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アルゼンチンの『パスカル・トソ』と赤坂『菊乃井』のコラボレーション [ワイン]

10月前半からボージョレ・ヌーヴォー解禁までの期間、めちゃ忙殺[ふらふら]
中味の濃い取材、イヴェント等の連続で、ブログにアップしたいものが山ほどあれど・・・時間が追い付かない状態。すでに11月も半ば、できるだけピッチをあげてまいります~

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11月8日~10日@香港で開催されていた『香港インターナショナルワイン&スピリッツフェア2012』、私は香港貿易発展局のお招きで現地へ。
初日に、アルゼンチンブースで出展中のパスカル・トソの輸出ディレクター、フリアン・オルティさんとアジア担当の輸出ディレクター、マイク・ジェンキンスさん(右)と再会できました!! 実はマイクさんたちとは2日に東京でお目にかかっており、香港での再会を約束していたのです。

パスカル・トソと菊乃井とのコラボレーション
東京では輸入元ピーロート・ジャパンの招聘で、おふたりと同ワイナリーのワインコンサルタントをしているポール・ホブスさんも一緒でした。トソのワインと赤坂『菊乃井』の料理とのマリアージュ体験は興味深いものでした。

パスカル・トソはオーナーがイタリアのピエモンテのカナル・ダルバからアルゼンチンに移住して興したワイナリーです。パスカル・トソはメンドーサには有望な未来があると確信し、ワイン事業を展開し、1890年にサン・ホセに最初のワイナリーを設立。1995年にジェイ・ロレンテ&シアによって買収されますが、2001年、ワインの品質向上のため、カリフォルニアから著名なポール・ホブス氏をワインコンサルタントに迎え、1年後に新レンジを立ちあげます。現在、イギリス、日本、アメリカで成果をおさめています。

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ポール・ホブスさんは1975年にカリフォルニア大学デービス校の醸造学部フードサイエンス修士プログラムに入学。修士論文はオーク樽での熟成。卒業後、ロバート・モンダヴィワイナリーで活動、1979年にはエノロジスト(ワイン醸造学者)に昇格。その後、オーパス・ワンチームに抜粋され、1981年にはヘッド・エノロジストに任命され、4年間任務を遂行。その後、シミ・ワイナリー。さらにアルゼンチンにも活動の場を広げます。1999年にはソノマにポール・ホブスワイナリーを設立、ロシアン・リヴァ―・ヴァレーにも畑を購入、ここではピノ・ノワールを栽培。現在、自社でのワイン造り、ワインコンサルタントとして幅広く活躍中です。

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赤坂『菊乃井』の村田吉弘料理長、京都の同店はミシュランの3つ星、赤坂店は2つ星
9月にロンドンの金融街に本格的な和食専門店『クリサン』をオープン。ロンドンには日本酒に詳しい人が多いので、『クリサン』でも日本酒の動きが良い由、村田料理長は白ワインと同様、シャルドネグラスで供出なさっているそうです。ビバレッジ(飲料)全体の売り上げがとても良く、客層としては金融街に勤務する男性が連れ立って来るパターンが一番多いとのこと。

柚子豆腐とトロンテスの絶妙な相性
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猪口/柚子豆腐 柚子味噌

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世界のシェフたちから人気のある柚子!
この食材の軽いビター感が、アルゼンチンが誇る白い花のようなイメージの固有品種トロンテスと絶妙。トロンテスから感じられる柑橘系果実の風味が和風柑橘の柚子と素晴らしいハーモニーを醸し出していました。

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八寸/柚子釜盛り(水菜 しめじ 安肝) 慈姑煎餅 唐墨
      紅葉烏賊 鴨肝松風 松葉素麺 新銀杏酒いり
ワインは3種類(#1:トソ・ブリュット/#2:トソ・ソーヴィニヨン・ブラン2011/#3:トソ・トロンテス2011)で相性をみていきました。秋を感じる一皿で、それぞれの素材に変化があり、 #1の泡もの(品種シャルドネ100%)の気泡効果が出ていました。

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向付/明石天然鯛 さごし焼霜 山葵
素材の旨さに脱帽、シャンパンのブラン・ド・ブランが一番合いそうな一皿

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向二/小鮪 黄身醤油 辛子
黄身醤油(菊乃井オリジナル/土佐醤油をお酒で割り、アルコールを飛ばしたなかにカツオや昆布を入れて作る刺身の醤油、このなかに4~5日くらい卵黄を入れ、それを裏ごし、生醤油で薄めて作ったもの)をたっぷりつけることでコクのある赤ワインにも合わせられる味わい

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蓋物/百合根饅頭 鶉とフォアグラのつみれ射込み トリュフあん
      結び大根、人参
ボリューム感のある一皿、トリュフあんの香りがとても贅沢

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焼物/かます杉板焼き 胡桃餡煮
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かますの味噌漬けは、杉板を焼いた香りと味噌の香ばしさの相乗効果が出て、嗅覚への刺激が最高

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中猪口/柚子山葵ソルベ
口直しのシャーベット、これは最高です!!
料理長いわく「最初に柚子の香り口中に広がり、3秒後にわさびがガ~ンときます」
得も言われぬ味わい。ソーヴィニヨン・ブランもトロンテスもお水のように軽く感じます。
赤ワインなら#3マグダレナ・トソ2007のスパイシーさ、程よく熟成した味わいが太刀打ちしていました。このソルベはもう一度試したい味!

