セーニャ20周年記念ヴァーティカル・テイスティング・デイナー@八芳園 [チリワイン]
整然と並んだワイングラス、和の要素を感じさせるテーブルセッティング
昨年3月に東京で行われたベルリン・テイスティング10周年記念イベントに続き、今年はセーニャのブランド立ち上げから20周年を記念したヴァーティカル(垂直)テイスティング・ディナーが開かれました。先のベルリン・テイスティングではチリワインが世界のトップワインに伍することを見事に証明しています。
ヴィーニャ・セーニャ社のオーナー兼代表取締役社長エドゥアルド・チャドウィックさんのあいさつ
世界のワイン界とセーニャの誕生
1855年に仏ボルドー地方メドック地区&ソーテルヌ地区の格付けが行われ、フランスのファインワインの存在を世界に示しました。イタリアのワイン造りはフランスよりも古い歴史がありますが、世界を驚かせるワインの出現はスーパー・タスカンのサッシカイアやソライアで、それは1960年代後半から1970年にかけての出来事です。
ニューワールドでは1960年代後半に、アメリカ・カリフォルニアの地にワイナリーを興し、パイオニア的存在としてワイン界をリードしていたのがロバート・モンダヴィでした。そして、チリでは・・・アメリカをお手本にワイン造りを進め、国際市場への進出を狙っていましたが、1870年創業のヴィーニャ・エラスリスでも輸出は厳しく、チリワインの良さを認めさせるまでには至っていませんでした。
今は亡きモンダヴィさんとの2ショット、チャドウィックさん、お若い!
1991年、ロバート・モンダヴィが初めてチリを訪れます。チャドウィックさんの案内でアコンカグア・ヴァレー、マイポ・ヴァレー、コルチャグア・ヴァレーを視察。この当時、モンダヴィはすでにバロン・フィリップ・ロスチャイルドとのジョイント・ベンチャーで『オーパス・ワン』をリリースし、世界的名声を得ていました。
画像協力:セーニャ
セーニャの丘の中腹にある42㌶のぶどう畑にはカベルネ・ソーヴィニヨンCS、カルメネール、メルローME、カベルネ・フランCF、プティ・ヴェルドPV、マルベックMaを植樹
チリのポテンシャルを実感したモンダヴィは4年かけて、チャドウィックさんとアコンカグア・ヴァレーの理想的なテロワールを探し求めました。そして、2つのファミリーのジョイント・ベンチャーとして『セーニャ』がデビュー。1997年に、ファーストヴィンテージの1995年をリリースしています。スペイン語で〝シグナル〟の意味を持つワインは、チリ最初のアイコンワインになりました。
ベルリン・ティスティング
チリワインが世界のファイン・ワインであることを示すため、チャドウィックさんは2004年にベルリンでブラインド・テイスティングを仕掛けます。フランスの格付けトップシャトーと自身が造るワインとの比較試飲です。彼は「トップ5に入れば良いと思っていました」と語っていましたが、結果は1位『ヴィニェド・チャドウィック2000』、2位『セーニャ2001』で、チリ産が圧勝、世界を驚かせました。
彼がセーニャの畑を探していた当時、チリを訪問したのが日本のワインジャーナリスト有坂芙美子さんです。セーニャの生い立ちを誰よりも良く知っている彼女をチャドウィックさんはとても信頼しています。2004年のベルリン・テイスティングに参加できなかった有坂さんは、「東京で同様のテイスティングを開きましょう」とチャドウィックさんに提案。「日本はフランスワインの位置付けが高いのでギャンブルのようだ」と思いつつも、チャドウィックさんは提案を受け、開催を決断します。そして、2006年6月に行われたテイスティングでは次のような結果になりました。
>>>http://non-solo-vino.blog.so-net.ne.jp/2006-06-15
チリワインは熟成に耐えうるか
ボルドーのトップシャトーとのブラインド・テイスティングで世界的な評価を受けたヴィーニャ・エラスリスですが、チャドウィックさんにはもう1点、気になっていることがありました。チリワインの熟成の可能性です。これを証明するために、セーニャに特化したヴァーティカル・テイスティング・アジアンツアーが行われました。2011年の香港、台北、ソウルのツアーでは、アジア出身者として初めてマスター・オブ・ワインMWを取得した香港在住のジニー・チョー・リーMWが仕切っていました。2012年には中国(深圳、福州、廈門、杭州、上海)でもツアーを開催。ディナーで紹介された映像と同じyoutubeがあったので、ご参考までに。いずれの都市でもセーニャが健闘しています。>>>https://youtu.be/ZFAJlm5fYic
