたいです。

【ワインのこころ】ワイン・クロージャーについての考察 [クロージャー]

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代替栓のひとつ、ヴィノ・ロック(ガラス製のプラグ付き栓)

【ワインのこころ】EXの“栓”シリーズは多くの方にリンクいただきました、ありがとうございます!
今日は3連載に書き込めなかった補足分をまとめた「完結版」です。

クロージャーには天然コルク、テクニカルコルク(コルク素材をベースにして、その他の素材を一緒にして作ったもの)、合成コルク(主たる素材は樹脂で、コルク型に成形したもの。例として圧搾コルク、Twin top)、スクリュー・キャップ(SC)、ヴィノ・ロック、ゾーク(プラスティックのプラグ付き栓)などがあります。

冒頭のヴィノ・ロックはドイツのアルコア社(本社:アメリカ)が開発した栓で、2004年から製品化が可能になりました。現在、ドイツを始めとしてオーストリア、イタリア、フランス、スペイン、南アフリカ、アメリカ、オーストラリア、NZなどで使われています。日本では長野県の『小布施ワイナリー』が、2004年からコルクとヴィノ・ロックの2種類の栓を併用していましたが、現在は使用していないようです。

ヴィノ・ロック推進派の筆頭はソーヴィニヨン・ブランを得意にしている造り手オーストリアのテメントです。2年前の来日セミナー時、「長熟ワインにもヴィノ・ロックを使っています」と語っていたので、今回の記事のため、再度、輸入元のAWAに伺ってみました。テメントさんのヴィノ・ロックへの信頼は相当厚いようで、「単一畑の熟成ワインは2008ヴィンテージからすべてヴィノ・ロックにしています」とのお返事でした。

ゾークはあいにく手元にないのですが、初めて見たのは2006年の豪州訪問でした。開けやすいのが特徴です。私はゾークに樹脂のニオイを感じてしまうので、栓として果たしてどうなのか、個人的には疑問を感じています。

コルク編
第1回コルク
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オーストリアの名醸造所ニコライホーフは基本はもちろん天然コルクで、コルクのセレクトには万全の注意を払っています。一昨年、お訪ねした時、サース夫人から2001ヴァッハウ・ニコライホーフ・トロッケンベーレン・アウスレーゼ(TBA)をいただきました。このワインにはコルクとSCを併用しています。「同じ時期に瓶詰したワインなので2本を飲み比べてみて」とおっしゃっていたサース夫人。ニコライホーフのTBAは20年は熟成させることができる優れものだけに、ましてや“栓違いの熟成”状態を調べることができるので、飲むタイミングは十分熟考せねば!

「コルク派ですか? 代替栓派ですか?」と聞かれたら、私は「コルク派です」と答えます。同ヴィンテージのコルク仕様とSC仕様の利き比べを結構繰り返してきましたが、コルクで熟成させたワインのほうに微妙な違い(色調、香り、味わい)を感じるからです。全体にまろやかなのです。
ただ、白の若飲みワインはSCのほうが断然フレッシュで魅力的ですし、赤でもボージョレ・ヌーヴォーのコルクとSCを比べた場合には、SCのほうが色も若々しく、酸も新鮮で、ヌーヴォーらしいです。

そのコルク派の、ブショネ以外の最大の悩みは、コルクバリエーション!
同じワインを同じタイミングで開けた時に、コルクによって違いが出ることです。これはシャンパン編講座でも良く感じることで、抜栓した時のキノコ栓の形でも判別できます。シャンパンの場合は炭酸があるので極端な差は出ませんが、スティルワインの場合は、わかりやすいと思います。

コルクには下記のようなグレードがあります。
- Hand Select もしくは Flour
- Extra
- Super
- First
- Second
- Third
- Fourth
- Fifth
- Sixt

天然コルクに関して、ポルトガルのコルク原料サプライヤーのうち、『コルク生産者組合』に加盟しているところでは、2000年から、コルクの剥皮から天日干し、カッティング、湯洗浄、エージングまでの工程で、コルクにTCAを生成させないように、水分管理や、湯洗浄時にフィルターを取り付ける、木製パレットの使用禁止などの品質管理規定が設けられているそうで、規定開始から10年を経過した2010年頃から、ブショネのクレームは約10分の1に減少しているとのこと。(ソース:内山工業)

ブショネ編
第2回ブショネ
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フランス・アルザスのヒューゲルが採用している圧搾コルクDIAM(ディアム)

