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<第1部> 日本初開催のニュージーランド “The Family of Twelve” セミナー  [来日したワイン生産者&関係者]

ファミリー・オブ・12をご紹介

The Family of Twelve (以後ファミリー・オブ・12)は2005年に、ニュージーランド(NZ)南北にまたがる8 つの産地の家族経営の12 ワイナリーによって結成されたグループです。NZの主要産地を代表するワイナリーが協⼒し合い、プレゼンテーション、プロモーション、マーケティングを⾏いながら、各産地を代表するNZのファインワインを世界に紹介しています。

2012年の香港インターナショナルW&Sフェアで

photo by Fumiko (2012年11月)
私が初めてをファミりー・オブ・12を知ったのは香港インターナショナルW&Sフェアのセミナーでした。(左から)フェルトン・ロードのナイジェルさん、フロム・ワイナリーのウイリアムさん、ヴィラ・マリア・ワイナリーのシャルロットさん、ノーチラス・エステートのクライヴさん&ペガサス・ベイ・ワイナリーのポール・ドナルドソンさんが講師でした。


あれから5年!
東京で日本初のセミナーが開かれ、フェルトン・ロードのブレア・ウォルターさん(左)とノイドルフのトッド・スティーヴンスさん(右)が講師として来日、6ワイナリーのピノ・ノワールを紹介しました。

ブレアさんは冒頭、「グループはかなり⾃然に結成されました。どのワイナリーもニュージーランド最⾼のワインを造ろうという使命感が強く、メンバーはグループ結成前からの友⼈でした。NZのワインの歴史はまだ浅いので、我々は全速⼒で学習し、良いワイン造りをしていくために、競争ではなく、協⼒しながら前進しています」と挨拶。

ニュージーランドの地図
セミナーで取り上げたワイナリーには赤印
(クリックで拡大)

























NZにおけるピノ・ノワール

ピノ・ノワールはNZのどの産地でも栽培されています。
多くは南島、特に国内最⼤の産地マルボローに植えられており、スティルワインだけでなく、スパークリングにも使われています。栽培面積で群を抜いているのは、ソーヴィニヨン・ブランで、2番目がピノ・ノワール。過去7年間で輸出量は2倍。⽣産量は⾚ワイン全体の7割を占め、この15 年で栽培⾯積も2倍に拡大。63%は樹齢15 年以下ですが、セミナーに供出されたワインには20 年から30 年以上のものもあり、樹齢としてはNZで最も古いピノ・ノワールと言えます。

第1フライトはアタ・ランギ、クラギー・レンジ&ノイドルフ

気取りのない講師ブレアさんとトッドさん


左から順に各2本ずつ供出#1~#12

アタ・ランギ
1980年設立、拠点はマーティンボロー(マオリ語で“新しいはじまり”の意)、所有者はクライヴ&アリソン・ペイトン、フィル・パティ

北島に位置するマーティンボローは、気候的には南島に似ていて、⽇中は高温、夜間は急激に温度が下がる。乾燥した気候なので病害リスクも少ない。カイクラ(南島カンタベリー地区北東部、東海岸に面した半島)で跳ね返ってマーティンボローを直撃する南極からの冷たい南⾵サザリーズの影響を受ける産地なので、NZの栽培地の中では最も⾵が強く、結果、収穫は⾮常に少ない。⼟壌は主に古代河川の洪⽔と氷河によって形成された沖積砂利質層、地域全域では多様な⼟壌構成が散見できる。

テイスティング
醸造家ヘレン・マスターズがセレクトした良年の2013 年ヴィンテージ
#1:アタ・ランギPN2013 / #2:同マクローン・ヴィンヤードPN2013
#1は樹齢20~25 年。畑は排⽔性に優れており、800m 離れたところにある#2も土壌は#1と同じ沖積砂利層、そこに若干の含水粘⼟層が加わる。#2は樹齢13 年の若い畑だが、古いアタ・ランギの畑を念頭に置き、植樹・育成しているので、クローンの選択・組み合わせは2つのワインともほぼ同じ。「ノン・インターヴェンショナリスト(⼈的無介⼊主義)」と形容できる伝統的醸造法。#2には粘⼟質に由来するフレッシュ感、密度の⾼さ。

今後の課題:最⾼のワインを造ることを目標に、樹齢および単⼀畑にフォーカス。醸造家ヘレンは「アタ・ランギの樹齢の⾼い樹は酸がより安定している」との考えなので、樹齢への期待度大。

