スペイン固有品種アイレンとテンプラニーリョに特化するアレハンドロ・フェルナンデス [来日したワイン生産者&関係者]
マンダリンオリエンタル東京の最上階『KSHIKI(ケシキ)』の大きな窓から見える景色(けしき)を背景に、グラスに注がれたペスケラをキャッチ! グラス壁面をゆったり流れるワインの涙が見えますよね。骨太かつ優雅、スペインが誇る銘醸ワイン
スペインのペトリュスと称されるペスケラ
ペスケラのオーナー、アレハンドロ・フェルナンデスさんの次女オルガ・フェルナンデス・リベラさんが来日し、偉大な父親のこと、スペインの固有品種アイレンとテンプラニーリョに特化する理由、ワイン造りへのこだわり等を語りました。同行者はティント・ペスケラ・グループのマーケティングマネジャー&エイジェントのスティーブ・メツラーご夫妻とミゲル・エンジェル・ボコさん
その昔、ジャンシス・ロビンソンMWのインタビューに対して、「テンプラニーリョは世界一のぶどう、他のぶどうの原型、精一杯守らないといけない」と答えていたフェルナンデスさん。同時に、シャトー・ペトリュスと同格的な発言もしていました。ボルドー右岸を代表する品種メルロ100%(カベルネ・フランを栽培していてもワインはほぼメルロ100%)で造られる銘醸ワインと、単一品種でのみ造る自分のワインが同じスタンスであることを強調したかったのだと、今回の取材を通して感じました。
また、ペスケラがスペインの革命的ワインと言われるゆえん、それはオルガさんの言葉を借りれば、「スペインを代表するワイン産地リオハで造られていた伝統的なワインとは全く異なるスタイルであること。つまり、色調は濃く、コクがあり、樽熟期間も短かい」という点にあると。
4つのボデガについて
グルーポ・ペスケラは家族経営で、現在4つのボデガを所有しており、起ち上げた順にティント・ペスケラ(1972年設立)、コンダード・デ・アサ(1987年から建設開始)、デエーサ・ラ・グランハ(1998年設立)、そして最新のエル・ビンクロ(1999年設立)になります。
試飲ワイン7アイテム
#1:2011 Alejairen Crianza (ボトルなし)
参考上代3800円
画像左から
#2:2008 El Vinculo Crianza
参考上代3500円
#3:2006 Dehesa La Granja
参考上代3600円
#4:2009 Condado de Haza Tinto
参考上代3800円
#5:2010 Tinto Pesquera Crianza
参考上代4200円
#6:2009 Tinto Pesquera Reserva
参考上代6500円(VT2008)
#7:2003 El Vinculo Gran Reserva Paraje La Golosa
参考上代7000円
エル・ビンクロ
スペイン中央部ラ・マンチャにあるボデガ『エル・ビンクロ』は、昔、オルガさんの祖父と父親がワインを造っていた土地であり、今はこの地と離れた場所(リベラ・デル・ドゥエロ)にいるので、「いつも思い出し、忘れないようにしたい」との思いから命名したとのこと。年間生産本数は15万本、砂質土壌で、夏は暑く乾燥していて冬はとても寒いエリア。ぶどうは長い付き合いのある栽培農家から購入している由
#1と好印象だったパンダンリーフで包みスモークした鴨胸肉
梨とインゲンを一緒に ロジャックソース
#1の『アレハイレン・クリアンサ2011』はラ・マンチャに古くからある土着品種アイレン種100%(樹齢80年)、フレンチオークで2年間熟成後、瓶熟。ワイン名の〝アレハイレン〟はアレハンドロとアイレン種を合わせた造語。古樹で1本の樹になる房も少ないアイレンから丁寧に造りあげた卓越した白ワインで、粘性豊か。シャルドネに似た蜂蜜のニュアンスがあり、余韻も長い。フェルナンデスさんのアイレンへの思いを感じるワイン