ブショネ対策のコルク洗浄は、EXにも書いた二酸化炭素で処理をするサヴァテ社のディアマン方式があります。これは高圧がかかるので天然コルクには使えません。二酸化炭素処理の他には水蒸気蒸留処理があります。その1つ、アモリム社のロゼ方式は天然コルクに適用できるそうですが、効果は十分でない由。もう1つ、栓シリーズに再三ご登場いただいている内山工業が1990年に特許を取得した内山方式の水蒸気蒸留処理があります。同社の澤主事解説によりますと、
■コルクの粒に水蒸気を通すことで、ブショネの原因であるTCA(トリクロロアニソール)と、その前駆体であるTCP(クロロフェノール類)の両方を除去する技術で、この処理をしたコルク粒で作った「圧搾コルク」栓は、ニオイ探知機のガスクロマトグラフィーで計測しても、ブショネは未検出
■これまで延べで約4億個の実績あり、いまのところブショネのクレームは出ていない

TCAだけでない点にも注目
コルク臭研究の大家パスカル・シャトネさんは、コルク臭はTCA汚染だけでなく、醸造所の環境汚染が原因になることも指摘しています。「TBP(トリブロモフェノール)、TBA(トリブロモアニソール)と呼ばれる臭素を含む分子が介在してワインを汚染していることが多い」と。例えば、木材を保護するための殺虫剤にTBPが入っている場合、その木材が醸造所で木製パレットとして使われていれば、これが汚染源となり、空気媒体で醸造所のワインをダメにする可能性があります。
シャトネさんは、「ある時、打栓する前のワインにコルク臭が見つかり、これを分析しても、TCAなどの汚染物質は見つからなかった。そこで、同種の臭いを出す分子の一覧表を作り、TBAを特定することに成功した」と語っています。(出典:WANDS)

ということは、「DIAMやSC、ヴィノ・ロックならブショネは100%ない!」と言い切るわけにもいかないことになりますので、「99.9%ブショネはない」という言い方が一番適切では

スクリュー・キャップ(SC)編
第3回スクリュー・キャップ
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世界で一番SCに精通しているタイソン・ステルザーさんと著書『Taming the SCREW』

2005年にタイソンさんが来日した時、オーストラリアワイン事務局の前日本代表ベンジャミン・ホルトさんの計らいで、インタヴューする機会を得ました。
当時、SCに関して、ワインボトルを保存する時に少しでもSCに傷がつくと、空気が入ったり、開けにくくなってしまうという問題が取り沙汰されていたので、この点について伺ってみました。
タイソンさんは「SCにはBVPとBVS(Bague Verre Stelvin)の2タイプがあります。BVSは横からのダメージに強く、上部からは50kgまでの重さに耐えられます。側面までシーリングしてあるので空気の隙間がほとんどなく、ショックに強くなっていますし、ガラスとキャップシールに密着度も高くなっています」と説明していました。現在のところ、SCに関して同様のトラブルは聞いていません。

EX に書いたフランスのラロッシュさんは、長熟タイプのワインにSCを使っています。長年続けてきた研究成果から、白ワインに関しては若飲み、長熟ともに代替栓で「問題ない、良い結果が出ている」とコメントしていますし、私も実際にテイスティングしてそのように感じています。

では、長期熟成の赤ワインではどうなのでしょうか?
豪州のクレア・ヴァレーで2000年ヴィンテージをSCにして栓に対する意識変革を起こしたリーダー格のジェフリー・グロセットさんはすべての白ワインにSCを使用していますし、赤ワインのピノ・ノワールやガイアにも導入しています。
SCに関するアンケートをグロセットさんにお願いした時、「SCにすることで、コルク汚染に悩まされることなく、ワインを楽しんでいただけることをお約束します。栓はただの栓であり、それ以上のものではありません。偉大なワインを飲む楽しみはそのワインの品質、多様性、場所に感謝することなのです」と答えていましたが、“熟成”についてはどうなのか、残念ながら、いまだに聞きそびれています。

[わーい(嬉しい顔)]追記:嬉しいリアクション! ヴィレッジ・セラーズさんの招聘で10月中旬に来日するグロセットさんにインタヴューできそうです。SCのこと、長熟赤ワインとSCとの関係等、伺いたいことをまとめて聞いてきます!

