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【ワインのこころ】ワイン・クロージャーについての考察 [クロージャー]

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代替栓のひとつ、ヴィノ・ロック(ガラス製のプラグ付き栓)

【ワインのこころ】EXの“栓”シリーズは多くの方にリンクいただきました、ありがとうございます!
今日は3連載に書き込めなかった補足分をまとめた「完結版」です。

クロージャーには天然コルク、テクニカルコルク(コルク素材をベースにして、その他の素材を一緒にして作ったもの)、合成コルク(主たる素材は樹脂で、コルク型に成形したもの。例として圧搾コルク、Twin top)、スクリュー・キャップ(SC)、ヴィノ・ロック、ゾーク(プラスティックのプラグ付き栓)などがあります。

冒頭のヴィノ・ロックはドイツのアルコア社(本社:アメリカ)が開発した栓で、2004年から製品化が可能になりました。現在、ドイツを始めとしてオーストリア、イタリア、フランス、スペイン、南アフリカ、アメリカ、オーストラリア、NZなどで使われています。日本では長野県の『小布施ワイナリー』が、2004年からコルクとヴィノ・ロックの2種類の栓を併用していましたが、現在は使用していないようです。

ヴィノ・ロック推進派の筆頭はソーヴィニヨン・ブランを得意にしている造り手オーストリアのテメントです。2年前の来日セミナー時、「長熟ワインにもヴィノ・ロックを使っています」と語っていたので、今回の記事のため、再度、輸入元のAWAに伺ってみました。テメントさんのヴィノ・ロックへの信頼は相当厚いようで、「単一畑の熟成ワインは2008ヴィンテージからすべてヴィノ・ロックにしています」とのお返事でした。

ゾークはあいにく手元にないのですが、初めて見たのは2006年の豪州訪問でした。開けやすいのが特徴です。私はゾークに樹脂のニオイを感じてしまうので、栓として果たしてどうなのか、個人的には疑問を感じています。

コルク編
第1回コルク
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オーストリアの名醸造所ニコライホーフは基本はもちろん天然コルクで、コルクのセレクトには万全の注意を払っています。一昨年、お訪ねした時、サース夫人から2001ヴァッハウ・ニコライホーフ・トロッケンベーレン・アウスレーゼ(TBA)をいただきました。このワインにはコルクとSCを併用しています。「同じ時期に瓶詰したワインなので2本を飲み比べてみて」とおっしゃっていたサース夫人。ニコライホーフのTBAは20年は熟成させることができる優れものだけに、ましてや“栓違いの熟成”状態を調べることができるので、飲むタイミングは十分熟考せねば!

「コルク派ですか? 代替栓派ですか?」と聞かれたら、私は「コルク派です」と答えます。同ヴィンテージのコルク仕様とSC仕様の利き比べを結構繰り返してきましたが、コルクで熟成させたワインのほうに微妙な違い(色調、香り、味わい)を感じるからです。全体にまろやかなのです。
ただ、白の若飲みワインはSCのほうが断然フレッシュで魅力的ですし、赤でもボージョレ・ヌーヴォーのコルクとSCを比べた場合には、SCのほうが色も若々しく、酸も新鮮で、ヌーヴォーらしいです。

そのコルク派の、ブショネ以外の最大の悩みは、コルクバリエーション!
同じワインを同じタイミングで開けた時に、コルクによって違いが出ることです。これはシャンパン編講座でも良く感じることで、抜栓した時のキノコ栓の形でも判別できます。シャンパンの場合は炭酸があるので極端な差は出ませんが、スティルワインの場合は、わかりやすいと思います。

コルクには下記のようなグレードがあります。
- Hand Select もしくは Flour
- Extra
- Super
- First
- Second
- Third
- Fourth
- Fifth
- Sixt

天然コルクに関して、ポルトガルのコルク原料サプライヤーのうち、『コルク生産者組合』に加盟しているところでは、2000年から、コルクの剥皮から天日干し、カッティング、湯洗浄、エージングまでの工程で、コルクにTCAを生成させないように、水分管理や、湯洗浄時にフィルターを取り付ける、木製パレットの使用禁止などの品質管理規定が設けられているそうで、規定開始から10年を経過した2010年頃から、ブショネのクレームは約10分の1に減少しているとのこと。(ソース:内山工業)

