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続編です! ワイン・クロージャーについて グロセットさんからのお返事!! [クロージャー]

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ワイン栓、スクリュー・キャップの教育に今まで1500時間を費やしてしてきた
Jeffrey Grosset ジェフリー・グロセットさん
その時間の中には、『テイミング・ザ・スクリュー』の共同編者になった時間も含まれています。

9月20日にアップした栓の考察のスクリュー・キャップ(SC)編で、画期的な行動を起こしたグロセットさんについて触れました。長熟の赤ワインとスクリュー・キャップの関係についての考えを伺いたいという内容だったのですが、今月半ばに来日予定のグロセットさんから、とても丁寧なお返事をいただきました。これはお忙しいなか、輸入元ヴィレッジ・セラーズの中村芳子専務がご尽力してくださった結果です、ありがとうございました!!
ワインラバーの皆様には、グロセットさんの来日前にお返事をお読みいただき、スクリュー・キャップに対する新たな疑問・質問などございましたら、ご遠慮なく、おっしゃってください。

グロセットさんはワインの熟成における“栓の役割”について、「白・赤に関係なく、世界的に議論が混乱している」と前置きして、次のように答えています。
オーストラリア・クロージャー・ファンド(ACF)について
「瓶詰め後のワイン熟成における栓の役割」を研究・推進するために、2004年、オーストラリア・クロージャー・ファンド(以後ACF)を立ち上げました。私と数名の理解者が自己資金を出して費用をまかない運営している基金です。これが契機となり、「瓶詰め後のワインの熟成」に関する議論がさらに高まることを期待しました。

ACFは、「瓶詰めされたワインは熟成過程で酸素がどのような役割を果たすのか」、さらに明確に言えば、「瓶詰めされたワインの熟成に、酸素は必要か」という問いに対し、優秀な研究成果を出した個人または法人に合計6千豪ドルを授与するというものでした。審査は現在のオーストラリアン・ワイン・コミュニケーターズ、当時のオーストラリアン・ワイン・プレスクラブの会長と私が行いました。

最優秀賞を獲得した研究結果によると、「熟成に酸素の追加は必要ない」というものでした。
これについては来日時、もう少し詳しく伺いたいです(青木記)

間違った解釈!
最優秀賞の内容は、従来から受け入れられている間違った解釈に対峙するものです。「間違った解釈」とは、瓶詰め後の白ワインは熟成するのに酸素を必要としないか、または必要としてもごく少量ですが、「赤ワイン、特にボディが重い赤ワインは、瓶熟に酸素を必要とする」という意見です。今回受けた質問にも、そのような解釈が反映されています。

このような誤った解釈、一般的に蔓延している誤った解釈について、「なぜ、そうなのか」、その見解の裏づけとなるべき証拠は、私がACFで活動をしていた間には明らかにされませんでした。そのような見解の人達に、「なぜなのか」、「根拠を出して証明して欲しい」と言いましたが、マスター・オブ・ワイン(MW)の有資格者を含め、いまだそれに対する明確な回答は受けていません。また、ワインの熟成における酸素のメリットについても根拠はありませんでした。

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© 『テイミング・ザ・スクリュー』のプロフィール画像
 
スクリュー・キャップ導入
2000年に我々が導入を決めたスクリュー・キャップの気密性に話を繋いでいきます。スクリュー・キャップは空気のモレが非常に少ない栓で、その程度は、高品質コルクを使用したときとほぼ同等の高い気密性があります。ACFの発表以降、それに基づき、世界中で20冊以上の出版物が刊行されていますが、私の知る限り、酸素と熟成に関する新たな調査研究は発表されていません。

もし、酸素が不要であれば、我々が選んだ栓の構造、もっと厳密に言うと、アルミの蓋の下に使われている材料に起因して入ってくる少量の酸素は何かの役に立っているのか? さらには、少量の酸素が好ましいとされるのであれば、理想的な酸素量はワインのスタイルにより異なるのであろうか?
以上の疑問に対する研究は、残念ながら、私の知る限りにおいて全くなされていません。

