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<PartⅡ> あっぱれ日本ワイン! 世界のカベルネvs日本のカベルネ  [オープンカレッジ]

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バラがきれいな季節、まさに5月の薔薇ですね!
5日にアップしたあっぱれ日本ワインのPartⅡをお届けします。

PartⅠアップ後、嬉しいメールをたくさんいただきました。ご参加くださった皆さまにはタイムスリップしていただけたようです。「目の前にあの時のワインはないものの、楽しかった時間を思い出しています」との内容が多かったのは講師冥利に尽きます。
では、当日のイスラエル、日本、チリのワイナリー巡りから!


イスラエル・ゴラン高原のゴラン・ハイツ・ワイナリー
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(C)Photo by Tadayuki YANAGI
レバノンとの国境近くにある醸造所の遺跡

昨年、ゴラン・ハイツ・ワイナリー、ブランドネーム『Yardenヤルデン』のヴィクター・ショーンフェルド醸造家が来日したあと、データ収集をしていたのですが、その折、ワイン・ジャーナリストの柳忠之さんからいただいたのがこの画像です。柳さんがイスラエル取材をなさった時のものです。

ここ数日来、イスラエルのシリア空爆のニュースが流れています。ヴィクター・ショーンフェルドさんは「紛争が続いているのはエルサレムやテルアビブのほうなので基本的には平和なエリア」とおっしゃっていました。

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(C)Photo by Tadayuki YANAGI
ゴラン・ハイツ・ワイナリーの壮観な樽熟庫

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(C)画像協力:ミレジム
ゴラン・ハイツ・ワイナリーの整然としたセラー

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(C)画像協力:ミレジム
ゴラン・ハイツ・ワイナリーは1983年創設の比較的新しいワイナリー
栽培面積600ha、イスラエル全土では3番目の規模で年間500~600万本のワインを生産、プレミアムワインが中心。国内向け75 ~80%、輸出向けが20~25%。ゴラン高原は主に100~200万年前の火山性土壌で、水はけに優れています。
ぶどう畑の標高は400~1200m、ガリヤ湾に近いエリアからヘルモン山の麓まで広がる農場でぶどうを栽培、品種は20種以上でメインはカベルネ・ソーヴィニヨン(CS)とシャルドネ。年間を通して、畑内にある情報収集基地で気象観測やぶどうの出来具合を徹底管理しています。

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シングルヴィンヤードのエル・ロム畑から生産される『エル・ロム2009』
生産量は36樽のみ(日本入荷本数60本)
エル・ロムの栽培面積は80ha、うち20haにCSを栽培。標高1000~1100mの畑に15区画(平均0.5ha)が点在し、各区画の最高のぶどうを使用。バレルトライアルにも長けているので、各区画のぶどうに合った樽を選択して使用している由

「白ぶどうを栽培するのと同じくらいの高度なので、CSの栽培地としては冷涼です。そのため、ぶどうの房にしっかりと陽が当たるようにキャノピーマネジメントに気を配っています。青っぽさが出ないように」とヴィクターさん

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ヴィクターさんの来日時@ホテル西洋銀座『レペトワ』にて(2013年1月16日撮影)
エル・ロム2009に合わせたのは牛フィレ肉のポワレ 温野菜とのコンチェルト 牛蒡の香るマディラ酒のソース。ワインの持つ濃厚なプラム、煙草や甘草のニュアンスとマディラ酒のソースは絶妙!!

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ゴラン・ハイツ・ワイナリーは2008年にワイン・スペクテーターの年間トップ100に選出され、2011年にはボルドーのシタデル・デュ・ヴァンで最優秀特別賞を受賞。そして2012年、『ワイン・エンスージアスト』誌のワイン・スター・アワードで新世界のべストワイナリーに選ばれました。
イスラエルのワイナリー初の快挙です!
「潜在能力は計り知れません」と喜びを語っていたヴィクターさん
来日した10日後にNYで受賞式があったようです。おめでとうございました!!


チリのミゲル・トーレス・チリ
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画像協力:三国ワイン
1979年にスペインからチリに進出したトーレス社はワイン醸造で初めてステンレスタンクを導入。以後、トーレス社長の先見の明と革新的な取り組みはチリのみならず、世界のワイン界をリードし続けています。

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画像協力:三国ワイン
チリはフィロキセラ(ぶどう害虫)禍を免れた国
フランスから運ばれてきたプレ・フィロキセラのぶどう樹が存在しているワイン王国です

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画像協力:三国ワイン
クリコ・ヴァレーのモリナ サン・フランシスコ ノテル・ヴィンヤードのカベルネ・ソーヴィニヨン
平均樹齢100年の樹々たちの貫禄!

