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スペインのロマネ・コンティと呼ばれる『ベガ・シシリア』のワインスタイル [ワイン]

仕事柄、来日中の素晴らしい生産者たちとテイスティングをご一緒にさせていただく機会が多いのですが、卓越したワインを味わうことで新たな発見も多く、その奥深さを感じます。

第1フライト
ミリオン商事の招聘で、“スペインのロマネ・コンティ”の異名を持つボデガス・ベガ・シシリアの醸造責任者ハビエル・アサウス氏が来日しました。料理と合わせながらのセミナー@ホテルオークラ東京『バロン オークラ』で、赤ワインはスペインの固有品種テンプラリー二ョが中心です。
DOリベラ・デル・ドゥエロではティント・フィノ、DOトロではティンタ・デ・トロと呼ばれています

今回の拙ブログは長文です。ベガ・シシリアの総まとめです!!
■素晴らしい生産者はいかなる気候であろうとも素晴らしいワインを造り出すことができる
■ワインは瓶内熟成(以後:瓶熟)させることでよりエレガントになっていく
この2点を改めて実感させられたセミナーでした。
その最高峰『ウニコ』はバースデーヴィンテージワインとしてお薦めしたいワイン、そう思っています。

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まずは(右から順に)#1:ピンティア2006、#2:同2005、#3:アリオン2005、#4:同2004の
4アイテムを比較。次に中央の2グラス(#2:ピンティア2005、#3:アリオン2005年)を比較。

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『ピンティア』は1996年、DOトロにぶどう畑を購入してスタートしたプロジェクトによるもので、1997年、1998年、1999年、2000年の4年間は土壌やぶどうの個性を最大限に生かすため、実験を重ね、試行錯誤を繰り返しながら、ベガ・シシリアが求めるワインスタイルを追求していました。結果、2001年ヴィンテージを8万本生産して2004年に初リリース。ちなみに2008年ヴィンテージの生産量は28万本の予定だそうです。

このワインのコンセプトはDOトロの特徴である力強さに加え、同ボデガが一番大事にしている“エレガンス”の表現。現在は瓶熟期間1年ですが、ワインをよりエレガントにするため、3~4年後には瓶熟を2年にしてリリースする可能性もあるとか。ぶどう樹の平均樹齢は40年、畑には台木のない古樹が多いのが特徴。土壌はローヌのシャトーヌフ・デュ・パプ同様、大きな石が多く下層は粘土質。石が夜間でも熱を保ち、そのためぶどうは完熟し、ヴィンテージごとの大きな差はないようです。

『アリオン』のDOはリベラ・デル・デュエロ。同ボデガが1991年から自社畑のすぐ近くのワイナリーを買収して、新しいスタイルを目指して造り始めたワインです。樹齢は25年から30年。ボルドースタイルで、男性的で若干粗野なイメージのピンティアに比べて、お行儀が良くて繊細な印象。ヴィンテージごとの差が出る産地(2004年は最高の年であり、2007年は苦労の多い年等)とのことです。

第2フライトIMG_3994.JPG
醸造責任者のハビエル・アウサス氏は 「 『ウニコ(“唯一”の意味)』 には2つのスタイルがあり、フェミニンでありながら男性的な面を持つタイプと、ウニコ本来のバロック的でフェミニン、複雑かつエレガントなタイプです。前者は00年、96年、94年、86年、70年、68年、64年、62年、53年、42年、25年、19年であり、後者は99年、95年、91年、81年、75年、74年、73年、67年、66年、65年、57年、47年、21年です」と。
スラスラとよどみなく出てくるヴィンテージの記憶に、一同感嘆!!

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(右から供出順に)
#5:オレムス・トカイ・フルミント・ドライ・マンデュラス2006(辛口)、#6:バルブエナ2004、#7:同1999、#8:ウニコ1999、#9:オレムス・トカイ・アスー5 プット二ッシュ1999(甘口)

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#5に合わせて、あかざ海老と魚介類のサラダ仕立て ナンチュア風味のドレシングを

1993年、同ボデガはハンガリー・トカイのオレムスを傘下におさめました。製樽工場があるので樽は自前。トカイで樹齢80年~120年の木材を購入し、3年間のシーズニング(木材を野外で風雨にさらしエグミ等の不要な成分を出し切る工程)後、製樽。

輝きのある黄金色で白い花や白コショウの香り、テロワール由来の酸味、ミネラル感あり。ハンガリー産オークで7ヶ月熟成させたフルミント100%のドライなワイン。アウサス氏「しっとりとした味わいのブルゴーニュ的なワイン、火山性土壌からくるシャープなミネラル感が特徴です」
海老の旨味たっぷりのナンチュア風味のドレッシングが海老の甘さをより引き立て、ワインを飲むと口中が洗い流されるという相互の関係が後引く美味しさに繋がって。