#2の『エル・ビンクロ・クリアンサ2008』はテンプラニーリョ100%。フェルナンデスさんはスペイン固有のぶどう品種、白はアイレン、赤はテンプラニーリョの2品種のみを使い、ともに100%のタイプを生産していますが、「4つのボデガは気候、土壌等自然状況が違うので、各ワインもそれらを反映したものになります」とオルガさん。赤系・黒系の果実、スパイス、アーシーさ、口中なめらか
#7は『パラへ・ラ・ゴロッサ(ゴロッサは〝土地の単位〟の意味)』、アメリカンオークを使用。オルガさんは「父はテンプラニーリョとアメリカンオークの組み合わせ。ワインメーカーをしているの姉のエバはテンプラニーリョとフレンチオークの組み合わせを好んでいます」と語っていました。10年の熟成を経た赤ワインは酸化酵素を持たないテンプラニーリョ本来の濃い色調を残し、香りにはスターアニスや甘草のようなスパイスのニュアンス
デエーサ・ラ・グランハ
#3の『デエーサ・ラ・グランハ』はトロに近いサモーラ地方のワインで、カテゴリーはビノ・デ・ラ・ティエラ・デ・カスティーリャ・イ・レオン(=カスティーリャ・イ・レオン地方のワイン)。ボデガの年間生産本数は20万本、ぶどう品種はテンプラニーリョ100%、初VTは1998年、自社畑で全敷地面積800ha、うち、ぶどう栽培面積は150ha、1700年代後半からあった古いボデガを購入して、テンプラニーリョを栽培。地下にある4000㎡広さのカーブは自然の温度でワインをキープできるとのこと。深みのある色調、プラム等の黒系果実味、ドライフルーツ、ミネラル感
コンダード・デ・アサ
タンドリースパイスを塗した戻り鰹のソテー 空芯菜と茗荷 タオチオと長葱のペースト
上記の料理の塩加減と#4『コンダード・デ・アサ2009』のミネラル感がとても良く、両者を合わせることでマイルドな旨味
産地はペスケラから30キロメートル離れたスペイン内陸部リベラ・デル・ドゥエロ。夏は短くて暑くて日較差が大きく、冬はとても長くマイナス8度~10度になることもあるとのこと。1987年に敷地を購入、ぶどう栽培面積は200ha。「父の持論はぶどう畑とワイナリーは至近距離であることが大事」とオルガさん。4つのボデガのなかでは一番北部にあり、標高も800~900mと高いので、収穫時期も一番遅い。ぶどう畑は南に面していて太陽の熱を吸収しやすくしているとのこと。年間生産本数は30~40万本、初VTは1994年。〝アサ〟の名は古いスペイン語で「作物を植える準備ができている」との意味。購入した時点では何もなかった更地でワイナリー設立に関して多くの苦労があったので、アサの意味はファミリーにとって大きな励みになっていた由
ティント・ぺスケラ
国産牛リブロインのグリル ハマスとポータベラマッシュルーム
オレンジが香る蜂蜜とアニスのソース
ワインサービスはマンダリンオリエンタルの加茂文彦シェフソムリエでした!
ロバート・パーカーによって見いだされ、世界的名声を手にしたペスケラは凝縮感があり、果実味とタンニンのバランス良好、アルコール由来の甘さ、中盤以降広がる酸味のニュアンス
コンダード・デ・アサと同じリベラ・デル・デゥエロに位置する4つの先駆けとなったボデガ。年間生産本数は80~90万本。当初、フェルナンデスさんは甜菜(てんさい)栽培で生計を立てており、土地やぶどう樹を手に入れるために、農業で得たお金をワイン造りの資本に回すというやり繰りだったようで、「家庭崩壊寸前の状態を支えてくれていたのは母親」とオルガさんは述懐していました。
ぺスケラのワインについての問い合わせはミレジム(電話03-3233-3801 )まで
タグ:ティント・ペスケラ
コメント 0