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注目のロゼに注目! [醸造家安蔵光弘さんへの質問箱]

4月のワインの歳時記はロゼをイメージカラーにして飛ばしましたが、
〆となる第4回は「気になる男たちが造るロゼ」について触れています。


(左)パトリック・レオンのロゼはセニエ法。ぶどう品種はメルロとカベルネ・フラン
果皮が黒く濃いので赤ワインに近いロゼ色、旨みもあります
(右)アラン・ブリュモンのロゼは(1)の製法で造るロゼ
果皮が黒いタナ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロの混醸なのでこちらも濃い!

今回、ロゼの製法については尊敬する安蔵ワインメーカーにいかにわかりやすく記述するかで、
丁寧なアドヴァイスを受けました。感謝!!いつも理系は良いなぁ、と思います。

ロゼをつくる方法は3つあり、
(1)黒ぶどうを発酵させて、ごく初期の色があまりつかないうちに圧搾する。
圧搾したもろみ液には、まだ糖分が残っているので、液体の状態で糖分がなくなる
まで発酵を継続 (半醸し法)

(2)黒ぶどうを破砕して、タンクに入れ、発酵させる前に果汁を引き抜き、薄いピンク
色の果汁を発酵させる(セニエ法)

(3)黒ぶどうを破砕して、すぐに圧搾し、果汁を発酵する(圧搾法)

で、酒質は(3)⇒(2)⇒(1)の順で色が濃くなるそうです。

(1)は少しタンニン分を含み若干赤ワインのニュアンス
(2)は淡いピンク色が付いていて中間のタイプ
(3)は淡いロゼ色で、白ワインに近いニュアンス
シャンパンのピノ・ノワールの圧搾は(3)のタイプですが、ローランン・ペリエのロゼは
(2)のセニエ法で造っています。

醸造の形態としては、
(1)は期間が短いこと以外は赤ワインの醸造法
(3)は黒ぶどうを使うこと以外は白ワインの醸造法
(2)は結果的にロゼワインが出来ますが、目的はロゼワインをつくることというよりは、
赤ワインを濃くするという目的で行われる方が一般的

ロゼ尽くしで通した4月のasahi.com、これでロゼのファローができたのでは。
安蔵ワインメーカー、ありがとうございました♪

ところで、南西地方にあるミッシェル・ゲラールの『レ・プレ・ドゥジェニー』は、
温泉療法を広めたナポレオン三世の皇后ユージェニーに由来する名前とか。
料理も最高、スパやホテルもあり、別天地のようなところみたいですね♪
トム・クルーズもブリュモンのところに寄った時は宿泊していたそうですが、
ここは絶対に行きたいかも(笑)
http://www.michelguerard.com/siteUK.htm


高級赤ワインに使われる“卵白” [醸造家安蔵光弘さんへの質問箱]

『オーパス・ワン』では、2003年ヴィンテージから“卵白”を使用しません。
唐突にこう言っても、Blogを読まれた方の中には「? ? ?」と感じる方も多いはず。
少し専門的になりますが、今日は“卵白”と“ワイン”の関係について探ってみます。
案内役は、尊敬する(株)メルシャン勝沼ワイナリーの安蔵ワインメーカーです。



青木:赤ワインを醸造する際、“卵白”を使うのは何故ですか?
安蔵:卵白などで赤ワインのオリ下げをすることをコラージュ(collage)と呼びます。coller=「(糊で)くっつける」、colle=「接着剤」の意味からもわかる通り、コラージュとは赤ワイン中に浮遊しているタンニン分などの濁り成分を、くっつけて沈殿させ、オリ引きすることにより取り除くことです。

安蔵:コラージュをするためには、タンパク質を含むものが必要です。卵白にはタンパク質がたくさん含まれていますので、タンニン分などと結合します。テイスティングの時にとても若い赤ワインを口に含み、流しに吐き出すと、唾液と若い赤ワインのタンニンが結合したものが見られるのと同じ原理です。もちろん事前に卵白でコラージュした赤ワインであれば、過剰なタンニン分が取り除かれているために、唾液とのこのような反応はほとんど起こりません。また、ボトルに詰めた後のオリの沈殿も少なくなります。