ブショネ編
第2回ブショネ
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フランス・アルザスのヒューゲルが採用している圧搾コルクDIAM(ディアム)

ブショネ対策のコルク洗浄は、EXにも書いた二酸化炭素で処理をするサヴァテ社のディアマン方式があります。これは高圧がかかるので天然コルクには使えません。二酸化炭素処理の他には水蒸気蒸留処理があります。その1つ、アモリム社のロゼ方式は天然コルクに適用できるそうですが、効果は十分でない由。もう1つ、栓シリーズに再三ご登場いただいている内山工業が1990年に特許を取得した内山方式の水蒸気蒸留処理があります。同社の澤主事解説によりますと、
■コルクの粒に水蒸気を通すことで、ブショネの原因であるTCA(トリクロロアニソール)と、その前駆体であるTCP(クロロフェノール類)の両方を除去する技術で、この処理をしたコルク粒で作った「圧搾コルク」栓は、ニオイ探知機のガスクロマトグラフィーで計測しても、ブショネは未検出
■これまで延べで約4億個の実績あり、いまのところブショネのクレームは出ていない

TCAだけでない点にも注目
コルク臭研究の大家パスカル・シャトネさんは、コルク臭はTCA汚染だけでなく、醸造所の環境汚染が原因になることも指摘しています。「TBP(トリブロモフェノール)、TBA(トリブロモアニソール)と呼ばれる臭素を含む分子が介在してワインを汚染していることが多い」と。例えば、木材を保護するための殺虫剤にTBPが入っている場合、その木材が醸造所で木製パレットとして使われていれば、これが汚染源となり、空気媒体で醸造所のワインをダメにする可能性があります。
シャトネさんは、「ある時、打栓する前のワインにコルク臭が見つかり、これを分析しても、TCAなどの汚染物質は見つからなかった。そこで、同種の臭いを出す分子の一覧表を作り、TBAを特定することに成功した」と語っています。(出典:WANDS)

ということは、「DIAMやSC、ヴィノ・ロックならブショネは100%ない!」と言い切るわけにもいかないことになりますので、「99.9%ブショネはない」という言い方が一番適切では

スクリュー・キャップ(SC)編
第3回スクリュー・キャップ
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世界で一番SCに精通しているタイソン・ステルザーさんと著書『Taming the SCREW』

2005年にタイソンさんが来日した時、オーストラリアワイン事務局の前日本代表ベンジャミン・ホルトさんの計らいで、インタヴューする機会を得ました。
当時、SCに関して、ワインボトルを保存する時に少しでもSCに傷がつくと、空気が入ったり、開けにくくなってしまうという問題が取り沙汰されていたので、この点について伺ってみました。
タイソンさんは「SCにはBVPとBVS(Bague Verre Stelvin)の2タイプがあります。BVSは横からのダメージに強く、上部からは50kgまでの重さに耐えられます。側面までシーリングしてあるので空気の隙間がほとんどなく、ショックに強くなっていますし、ガラスとキャップシールに密着度も高くなっています」と説明していました。現在のところ、SCに関して同様のトラブルは聞いていません。

EX に書いたフランスのラロッシュさんは、長熟タイプのワインにSCを使っています。長年続けてきた研究成果から、白ワインに関しては若飲み、長熟ともに代替栓で「問題ない、良い結果が出ている」とコメントしていますし、私も実際にテイスティングしてそのように感じています。

では、長期熟成の赤ワインではどうなのでしょうか?
豪州のクレア・ヴァレーで2000年ヴィンテージをSCにして栓に対する意識変革を起こしたリーダー格のジェフリー・グロセットさんはすべての白ワインにSCを使用していますし、赤ワインのピノ・ノワールやガイアにも導入しています。
SCに関するアンケートをグロセットさんにお願いした時、「SCにすることで、コルク汚染に悩まされることなく、ワインを楽しんでいただけることをお約束します。栓はただの栓であり、それ以上のものではありません。偉大なワインを飲む楽しみはそのワインの品質、多様性、場所に感謝することなのです」と答えていましたが、“熟成”についてはどうなのか、残念ながら、いまだに聞きそびれています。

[わーい(嬉しい顔)]追記:嬉しいリアクション! ヴィレッジ・セラーズさんの招聘で10月中旬に来日するグロセットさんにインタヴューできそうです。SCのこと、長熟赤ワインとSCとの関係等、伺いたいことをまとめて聞いてきます!