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左から
男優をイメージして、それぞれのワインを表現すると・・・エル・ロム2009はナイスルッキングな男子、福山雅治かな。ソラリス信州東山CS2009は梨園の御曹司タイプ、猿之助路線ではなく、勘九郎や菊之助で。そして、マンソ・デ・ヴェラスコ2009はパワーを備えた男子、『ラストサムライ』で勝元を演じた渡辺謙、てな感じです。

ちなみにマンソ・デ・ヴェラスコという名はチリの統治者に由来しているそうで、彼は戦いの場でも勇敢な人物だった由。気は優しくて力持ち、ワインはまさにそのイメージでした。

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1941年バルセロナ生まれのミゲル・トーレス社長。20年前に地元で日本語を3年間学び、その後も学習は続けていらしたようです。2月の来日記念プレスディナー@サン・パウでは、9割以上を日本語で対応! 輸出相手国の言語をマスターする必要性を感じているので、英語、仏語、ドイツ語、中国語、ロシア語にも力を入れています。

スペインを本拠地とするトーレス社は、チリにはミゲル・トーレス・チリ、カリフォルニアにはマリマー・トーレスを立ち上げ、デイリーワインからプレミアムワインまで生産しています。
トーレス社長は様々な表彰を受けています。英デキャンター誌の「マン・オブ・ザ・イヤー2005」にも選ばれました。近年、特に力を入れているのが環境への取り組みで、この分野でも先駆者的役割を果たしています。これについてはワインのこころでも紹介していますが、来日セミナーで語っていた内容はとても濃いものでした。後日、永久保存版になるリポートをアップします。お楽しみに!

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スペインで生産しているマスラ・プラナもカベルネ・ソーヴィニヨン100%、魅力あるワインです! 
実は『あっぱれ日本ワイン』の候補ワインの1つに考えていたのですが、現行ヴィンテージが2008年だったので断念。2009年がリリースされるのはもう少し先になります。



ここから、マンズワインとソラリス信州東山カベルネ・ソーヴィニヨンです!



日本・長野のマンズワイン小諸ワイナリー
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テイスティングルームにあるステンドグラス
1973年設立の小諸ワイナリーには約3000坪の日本庭園があります。
庭園、地下セラーは今年3月に改修済、綺麗になったワイナリー見学はおすすめです!

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講座生の有志と東山のカベルネ・ソーヴィヨン畑を訪問(2012年11月24日撮影) 
東山・荒川園のぶどう畑は標高550mの南東面傾斜地にあります。小諸市と東山のぶどう園がある上田市は距離にして20kmの差、温度の差は1度です。上田のほうが温かいのでカベルネを、小諸ではシャルドネやメルローを栽培しています。

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現地でのウェルカムドリンクは昨年辰巳琢郎さんがプロデュースした『今様ロゼ』
晩秋の陽を受けたグラスのなかのロゼ色がキレイです。
茂木信三郎社長のご配慮に講座生一同、感謝!

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松本顧問のわかりやすい解説に、ワイナリー訪問が初めての講座生も大満足
掛川主査はぶどうの仕立て方や土壌の説明を

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「その昔、地殻変動で海底だったところが隆起してできた地形なので、畑には丸い石ころが」と掛川主査。ここは粘土と水ハケの良い砂の土壌です。

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ソラリス信州シャルドネ樽仕込み2010
11月半ば過ぎのワイナリー訪問ではぶどうの収穫も終わっていたのですが・・・嬉しいことが!
今回の訪問のために“ぶどうをキープ”しておいてくださったのです。
見てください、このシャルドネの新鮮さ、全員びっくりでした!

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ソラリス信濃リースリング・クリオ・エクストラクション2011
手前は貴重なシャルドネの貴腐ぶどう

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カベルネと比べて粒が大きい小諸のメルロー、右が東山のカベルネ・ソーヴィニヨン
小諸はぶどう栽培以前は桑やアスパラガスを育てていた肥沃な土地なので、ワイン造りではぶどうの果粒を厳選し、徹底した収量規制(21hl/ha、ボルドーでは40ha/ha)を行っています。カベルネは無駄な栄養分を含まないやせた東山の土壌から果粒が小さく、凝縮したぶどうを生産しています

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(左から)ソラリス信州東山CS2009、同2008、同2007、同2006を垂直試飲(2012年11月24日)
■2009年VT 暖冬でやや早めの萌芽、7月は多雨で日照不足、8月中旬から9月いっぱいまでほとんど降雨なし(9月は平年の2割)。糖度、酸とも非常に高く、色も濃い。CS、メルローとも上出来、白は00年代のベストヴィンテージ。ワインは熟成による香りが出始めた印象、しっかりとした酸、樽由来のヴァニラ香、ポテンシャルがあり、繊細かつエレガント

■2008年VT 6~7月前半暦通りの梅雨、以降お盆まで猛暑、それ以降涼しく、8月最後の一週間は連日まとまった雨。9月は冷涼で日照不足気味、雨も多く成熟の遅延で収穫は10月にずれ込む。上田のメルロー以外の赤ぶどう品種は良好。酸とタンニンのバランスも良く、ボディ感もあり

■2007VT 7月は低温で日照不足気味、8月は猛暑で9月まで残暑、10月には台風による多雨、酸を残して収穫、糖度は低め。ポリフェノールの成熟も遅れ、色も淡め。4つのなかでは一番ライト、今飲み頃

