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<第2部> 日本初開催のニュージーランド “The Family of Twelve” セミナー [来日したワイン生産者&関係者]

第2フライトはフェルトン・ロード、フロム&ペガサス・ベイ
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<第1部>ではアタ・ランギ、クラギー・レンジ、ノイドルフについて触れました。
ここからは第2フライトに登場したフェルトン・ロード、フロム、ペガサス・ベイを紹介していきます。

フェルトン・ロード
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フェルトン・ロードのブレア・ウォルター、ノイドルフのトッド・スティーヴンス両講師

1991年設立、拠点はセントラル・オタゴのバノックバーン、所有者はナイジェル・グリ―ニング(ワイナリー設立当初のオーナーはステュワート・エルムズ。2000年に現オーナーが購入)。1996年に醸造家のブレア・ウォルターが参画。南緯45度に位置するセントラル・オタゴは世界最南端のワイン産地、バノックバーンはボウル状のおだやかな盆地で、夏季は昼夜の日較差が大きく、準内陸性気候のもと、多様な微気候と地形に恵まれている。2002年からビオディナミ導入。
「私はアタ・ランギやノイドルフのようなパイオニアではありませんが、NZで26 年間ワインを造り続けてきました。⾃分自身NZのピノ・ノワールとともに成⻑してきたと感じているので、今⽇はNZのピノ・ノワールの進歩について話す機会を得て、とても嬉しく思っています」とブレアさん。

テイスティング
セレクトしたのは2015 年&2012 年のブロック5、ともにフィネスとエレガンスがはっきりと表現されたヴィンテージ
#7:フェルトン・ロードPN ブロック5 2015(12,000円) / #8:同2012(12,000円)
ブロック5は自社畑エルムズ(14.4㌶)内のピノ・ノワールの単一区画(1.7㌶)名、畑全体は13区画に仕切られている。2002 年に有機農法とビオディナミ農法に切り替えたので、ビオディナミ農法歴10 年目と13 年目のワイン

乾燥した気候で、⽇照時間が⻑く、紫外線の強いNZでは、ぶどうは簡単に熟す。過去においてはぶどうを過熟させていたが、今ではぶどうの熟度への理解が深まり、ビオディナミ農法で、より早い段階での成熟が達成され、ワインにフィネスが備わる絶好のタイミングを的確に捉えるようになっている。
両ヴィンテージとも⾃然なスタイル。これまでの学習から、最近は隣接する他の⽣産者よりも早摘みを実施。それによりスムーズで穏やか、フィネスのあるワインに。

ビオディナミがワインに与える影響について
ブレア:有機でもビオディナミでもない畑を同時に所有しているわけでないので、よくわからないのですが、近隣の畑や他の⽣産者のワインと比較することで何が変わったか想像することはできます。最大の違いは、ぶどうが早く熟すようになってきたことです。ぶどうがしっかりとした⾵味を持ち、タンニンが熟すまで以前は⾟抱強く待たなければならなかったのですが、今ではピンポイントでワインを捉えることが可能になりました。それはフィネスであり、エレガンスであり、精密さであり、そして、ミネラルがワインにはっきりと表現されています。畑らしさをより忠実に反映させること、それらはNZのトップワインの多くから感じていただけるはずです。

クローンについて
ブレア:ピノ・ノワールのクローンは選択肢が多く、ピノ・ノワールに取り組んでいる畑では、少なくとも6~8種類のクローンを使っています。フェルトン・ロードは11 種類です。他のピノ・ノワール⽣産者も同じことを⾔うと思いますが、いずれも大事なクローンです。いずれ特定のクローンを強⼒に推薦するリーダーが出てきて、植え替えに優先的に使うべきクローンが出現するとは思いますが、それは⾃分の孫の時代の問題だと思っています。


第2フライトのワイン

(奥左から右へ/手前左から右へ)#7~#12

フロム
1992年設立、拠点はマールボロ。スイスのワイナリーの4代目ゲオルグ・フロムは家族旅行で訪れたNZに惹かれ、フロムを立ち上げ、単一畑のパイオニアに。NZのリーディング・ワイナリー、最も⻑い歴史を持つ⾼品質のピノ・ノワールの⽣産者

フロムの功績はマールボロでも⾼い品質のピノ・ノワールを造ることができることを他の⽣産者に示したこと。期待する結果を得るためにはピノ・ノワールを植える場所の選定と、栽培の質に充分な注意を払う必要がある。

テイスティング
#9:フロムPN フロム・ヴィンヤード2015(6,800円)/ #10:同PNクレイヴィン・ヴィンヤード2015(8,000円)
醸造家ハッチ・カルベラーがセレクトした2種。有機栽培の認証を受けた畑と適正な⼟壌で育つピノ・ノワールの栽培への取り組みを理解することができる。
当初、フロムはソーヴィニヨン・ブランを植えた同じ⼟壌でピノ・ノワールを栽培していた。ソーヴィニヨン・ブランはマールボロの平地の河床砂利層の⼟壌でよく育つが、ピノ・ノワールにはもっと粘⼟層が必要で、⾼品質なピノ・ノワールを造るには⾼密度の⼟壌が不可⽋だった。
#9はソーヴィニヨン・ブランの畑に囲まれたワイラウ・プレインズで、ピノ・ノワールでは考えられない場所に位置している。しかし、ワイラウ川は平野いっぱいに広がり、あちこちに移動してきたことで、平野には低地と⾼地があり、結果、畑がある場所はシストと沖積⼟壌、砂利や粘⼟等が豊かで、ピノ・ノワールに適したテロワールになっている。
#10は、サザン・ヴァレーズとして知られる丘陵地の斜⾯にあり、多くの⾕間が⼭々へと⼊り込み、その⼭腹の⼟壌は粘⼟質を多く含んでいる。現在、⾼品質のマールボロ・ピノ・ノワールの多くがこの⼭腹で造られている。