ブショネ問題がキッカケで、独自に代替栓による調査研究を続けている生産者は多いので、長熟の赤ワインとSCの関係に関して、さらに明確な結果も出てくるはずです。特に豪州は赤ワインのSC導入率が最も多く、AWRI(オーストラリアワイン研究所)も熱心なので、その報告は楽しみです。


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コメント 11

vientre-dolor

ワインが生き物と例えられるだけあって
境界線でもある栓には様々な種類が存在するんですね。

圧搾コルクを見ると、ピストルのオモチャを思い出します!^^
by vientre-dolor (2011-09-21 01:09) 

fumiko

vientre-dolorさん
面白い連想~縁日の射撃もコルクでしたね

xml_xslさんの画像はいつも迫力がありますね、学ばねば!
by fumiko (2011-09-21 10:18) 

グランマぴよ

fumikoさま

栓、お一つでも、蘊蓄、考察、学識がこれほどに。
スクロール、スクロール~~うゥ~~ん。参った参ったです。

栓で開けるインタビュー
魔法の杖どころではなく
魔法の栓!!に乾杯・
  グランマ・ぴよ拝
by グランマぴよ (2011-09-22 07:32) 

miumiu

シラフの時、もう一度ちゃんと読みます!
by miumiu (2011-09-23 03:41) 

fumiko

グランマぴよ様、たかが栓、されど栓なんですぅ~
SCは誰もが簡単に開けられる魔法の栓かも(笑)

miumiuさん、シラフの時、熟読してください~
お役に立つと思います♪

nikiさん、チェック、ありがとうございます!

ChinchikoPapaさん、台風一過、大ケヤキの再生を願っています!

tsworkingさん、nice、ありがとうございました!

micheさん、ワインラバーさんのお役に立てば幸いです♪

ぼんぼちぼちぼちさんのブログからいつも刺激を受けております!

にょにょさん、チェック、ありがとうございました!
by fumiko (2011-09-24 12:29) 

toki

ガラスの栓があるんですね。
コルク方が密閉されそうですよね。

by toki (2011-09-24 20:30) 

fumiko

tokiさん、ガラス栓は考案国のドイツでも活用されています。
白ワインに使われることが多いと思います。

Extar12さん、ブログで目の保養をさせていただいています♪

by fumiko (2011-09-26 22:16) 

gillman

うーん、深いなぁ。時たま安いワインでどうも合成樹脂のようなもので作られているらしく、きつくて中々抜けないものがあったりして…
栓も大事なワインの一部なんですね。
by gillman (2011-09-27 12:10) 

otemoyan

アイコン、ほめてくださってありがとうございました<(_ _)>
素敵なblogだったのでnice!してしまいました。
またfumikoさんのblogへ御訪問させて
いただきたいと思います!
いろいろ参考にさせてください(^^)/~~~

ワイン、味に詳しくはありませんが
好きですよ(すぐに酔います・・・)
by otemoyan (2011-09-29 13:15) 

fumiko

gillmanさ~ん
栓はワインの大事なパートナー、ホント、奥が深いんです~
ワイン栓がなかなか開かなくて四苦八苦すると興ざめですよね。
そこで、今日刊の産経EXでは、
力を使わずに抜栓できるオープナーの話を取り上げてみました!

ワイン好きのotemoyanさん
あらっ、早速にコメントをいただき、ありがとうございました!!
なんとも可愛いアイコン、動物版シャーロックホームズみたいです。
ソネ・ブロをお使いの、未知の素敵な方々との出会いを、
大事にしたいと思います。宜しくお願いしま~す♪
by fumiko (2011-09-29 13:43) 

hako

コルクにグレードが有るのですね、納得です。
高級=長いコルクと短絡していましたが、色々見て
味わってみたいですね。
by hako (2011-09-30 16:25) 

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