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#6#7#8の3種類に合わせて、骨付き仔羊背肉のロースト プロヴァンス風野菜の煮込み添え

バルブエナ1999に合わせると、肉汁の甘味がじわ~っと伝わってくる印象。ウニコ1999と合わせるとワインの“酸味”が仔羊の旨味を引き立て、ワインの芯になっているカベルネと仔羊の相性の良さを実感。

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#9の甘口ワインに合わせてデザートを

極甘口ワイン。干ぶどうやアプリコットなど甘やかながら酸をも連想させる果実の風味があり、口に含んでもその印象はそのまま。凝縮した甘さの中に上品な酸味の広がりとビター感もあるので、デザートのライムを添えたケーキ、チョコとも相性良し。ぶどう品種はフルミント主体でハルスレヴェリュ、マスカット・ルネルも使用、新樽で2年半熟成させています。アウサス氏「マンゴーやパパイア、エキゾチックフルーツの印象もあります」

多様性のあるワイン造り
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(右から)#6:バルブエナ2004、#7:同1999、#8:ウニコ1999、ともにDOリベラ・デル・デュエロ

アサウス氏「2004年ヴィンテージ(ティント・フィノ90%、メルロー&マルベック10%)は醸造家など必要ないほどの良年でした。ワインはまだまだ若いので瓶内でもっとリラックスさせる必要があります。1999年は逆に難しい年で3分の1が無駄になってしまいました。このような年が3回続いたら醸造家は心労で倒れてしまいます(笑)」

『バルブエナ』はボデガス・ベガ・シシリアのテロワールを反映させた若々しいワインで、同ボデガのワインスタイルを表現しています。一方、『ウニコ』は特別の年にだけ造られるスペシャル・キュヴェ。前者は熟成期間約3年、瓶熟期間2年。後者は熟成期間約6年から7年、瓶熟期間3年から4年。収穫してからリリースするまでにバルブエナで5年、ウニコでは最低でも10年かかります。

2007年にアサウス氏が来日した時、「何人か子供がいたら、それぞれの性格に見合った教育をするのと同じです。各人を素晴らしい人間にするために異なる教育をしているのです」と語っていましたが、その精神はピンティアやアリオンの説明でも十分に理解できました。

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#7:右がバルブエナ1999(ティント・フィノ80%、メルロー&マルベック20%)
#8:ウニコ1999(ティント・フィノ90%、カベルネ・ソーヴィニヨン10%)

メルローやマルベックに由来する黒系のイメージが伝わってくるバルブエナ1999、飲むまでに10年は必要とのこと! まだまだフレッシュで色調にも紫目が残るウニコ1999、酸味もあり、口中にアルコールの温かさが広がり、まろやかな印象、それにしても若い!

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上記と同じワインを斜めの角度から

私的感想
中味の濃いセミナーでした。ゆえに記述したいことは山ほど(笑)。まとめるのに結構時間がかかりました。ベガ・シシリアのワインは2007年の「ウニコヴァーティカルテイスティング2007」以降、毎年体験させていただいていますが、今回は総復習の意味で、大事な忘備録になりそうです。

第1フライトに登場した『ピンティア』と『アリオン』のぶどう品種はともにテンプラニーリョ100%ですが、2つのワインスタイルは大きく異なります。
前者は豊かな果実味と凝縮感、力強いパワーがあり、酸味はどちらかというと穏やか。2006年はまだ若く、樽(フレンチオークの新樽70%とアメリカンオークの新樽30%)由来のヴァニラ香やロースト香、ココアや乳酸の甘やかなニュアンスが顕著。2005年は最初香りもおとなしく、控えめでしたが、時間の経過で香り&味わいに複雑味が出てきました。氏がおっしゃる瓶熟効果でしょうか。個人的には2005年が好みで、仔羊に添えられていたプロヴァンス風野菜の煮込みの旨味とワインの旨味が良く合っていてとても美味に感じました。

後者はアウサス氏が「弊社のワインの中で最もボルドー的スタイル」と主張しているように、アロマ豊かで、木目こまかなタンニンを感じた後、ワインはなめらかに口中に。酸味はしっかり感じます(土壌に由来)。樽(フレンチオーク100%)からの要素は控えめで大人びた印象。2005年ヴィンテージのピンティアとアリオンを交互に試飲することで、それぞれのワインの特徴を感じ取ることができました。

