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奇才アラン・ブリュモンが未来を託したアントワン・ヴェイリー ~ドメーヌ・アラン・ブリュモンの過去、現在、そして未来~ [Zoom / ワイン]

トム・クルーズと言えば・・・ 
先日、2023年のアカデミー賞ノミネート者の為に開かれた昼食会で、スティーヴン・スピルバーグ監督が、トム・クルーズに「ハリウッドを救った」との言葉をかけたニュースが流れていましたが、今回ご紹介するのはトム・クルーズのお気入りだったワイン!! (文中敬称略)

  2007年4月/ photo by Fumiko

ワインの造り手はフランス南西地方のマディランとガスコーニュをブランドとして確立させたアラン・ブリュモンです。
2007年4月、輸入元三国ワインの招聘で彼が来日した折、トム・クルーズの件を質問してみました。「カンヌの映画祭では、23名のガードマンがエスコートしていたようですが、私のところに来た時は、ひとりのガードマンもいませんでした。自家用ジェットというのもないと思います。私は不在だったのですが、夜、家に戻ると、家族が一大事でもあったように大騒ぎしていました。私はトム・クルーズさんのことは知りませんでしたが、彼が私のワインを気に入ってくれていることは事実です」と語っていました。

その後、ブリュモンと会うチャンスはなかったのですが、コロナ渦中の昨年(2022年)、オンラインでメゾンの最新情報を伺うことが出来ました。

  
                                              
                🍷 🍷 🍷 🍷 🍷

   
     他のアイコンと呼ばれた人々が300年かけて築いた実績を、          彼はわずか30年で成し遂げてみせた
       ミッシェル・ベタンヌ/ワイン評論家  出典:BRUMONT 
      上記の一文はベタンヌがブリュモンを形容したものです。


ミッシェル・べタンヌ&ティエリー・ドゥソーヴのワイン評価本『ベタンヌ・エ・ドゥソーヴ2022』で、明日を担う天才10人のひとりに選ばれていたのがブログのタイトルに載せているアントワン・ヴェイリーです。

彼はブリュモンの現在の妻ローレンスの実子なので、ブリュモンにとって義息になります。ベタンヌとドゥソーヴが認める器量のアントワン・ヴェイリー!
ブリュモンがメゾンの全権を委ねたのは必然だと感じます。

昨夏、ヴェイリーは日本向けのZOOMセミナーに登場してコメンテーターを努めました。そつのない受け答えからブリュモンが認めた才覚の一部を垣間見ることが出来ました。


       出典:BRUMONT 左がヴェイリー、右がブリュモン

著名シャンパーニュメゾンや斬新な取り組みをしているワイナリーやファミリー企業で研鑽を積み、フランス本国だけでなく、海外(アメリカや南ア)でもワイン造りを学んできたヴェイリー


 ドメーヌ・アラン・ブリュモンの歴史 拡大可 
 資料提供:三国ワイン

1836年シャトー・ブースカッセ創業、1979年父からシャトーを相続、1980年にシャトー・モンテュス購入、1985年初のタナ種100%のワインをリリース、2000年土地の個性を生かしたメゾン最高のキュヴェ モンテュス ラ・ティルをリリース、2009年に妻ローレンス・ブリュモンが参画、2017年に義息アントワン・ヴェイリー参画、ワイン造りのエポックメイキングは2018年VTで樽熟成の期間を最低36ヶ月から60ヶ月に!

 メゾン・アラン・ブリュモンの過去と未来
 資料提供:三国ワイン

ブリュモンはテロワール至上主義、さまざまな再発見を重ね、常に自問自答してきました。ヴェイリーは彼のプロセスを踏襲。理解をより深めていくことを宣言し、「“知識としての知る”と“経験としての知る“のふたつの継承を続けていきたい」と語りました。
 
     ブリュモンが注目したタナ、プティ・クルビュ&プティ・マンサン
         南西地方に適している品種たち
         酸度が高く、樽での長期熟成に適したぶどう
         これら3品種で赤、辛口、甘口のワインを生産

        画像提供:三国ワイン

タナ種:密でコンパクトな房、果皮が厚くポリフェノール含有量が多い、温度変化への耐性が強い、ピレネー山脈一帯に生育。栽培は独自のスタイルとのこと。「8000本/㌶で1株につき6房残す(当初は4000本/㌶で12房)、芽吹きの時期から始めて、ぶどうの粒の大きさを揃えるように育てる。葉の調整が必要で、それを実行することで開花から15日要する日数が4日で終了、タンニンも完璧に熟す」とヴェイリー

