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高級赤ワインに使われる“卵白” [醸造家安蔵光弘さんへの質問箱]

『オーパス・ワン』では、2003年ヴィンテージから“卵白”を使用しません。
唐突にこう言っても、Blogを読まれた方の中には「? ? ?」と感じる方も多いはず。
少し専門的になりますが、今日は“卵白”と“ワイン”の関係について探ってみます。
案内役は、尊敬する(株)メルシャン勝沼ワイナリーの安蔵ワインメーカーです。



青木:赤ワインを醸造する際、“卵白”を使うのは何故ですか?
安蔵:卵白などで赤ワインのオリ下げをすることをコラージュ(collage)と呼びます。coller=「(糊で)くっつける」、colle=「接着剤」の意味からもわかる通り、コラージュとは赤ワイン中に浮遊しているタンニン分などの濁り成分を、くっつけて沈殿させ、オリ引きすることにより取り除くことです。

安蔵:コラージュをするためには、タンパク質を含むものが必要です。卵白にはタンパク質がたくさん含まれていますので、タンニン分などと結合します。テイスティングの時にとても若い赤ワインを口に含み、流しに吐き出すと、唾液と若い赤ワインのタンニンが結合したものが見られるのと同じ原理です。もちろん事前に卵白でコラージュした赤ワインであれば、過剰なタンニン分が取り除かれているために、唾液とのこのような反応はほとんど起こりません。また、ボトルに詰めた後のオリの沈殿も少なくなります。

青木:コラージュをしないで瓶詰するとどうなりますか?
安蔵:その場合は、濁り成分などがワイン中に残りますので、ワイン自体の厚みは感じますが、同時に過剰なタンニン分のために渋みが残る可能性があります。また、瓶詰後に沈殿するオリの量は多くなります。 コラージュなしのワインも実際にあります。

青木:先日訪問したオーパスでは2003年ヴィンテージから卵白を使用しないと言っていました。
安蔵:私見ですが、オーパス・ワンの場合、「コラージュを他のものでやる」と言うことではなく、「コラージュそのものをやらない」という意味だと思います。その場合、
(1)瓶詰の前に何度も樽でオリ引きを行い、ワインを清澄化させているために、濁り成分が少なくなっている。
(2)将来ボトルで多めのオリが出ることを覚悟で、コラージュをやめて少しでもワインの旨みを残す。
(3)何度もオリ引きをして濁り成分を少なくし、少量のオリが出ることを覚悟で、コラージュをしない。
などの理由が考えられます。

青木:伺っていると、ますます凝縮感のあるワインになりそうですね。
安蔵:通常、卵白を使うのは一つの樽に2~5個くらいです。一級シャトーなどでは5個くらい入れるという話を聞きますが、ボディのないワインに5個も入れると酒質が軽くなってしまいます。卵白を入れることはマイナスではなく、醸造家が0個(入れない)で良いと思えばそれで良いでしょうし、3個、5個など、酒質によってバリエーションがあり得ます。ちなみに、卵白以外のオリ下げ剤にはベントナイト、アルブミン(卵白からタンパク成分を取り出したもの)などがあります。

青木:『醸造家安蔵光弘さんへ質問箱』も4回になりました。コーナー自体の閲覧数も多いので、ワイン醸造に関心のある人が多いことがわかります。15日から『きいろ香』の仕込みも始まった由、お忙しい中、本当にありがとうございました!!


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コメント 5

uge

興味深いトピックをありがとうございました。「卵白で清澄」と書いてあってもあまり意味を理解していなかったのですが、個数が酒質に影響を与えるとは考えてもみませんでした。
個人的にはある程度オリを取り除いたワインがすきですね。レストランに持ち込むことができるし、最後の一滴まで飲むことが出来ます(笑)。
by uge (2006-09-17 18:41) 

fumiko

ugeさん、卵白の個数に興味を抱いてくださり、ありがとうございます。
「一方通行の学習」より、疑問を解決し、理解することで記憶の仕方も違ってくると思うので、今後も、知恵袋“安蔵ワインメーカー”に敬意を評しつつ、引き続き、“なぜ”を発信していきたいです。
ワインは知らないで飲むより、知って飲むほうが印象深いので・・・。
by fumiko (2006-09-19 08:26) 

YUTAKA

勉強になります。ありがとうございます。
自然派に多いのですが、無濾過、無清澄によって旨みを増したワインが増えてきていますね。そのためには、収穫の際の選果が重要で、できるだけ不純物を取り除き、清潔に醸造する必要があると聞いたことがあります。
先日の講座では、オーパス・ワンでは、除梗やさらに周りの果肉の除去に非常にこだわりがあると習いましたが、これもそう考えると納得が行きます。純度の高いジュースだけを使っているからこそできるということなのですね。
あと、澱引き(スティラージュ)を何回やっているのかは、安蔵さんのおっしゃる通り、醸造家の考え方次第なんだなと理解しました。
ワインも、どんどん変わっていくんですね。ありがとうございました。
by YUTAKA (2006-09-20 13:12) 

hako

コラージュって切り貼りだと思ってましたが、そんな意味だったのですね。
誰が最初に始めたのか、なかなか面白い方法です。渋みは有った方が
無いより味わいが寂しくない気がします。
by hako (2006-10-30 02:19) 

fumiko

ワイン醸造の世界も色々面白いです。ワインの旨みを大事にするためには極力自然のままが良いのですが、保存状態や輸送の段階でトラブルも出やすい、という問題もあります。
hakoさんはカベルネがお好きみたいですね。カベルネの場合、やっぱりタンニン(渋味)の存在、大事ですよね。
by fumiko (2006-10-30 20:13) 

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