クラギー・レンジ
1997年設立、本拠地はホークス・ベイ。最⾼の場所からワインを造るという理念から、ピノ・ノワールとソーヴィニヨン・ブランに関してはマーティンボローのテ・ムナ(マオリ語で“秘密”、“特別な場所”の意)・ロードが拠点。ピーボディ・ファミリーとスティーブ・スミスによって設立されたワイナリー。
ぶどう畑は地震によって河床の上層に⼟が移動して形成されたテラス。畑の⼀部は緩やかに傾斜しているテラスなので、結果、収量は通常より少なめ。土壌は、茶褐⾊のローム層が河床の上層を覆い、河床には砂岩が堆積、⽕⼭灰や粘⼟がゆっくりと崩壊したユニークなもの。アタ・ランギとテ・ムナの間にある唯⼀の気候の違いは、テ・ムナの⽅が少し⾼台なので、若干冷涼。

テイスティング
#3:クラギー・レンジ・アロハPN2015 / #4:同2014
日本未発売のアイテム。ヴィンテージは2014 年と2015 年、最⾼の区画のぶどうから造られるクラギー・レンジのトップ・キュヴェのアロハ(マオリ語で“愛”の意)
醸造家はマット・スタフォード。樹齢が若かったこともあり、数年前まではぶどうをしっかりと熟させ、樹齢の若いぶどうの果実味を樽の⾵味を効かせることで、テ・ムナ・ロードらしさを表現しようとしていたが、今では畑への理解度も深まり、ぶどうの適熟に加えて、ヴィンテージによる違い、特に難しい年や暑い年への対応を深めた。全房発酵でワインにフレッシュさを。抽出を抑えることでワインにエレガントさが加わるようになった。

今後の課題:クラギー・レンジの畑は100㌶ を超え、うち、17年前に植樹したピノ・ノワールは36%を占める。残りの多くはソーヴィニヨン・ブラン。品質向上の次なる展開は有機栽培への取り組み。

ノイドルフ
1978年設立、拠点はネルソン地⽅のアッパー・ムーテリー(マオリ語で“浮かんだ地”、“浮遊した島”の意)、所有者はティム&ジュディ・フィン。 NZでファインワインを造るというヴィジョンを掲げてスタート。
最も⽇照量に恵まれた場所で、夏は穏やか、暑過ぎない気候。南島の他の産地に比べて、より温暖な気候帯にある栽培地域。⼟壌は粘⼟砂利層。陥没によって生じた窪みに、⻑年にわたる氷河や沖積河川による粘⼟と砂利が被さり形成された。砂利層の肥沃度は低いが、保⽔性に⾮常に優れているので、灌漑をしなくてもぶどう栽培は可能。

テイスティング
#5:ノイドルフ・ムーテリーPN2014 / #6:同2012
#5は穏やかで暖かく、#6は冷涼年で低収量。2012 年はムーテリー地区の古樹のぶどうがベースで30年超の樹も。樹齢の⾼さはワインに緻密さや凝縮感を与えるだけでなく、ムーテリーの筋⾁質的な特徴も表現していることが理解できる。ワインはアッパー・ムーテリーの2つの畑で栽培されたぶどうをブレンド。ひとつの畑はノイドルフ所有でも有機栽培でもない。

今後の課題:2014年以降の目標として、■よりエレガントな表現 ■⾃社畑のぶどう ■可能な限り有機栽培を導入。これら3点は、今後のノイドルフの⼀層の進展にとって何よりも大事なポイント。

トッド・スティーヴンス:以前から抽出は控えめにして、バランスのよいタンニンを大事しています。醸造においても、テクニカルなことより基本的信念を優先しています。40 年を超えた今も、畑を広げ、アタ・ランギ同様、樹齢が⾼まるのを待ち、より良いクローンの選択、有機栽培を導⼊し、⾃分たちの⼟地を⼤切にすることを考えています。あまり⼿を加え過ぎないことを良しとしています。

樹齢の高いぶどう樹は皆が欲するものですが、ある意味捉えどころがなく、樹齢が⾼いから良いワインができるというわけではありません。他にも多くの要素があります。アッパー・ムーテリーの古い樹は昔のクローン・セレクションから選んでいるので、⾃分たちの気候に向いていないかもしれません。樹齢を犠牲にするのは残念ですが、⻑い⽬で⾒ると、この⼟地にあったクローン・セレクションにしたほうが良いと言えます。まだ38年しか経っていませんが、その間でやっとわかってきた⼀例です。NZは南北に⻑く、マーティンボローで良年と言われる年がネルソンでも同じように良いとは限りません。と⾔いながら、ここで付け加えたいのは、NZのヴィンテージに関しては「良い」、「悪い」ではなく、あるのは「年による違い」です。

第2フライトはフェルトン・ロード、フロム&ペガサス・ベイにフォーカスしました。
講師のブレアさんとトッドさんがとても熱く語ってくださったので、予想以上の長さに! 
第2フライト以降は、次回<第2部>でリポートいたします。

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