プティ・クルビュ種:小ぶりで密にならない房、果皮が厚くポリフェノールが豊富、
白の辛口用品種として利用、SBの品種特性と似ているが、比較するとSBより果皮が厚い、ストラクチュア、アロマ、苦みが出る。温暖化でも酸味があるので耐性あり

プティ・マンサン種:小ぶりで密にならない房、果皮が厚くポリフェノールが豊富、アロマ豊か、20~30%は辛口白に仕上げ、プティ・クルビュとブレンド。長熟に耐えるぶどう



                🍷 🍷 🍷 🍷 🍷


 ブースカッセのテロワール
 資料提供:三国ワイン

 多様な粘土質の土壌から、
 丸みと繊細なタンニンを備えた深みのある優雅なワインが生まれる。

 モンテュスのテロワール
 資料提供:三国ワイン

 フレッシュさと長い余韻を備えたエレガントなワインが誕生する。
 これらの土壌ゆえに長い熟成能力を持つキュヴェを生み出すことができる。

ガレ(河原にあるような平たく丸い石)、メニール状の巨石、小石が混じる赤粘土質に灰色粘土質、白粘土質、砂利質・・・狭い範囲に多彩なテロワールが混在するマディラン。「このような土地は非常に珍しく、フランスでも他に類をみない」とブリュモンは語っています。



      
#1:ジャルダン・ド・ブースカッセ2017
プティ・クルビュ70%&プティ・マンサン30%のブレンド。粘土と石灰岩土壌、ステンレスタンクで発酵、12ヵ月シュルリーで熟成、3年瓶熟。外観はイエロー・ゴールド、豊かな粘性と熟度。香りの密度は高く、プティ・クルビュに由来する花の蜜、プティ・マンサン由来のエキゾチックフルーツ、黄桃やりんごのニュアンス。際だった酸味、石灰由来のミネラル感、調和が取れているので重くならず、料理の守備範囲も広い。

#2:シャトー・モンテュス・ブラン2014
プティ・クルビュ100%。赤色と灰色粘土質および小石の土壌、2年間澱とともに樽熟成、その後瓶熟成5年。ポテンシャルのあるぶどう品種。色調はゴールド、輝きがあり、高い熟度と安定感。フレッシュかつ複雑味。栗の花、花の蜜、ヘーゼルナッツ。ふくよか、ボリーム感、メリハリのある酸、果肉や蜜蝋のようなまろやかさ、完成度の高い白ワイン。鱒の塩焼きやムニエル、キジやしゃもの焼鳥と!

      清涼感があり、素直においしいワイン


IMG_0698.jpg
 左から3本目から順に

#3:ブースカッセ2016
タナ、CS、CFのブレンド。灰色・青色・赤色・黄色の粘土および石灰岩土壌、18ヶ月225㍑と228㍑の樽、その後タンクで12ヶ月熟成。色調は濃い目ながら濃さの質が違い、透明感がある。アロマは洗練されていてエレガンス、ブルーベリーやカシスのような果実、チャコールや木の葉、タバコのような熟成のニュアンスも。なめらかで石灰のもたらすフレッシュなミネラル感、味わい全体を包むようなタンニンもきめ細かく、収斂性はありつつも調和がとれているワイン。ヴェイリーいわく「2016年は春は涼しく、夏は暑く、収穫時は涼しかった。ワインはボリューム感と清涼感がある。色調の中央が明るいダークレッドなのが2016年VTの特徴。この年はブルゴーニュ以外、フランス全体が良かった」と

#4:シャトー・モンテュス2016
タナ80%、CS20%のブレンド。赤色と白色の粘土質および川の小石、2016年VTは18ヶ月の樽熟、12ヶ月のタンク熟成。色調は濃く密度が高い、きれいなグラデーションで、香りには凝縮感があり、洗練されていてフレッシュ、清涼感がある。ブラックベリーや木樽由来のトーストやバニラスパイス、層になって広がる香り。一貫性のある味わい、バランスよくスムース、なめらか、ジューシーで豊富なタンニン、心地良いフィニッシュ

#5:シャトー・ブースカッセ ヴィエイユ・ヴィーニュ2015 
樹齢80~90年のタナ100%。粘土および石灰岩土壌、新樽1年、樽熟成2~3年、その後瓶熟5年、香りは開いていて2015年VTのキャラクター(ばらつきがなく安定した味わい)が出ている。熟して柔らかくなった果実、樹皮、黒系キノコ、湿った土、たばこ、針葉樹、フレッシュさを備えた緻密なワイン。味わいはしなやかでスムース、タンニンは豊かなれどワインに溶け込んでいて熟成がもたらす旨味が余韻として続く、コレクター向きのアイテム! 
「余韻が消えた後に舌の奥に石灰的なミネラルが残り、新たな余韻となって残る」との石田副会長ならではのワイン表現、さすが!

