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サヴォワワインの生産者と和食とのマリアージュ@広尾おくむら [来日したワイン生産者&関係者]

Vin de Savoie × Japanese Cuisine(washoku)
 











サヴォワから来日した生産者を囲んで




















生産者の皆さんにとって多忙な一日。
午後からのマスタークラスセミナー@フランス大使公邸に続いて、夜はマリアージュ体験@広尾おくむら


サヴォワワイン生産者委員会(CIVS)のアレクシス・マルティノー ディレクター(最左) と同コミニュケーション担当のフランク・ベルクレスさん(最右)

サヴォワワインの基本情報
サヴォワ県の作付面積は2,200㌶、全体がAOP(原産地保護呼称)の対象になっています。畑は標高250~500m、ぶどうは山のふもとの急斜面で栽培しています。品種は23あり、その多くは固有品種。代表的な白ぶどうはジャケールやアルテス、黒ぶどうはモンドゥーズやぺルサン。比率は白ワイン70%、赤ワイン20%、ロゼワイン5%、スパークリングワイン5%の比率。国内消費が95%、輸出はわずか5%。スパークリングワイン=クレマン・ド・サヴォワには注目が集まっていて、スカンジナビア諸国、アメリカ、ベルギーを中心に輸出。サヴォワワイン全体の輸出相手国第1位はアメリカで、「日本は第2位の市場」とフランクさん。


白ぶどう
◍ジャケール/サヴォワの6つのアペラシオンで使用している品種。粘土石灰質と相性良好。
◍アルテス/熟すに従って黄金色、ピンクから赤い色に変化。別名ルーセット。
◍ルーサンヌ/ベルジュロンと呼ばれていた品種。晩熟品種で生産地は限定されている。
黒ぶどう
◍モンドゥーズ/サヴォワを代表する品種。石灰岩や片岩の土壌と相性良好。
◍ガメイ/早熟で収穫エリアは限られている。ストラクチャアがあり、風味豊か。
◍ピノ・ノワール/ 第2次世界大戦後に導入。ぶどう畑全体のわずか2%、50㌶


昨年7月、サヴォワワインと和食のマリアージュ@小田島にお声がけいただいたのですが、その時に白ワインは石灰に由来するミネラル感、赤はボディ感はありながら料理に寄り添うタイプという印象を受けました。特に、白の主要品種ジャケールやアルテスは同じ山岳地帯スイスのシャスラやオーストリアのグリュナー・ヴェルトリーナーのように香りに癖がなく、ニュートラルなので、甲州ワインのように、和食と合わせて楽しめると実感!

和食とのマリアージュ
料理の構成は、CIVSからのワインリストとおくむらさんからのメニューを勘案して、中西祐介ソムリエが担当しました。


オードブル5種盛り合わせ
◍ガラスの器はガスパッチョ(スイカ、フルーツトマト)
◍焼とうもろこし、雲丹
◍鰻蒲焼、キャビアドオーベルジーヌ
◍イチジク、ブルーチーズ
◍カニ、ビーツマリネ 
#1:Domaine Vendange, Crémant de Savoie, Grande RéserveNC
#2:Domaine Jean Perrier&Fils, Savoie Apremont, Gastronomie2018
#3:Domaine Dupraz, Savoie Apremont, Terres Blanches2018

青木私感:唯一の泡もの#1は2016年がベースワインのクレマン・ド・サヴォワ。ドライでスマート。柑橘系果実やストーンフルーツのニュアンスがあり、グラス内の温度が上って複雑さが増す印象。#2ジャン・ペリエ・エ・フィスのジャケールはフレッシュで白い花やミネラル感豊か、カニやビーツマリネと合わせて〇、シュル・リーで12ヶ月置いた#3ドメーヌ・デュプラはイチジクやブルーチーズと合わせて〇、鰻蒲焼とジャケールの相性には多くの生産者が納得。


碗物
◍合鴨ロース、コンソメ、ブイヨンドレギューム、冬瓜、舞茸、シメジ、トリュフ
(右から順に)
#4:La cave du Prieuré, Roussette de Savoie 2018
#5:La cave du Prieuré, Roussette de Savoie Marestel 2018
#6:Les Fils de René Quenard, Savoie Arbin, Clos de laGalèze2017