グロセット・ガイアは長期間スクリュー・キャップを使用して瓶詰めされています。それ以外でもスクリュー・キャップで造られるトップレベルの高品質赤ワインの数は増えています。ガイアが最初にスクリュー・キャップになったのは2000年で、ステルヴァンを使用し、2002年に市場にリリースしました。

スクリュー・キャップのメリット
コルクからスクリュー・キャップに切り替えたことによるメリットは明白です。コルクのニオイがワインにつくことが排除され、熟成する以前に酸化してしまうことを防ぐことができます。また、コルクを使用したときにみられるボトル・ヴァリエーション、つまり瓶ごとのワイン差がなくなりました。

ワインは、コルク栓に比べ、多少速度は緩やかですが、一般的に良い状態で熟成が進んでいます。例外的に抜群の気密性を保つコルクもありますが、ほとんどのコルクがスクリュー・キャップより気密性が低く、コルクを使用したワインには酸化熟成、またはなんらかの変化が起こることは知られています。ただ、これは予測できることです。このような酸化によって引き起こされるワインの品質の変化が好ましいものであるかどうかは、そのワインにもよると思いますが、私の知る限り、どのようなスタイルのワインも、その酸化熟成が好ましいとする根拠はありません。

ワインの酸化と熟成に関して、私の知らない新しい研究が行なわれているのならば、是非、教えて頂きたいと思っています。今まで無償でおよそ1500時間を費やしてしてきましたが、そのなかには、他の生産者たちのお役に立てばとの思いから、『テイミング・ザ・スクリュー』の共同編者にもなった時間も含まれています。

スクリュー・キャップは実用面ではとても効率の良いものであり、欠点のある伝統(コルク)に取って代わっています。とは言え、スクリュー・キャップの究極の改良は、気密性に関する研究がより細部にわたり行なわれるべきであったと思いますし、これからも行なわれるべきであると思っています。特にワインのスタイルによって熟成の条件が異なるのであればなおさらです。現実の結果としては、11年以上にわたって白・赤80本ほどのワインにスクリュー・キャップを使用してきた経験から、現在、我々が使用しているスクリュー・キャップが完璧に近いものだと思っています。

ポイントのまとめ
■瓶詰め後のワインの熟成にさらなる酸素が追加されることは不要
■ワインのスタイルによって、熟成に必要な酸素量が異なるという考えは非科学的で根拠がない
■瓶内に存在する酸素がどのような役割を果たしているかについて科学的研究はなされていない
■研究成果によっては将来的に、スクリュー・キャップの気密性の程度を検討する必要もありえる
回答者:ジェフリー・グロセット

グロセットさんとは六本木の『小田島』で、ムッシュ小田島が作ってくださった和食とグロセットさんのワインとのマリアージュ体験で初めてお目にかかりました。今月2回目の対面が楽しみですが、「赤ワイン、特にボディが重い赤ワインは、瓶熟に酸素を必要とする」というのが、グロセットさんいわく「間違った解釈」とのこと。この部分をもう少し細かく探りたいです。
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コメント 3

fumiko

vientre-dolorさん、チェック、ありがとうございます!

nikiさん、チェック、ありがとうございました!

xml_xslさん、nice、thanks!!

ChinchikoPapaさん、チェック、ありがとうございます!

今造ROWINGTEAMさん、nice、ありがとうございます♪
by fumiko (2011-10-12 20:40) 

tsworking

常識非常識も研究が進むにつれて変わる物ですね。
新しい知見が美味しいワインをより楽しむ情報になります様に。

飲めないけど、お料理に使いたい場面が増えています。

by tsworking (2011-10-12 22:13) 

hako

熟成というのも、いろんな条件が有って難しいものなのですね。

by hako (2011-10-17 06:59) 

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