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シャブリ『ドメーヌ・ラロッシュ』のティエリー・ベリコー社長と6アイテムのGCをテイスティング [来日したワイン生産者&関係者]

ティエリー・ベリコー社長へのインタビュー

輸入元ジェロボームの招聘で昨年2月以来の訪日になったティエリー・ベリコー社長

光栄にもグラン・クリュ6アイテム5ヴィンテージを試飲しながら単独インタビューさせて頂きました。
前日に到着なさったばかりでしたが、朝10時30分からのグラン・クリュだけのテイスティングも順調に進み、インタビュー翌日からの日本縦断セミナー&メーカーズディナー(京都、大阪、福岡&札幌)に向けて弾みがついたご様子でした。

最新のヴィンテージ情報では、2018年は非常に喜ばしい出来で数量&品質ともに理想的、霜にも雹(ひょう)にも悩まされることもなく、問題がなかった由。夏は暑くてかなり乾燥したので若いぶどう樹は苦労しましたが、ドメーヌ・ラロッシュ(以後ラロッシュ)のレ・ブランショに関しては平均樹齢45年、収穫は8月27日から開始したとのことでした。ただ、インタビュー中、「昨日の夜、霜の害が予想されるということで、ろうそくを灯したり、散水したようです」とベリコー氏。
思わず、昨年同様の理想的な気象状況になるように願ってしまいました!

レ・ブランショ・ラ・レゼルヴ・ド・ロベディエンスは日本が最大の市場
2017年の11月に来日したシャブリ委員会モロー副会長のプレス会見で、「シャブリは日本市場で再活性化しています。数量・金額ともに第3の市場であり、なかでもプルミエ・クリュPCやグラン・クリュGCの伸びが良いです」との報告がありました。

シャブリのぶどう畑は総面積にして5,000㌶に及びますが、最上級に格付されているGCはわずか100㌶のみ、例えて言うと、ボルドーのシャトー・マルゴーの広さしかありません。

ジェロボームがラロッシュの輸入に関わって3年、ベリコーさんがラロッシュの社長に就任して10年経過しました。日本での販売も快調で、高価格のアイコンキュヴェ、GC『レ・ブランショ・ラ・レゼルヴ・ド・ロベディエンス』に至っては日本が最大の市場になっているとのことでした。ベリコー社長は今後の目標として「PCとGCの良さをさらに知っていただけるように頑張っていきたい」と述べていました。

ラロッシュが誇るグラン・クリュ


シャブリは町を中心に放射状に広がっている産地で、現在2,500名ほどが居住しています。
ラロッシュは自社畑を90㌶所有しており、GCとしては、レ・ブーグロ(ジェロボームでの扱いなし)、レ・ブランショレ・クロレ・ブランショ・ラ・レゼルヴ・ド・ロベディエンスを生産しています。



小道を境に隣接しているレ・ブランショ(地図の右端)とレ・クロ(その左隣)ですが、ワインの個性は異なります。レ・ブランショは全体で約12㌶あり、そのうちの4㌶を所有しているのがラロッシュです。ネーミングは土壌の白さ(blancheur)に由来。南東向きの畑なので、ぶどうは午前中からしっかりと日差しを受けます。レクロは真南向きなので太陽のニュアンスを感じさせるアペラシオンです。GCの中で最も栽培面積が広く、土壌は白い粘土と砂利質、若干の泥灰質を含んでいます。

6アイテムのグラン・クリュをテイスティング

(左から)
#1:シャブリGC レ・ブランショ2016 希望小売価格11,000円(税抜)
#2:シャブリGCレ・クロ2016 同13,500円(税抜)
#3:シャブリGC レ・ブランショ・ラ・レゼルヴ・ド・ロベディエンス2015 同18,000円(税抜)
#4:シャブリGC レ・ブランショ・ラ・レゼルヴ・ド・ロベディエンス2011 参考商品
#5:シャブリGCレ・クロ2010 参考商品
#6:シャブリGC レ・ブランショ2009 参考商品


