注目! オレゴンでマスター・ソムリエのラリー・ストーン × ドミニク・ラフォンが新コラボ [来日したワイン生産者&関係者]
2016年にワイナリーも完成した『リングア・フランカ』
輸入元ワイン・イン・スタイルの招聘で来日したラリー・ストーンMSがリリースされたばかりのワインを披露。会場はリッツ・カールトン東京の『ひのきざか』
ラリー・ストーンさんは世界に236人(2017年現在)しかいないソムリエ界最高の称号マスター・ソムリエMSの所持者。『リングア・フランカ』はブルゴーニュの奇才『コント・ラフォン』の四代目ドミニク・ラフォンさんとのコラボレーションで誕生したワイナリーです!
ネーミングの由来はフランク王国ですが、現在は〝共通語〟としての意味で使われています。異なる文化や経歴を持つワインラバーさんにワインを通しての喜びや感動を共有して欲しいとの思いを込めて付けられました。
ブルゴーニュをイメージして造っているワイン
(左から供出順)
#1:AVNI Chardonny Willamette Valley2015/6,900円(税別)
#2:Sisters Chardonnay Willamette Valley2015/14,500円(税別)
#3:Avini Pinot Noir Eola-Amity Hills2015/6,900円(同)
#4:Joshua, Junichi& Siri Pinot Noir Ribbon Ridge2015/7,900円(同)
#5:Tongue's Cheek Pinot Noir Eola-Amity Hills2015/9,600円(同)
#6:Ryan's Plow Pinot Noir Willamette Valley2015/9,600円(同)
#7:Mimi's Mind Pinot Noir Eola-Amity Hills2015/14,500円(同)
リングア・フランカ立ち上げまでの動き
(画像の3人は左から)ラリー・ストーンMS、ブルゴーニュ出身のコンサルタント ドミニク・ラフォンさん、ワインメーカーのトーマス・サーヴさん。トーマスさんはイヴニング・ランドやドメーヌ・デジャック、DRCで栽培やセラーの仕事に携わっていました。
ラリーさんとドミニクさんとの関わりはオレゴンの『イヴニング・ランド・ヴィンヤーズ』からです。
ラリーさんには20年前からオレゴン構想がありました。
サンフランシスコにあるルビコンのレストランでソムリエをしていた時に、お店に来てはルロワやジャイエのワインを注文する大顧客がいました。ラリーさんはフランスワインだけでなく、カリフォルニアやオレゴンのワインに興味を持ってもらおうと画策したようです。そんな折、大顧客から「フランス以外で優れたシャルドネやピノが造れる場所は」と聞かれ、彼は「サンタ・リタ・ヒルズかソノマコーストかオレゴン」と答えます。
その大顧客はハリウッド映画のプロデューサー、マーク・ターロフさんだったのですが、最終的にターロフさんはオレゴンの銘醸地ウイラメット・ヴァレーのエオラ・アミティ・ヒルズに土地を買い、『イヴニング・ランド・ヴィンヤーズ』を設立。ラリーさんがオレゴンで最高と思っていたぶどう畑『セヴン・スプリングス』も手に入れ、ラリーさんはこのワイナリーのプロジェクトメンバーとして活躍します。ここにはブルゴーニュのドミニク・ラフォンもコンサルタントとして加わり、最強のチームになりました。
そして、ワイナリーを立ち上げる夢を抱いていたラリーさんは、2010年から2年間画策し、エオラ・アミティ・ヒルズのセヴン・スプリングスの前にある畑を手に入れ、2013年にぶどう樹を植樹、2016年には建築家ローレンス・フェーラーがデザインした待望の新ワイナリーが完成。この『リングア・フランカ』はマスター・ソムリエのラリー・ストーンさんとドミニク・ラファンさんががっつり組んだ新コラボレーションです!