ブショネ問題がキッカケで、独自に代替栓による調査研究を続けている生産者は多いので、長熟の赤ワインとSCの関係に関して、さらに明確な結果も出てくるはずです。特に豪州は赤ワインのSC導入率が最も多く、AWRI(オーストラリアワイン研究所)も熱心なので、その報告は楽しみです。


ニコライホフもスクリューキャップ導入へ [クロージャー]

最近、ワイン業界ではびっくり事項が多いのですが、本日のサプライズは、オーストリーの名門 『ニコライホフ』がスキリューキャップを導入したニュースです!
画像のワインは375mlのハーフサイズ、『St.Katharina Auslese Chardonnay1999』


甘口タイプのワインですが、昨年からスクリュー・キャップになっているそうで、オーストリー人の95%はスクリューキャップに好意的とのこと。ただ、残り5%の人たちは断然「コルク派」みたいです。
http://blog.so-net.ne.jp/non-solo-vino/2006-06-10


ラロッシュさんの新たなる挑戦 [クロージャー]

キャップの開け方を熱心に説明     コルク栓(左)とスクリューキャップのボトル

フランス・シャブリの生産者として著名なミッシェル・ラロッシュさんは超多忙な生活を送っています。
昨日日本に到着後、プレスを対象にしたコルクvsスクリューキャップ比較セミナーの講師を勤め、明けて本日。ランチを挟んだ対談の後、次の目的地バンコクに向けて出発・・・。一体、何時間の滞在だったのでしょうか、凄すぎます!

そんなラロッシュさんは代替栓スクリューキャップ(SC)の大提唱者です。
2002年ヴィンテージからご自身がつくるトップクラスのシャブリ・グラン・クリュ『レゼルブ・ドゥ・ロベディアンス』にSCを導入、コルク栓との2タイプを生産していましたが、2004年ヴィンテージからコルクを廃止して、いよいよ、SC一本で行くことに決めたそうです。

本日、『レゼルブ・ドゥ・ロベディアンス2002』の栓違いを飲み比べてみましたが、色調にも味わいにも明確な違いが出ていました。SCは輝きがある若々しいイエロー、フレッシュで果実味もあり、生き生きした酸がとても印象的。口中で広がるミネラル感も心地よく、上品さがありました。コルクのほうはすでに熟成に入っていて、SCのタイプより黄色が強く、口中でまったりした味わいを感じました。今日のところはSCのほうが本領を発揮していたように思います。
ラロッシュさんは「SCに変えてからコルク臭によるクレームはゼロ」とおっしゃっていましたが、2002年から始まったクロージャーへの挑戦には大満足のご様子でした。

>>>関連記事はこちら


DIAM続編 製造プロセス [クロージャー]

ブショネ(コルク臭)対策として開発された新コルクDIAM。永柳工業(株)の丹羽社長からご丁寧な回答をいただきましたので、ご報告しておきます。

【DIAMプロセスについて】
一口でいうと「コルクを二酸化炭素で洗浄する」ということです。臭いを取るにはコルクの表面だけでなく、内部まで洗わなければなりませんが、二酸化炭素がコルクの内部まできれいにしてくれます。ただし、普通の二酸化炭素ではなく、液状の二酸化炭素です。液状の二酸化炭素は「浸透力」と「洗浄力」がともに強力です。
ドライアイスは二酸化炭素の固体ですが、ドライアイスは溶けて液体にならずに気体になってしまいます。普通の状態では液体の二酸化炭素は存在しないのですが、高い圧力をかけると液体の二酸化炭素が現れます。DIAMプロセスに使用される二酸化炭素は73気圧、31℃の液体二酸化炭素です。
二酸化炭素は無味無臭無害、液状二酸化炭素は食品や化粧品の香味成分を取り出すのに広く利用されています。コルクの洗浄に利用されるのはDIAMが初めてです。

ということだそうです。な~るほど、「二酸化炭素」が要なのですね。
通常、目に見える形では存在しない「液体の二酸化炭素」が、高い圧力をかけることで出現。DIAMプロセスに使われる訳ですね。


新しいコルク栓DIAM登場! [クロージャー]

いつも面白い話題を提供してくださるイチノセ・トレーディング(株)の一ノ瀬社長から、「3栓の比較テイスティング」のお誘いを受けました。
3栓とは・・・天然コルク、スクリューキャップ(SC)、それとTCA関連記事を99%除去したコルク栓DIAMで、同年同日に瓶詰して熟成させたワインのブラインドテイスティング会です。それらのワインはDIAMを輸入している永柳工業(株)さんが用意してくださいました。
場所は神楽坂のルバイヤート、山梨県にある丸藤葡萄酒工業の直営店です。

当日のワインは
白:Murray Darling Vermentino2004 (14months)
赤:Koonowla Cabernet 2002 (21months)
で、私のお隣では永柳工業(株)の丹羽社長も真剣に挑戦していらっしゃいました!