今⽇のワインを造った醸造家たちはすべて、ニュージーランドだけでなく、オレゴン、カリフォルニア、ブルゴーニュ、オーストラリア等、海外での醸造経験も豊富であり、そして今、⾃分たちの場所の気候⾵⼟にあうように微細な調整をしながらワインを造っている。より良いワインを⽣み出す魔法のテクニックというものは存在しない。The Family of Twelveは⾃分たちの畑にあう醸造⽅法を探究し続けるだけであり、10 年前、15 年前と今の違いは、その点のみ。

ペガサス・ベイ
1985年設立、拠点はワイパラ、クライスト・チャーチから約40km 北にあるエリアのパイオニアで、樹齢35 年の最古のぶどう樹の存在も。
ペガサス・ベイは“野生人”との異名がある醸造家のマシュー・ドナルドソン抜きには語れない。昔からワインは豊かで特徴あるワイパラの果実を表現していたが、違った言い方をするなら、繊細さに欠ける面があり、⼀昔前のNZのピノ・ノワールスタイルだった。加齢したマットが、以前より痩せて⽩髪が増えてきたのと同様に、彼が造るワインも変化してきた。醸造、特にピノ・ノワールへのアプローチで、強さだけでなく、今ではフィネスとエレガンスを追求しているように思える。

テイスティング
#11:ペガサス・ベイPN2015 (6,800円) / #12:同PN2013(6,800円)
ペガサス・ベイが多⽤する醸造テクニックのひとつに全房発酵の⽐率の⾼さがある。全房発酵はワインにストラクチャーとしっかりしたタンニンを加えると考える⼈もいるが、ペガサス・ベイでは、よりきめ細やかなタンニンやシルキーさが得られると考えている。ワイパラではかなり濃厚で、抽出もしっかりした、⼒強いスタイルのピノ・ノワールを造ることができるので、ぶどうを全房発酵で手なずけ、さらに柔らかさやエレガントさを追求することがペガサス・ベイにとってのおもしろい試みと言える。感受性、尊敬、⼿を加え過ぎないことは、マットだけではなく、我々メンバーにとっても、ピノ・ノワールを造る上での最近の決まり⽂句である。

全房発酵の比率について
ブレア:樹齢が⾼くなると梗の成熟も⾼まるので茎っぽさがなくなります。それにより、全房にしても味わいがワインに溶け込み、梗特有の草や野菜の⻘臭さの影響がワインに出ないのです。この⾵味が強すぎるのはワインにはマイナスだと思います。
フェルトン・ロードでは全房使⽤の率に⼤きな変動はありません。冷涼な年は全房からの野菜っぽさが多くなり過ぎ、暑い年は、果実が単純になり過ぎるのを危惧しているので、フェルトン・ロードでは常に使用率は20〜30%です。


試飲会場には12ワイナリーのワイン

ペガサス・ベイの『ベル・カント・ドライ・リースリング2014』、『アリア・レイト・ピックト・リースリング2014』、貴腐のほのかな甘やかさ、アロマチックでオイリー


ローソンズ・ドライ・ヒルズ パイオニア・ゲュルツトラミネール2015
ライチの香りが魅力的、程よい甘さが心地よく癒される味わい、入荷が楽しみ!


セミナーには登場しなかった6ワイナリー
ブレア:セミナーで紹介した6 ⽣産者の12 アイテムのピノ・ノワールはNZの中でも特別のワインであり、NZのワインすべてがこのような品質と価格ではありません。NZでワインが容易に熟すということは、中間から低価格帯ワインにとってはとても⼤事なことで、そのおかげでNZのワインは、世界市場でも競争⼒があると思っています。きれいで優しくスムーズな⼝当たり、それでいて凝縮感のあるデイリー・ワインを造るのには、ぶどうが熟す必要がありますが、例えばブルゴーニュなどでは、年によりぶどうの成熟が難しいこともあります。ですから、しっかり熟した果実が収穫できるということは、とても恵まれたことです。

ローソンズ・ドライ・ヒルズ
クメウ・リヴァー
ヴィラマリア
ミルトン・ヴィンヤーズ
パリサー・エステート
ローソンズ・ドライヒルズ
紹介できなかったワイナリーは輸入元のサイトにリンクしてあります。
NZファインワインへの関心を深めていただけましたら幸いです。


最後に

ヴィレッジ・セラーズのリチャード・コーエン社長と中村芳子専務を交えた4ショット

セミナーの終盤、ブレアさんは「ファミリー・オブ・12のセミナー開催にあたり、他のインポーターとコミュ二ケーションを取り、ワインを調達し、セミナーの資料の翻訳をしてくれたヴィレッジ・セラーズのチームの皆さんにお礼申し上げます」と述べていました。

セミナー用のピノ・ノワールだけでなく、試飲会場に用意されていた12ワイナリーの様々な品種のワイン調達のために時間を割いてくださったコーエン社長と中村専務のサポート、素晴らしいものでした。また今回のこのリポートも、中村専務の英日対訳に大いに助けられました。心から御礼申しあげます!

初開催のセミナーで講師を務めてくださったブレアさんとトッドさん、ありがとうございました!
第1部&第2部はThe Family of Twelve に報告する予定ですが、メンバーの皆さまに日本でのNZワインの浸透度がお伝えできれば嬉しいです。
The Family of Twelveの今後ますますの躍進を願っています!

■関連ページ
NZの『フェルトン・ロード』&『ノイドルフ』両醸造家によるランチセミナー
http://non-solo-vino.blog.so-net.ne.jp/2017-07-02


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