青木:コラージュをしないで瓶詰するとどうなりますか?
安蔵:その場合は、濁り成分などがワイン中に残りますので、ワイン自体の厚みは感じますが、同時に過剰なタンニン分のために渋みが残る可能性があります。また、瓶詰後に沈殿するオリの量は多くなります。 コラージュなしのワインも実際にあります。

青木:先日訪問したオーパスでは2003年ヴィンテージから卵白を使用しないと言っていました。
安蔵:私見ですが、オーパス・ワンの場合、「コラージュを他のものでやる」と言うことではなく、「コラージュそのものをやらない」という意味だと思います。その場合、
(1)瓶詰の前に何度も樽でオリ引きを行い、ワインを清澄化させているために、濁り成分が少なくなっている。
(2)将来ボトルで多めのオリが出ることを覚悟で、コラージュをやめて少しでもワインの旨みを残す。
(3)何度もオリ引きをして濁り成分を少なくし、少量のオリが出ることを覚悟で、コラージュをしない。
などの理由が考えられます。

青木:伺っていると、ますます凝縮感のあるワインになりそうですね。
安蔵:通常、卵白を使うのは一つの樽に2~5個くらいです。一級シャトーなどでは5個くらい入れるという話を聞きますが、ボディのないワインに5個も入れると酒質が軽くなってしまいます。卵白を入れることはマイナスではなく、醸造家が0個(入れない)で良いと思えばそれで良いでしょうし、3個、5個など、酒質によってバリエーションがあり得ます。ちなみに、卵白以外のオリ下げ剤にはベントナイト、アルブミン(卵白からタンパク成分を取り出したもの)などがあります。

青木:『醸造家安蔵光弘さんへ質問箱』も4回になりました。コーナー自体の閲覧数も多いので、ワイン醸造に関心のある人が多いことがわかります。15日から『きいろ香』の仕込みも始まった由、お忙しい中、本当にありがとうございました!!


セニエって何 [醸造家安蔵光弘さんへの質問箱]

シャンパンの3品種のひとつ、白ぶどうの“シャルドネ”

前回のBlogの続きで、“セニエ”について触れておきます。インタビュー形式で書いてみます。
安蔵:赤ワインを発酵させる時に、果皮の割合を多くして、濃いワインをつくるために、セニエ法で果汁を抜くという醸造法をとる場合があります。赤ワインを造るシャトーでは、この果汁を発酵させてロゼワインをつくります。メドックのシャトーで、ロゼのワインを出しているところがあるのは、このような理由によります。

青木:たとえばどこのシャトーですか?

安蔵:サンテミリオンにあるモンブスケでは「ロゼ・ド・モンブスケ」という名のロゼを出していますし、サンテステフのシャトー・カロン・セギュールでもロゼを造っていますよ。

安蔵: ロゼをつくる方法としては、(1)黒ブドウを発酵させて、ごく初期の色があまりつかないうちに引き抜く(半醸し法)。 (2)黒ブドウを破砕して、発酵させる前に果汁を引き抜き、薄いピンク色の果汁を発酵させる(セニエ法)があります。 酒質は(1)は少しタンニン分を含み若干赤ワインのニュアンスがあ り、(2)は淡いピンク色が付いていますが、白ワインに近いニュアンスです。

青木:セニエはフリーランジュース(一番搾り)のような感じですか?

安蔵:そうです。フランス語でフリーラン・ジュースは、“ジュ・ド・グット”と言います。ブルゴ-ニュのグット・ドール(黄金の雫) のグットと同じです。グットは“雫”という意味で、セニエのことをエグタージュ(「雫を取り除く」の意)とも呼びます。ブドウを潰したあと、破砕機やタンクに入れておくと、下から雫のように果汁が垂れてきます。清酒のしぼり方の「雫取り」と同じような感じです。醸しをしていないため(発酵前の果汁)、色はほんの少ししかついていません。前回のBlogにある“瀉血(しゃけつ)”で、血がぽたぽた垂れてくるイメージと、「ピンクの色合い」のイメージから、セニエという名前になったものです。

青木:なるほど。ローラン・ペリエのロゼ・シャンパンは雫のように垂れてくるジュースを発酵させて造るということですね。理解できました。ありがとうございました!


