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地球温暖化への一考察 ~ミゲル・トーレス社のデータを中心にして~ [来日したワイン生産者&関係者]

ぶどう樹は熱に弱い
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今まで数多くのワイン生産者、関係者が来日しましたが、スペインのミゲル・A・トーレス社長のように、地球全体を視野に入れて、ワイン業界の温暖化対策について話をした方はいませんでした。「ぶどうの樹は熱に弱いので、20年、30年後に温度上昇が続けば、ぶどう造りにも影響が出てきます。今世紀中には気温が5度上昇し、結果、南極の氷だけが残るだろうと言われています」という言葉からセミナーがスタートしました。


トーレス発の温暖化情報
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12~13世紀の頃は気温が上昇していました。その後、Ice Ageの時期があり、気温は下降。
現在は中世の頃の温度を超えています。

なぜ気温は変動するのか
「地球の気候は45 億年の歴史の中で、温暖期と寒冷期を繰り返してきました」とトーレス社長
その原因と考えられるものについて以下のように説明しました。

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ユーゴスラビアのエンジニア、ミランコビッチが提唱する“軌道変化”。地球の自転はいつも均一ではなく、ズレがあり、自転軸が左右に傾くことによって気温の変化(上昇や下降)が起こることがわかりました。

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10年周期で現れる太陽黒点によっても気温が上がります

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火山の噴火も気候変動を引き起こす要因であり、1992年フィリピンのピナツボ山噴火ではガスやエアロゾルを含む雲が多く発生し、それらが地上に落ちることで気温が下がりました。
トーレス社長は「火山噴火の影響で1992年の収穫は良くなかった」と

CO2の増加と気温上昇
人口の増加
人口が増えるとCO2の排出量が増えるので気温が上がります。現在、世界の人口は70億人で、今世紀末には100億人になると予想されています。30年前のひとりあたりのCO2排出量は年間1トンでしたが、今は5トン、アメリカはひとりあたり20トンなので、それと比べれば数値は低いですが、発展途上国の生活水準が上がることでCO2の排出量は増え続けています。

森林破壊
アジアやアマゾン、ブラジルなどで樹木が伐採され、森林破壊が続くと、適正な光合成が行えないので、結果、CO2が吸収されなくなり、排出量が増えることになります。

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南極は地球の冷蔵庫的役割を果たしており、その氷は岩上にあるので大部分は昔のままの形で維持されています。ただ、一部のプラットホームは氷が溶けて移動しているとのこと。
一方、海洋上にある北極の氷は現在かなり溶け出しており、「夏には横断できる程になっています」とトーレス社長。その結果、アルベド効果が減少しています。

[ー(長音記号1)]5月11日付の産経EXにあったハワイのCO2最高値に 温暖化、危険水準に科学者が警告の声明、15日付の同イザのスイス・アルプス危機 氷河すでに4割、また5月25日付産経EXの「Help!」 北極基地の氷崩壊をリンクしておきます。

アルベド効果と温室効果
北極のところに出てきたアルベド効果ですが、これは雪や氷が太陽の光を反射することを言います。まずは百聞は一見に如かずの映像で理解を!
http://cgi2.nhk.or.jp/school/movie/clipbox.cgi?das_id=D0005402804_00000

トーレス社長はアルベド効果と温室効果について「太陽の光はまず一部が雲にあたって反射し、短い波長(X線、γ線 α線)が地表に届いた場合、氷があれば70%反射し、砂漠等の土や砂であれば50%反射します。これがアルベド効果です。
残りの光も地表に届きますが、森や土に届いた光は短い波長から長い波長に変わります。その大部分の熱は地表から大気中に放出されますが、雲があると、水蒸気や雲に含まれる温室効果ガス(メタンや二酸化炭素)に阻まれ、その結果、放出された熱がまた地表に戻ることになります。これが温室効果という作用です」と解説。

大気中のCO2の60%は植物や海に吸収された形で残り、それ以外は大気中に発散されます。なお、海洋中のCO2は水に溶けるだけでなく、海中の植物プランクトンや動物プランクトンに吸収されるそうです。

どのような影響が出ているのか
欧州では過去40年間で温度が1度上昇しており、ぶどうの収穫時期も12日早まっています。トーレス社長は「今のところ、ワインの品質に影響は出ていない」とおっしゃっていましたが、温暖化対策として「■熱に強い品種に変えて栽培する ■より高地、より北部に畑を移して栽培する、という2つの可能性がある」と。
「私は後者にかけたいです。本拠地があるカタルニア地方のペネデスは寒冷な気候のピレネー山脈から200kmしか離れていません。現在1000mの高地にぶどう畑を所有して、ぶどう栽培を行っていますが、10年~20年後には標高2200mの高地にぶどうを植えたいと考えています」とのことでした。


ワインの分野ではなく、グローバルな視点に立っての温暖化対策については、当方まだまだ未熟者にて言葉が足りない点もあるかと思います。その点については専門知識をお持ちの方からのご忌憚ないご意見を伺えましたら幸いです。




トーレス社の現在の取り組み
スペインのトーレス社が現在取り組んでいる具体的な動きについては5月2日付の産経EXワインのこころで紹介しています。ここではコラムには掲載できなかった画像の数々を交えながら補足をしておきます。

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(C)Torres, Mikuni Wine
省エネルギー基準により建設されたトーレス社の新しいヴァルトラウドセラー
自然の冷気を生かした構造で、セラーは地下にあります。
庭には草花はなく、砂を敷いて(アルベド効果)

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(C)Torres, Mikuni Wine
海草(イカダモ)を利用して発酵で出るCO2を吸収させる『二酸化簡素回収貯留(Carbon Capture and Storage)』

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(C)Torres, Mikuni Wine
将来的な水不足を考えてのストック、2012年は900万リットル貯水

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(C)Torres, Mikuni Wine
山中の貯水池、灌漑に活用

その他には
■バイオマス燃料/2012年から導入。100万KWの節電
■ワイナリー内を移動するハイブリット車はトヨタのプリウス/現在44台、4年後には100台導入
■5haの実験ぶどう畑/昔はぶどうの成熟を早めるための努力をしていたそうですが、温暖化により、今は全く逆のことを行っている由。それはトーレス本社にあるぶどう畑を見れば、一目瞭然とのこと。ワイン界の先駆者的立場のトーレスさんの自慢の畑は見る価値200%なのでしょう、見たいです!!!