第1フライトは2016年のレ・ブランショとレ・クロを比較
2016年は難しい年。収量は50%ダウン。冬暖かかったことで、ぶどうの生育が早まった。春は寒くて雨も多く、霜害も発生。芽が出ていたのでダメージを受け、さらに雹害もあり、厳しい天候が続いた。8月は暑く乾燥した気候になり、9月も好天に恵まれたので持ち直すことができた。収穫は9月26日~10月4日、サイクル的には2014年ヴィンテージに類似

試飲の1時間ほど前に抜栓、カラフェに移してサービス。レ・ブランショ2016は緻密さを備えたフェミニンなスタイル。柑橘果実の内果皮似のビターさ、ミネラル感が特徴。ベリコーさんは「まだ若いがグラン・ヴァンになりうるワイン、エネルギーがあり、フィネス豊かで繊細」と。また、料理談義ではカニ(甲殻類)とアボカドの一品を提案してくださいました。私はふきのとう等、春野菜の天ぷら(塩で)を。
レ・クロ2016は香り華やか、酸のインパクト、白胡椒、白ワインながらタンニンのニュアンスも。ベリコーさんは「レ・ブランショはミネラル、レ・クロは黄色い果実」と表現。料理談義では白身の肉(鶏肉)をホワイトソースで調理し、モリーユ茸を添えた一品を提案。ラロッシュではレストランを2軒経営しており、いずれもシェフは日本人。ゆえにマリアージュの探究に余念がないようです。

第2フライトはアイコンキュヴェのヴィンテージ違い
ラロッシュの社員は全部で80名。うち35名が栽培担当者で、ひとりが1区画を担当し、年間通して、畑の状態をこまめにチェック。その成果がレ・ブランショ・ラ・レゼルヴ・ド・ロベディエンスに表れています。毎年3,000本しか生産しないスペシャルなアイテムの背景には (1)35名の栽培家による綿密な作業、(2)GCという格付け(フランスにおいてはアルザス、ブルゴ―ニュ&ボルドーのみ)、(3)レ・ブランショ最大のオーナーであり、最も良いブランショを所有しているという重要な3要素があります。

トライアングルの秘密


レ・ブランショ・ラ・レゼルヴ・ド・ロベディエンスのコンセプトはテロワールをいかに引き出すかということです。“完璧”を表現するのはとても難しいのですが、それを可能にする方法としてラロッシュが行なっているのが独自のブレンド(調合)。9世紀の修道院(ロベディエンス)で行っているトライアングルによるテイスティングが、それです!

2012年を例にすると
32本のサンプルをブラインドで試飲。メンバーは醸造担当者、シェフ・ド・カーブ、栽培チームのトップ、ベリコー社長、ドメーヌ・ラロッシュのスタッフ、外部(ワインのプロ)からの参加者を人れた8名程度。
テーブル上にそれぞれ、香り、酸味、ストラクチュア(熟成によって生じる個性)の架空の三角形(上部画像の三角)を作り、午前中2回(8時~10時)のテイスティングで各ボトルの特徴が表れている箇所にボトルを置いていきます。その作業で中心部(トライアングルの中心)に集まったワインを再度試飲し、レ・ブランショ・ラ・レゼルヴ・ド・ロベディエンスを造るためにブレンドするボトルを決定します。2012年に関しては、7つのサンプル80%、2つのサンプル20%をブレンドしました。


2015年(左)と2011年(右)

2015年は早熟な年、暑かったが太陽だけでななく、骨格を成す酸も表現できた年。2011年は冬はとても寒くて、春と夏はとても暑かった。ぶどうの生育は完璧に進み、衛生状態も良く アロマは豊かで複雑。柑橘でもオレンジの皮のニュアンス、シャンパーニュと同じように石灰の風味、バランスが取れていて余韻も長い