青木私感:旨味が効いたスープがすべての要。出汁をひと口味わってワインを口にした時の渾然一体感は好印象。素直な味わいの冬瓜からきのこ類へ、きのこ類からトリュフへと重心を移していくにつれ、複雑味が増す味わい。#4
#5ルーセットは旨味との統一感、#6モンドゥーズはきのこ風味とのハーモニー。汁物とは合わせにくいはずのワインの“酒質”を考えたからこそできた組み合わせで、ナイス・マリアージュ!
ただ、(私の前方に座っていた)カーヴ・デュ・プリウレの方には「白は魚!」との思いがあり、相性には満足せず、手長海老的料理を希望していました。その点に関して言えば、和食の出汁の繊細さ、奥深さにどれだけ慣れているかということが根底にあると感じました。


旬のもの
◍鱧フライ、白味噌ソース、野菜マリネ(青トマト、水茄子、あかねカブ)
#7:Château d'Apremont, Savoie Apremont, Cuvée Spéciale Jacques de Montmayeur2017
#8:Domaine Vendange, Roussette de Savoie, Madame de M…2017
#9:Domaine Jean Perrier & Fils, Roussette de Savoie Monterminod 2017

青木私感:ジャケール100%の#7シャトー・ダプルモンはミネラル感が際立ち、厚みもあり、溌剌とした酸(ノン・マロ)の効果で鱧フライの脂分を洗い流してくれる印象。アルテス100%(MLF有)の#8ルーセット・ド・サヴォワと#9同モンテルミノは、#8はジンジャーや柑橘類の砂糖漬け、#9はさらに骨格があり、蜂蜜や果物のコンフィの要素。白味噌ソースをブリッジ食材にすることで、ワインの豊潤さと果実味が引き出された感じ。


近海より
◍秋鮭西京焼き、オゼイユソース
#10:Domaine Denis et Didier Berthollier, Savoie Chignin Bergeron, Les Salins2016
#11:Maison Cavaillé, Savoie, Origine2015
#12:Maison Cavaillé, Seyssel, Vieilles Vignes2014

青木私感:西京焼に#10シニャン・ベルジュロン(ルーサンヌ)の厚みとねっとり感、#11ジャン・キャヴァイエ(CH、ジャケール、アルテスのブレンド)の豊かさ、#12ルーセット・ド・セイセル(アルテス)の複雑さを合わせて!   唯一のルーサンヌはシュル・リー由来の旨味、スモーキーさが西京焼の味わいに馴染んでバランス良し。


シグネチャー
◍黒毛和牛フィレ肉 山椒
#14:Domaine Dupraz, Savoie Mondeuse, Phoenix2018
#15:Domaine Denis et Didier Berthollier, Savoie, Et ma goutte de…2018
青木私感:赤ワインとお肉という定番の組み合わせに、山椒、わさび、ガーリックのソースを添えて。#14サヴォワ・モンドゥーズは黒系果実やスパイス、タバコ等の要素を備えた骨格あるワイン。自然酵母で発酵させた#15モンドゥーズは、色調は濃紫、スミレやピンクぺッパー、ふくらみのある味わいでタンニンの存在感も。ともに山椒との相性も良く、和の食材に寄り添ってくれる包容力あり。


一杯のひととき
◍ミニャルディーズ


ディナーに参加した生産者

(左から)
Jean Perrier & Filsのジル・ペリエさん、Philippe Vialletのマチュー・ファントッツィさん、Domaine Duprazのジェレミー・デュプラスさん、Maison Cavailleのジャン・クリストフ・カバイユさん、Domaine Vendangeのダイアン・ゴネルさんand La Cave du Prieureのシモン・バーレットさん



愛娘さんが作ってくれたという日仏対訳表を手に笑顔のアレクシスさん

ワイン生産者団体の役員は、ワイン関係者から選出されることが多いのですが、サヴォワワイン生産者委員会(CIVS)のアレクシス・マルティノー ディレクターはユニークな経歴の持ち主で、17年間チーズ業界で活躍なさってきた方です。ディナーでは隣席だったので会話するチャンスがありました。たまたまチーズ話題になった時、あまりの詳細さにびっくり。訳を伺ったところ、経歴がわかりました。ワインにどっぷりつかっていない点やサヴォワワインの生産者を一歩引いた立ち位置から見る余裕もおありなので、CIVSの新ディレクターの手腕に期待したいです。

収穫開始は9月10日頃とおっしゃっていましたが、今年は雹害や嵐に見舞われ、アプルモンのコミューンではぶどうが収穫できなくなった生産者が数社あるとのこと。量的にも質的にも恵まれていた2018年よりは減量になりますが、納得のいく収穫であることを願っています。

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