■2006VT 全般に平年並みから低めの気温、7月は豪雨、梅雨が長く、日照不足、8月は比較的乾燥して平年並みの気温に。9月は秋雨前線が停滞、残暑は皆無、10月は好天に恵まれ、気温も高く推移。小諸のCHやメルローはグレートヴィンテージ。果実感、熟成によるアロマの変化、なめらかでふくらみのある味わい。

ご参考までに分析値ですが、2009年VTの収量35hl/ha、総酸9.63g/L、『あっぱれ日本ワイン』の最後に供出した2006年VTは収量29hl/ha、総酸7.03g/L、2012年(樽育成中)VTは収量40hl/haで総酸6.36g/L。2009年が酸をしっかり備えたヴィンテージであることがわかります。

カベルネ・ソーヴィニヨン比較の顛末記
「カベルネ・ソーヴィニヨン(CS)を今まで一度も美味しいと思ったことがないんです」という講座生Oさんが参加していました。CSの魅力の1つであるタンニンが苦いだけで終わっていたようです。

今回のCS対決では、それぞれのワインが素晴らしいだけに、単に飲み比べて好き嫌いを問うのではなく、各ワインを最高の状態で味わっていただきたいと思っていました。

Oさんが苦手だった渋みは、味覚で分類すると、収斂性(しゅうれんせい)です。拙HPの『プロの流儀』にも掲載していますが、これは摩擦(まさつ)と捉えることができるようです。舌の上で摩擦を起こすのは、赤ワインに含まれるものでは、タンニンやアントシアニンなどのポリフェノール類です。そのため、程度の差こそあれ、ぶどう由来でも樽由来でも、ポリフェノールには収斂性があるので、収斂性の強弱でこすられる印象が決まってきます。

ポリフェノール類には、(1)種子由来のタンニン (2)果皮由来のタンニン (3 )果皮由来のアントシアニン (4)樽由来のタンニンおよび 果汁中の(カテキンなど)ポリフェノールがあり、渋味は(1)から(4)の順で減ってきます。

カベルネ対決の3アイテムはすべて同ヴィンテージ、フレンチオークの使用や樽の熟成期間、MLFを行う点等もほぼ共通しています。そこで各ワインを美味しく飲んでもらうために供出の順を熟考しました。

開栓してすぐの印象
■ヤルデン
ワインはマンソ・デ・ヴェラスコより若干明るい色調、プラムやブラックチェリーのような黒系果実、黒胡椒、ミント、ハーブ、甘草、シガーボックス、新樽に由来するヴァニラやココアの甘やかさ、喉の奥にはアルコール(15度)に由来するあたたかさが残ります。

■信州東山CS
3つのなかで色調は一番明るいガーネット、前述したように酸味主体でワインに溶け込んだタンニンとの調和はボルドーの伝統的なスタイルを彷彿させてくれました。香りに関して言えば、他の2アイテムから伝わってくるミントやユーカリのようなニュアンスはどこにもありません。これが日本のテロワールなのか? 一斉テイスティングまでに2009年の特徴である酸味とタンニンを少しだけなじませる時間が必要だと感じました。

■マンソ・デ・ヴェラスコ
グラスの底が見えないほどの濃紫色、プラム、ミント、ユーカリ、黒胡椒、甘草、クローブ、ヨード、ミネラル感と様々な要素を感じます。力強さは3つのなかで一番、喉の奥にあたたかな余韻が残ります。

グラスに注いで待機して
ParⅠの後半にも書いたように赤ワインは2時間前にグラスに注いで蓋をして待機させていました。第1部の岡講師の講和がスタートしたその直後に行いました。各ワインとも魅惑的になっていました。

ブラインドでは、パワーのあるマンソ・デ・ヴェラスコを最後にすることで、他の2つのワインの個性を悩まずに感じ取っていただくことができました。ヤルデンをトップにしたのは、新樽由来のヴァニラやココアのニュアンスが、あとに続く、信州東山CSの新樽の効果ときれいに馴染んでいくことがわかったからです。

参加者の皆さまには各ワインの良さを最大限に楽しんでいただけたはずです。
何より、カベルネ嫌いのOさんのグラスが早々に空になっていたことが、それを証明していたのではないかと思っています。私も大いに学習させていただきました。
長文のリポートにお付き合いいただきまして本当にありがとうございました。
世界の素敵なワインたちに感謝を込めて!!!

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tsworking

生産物として受け取るのと、こうした背景を受け取るのでは、又味わいも変わってきますね。

ぶどうがこうやってワールドワイドだから、ワインもとんでもないほど幅が広がるのでしょうね。

絞りたての果汁だけ飲んでみたいですね。
by tsworking (2013-05-10 14:45) 

miche

今日、たまたま立ち寄ったお酒屋さんでヤルデンの赤ワインを見つけ、思わず買ってしまいました。飲むのが楽しみです。
by miche (2013-05-13 15:01) 

まろまろまね

ソラリスシリーズ大好きです!
by まろまろまね (2013-05-19 16:22) 

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