余談ですが、現在、おふたりとも『イヴニング・ランド・ヴィンヤーズ』からは離れています。ここを仕切っているのはラリーさんの弟子にあたるラジャ・パーさん(IPOBの創設者)だそうです。
ジョリとネカイアの土壌
ラリーさんが強調していたのはJoryジョリとNekiaネカイアの土壌。ともに風化した赤みを帯びた玄武岩で、前者は表土が深く、後者は表土が浅く、砂利質が多い土壌。ストレスを受けて育つシャルドネはネカイアに向いていて、イヴニング・ランド・ヴィンヤーズで造った最高のシャルドネもネカイア土壌でした。
緯度45度の共通項
資料提供:リングア・フランカ
「オレゴンのウイラット・ヴァレーのなかにあるエオラ・アミティ・ヒルズはフランスならローヌ地方のエルミタージュと同じ緯度です。ワイン栽培において日照量はとても大事ですが、これは長くても短か過ぎてもダメ。その意味から日照時間と日照量が最適と言えるのが45度のエリアです。太陽の光はぶどうのフレーバーを豊かにします」とラリーさん。
オレゴンは大気を通してぶどう畑に優しい光が注がれます。それは例えて言えば、給水ホースから水を撒く時に、勢い良く出るのがカリフォルニアで、ミストのように柔らかいのがオレゴンと表現していました。
宇宙をイメージしたラベル
AVNIシリーズのラベルは宇宙を表現した作品で、作者は版画家のタルマッジ・ドイル女史
これは〝Soil & Sun〟を意味しています。
先附け:春キャベツ 桜海老煮浸し、鱒利休揚げ 甘長唐辛子
AVNIはラリーさんのお名前“ストーン”の意味ですが、サンスクリット語でマザーアース、母なる大地。ラベルの作者はタルマッジ・ドイル女史
(左から)#3と#4
お椀:相並葛叩き 蕨 花弁人参 大根 木の芽
ラリーさんを満足させていたのが、お椀の出汁。昆布由来の塩分がピノの旨味とナイスハーモニー
お造り:鮮魚三種
鮪の脂分をピノが洗い流してくれる感じ、山葵を少し使ってあわせてバランス〇
焼き物:京鰆の酒盗焼き 焼き空豆 近江蒟蒻、 南京カステラ 葉地神
#4から#7のラべルは世界的なガラス作家、デイル・チフリーさんが描いています。
自動車事故で左目を失明してしまったチフリーさんは現在ガラス作品を自分で造ることができないので、下絵を描いて、それを配下の者に委ねて完成させているそうです。リングア・フランカのラベルはチフリーさんの下絵を使っています。
#5のタングン・チーク ピノ・ノワールの旨味、厚味、複雑味
温物:春野菜 白魚 小鍋仕立て、筍 若芽 新牛蒡 独活 芹 黒七味
酢の物:蛍烏賊 帆立貝焼き目 寄せ若芽 酢蓮根、うるい 柚子胡椒酢味噌
参加者全員が納得したのは、蛍烏賊とあわせても生臭さが出ることなく、魚介にうまく寄り添っていたピノの味わい。ラリーさんは「酢の物はワインに合わない」とおっしゃっていましたが、シャルドネ&ピノの品の良い酸が、酢の物の強すぎない酸とバランス〇
食事:桜蕎麦、山菜天麩羅 蕗の薹 たらの芽 こしあぶら、大根おろし 葱
桜湯を連想させるような、桜の香りほんのりのおそば
視覚と香りで風流を楽しむ一品。天麩羅の汁(醤油と出汁の風味)、蕗の薹やたらの芽のかすかな苦みがワインのロースト感、スパイシーさと相まって
エピローグ
その昔、ジャンシス・ロビンソンMWのワイン番組(BBC)をまとめたビデオに、ドミニク・ラフォンさんのメゾンを訪ねるシーンがありました。英国で人気の豪州産シャルドネを持参して、ドミニクさんに試飲してもらう構成でしたが、反応は、けんもほろろ。コメントもなく、吐き出しもメゾンの外で行うという具合でした。
あれから20年以上経過して・・・ブルゴーニュ至上主義のドミニクさんが、新天地オレゴンに食指を動かしたことが大きな驚きです。それだけにラリーさんとドミニクさんのコラボワインは本当に期待できます!
ラリーさんは「どれをとってもオレゴンワインですが、ブルゴーニュをイメージして造っているワインです」と語っていました。2015年ヴィンテージはすべて買いぶどうで造りましたが、ミネラル感があり、エレガント。2013年には自社畑28㌶に植樹したので、2016年産のワインには自社畑の若樹も少しだけ使うことも考えているようです。
ブルゴーニュの名醸造家たちの進出が続いているオレゴン、その動きから目が離せません!
輸入元ワイン・イン・スタイルの招聘で来日したラリー・ストーンMSがリリースされたばかりのワインを披露。会場はリッツ・カールトン東京の『ひのきざか』
ラリー・ストーンさんは世界に236人(2017年現在)しかいないソムリエ界最高の称号マスター・ソムリエMSの所持者。『リングア・フランカ』はブルゴーニュの奇才『コント・ラフォン』の四代目ドミニク・ラフォンさんとのコラボレーションで誕生したワイナリーです!
