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シャンパンメゾンの『タルラン』を中心に土壌の違い、自根vs台木育ちの違いをチェック! [オープンカレッジ]

昭和女子大学オープンカレッジの今年初のシャンパン編講座で、過去になかった取り組みをしてみました。産経EXのワインのこころに書いた砂質土壌で育つ自根の希少シャンパン『ラ・ヴィ―ニュ・ダンタン』と、台木で育つ石灰質土壌とチョーク質土壌のシャンパンとの比較試飲です。講座生の皆さんにフィロキセラ禍以前のワインの味わいを体験していただく良いチャンスになりました。

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タルランのシャンパンは4アイテム用意しました

第1フライトはノン・ドザージュで3品種を使ったタイプ
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#1:タルラン ゼロ ブリュット・ナチュールNV
生産者:タルラン
産地:フランス・シャンパーニュ地方ウイィ村
品種:シャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエ すべて3分の1ずつ
ドザージュ:0g/L
デゴルジュマン:2011年1月
価格:5460円
■タルランが目指すシャンパン造りはノン・ドザージュ(ドザージュ糖分添加をしないタイプ)、ぶどうの素直な味わいをそのままシャンパンに表現することです。そのためには地中からのエキスを吸い上げたぶどうを優しくプレスして、きれいな果汁を取ることが重要になってきます。温度管理可能なステンレスタンクと、樽を使って一次発酵をさせた、その年のワインをベース(2006年)にして、そこに樽熟成のリザーヴワインを40~45%使い、ブレンド後、二次発酵させます。

#2:アヤラ ブリュット・ナチュールNV
生産者:アヤラ   
産地:フランス・シャンパーニュ地方アイ村
品種:ピノ・ノワール38%、シャルドネ35%、ピノ・ムニエ27%
ドザージュ:0g/L
価格:5250円
■ボランジェの傘下アヤラも切れの良い味わいのシャンパンを造っています。ベースワインは2008年で、ステンレスタンクでストックしているリザーヴワイン(2006年と2007年)を使っています。糖分添加は無ですが、1リットル中、2~3gの残糖があります。

2アイテムとも気泡は繊細、2008年をベースにしている#2のほうが淡いイエロー、若さを感じる色調です。タルランは口中で樽由来のリザーヴワインのコクがあり、逆にアヤラは口中ですっきりとした切れ味があり、ミネラル感豊か、微少な残糖感が全体をバランスよく引き立てています。

第2フライトはピノ・ムニエ100%とオマージュ・ワイン
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#3:タルラン ラ・ヴィーニュ・ドール2002
生産者:タルラン     土壌:スパルナシアン(粘土石灰質)
産地:フランス・シャンパーニュ地方ウイィ村
品種:ピノ・ムニエ100%
ドザージュ:4g/L
デゴルジュマン:2010年6月22日
価格:11025円
■タルランが位置するヴァレ・ド・ラ・マルヌ特有のスパルナシアン粘土石灰質土壌で育まれてきたピノ・ムニエから生まれたシャンパンで、ぶどう樹は51年の樹齢。ソフトでなめらかな口当たり、中盤以降の酸味の広がりと若干のビター感が魅力

#4:タルラン キュヴェ・ルイ1998
生産者:タルラン     土壌:チョーク質
産地:フランス・シャンパーニュ地方ウイィ村
品種:シャルドネ50%、ピノ・ノワール50%
ドザージュ:3g/L
デゴルジュマン:2009年3月
価格:7875円
■第一印象は心地よいロースト香、蜂蜜や黄金糖のニュアンス、すっきり感(酸の印象)がありながら、重厚さ(糖分とミネラルに由来)もあり、余韻も長い。ルイ・タルラン(1750ー1806)に対するオマージュのシャンパン、上質!

第3フライトは当日のハイライト、自根と台木の違いをチェック
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#5:ランスロ・ロワイエ ブリュット・ミレジメ2004
生産者:ランスロ・ロワイエ 土壌:石灰質
産地:フランス・シャンパーニュ地方クラマン村
品種:シャルドネ100%
ドザージュ:非公開
価格:7350円
■第一印象は石灰質土壌からくるミネラル感、香りはブリオッシュやヴァニラ、蜂蜜、皮革、アフターに軽いビター感。口あたりはなめらかで上質。私が感じているコート・デ・ブランのグランクリュ畑クラマンは、スリムな印象がありながら、芯が太いシャルドネのイメージなので個人的にも好きな味わい。