レ・ブランショ・ラ・レゼルヴ・ド・ロベディエンス2015は口中の存在感が見事、蜂蜜の風味、果実味と酸味とのバランス良好。料理談義では「白トリュフのニュアンスを感じます」とベリコーさん。同2011年は熟成が進み、香りもより大人びた印象。ベリコーさんは「オマール海老」、私は和食で、「柚子を使った一皿」を提案しました。

第3フライトはブランショとレクロのヴィンテージ違い
2010年は忍耐力が必要だった年。ぶどうの生育は遅かった。9月の好天で救われた。最終的に良年になったが、造り手として途中まで苦労したヴィンテージ。片や、2009年は2010年とは対照的な偉大なる年。すべての気象条件が理想的に進んだ。収穫は9月初旬に始めたが、ぶどうは美しくラグジュアリーなヴィンテージ

第1フライトで体験した2種のGCの熟成具合を満喫。「クリーミーな牡蠣なら第1フライトの若いタイプですが、ブルターニュの牡蠣のようにミネラル感や複雑味のあるもの、または調理した牡蠣には2010年のレ・クロが良く合います」とベリコーさん。このフレーズで、若いレ・クロと熟成したレ・クロの味わいの違いが伝わるはず、牡蠣好きにはたまらない組み合わせだと思います。
レ・ブランショ2009は秀逸。包容力があり、第3アロマの段階ですが、まだまだフレッシュで果実味もあり、口中での存在感も長く、GC6アイテムの最後を締めくくるにふさわしい落着きのある味わいでした。私は熟成した白カビチーズをお薦めしたいです。

「6つのワインはそれぞれ第1アロマ、第2アロマ、第3アロマの段階にあり、多様性に富んでおり、飲み手にエモーションを与えてくれます」とベリコーさん。また、「直近のヴィンテージは良く飲んでいますが、すでにセラーを離しれてしまったヴィンテージを味わうことは我々にとっても貴重なことなので、6アイテムの熟成具合を知ることができて嬉しいです。ドメーヌ・ラロッシュが行なってきたことが間違いないと確信しました」と語っていました。
同じヴィンテージでありながらGCによる味わいの違い、はたまた同じGCでありながら、ヴィンテージ違いで表情が変わる面白さ。これこそテロワールの反映であり、ラロッシュが追及しているワインスタイルだと実感しました。タイトなスケジュールのなか、贅沢な時間を共有させていただき、ありがとうございました!

ラロッシュ後日談

鴨の冷製@京都・本家たん熊本店 画像提供:ジェロボーム

ベリコー社長とのテイスティングでは、マリアージュについてもたくさんの意見交換をさせていただきました。冒頭に記述したように、今回の来日では東京以外の4都市を訪問し、メーカーズランチやディナーで、様々な食体験をなさったようです。
和食材に関してですが、私が提案したふきのとうは、合せたのがフルショーム2014で、このワインはまるみのあるタイプなので、苦みがワインより少し勝ってしまったとのことでした。もう少しシャープなクリュだったら違っていたと思います。ちなみにグリーンアスパラの天ぷらとフルショームがナイスマリア―ジュだった由。また、京都では昼夜ともに木の芽をふんだんに使ったお料理が出たようで、シャブリとの相性も抜群、ヴィラージュクラスでも文句なしの相性に。柚子の皮を乗せたお椀もその苦みがまさにシャブリのためと言えるような相性とのことでした。柚子恐るべし!
後日談も含め、ジェロボームの山下陽子PR &マーケティング・ディレクターには大変お世話になりました。改めて御礼申し上げます、ありがとうございました。

■関連記事:伝統と革新のメゾン、シャブリ『ドメーヌ・ラロッシュ』ベリコー社長来日セミナー
https://non-solo-vino.blog.so-net.ne.jp/2018-04-23
■製品についてのお問い合わせはジェロボーム(株) ℡03-5786-3280
URL:http://www.jeroboam.co.jp/

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