 
#6:ラルム・セレスト2018
プティ・マンサン100%。粘土と石灰岩の土壌、収穫のタイミングを変えることでぶどうの個性を表現。具体的には9月、10月、11月、12月の4回に分けて実施。2018年VTは9月末から10月初旬に収穫。40g/Lの甘味でも酸味があるのでバランス良好。鮮やかなイエロー・ゴールド、アロマはパッションフルーツや花の蜜、華やかさがあり、味わいは濃密で豊かな甘美さ、中盤から直線的な酸、染み入る余韻。酸のレベルの高さが際立つ心地良い甘口

2018年VTからアントワン・ヴェイリーが手掛けています。醸造面で変化させた点について「ぶどうが過熟になることを避けているので、結果として、香りやタンニンの質の向上、清涼感が増したと感じている」とコメントしていました。


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 登場した6アイテム

 ワインのコメントはソムリエ協会の石田博副会長
 ※ブログ記載は要約のみ


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サステイナビリティ関連
メゾンではぶどう畑1つにつき林を1つ確保、畑には必ず林が隣接しています。それにより各区画の生物多様性を維持し、それぞれのテロワールを保護しています。女性微生物学者に毎年熟成中のワインの品質を分析依頼しており、それによりSO2の量を減らし、タンニンやアロマも保つことが出来るとのこと。また、土着の雑草を残すことで、土壌のバランスを保持。通常と異なる雑草が生えてきたら、今までと違うことが起きていると判断して人的介入を行っているそうです。

 醸造責任者アントワン・ヴェイリーと通訳の熊田有希子女史
 今回、ボーヌ在住の熊田さんはブースカッセまで出向いてオンラインセミナーをサポート
 ご苦労様でした!

セミナー後、草生栽培とぶどう畑の耕起に関して質問させていただきました。
後日届いた回答を以下に載せておきます。

Q1:ドメーヌ・アラン・ブリュモンでは、カバークロップと併せて、不耕起栽培を実践していますか?
A1:浸食や水分蒸発の現象、土壌を踏みしめる問題を回避するために、我々は一定の時期には鋤入れ(耕起)を制限しています。鋤入れを制限することで、微生物の活動は十分に保持されています。鋤入れはその年の状況によって、土壌のタイプやぶどうの樹齢で決めます。燃料使用量が減るので鋤入れを制限することで、CO2排出低減の効果もあります。


Q2:カバークロップの中に、いつもと違う種類の雑草が生えてくると「何らかの変化が起きていることが察知できる」と語っていましたが、基本的に通常のカバークロップにはどのような種類(マメ科植物、草花、アブラナ科等)があるのですか? それらはそれぞれの役目(マメ科なら窒素固定化や土壌の微生物増加、草花なら窒素保持や浸食抑制といったような)を担っていると思いますが・・・
A2:カバークロップについては、ぶどう畑全体に500以上の土着種が存在し、それぞれの植物が役割を担っています。私たちの仕事は、土壌の健康状態を理解するために、自然の植物を観察することです。区画ごとに異なり、自然の植物で覆われているエリアもあれば、土壌のバランスを保つために選択されたカバークロップを使用しているエリアもあります。カバークロップは土壌に対してある役割を担っていますが、また土壌も植物に対してある役割を果たしています。カバークロップとぶどう樹の間に直接の関係はありません。カバークロップは土壌に炭素をストックするために非常に重要です。


Q3:CO2削減への具体的な取り組みをしていると思いますが、ぶどう畑での実践、ガラス瓶や包装資材の軽減、貨物輸送への配慮等、教えていただけますか?
A3:鋤入れ(耕起)の制限、一度に2列作業ができる専用のトラクターを開発し、通路回数を削減、エンジンと燃料のコストパフォーマンスの高い最新の機器を導入。包装関連ではカートンは80%リサイクル、大量生産のキュヴェに関しては軽量ボトルを採用、フランスの環境認証HVEレベル3の取得、ダンボールやプラスチックのリサイクルを社内で油圧プレスにて実施等

【製品についてのお問い合わせ先】
三国ワイン株式会社マーケティング部 担当:須佐敏郎 電話:03-5542-3939

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