#6:タルラン ラ・ヴィーニュ・ダンタン2000
生産者:タルラン  土壌:砂質/franc de pied(自根)
産地:フランス・シャンパーニュ地方ウイィ村
品種:シャルドネ100%
ドザージュ:2g/L
デゴルジュマン:2010年3月1日
協賛:(株)八田
■3アイテムの中で一番濃い黄金色(発酵も熟成も樽使用)、ミネラルは泡に溶け込んでいる印象。人間に例えると・・・初対面ではソフトなイメージを与えるのですが、会話をしていくにつれ、内に秘めた経験を静かに語ってくれる人。女性なら肉感的な雰囲気を漂わせているものの、決してグラマーなタイプではない、そんな感じです。余韻にゆっくり広がるミネラルと酸が印象的でした。

#7:ド・スーザ キュヴェ・デ・コダリー ブラン・ド・ブラン グラン・クリュNV
生産者:ド・スーザ      土壌:チョーク質
産地:フランス・シャンパーニュ地方アヴィーズ村
品種:シャルドネ100%
ドザージュ:3.5g/L 
価格:13650円
■3アイテムの中で一番切れが良く、口に含んだ瞬間、チョーク質の特徴を感じます。魅力的なシャンパン! アヴィーズ村の南向きから南東向きの斜面で穫れたシャルドネは十分に熟し、ぶどう本来の旨みがあります。樹齢は50年以上、樽発酵、樽熟成ながら、樽のニュアンスを感じさせないのは、ぶどうのポテンシャルが相当高いのだと思います。リザーヴワインは50%(2004年50%+1995年~2003年50%)を使用

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この日のスペシャルとして考えていたのが、和食とのマリア―ジュ!
超新鮮なひらめを、目白『太古八』さんに用意していただきました。
薄口しょうゆ、わさびを使わず、そのまま食してみると、口のなかでほんわかと甘みが広がって

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供出シャンパンは全7アイテム、贅沢なテイスティングでした

「ひらめとシャンパン」のマリア―ジュで、講座生の一番人気は#2のアヤラと#7のド・スーザ。
ひらめに何もつけないで合わせた時の、この2アイテムは抜群でした。また、薄口しょうゆとわさびを使って食した場合、#7はわさびが甘く感じるくらいの絶妙なマリア―ジュになりました。チョーク質土壌を感じさせる凛とした切れ味がポイントだったと思います。

そして、とても興味深かったのが、ひらめと自根の『ラ・ヴィ―ニュ・ダンタン』との相性です。
ひらめと合わせると、試飲した時には現れてこなかった“線の太さ”を感じ、より複雑になって終盤を迎える味わいになります。今までのシャンパンとは違う“幅広さ”を感じました。この感じが、自根の特徴なのかと、判断しておりますが・・・マリア―ジュでは、薄口しょうゆとわさびをつけても、ダンタンのほうがインパクト大、ひらめが負けています。それをもとにして考えてみると、和の素材で合わせるなら、特上の塩やだし汁を使った料理のほうが楽しめそうです。むしろフレンチで、クリームソースやバター系の料理と合わせてみたいと感じました。『バベットの晩餐会』に登場する「ウズラのパイ包み」なども合わせたい一皿です!



ブノワさんからのお返事!
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シャンパン編講座で試したマリア―ジュを含めて、結果をブノワさんに報告。
土壌の違いについて伺ってみました。

砂質で育つ自根と台木のシャルドネの違いは
砂質土壌とチョーク質・石灰質土壌を語る前に、タルランの『ラ・ヴィーニュ・ダンタン』が“自根”であることを考える必要があります。タルランでは砂地で育てている自根のシャルドネと、自根でない(台木に接木した)シャルドネがあります。両者は同じ砂質土壌で育ちながら、香りは異なっています。

双方の共通点は■レモンのような強い酸味を生み出さないこと、相違点は■接木されたシャルドネは軽やかな香りであるのに対し、自根のシャルドネはより複雑で濃厚、力強さがあります。もちろん樹齢も関係していますが、根の働きの違いも関係していると思っています。接木している根(アメリカ系の台木にシャルドネの樹をつないでいるので)は、ある意味、“間接的な形”でミネラル分を吸収しているといえるからです。

砂地で育つ2タイプのシャルドネは、チョーク質・石灰質土壌のシャルドネに比べて、確かに酸味が柔らかく、鋭さもありません。自根のシャルドネには特有の“丸み”があり、それは単に柔らかさから生まれてくるものではなく、砂質土壌がもたらす独自の柔らかさが、自根がもたらす、“濃厚さ”、“複雑さ”、そして“力強さ”の要素と微妙に絡み合って生まれてくるのです。

チョーク・石灰質土壌と砂質土壌の違いは
チョーク質・石灰質土壌と砂質土壌のシャルドネの違いですが、明らかにぶどうの育ち方が違います。ミネラル分は石灰質に多く存在しますので、根が石灰に近いということは養分のアクセスが容易であるということになります。また、ここで忘れてはいけないのが水分の存在です。水分は栄養分の運搬役として機能します。ご承知のように、石灰土壌は水分をストックする機能も兼ね備えており、これがさらにミネラルの吸収力を高めてくれます。