それらを簡潔に表現すると・・・
■若いうちは元気で果実たっぷり。瓶内熟成を経てエレガントさが際立ってくるピンティア
■石灰粘土質由来の豊かな香り、繊細な味わい、余韻に長く上品な酸味が続くアリオン

現在のアジア市場、中国市場は
シンガポール、マレーシア、香港を回ってきたというアウサス氏に「アジア市場、中国におけるワインの動き」について質問させていただきました。
そのお答えは「アジア市場では文化の中にワインが根付いていなかったことが第1の問題です。まずはワインを飲む気になっていただかないと。第2に中国では現在フランスワインにのみ特化していることが挙げられます。フランスワインに関してはワイン名、知名度で売られています。人気の筆頭はシャトー・ラフィット・ロートシルトで、セカンドワインのカリュアド・ド・ラフィットも良く売れています。富裕層の中にはベガ・シシリアについて聞いてくる人もいますが、フランスワインブームが過ぎ去った後で、スペインワインに注目が集まるのではないかと思います。アジア市場は巨大であり、特に中国はそうです。ただ、弊社としては各国の最高の場所に存在することが大事だと考えています。それはロンドン、東京、NY、カラカス等であり、100箇所以上の場所にベガ・シシリアは存在していますが、重要なことはあくまで最高の場所。量的なものではなく、“質”を重視していくことです」

ボデガス・ベガ・シシリアのワインについてのお問い合わせはミリオン商事株式会社まで
>>>http://www.milliontd.co.jp
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fumiko

koji様、チェックありがとうございます♪

Winoさん、愛娘のバースデーヴィンテージワインにいかがですか?
by fumiko (2010-03-22 21:14) 

hako

昼の光の中のハビエルさん、ワイン群と、きれいな料理と、気持ち良さそうですね。
長文も、ワクワクしながら、読ませてくれますね、愉しいです。
by hako (2010-03-24 21:10) 

えめぞ~

ボクもウニコフライトしてみたいッス!

ちなみに母親が最も愛するワインがウニコ、
なのでわが家のワンコの名前もウニコです。

最近は面倒臭いのでウニコではなくウニと呼んでいますが(^-^;
by えめぞ~ (2010-03-25 18:19) 

fumiko

hakoさん、チェック&コメント、ありがとうございました♪
はい、バロンオークラという贅沢な場所で、贅沢な日の光を感じながら、
貴重なお話を伺うことが出来ました。
長いリポートもしっかり読んでいただけた由、とても嬉しいです!!

自分で痛感しているブログの効用・・・それはまさに自分のための忘備録
最近忘れっぽくって、マジで(笑)


YUTAKAさん、チェックありがとうございました!


えめぞ~さん、久々のコメント、ありがとうございます。
えっ、母上の一番のお気に入り? 知りませんでした。
えめさ~ん、バースデーヴィンテージをプレゼントしましたか?
ワンちゃんの名前も・・・イイですね。これも知りませんでした~
by fumiko (2010-03-25 19:07) 

fumiko

penguing様、はじめまして。チェックありがとうございました♪
スペインワインがお好きなのですか、それともウニコ???
by fumiko (2010-03-27 12:28) 

uge

長熟と聞いて4年ほど前に娘のヴィンテージを買ったのですが、状態もさることながら、一緒に飲んでくれるかどうかが問題ですね(苦笑)。
by uge (2010-03-28 14:22) 

uge

与太話だけで送信してしまい、失礼しました。
情報の濃いレポートをありがとうございます。
ベガ・シシリアが凄いのは、王室御用達の由緒あるボデガでありながら、進取の精神を絶やさないところにあるのですね。伝統の力を感じます。

by uge (2010-03-28 14:35) 

fumiko

ugeさ~ん
大丈夫、大丈夫。愛娘ちゃんに拙ブログを読んでいただけば、ウニコの素晴らしさもご理解いただけますし、娘思いのugeさんのお気持ちも、ね。
えめぞ~ママもウニコファンとのことなので、その点も心強いですね(笑)

>王室御用達の由緒あるボデガでありながら、進取の精神を絶やさないと>ころにあるのですね
同感です。そこが大いなる魅力だと感じています。

by fumiko (2010-03-28 23:37) 

yuka

アリオンもウニコも本当に美味しいですよね!いつもいつも飲むばかりで全く覚えられない私・・・・。どこのレストランでなさったのですか?
by yuka (2010-03-31 17:24) 

fumiko

yukaさん、これはホテルオークラのなかにある『バロンオークラ』です。
ボデガス・ベガ・シシリアには“本物”を感じます。
良いものを造るためには時間を惜しまない、という気合です。
これは資金がないとできないことです。
by fumiko (2010-04-01 10:10) 

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