スペインとチリの駐日大使からエールも .jpg
トーレス社長を囲んでパトリシオ・トーレス駐日チリ大使(左)とミゲル・アンヘル・ナバーロ駐日スペイン大使(右から2人目)、後列は三国ワインの髙栁昌之社長

今回の来日は三国ワインがトーレスファミリーグループ4ブランドの輸入総代理店になったことを記念しての招聘でした。
初日はサンパウでプレミアムワインディナーが行われ、チリとスペインの大使も列席なさいました。両国で素晴らしいワインを生産しているトーレス社長に両大使から熱いエールが!

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2日目はパレスホテルでスペインワインセミナーが開催され、7アイテムが供出されました。
#1:ミルマンダ シャルドネ2009(ボトルは最右)
#2:ヴィーニャ・エスメラルダ2011
#3:グラン・サングレ・デ・トロ レッド2008
#4:セレステ クリアンサ リベラ・デル・ドゥエロ2009
#5:サルモス プリオラート2010
#6:マス・ラ・プラナ カベルネ・ソーヴィニヨン2008(ボトルなし)
#7:グランス・ムラーリャス コンカ・デ・バルベラ2006

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左から2つめのグラスには『ヴィーニャ・エスメラルダ2011』は、ミュスカ85%、ゲヴュルツトラミネール15%から成るアロマ豊かで酸と糖分と果実味の調和がとれたワイン

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セミナー後の笑顔のトーレス社長
手にしているのは“サングレ・デ・トロ(牡牛の血)”の上級クラス『グラン・サングレ・デ・トロ』、このワインにもシンボルの牡牛がついています。

いずれも素晴らしいワインたちばかりでした。いつまでも向上心を持ち続けて邁進しているミゲル・A・トーレス社長の凄さを改めて思い知らされました。温暖化対策に関してはスペインが世界をリードしていくとの自負があるトーレス社長。「社会が少しでも変われるように、少しでもCO2の排出が少なくなるように」との思いを込め、スペイン全土の気候保護のためのワイナリーグル―プのリーダーとしてさらに活動範囲を広げていくことと思います。貴重な時間を本当にありがとうございました!三国ワインの髙栁社長はじめ、関係者の皆さまに深く御礼申し上げます。
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nomurahds

日本では中世温暖期のほうが今よりも暖かかったとの研究報告がの日本地球惑星連合の2013年大会で発表されます。
その予稿
http://www2.jpgu.org/meeting/2013/session/PDF/M-IS22/MIS22-01.pdf
と新聞記事
http://sankei.jp.msn.com/science/news/130417/scn13041708080000-n1.htm
です。

日本地球惑星連合の2013年大会では神戸大学も太陽活動と温暖化に関して発表します。
http://www.kobe-u.ac.jp/research/news/archive/pp2013_01_08.html

IPCCの気候モデルのように温暖化は起こっていません。この事実を紹介したロイターの記事
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE93H05420130418?pageNumber=1&virtualBrandChannel=0
とエコノミストの記事
http://www.economist.com/news/science-and-technology/21574461-climate-may-be-heating-up-less-response-greenhouse-gas-emissions
と産経の記事
http://sankei.jp.msn.com/science/news/130515/scn13051507310000-n1.htm
です。

英国気象庁は2012年12月24日に温暖化予測を修正しました。
http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-2259012/Global-warming-Met-Office-releases-revised-global-temperature-predictions-showing-planet-NOT-rapidly-heating-up.html

ロシアの科学者は寒冷化が2014年頃より顕著になると予測しています。
http://japanese.ruvr.ru/2013_02_10/104214525/

ワインの生産についても寒冷化対策を考えていかなければならないのではないでしょうか。
by nomurahds (2013-05-19 23:59) 

fumiko

nomurahdsさん、迅速なリアクション、ありがとうございます!
添付してくださった情報、じっくり読ませていただきます、感謝です!

>ワインの生産についても寒冷化対策を考えていかなければならないのではないでしょうか

はい、トーレスさんもおっしゃっていたように、ぶどう畑を高地に求めていく例が増えています。
また、3年ほど前にブルゴーニュ地方の名門ブシャールP&Fの醸造家が来日した時に伺ったのですが、「CO2の影響で、ぶどうの実が以前より大きくなってしまうので、小粒の実がなるクローンを選ぶようにしている」と語っていました。
ここ2ヶ月くらいの間に来日していた、シャブリの生産者の代表や、ブルゴーニュの生産者の代表に温暖化対策を伺ったところ、「温暖化の好影響下にあり、今の段階では問題ない」と答えていましたが、先のブシャールはかなり昔から温度変化等詳細なデータを取っています。
ワイン界の温暖化に対する大きなうねりはこれから、という感じです。

by fumiko (2013-05-20 03:08) 

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