これに対して、砂質土壌に育つぶどうの場合、ミネラルを探しに地中深くまで根を伸ばす必要があります。また吸収力を高める水分の存在も砂地では期待できません。もちろん、栄養の過不足という問題ではなく、どちらがより簡単にミネラルを探しにいけるかの問題になります。ぶどうの育つ環境が全く違うのです。ぶどうの根の張り方、根の長さが違うということは、最終的にぶどうの根に到達した際のミネラル構成にまで影響を与えます。

根が長く複雑に張っているぶどうの方が、ミネラル分をぶどうまで運ぶ時間が長くかかりますし、その過程で様々な影響を受けやすいといえます。言葉で100%理解していただくのは、とても難しいことですが、ラ・ヴィーニュ・ダンタンはシャンパーニュ地方のメゾンの中で唯一自根のシャルドネ100%から造られおり、香りや味わいは土壌条件や根のコンディション、環境等から多大な好影響を受けているのです。香りや味わいから、それらを感じていただければ嬉しいです。

自根の双璧!
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画像:ボランジェの自根のピノ・ノワール畑/2009年9月訪問時撮影

自根のシャンパンと言えば、ボランジェの『ヴィエイユ・ヴィーニュ・フランセーズ(105000円)』が有名です。ピノ・ノワール100%の極上品です。2009年の訪問時、ぶどう畑を見せていただきました。タルランのシャルドネと同じく、プロヴィナージュ(ぶどう樹の枝を土中に埋め、根が出てから切り離す取り木)で株を増やしています。畑は全部で3区画ありましたが、1区画は被害を受けてダメになってしまったそうで、現在は2区画「ショード・テール」と「クロ・サン・ジャック」で、貴重な自根のぶどう栽培をしています。

シャンパーニュ地方を代表する黒ぶどうのピノ・ノワールと白ぶどうのシャルドネ! 
同地方の高貴なぶどうから造られる『ヴィエイユ・ヴィーニュ・フランセーズ』と『ラ・ヴィ―ニュ・ダンタンは、“自根のシャンパンの双璧”と言えます。ワイン造りの伝統や歴史を感じさせるシャンパンです!

ワインラバーさん以外の皆さまにも興味をもっていただきたい逸品です。ぶどう害虫フィロキセラの被害を受ける前のぶどうの味を感じることができるシャンパンです。ともに生産量が少ないので入手はなかなか難しいのですが、フランセーズより買いやすいラ・ヴィ―ニュ・ダンタンは次のヴィンテージの入荷待ちです。入れば「買い」ですね!

■製品の問い合わせは各輸入元まで
・タルラン&ランスロ・ロワイエは八田 電話03-3762- 3121
・ボランジェ&アヤラはアルカン 電話03-3664-6591
・ド・スーザは中島董商店 電話03-3405-4222

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tsworking

一つ一つが奥が深い・・・。
この食べ物とあわせたら、どんな世界が広がるのか。
想像するのも、すごいなぁ・・・。

凄いなぁ・・・。
by tsworking (2012-01-29 16:23) 

fumiko

tsworkingさん、コメントありがとうございました!
同じぶどう品種でも土壌によって微妙に味わい&香りが違いますし、
発酵や熟成のための容器やリザーヴワインの量によっても違ってきます。それらを食事と合わせた時の印象も当然変わってきます。
奥が深いのですが、相性の予測自体、わくわくするほど面白いです。
by fumiko (2012-01-31 00:43) 

gillman

ヒラメとシャンパン、あ、いいかも。
試してみよう。食のマリアージュって、異なる土地が育んだ賜物の貴重な出会いでもあるんですね。奥が深い。
by gillman (2012-01-31 20:52) 

fumiko

gillmanさん
寒い日が続きますが、体調はいかがですか?
この時期、ドイツ生活が長かったgillmanさんにはホットワインがおすすめです。
シャンパンには、ヒラメも合いますし、フグも良いですよ!




by fumiko (2012-01-31 23:53) 

otemoyan

fumikoさん、
ご訪問おそくなりました<m(__)m>
今年もよろしくお願いしますー!

ヒラメがとってもおいしそうですね(^^)v
ワインに合いそう・・・。
ホットワインは酔いやすいのかなぁ、興味あります!
by otemoyan (2012-02-01 15:35) 

fumiko

otemoyanさん、今年もよろしくお願いします。
白身とシャンパンは合いますよ。おすすめです。
立春とはいえ、まだまだ寒い日が続いていますので、体を温めてくれるホットワインはお風呂あがりにダブル効果でいいかも。
by fumiko (2012-02-04 19:37) 

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