さて、私の3栓の見極めですが、白ワインは無事クリア! 赤ワインについては、天然コルクとDIAMを逆に判断してしまい、残念ながら100%正解にはなりませんでしたが、自分なりにSCとコルクで打栓したワインの違いが見えてきたように感じます。

天然コルクとDIAMですが・・・コルクからの酸素透過率に微妙な差があるので、それをヒントに判断するにしても、ブラインドで双方を明確に言い当てるには、まだまだ時間がかかりそうです。


天然コルクの魅力 [クロージャー]

ボルドー地方マルゴー(カントナック)地区にあるシャトー・パルメはシャトー・マルゴーと並び称され、マルゴー最高の評価を受けているシャトーです。ラベルは黒地に金。ワインの味わい同様、強く惹かれるものがあります。2000年ヴィンテージからはイミテーション除けにフロント・ラベルに<ホログラム>が施されています。



2年前、そのパルメの垂直(同一ワインでヴィンテージ違い)テイスティングに参加する機会があり、パルメの熟成に貢献していた「コルクたち」を記念にいただいて帰りました。
画像左奥から1966、1970、1981、1985、右奥から1990、1995、1996、1997、2000、2001のコルクが並んでいますが、年代を経た“コルクの変化”がおわかりいただけるのではないかと思います。


以前、コルク材を扱っている内山工業(株)の寺田部長に、“コルク”について伺ったことがあります。
コルクはブナ科の常緑樹コルク樫の樹皮からつくられ、ポルトガルやスペイン、イタリアなどの温暖な地中海沿岸地域に生育していますが、樹の径が80cmに達して初めて剥皮できるそうです。

これは「一番皮」と呼ばれます。ただ、凹凸が激しいのでコルクには使えず、デコレーション的な用途のみ。その9年後、剥皮できるのが「二番皮」、これもコルク以外の用途に使われるそうです。
そして・・・「一番皮」から18年を経て剥皮される「三番皮」。ここで初めて、一人前の「コルク栓」として扱われることになります。

現在、年間150億個以上のコルクが世界中のワインや酒類の栓として使われているそうですが、コルク栓完成までの長い道のりを考えると、良質な天然コルク不足もわかります。

さて、先述のシャトー・パルメですが、オフィシャル・サイトには日本語版もあり、とてもわかりやすくなっています。ヴィンテージ情報も1959年~2002年までが見事に網羅されており、驚きました!
今宵はパルメのコルク変化の画像を肴に、それぞれの年に思いをめぐらせてみてはいかがですか。


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コルクvsヴィノ・ロック [クロージャー]

1970年代から今世紀にかけて、ワイン界には大きな変化が現れています。そのひとつが「クロージャー(栓)」です。
ワインの栓として知られている「コルク」。この歴史は古く、古代ギリシャからローマに伝わり、ワイン商人たちがワインの貯蔵やワイン売買の道具にしていた “アンフォラ (取っ手のついた大きな素焼きの壷)” にも、使用されていたことがわかっています。
「コルク樫」の樹皮から生成されるコルクはワインにとって最適な栓であり、世界中のワイン生産者は当然のこととして使用してきました。またソムリエたちがコルクを抜栓するそのパフォーマンスに芸術的な素晴らしさを感じることも多々あります。

近年、“TCA(トリクロロアニソール)”を原因とする“コルク臭(コルクの臭いではなく、コルクに起因する臭気、異臭)”問題が起こり、原因究明のための研究が行われています。TCA汚染は空気媒体でも起こるため、「コルクだけにコルク臭が発生する」とは言えませんが、昨今、コルクに替わる様々な「栓」が登場してきました。

画像左はドイツの銘醸地ラインガウ地方にある「シュロス・フォルラーツ リースリング シュペートレーゼ トロッケン2003」のボトル2本。ぶどう品種はドイツを代表するリースリングです。このぶどうは繊細ゆえ、周囲の影響をとても受けやすいといえます。
2本のボトルのうち、左側はコルクで打栓したもの、右はヴィノ・ロック(ガラス製のプラグ付き栓)で打栓したもので、同時期に瓶詰されています。
ヴィノ・ロックはドイツのアルコア社(アメリカに本社あり)で開発され、2004年から製品化が可能になった一番新しいクロージャーです。
ドイツを始めとしてオーストリア、イタリア、フランス、スペイン、南アフリカ、アメリカ、オーストラリア、NZなどで採用され、このところ目に触れるようになってきています。




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