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赤ワインは3種で相性確認(今回の企画では事前にワインを持ちこみ、それらに合う料理を考案なさった由
#1:アルタ・リザーヴ・マルベック2009(マルベック100%)
#2:フィンカ・ぺドレガル2006(マルベック80%、カベルネ・ソーヴィニヨン20%)
#3:マグダレナ・トソ2007(マルベック70%、カベルネ・ソーヴィニヨン30%)

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強肴(しいざかな)/シャラン鴨大和煮 栗とじゃが芋のあん
トソの赤ワインに合わせた料理長の創作。味噌と醤油で味をつけた大和煮なので、赤ワインの濃さにも対応できます。

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御飯/松茸御飯 三つ葉
留椀/白菜すり流し 白菜 黒胡椒
「この時期、皆さんが食べたいと思っているのが松茸ごはんなので用意しました」と料理長
優しい味わいにお替りをしてしまった私です!

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水物/ほうじ茶のアイスクリーム 丹波地松風
ほうじ茶のアイスクリームは凝縮した味わいで口中を洗い流す感じでした、懐かしい味の余韻

今回はとても貴重な体験ができました。ピーロート・ジャパンのJ.K.ウィラハン様、ウィラハン麻未様、ありがとうございました!



番外編
シンガポール航空のブック・ザ・クック
10月初旬、シンポール航空の取材(媒体:ワイン王国12月5日発売予定)で現地のケータリングセンターを訪問してきました。シンガポール航空ではスイート、ファーストクラス、ビジネスクラスの利用者が、豊富なメニュー(ブック・ザ・クック)から24時間前までにメイン料理を注文をしておくと、機上でその料理が食せるシステムになっています。

村田料理長は1999年から同航空の機内食開発にかかわっており、現在8人(来年1月からイタリアンシェフも加わり、新メニューも登場)が監修する料理がリストに載っています。料理長の料理は京懐石でファーストクラスは5品供出されます。

10月の取材では東京から料理長の京懐石を注文しました。ケータリングセンターのなかの施設でビジネスクラスに登場する機内食『花恋暦』をいただきました。以下がその料理です。

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一ノ重
先付/胡桃豆腐、食い出し 山葵ジュレ、花穂紫蘇
酢の物/かます焼き目鮨、酢立スライス、奈良漬け
強肴/牛肉そぼろ厚焼玉子、サーモンと長芋の市松
麺/日本そば、めんつゆ、舞茸、とろろ芋、浅葱、海苔、山葵

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二の重
八寸/海老松風、栗茶巾絞り、湯葉山椒焼き、子持鮎鞍馬煮、紅葉麩
煮合わせ/穴子八幡焼き、蕪、松茸、菊葉、花人参、柚子
口取り/甘海老糀和え、天盛りいくら、無花果羹、平目龍皮巻、秋むかご煎り雲丹まぶし
焼物/鶏の鍬焼き、なめこ霙和え
御飯/松茸と銀杏炊き込みご飯
留椀/味噌汁
水菓子/カボチャのムースに生クリームを添えて

地上と機上での味わいに違い
赤坂の『菊乃井』で念願だった料理長にお目にかかることができたので、聞きたかった質問をさせていただきました。それは「地上と機内の料理の味わい」に関するものです。

料理長いわく「地上で食べてちょうど良いと思う味付けより、もう少し加味した塩梅」とのこと。料理長はこれを“しんみりめ”と表現していました。

機内は、湿度も少なく乾燥しています。ゆえに五感は鈍くなるので、味覚、嗅覚は地上の時より濃いめを好むようになります。そのための一工夫が料理長のおっしゃる“しんみりめ”の味つけです。

嗅覚の鈍りは・・・「飛行機に乗ってあれだけの人がいるのに、ニオイをあまり感じないでしょ」と料理長。高度9000メートルの機内での変化は、このような点からもわかります。

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NPO法人『日本料理アカデミー』の理事長をつとめる村田料理長。京都大学のなかに厨房と実験室と会議室があり、実験を重ねているそうです。料理人さんのなかには京大の院生になった方が3人いるとのこと。日本料理の専門家で博士号取得を目指しているのは世界でも珍しいこと。料理長も、人間工学や味覚の生理学について深く探究なさっている由、実践料理家と実感しました。


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tsworking

すごーい。

料理を研究する。博士号取っちゃう。
本当にすごいです。

でも、それだけ追求して、技術をしっかりと確立させて、残してゆく。
これが一番大変で、大切な事なんですね。

何事も日々勉強だと思いました。

何時も料理が美味しそうで、飲めなくても参加したいと思っている人です。
by tsworking (2012-11-19 00:13) 

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