東京ではセーニャの4ヴィンテージを食事と合わせて
1999年ヴィンテージ
CS75%、ME16%、カルメネール9%
暑くて乾燥した年。わずかにブレット臭、中華街の香辛料(スターアニス、しょうが等)、口中ねっとり感、黒オリーブ、アーシーなニュアンス、タバコ、ソフトなタンニン、優しく心地良い余韻
2004年ヴィンテージ
CS51%、ME35%、カルメネール6%、CF5%、PV3%
冷涼年を反映したエレガントなヴィンテージ、料理との相性面で当日のベスト
深みのあるガーネット色、スミレの花、黒系果実、黒胡椒や黒オリーブ、鉛筆の芯、酸味もソフトでタンニンも滑らか、口中でのバランス良好。供出された料理と、うまく寄り添ってくれたヴィンテージ
2008年ヴィンテージ
CS57%、カルメネール20%、ME10%、PV8%、CF5%
2005年からビオディナミ農法を導入。ヴィーニャ・セーニャでは豊かな土壌とそこに生息する多様な生き物の生態系を保つことに注力。涼しい年で乾燥した夏。収穫期は長く、最後はカルメネール(5月2週まで)
チャドウィック:ビオディナミによって自然のエネルギーがワインに集まっています。カシスやブラックチェリー、土っぽさもあり、カルメネールからはバルサミコのニュアンスも感じます。甘いタンニン、舌触りも滑らかで、今後の熟成が楽しみなワインです。
現在市場に出ている2012年ヴィンテージ
CS52%、カルメネール23%、ME12%、Ma7%、PV6%、新樽率70%、22ヶ月樽熟
暖かくほどよい気候下、健全で凝縮感のあるぶどうを収穫。杏を思わせる酸味、黒系果実(カシス、ブラックカラント)、甘草、ココア(チョコ)、きめ細かい滑らかなタンニン、長い余韻、長熟のポテンシャル、上質で将来が楽しみなヴィンテージ.。味わい面で当日のベスト
チャドウィック:リズム感のあるワインを提供したい。ワインはCS骨格、カルメネールのスパイシーさや丸み、MEフレッシュな味わい、 Ma甘いチョコのニュアンス、PVスミレの香りが各要素を構成しています。2012年は赤ちゃんのようなワインですが、調和が取れていてタンニンはシルキーで余韻も長いです。若くても熟成しても楽しめるワイン造りを目指していますが、2012年はまさにそのようなワインです。
和の要素を盛り込んだメニュー
画像クリックで拡大
鴨胸肉とフォアグラのサラダ仕立て × セーニャ1999
舌の上に広がるフォアグラの脂分がワインを口にすることできれいに洗い流されて
金目鯛とごぼう 茄子のオランダ煮、葛を纏ったコンソメスープ、三色パプリカ × セーニャ2004
セーニャのアーシーさとごぼうの土っぽさ、和風出汁が絶妙、ナイスなハーモニー
茸と穴子の天ぷら × セーニャ2008
すきやき 焼き豆腐、椎茸、ぺティオニオン、温泉卵、ごぼうチップ、かんずり×セーニャ2012
醤油、ごぼう、かんずりの要素がセーニャの複雑味と絡み合って
お寿司と合わせ味噌 × ヴィーニャ・アルボレダ2013
ウエルカムドリンクに出たヴィーニャ・アルボレダ2013(SB100% )と合わせてみました。
超フレッシュな2013年(個人的には2012年ヴィンテージのほうが合うと思います)の清冽で石清水のようなイメージが和の素材と良い相性!
桜のデザート
終盤のごあいさつ
チャドウィック社長とマーケティング・ディレクターのロレトさん
記念イヴェントのお土産はベルリンテイスティングブックの第2版
チャドウィックさんにはfumiko名を入れたサインをお願いしました!
ヴィーニャ・エラスリス、ヴィーニャ・セーニャの今後更なる飛躍を期待しています。
ありがとうございました!!
画像クリックで拡大
タグ:ヴィーニャ・セーニャ
いつもお料理も実に美味しそうに写ってますねぇ。ライティングに制約のある中で凄いですね。それにしても美味しそう。
by gillman (2015-04-19 10:49)
gillmanさんからの嬉しいお言葉、元気が出ます!
その昔、プロのカメラマンさんから料理を取る際の光の取り入れ方を
伺い、それ以降、こだわっています。
八芳園のお料理は見かけだけでなく、美味でしたよ。
チリワインの素晴らしさも同時にお伝できれば、本望です!!
by fumiko (2015-04-19 11:13)