大きいボトルでの熟成のメリット [醸造家安蔵光弘さんへの質問箱]

Chラトゥールの1985(6L)、1970(5L)、1990(3L)ボトル

エノテカさん主催のワインセミナーがありました。講師はシャトー・ラトゥールのフレデリック・アンジェラ社長。当日はポイヤック・ド・シャトー・ラトゥール2003からスタートして、レ・フォール・ド・ラトゥール2003、2000、1996とシャトー・ラトゥール2002、2001、1999、1995の8アイテムを試飲しました。グラン・ヴァンに使われる「ランクロ=ラトゥールの中核となる畑」の特質等についての詳細な説明もあり、非常に興味深い内容でした。

さらに・・・会場でひときわ目を引いていたのがボルドー地方の3Lのドゥブル・マグマム、5Lのジェロボアム、6Lのアンペリアルのボトルたち!!
レギュラーサイズは750mlなので、容量の多さがおわかりになると思います。

そこで今回、「大きいボトルでの熟成のメリット」について、尊敬するメルシャン勝沼ワイナリーの安蔵光弘ワインメーカーに伺ってみることにしました。

安蔵さんは次のような回答をくださいました。
ワインの熟成に絡むファクターは、
1.熟成はワインの成分と酸素の反応の結果。
2.温度が高ければ早く熟成し、低ければゆっくりと熟成する。
3.保管場所は適度な湿度があり、温度変化が少ない場所が最適。

「大きなボトルで熟成すると、どういう違うがあるのか?」に関しては、①、②のように言われているようです。
①小さいボトルに比べて、大きなボトルの方が、相対的にボトルネックのところの空気が少ない
(750mlのボトルでも3Lでも空寸はほとんど同じ)。そのため、ゆっくり熟成する。
では大きいボトルほど良いかというと、
②重量的に扱いにくい点もあり、大きな容量と言う意味ではマグナムサイズ(1.5L)の大きさのバランスが好ましい。

安蔵ワインメーカーの私見として、
③容量が大きいボトルほど、温度の変化が少ない(液量が多いため)。
例)3Lのボトルは375mlと比べて約10倍の容量があるため、セラーの温度変化をゆっくりと吸収する。⇒液量が多いほど温まる(or冷める)のに時間がかかる。

「実際、ワインを造っていて、ハーフボトルに詰めたものは、同じワインのフルボトルのものに比べて、熟成が早いように感じます」とのメッセージをくださいましたが、なるほど!
同じワインでも、保管場所に余裕があるなら、大きいボトルでストックするほうが良い訳ですね。
今回も勉強になりました、ありがとうございました♪


気泡とタンニンの関係は [醸造家安蔵光弘さんへの質問箱]

オーストラリアのドメーヌ・シャンドン(グリーン・ポイント)がつくる赤のスパークリングワイン
品種はピノ・ノワール&シラーです

イタリアのランブルスコは赤ワインでも泡があります。でも・・・甘口。
ドライなタイプの赤ワインで泡物というのはなかなかありません。
このスパークリングにも若干糖分はありますが、タイプとしては辛口です。赤ワインと泡立ちは反比例すると聞いていたので、この謎を解明しようと、尊敬するメルシャン 勝沼ワイナリーのワインメーカー安蔵光弘氏に伺ってみました。

安蔵ワインメーカーの解説によりますと、
「スパークリングワインは炭酸ガスの泡を持ちますが、瓶内2次発酵をしたものは泡の持ちが良いと言われています。シャンパーニュのように瓶内2次発酵を行うものは、酵母の澱と長期間接触しているため、たんぱく質がワインに豊富に溶け出します。たんぱく質は界面活性作用(石鹸はこの作用を持つため、泡立ちます)を持つため、泡のもちが良くなるのです。

これに対して、赤ワインはタンニンなどのポリフェノールを多く含むため、ワイン中のたんぱく質はタンニン分に結合します。そのため、赤ワインの場合は、ワイン中に界面活性作用を持つたんぱく質が少なくなるので、泡もちは白ワインほどではないと考えられます」と教えてくださいました。

な~るほど、これで謎が解けました!
安蔵ワインメーカー、ありがとうございました♪


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