ネーミングの由来はフランク王国ですが、現在は〝共通語〟としての意味で使われています。異なる文化や経歴を持つワインラバーさんにワインを通しての喜びや感動を共有して欲しいとの思いを込めて付けられました。
ブルゴーニュをイメージして造っているワイン
(左から供出順)
#1:AVNI Chardonny Willamette Valley2015/6,900円(税別)
#2:Sisters Chardonnay Willamette Valley2015/14,500円(税別)
#3:Avini Pinot Noir Eola-Amity Hills2015/6,900円(同)
#4:Joshua, Junichi& Siri Pinot Noir Ribbon Ridge2015/7,900円(同)
#5:Tongue's Cheek Pinot Noir Eola-Amity Hills2015/9,600円(同)
#6:Ryan's Plow Pinot Noir Willamette Valley2015/9,600円(同)
#7:Mimi's Mind Pinot Noir Eola-Amity Hills2015/14,500円(同)
リングア・フランカ立ち上げまでの動き
(画像の3人は左から)ラリー・ストーンMS、ブルゴーニュ出身のコンサルタント ドミニク・ラフォンさん、ワインメーカーのトーマス・サーヴさん。トーマスさんはイヴニング・ランドやドメーヌ・デジャック、DRCで栽培やセラーの仕事に携わっていました。
ラリーさんとドミニクさんとの関わりはオレゴンの『イヴニング・ランド・ヴィンヤーズ』からです。
ラリーさんには20年前からオレゴン構想がありました。
サンフランシスコにあるルビコンのレストランでソムリエをしていた時に、お店に来てはルロワやジャイエのワインを注文する大顧客がいました。ラリーさんはフランスワインだけでなく、カリフォルニアやオレゴンのワインに興味を持ってもらおうと画策したようです。そんな折、大顧客から「フランス以外で優れたシャルドネやピノが造れる場所は」と聞かれ、彼は「サンタ・リタ・ヒルズかソノマコーストかオレゴン」と答えます。
その大顧客はハリウッド映画のプロデューサー、マーク・ターロフさんだったのですが、最終的にターロフさんはオレゴンの銘醸地ウイラメット・ヴァレーのエオラ・アミティ・ヒルズに土地を買い、『イヴニング・ランド・ヴィンヤーズ』を設立。ラリーさんがオレゴンで最高と思っていたぶどう畑『セヴン・スプリングス』も手に入れ、ラリーさんはこのワイナリーのプロジェクトメンバーとして活躍します。ここにはブルゴーニュのドミニク・ラフォンもコンサルタントとして加わり、最強のチームになりました。
そして、ワイナリーを立ち上げる夢を抱いていたラリーさんは、2010年から2年間画策し、エオラ・アミティ・ヒルズのセヴン・スプリングスの前にある畑を手に入れ、2013年にぶどう樹を植樹、2016年には建築家ローレンス・フェーラーがデザインした待望の新ワイナリーが完成。この『リングア・フランカ』はマスター・ソムリエのラリー・ストーンさんとドミニク・ラファンさんががっつり組んだ新コラボレーションです!
余談ですが、現在、おふたりとも『イヴニング・ランド・ヴィンヤーズ』からは離れています。ここを仕切っているのはラリーさんの弟子にあたるラジャ・パーさん(IPOBの創設者)だそうです。
ジョリとネカイアの土壌
ラリーさんが強調していたのはJoryジョリとNekiaネカイアの土壌。ともに風化した赤みを帯びた玄武岩で、前者は表土が深く、後者は表土が浅く、砂利質が多い土壌。ストレスを受けて育つシャルドネはネカイアに向いていて、イヴニング・ランド・ヴィンヤーズで造った最高のシャルドネもネカイア土壌でした。
緯度45度の共通項
資料提供:リングア・フランカ
「オレゴンのウイラット・ヴァレーのなかにあるエオラ・アミティ・ヒルズはフランスならローヌ地方のエルミタージュと同じ緯度です。ワイン栽培において日照量はとても大事ですが、これは長くても短か過ぎてもダメ。その意味から日照時間と日照量が最適と言えるのが45度のエリアです。太陽の光はぶどうのフレーバーを豊かにします」とラリーさん。
オレゴンは大気を通してぶどう畑に優しい光が注がれます。それは例えて言えば、給水ホースから水を撒く時に、勢い良く出るのがカリフォルニアで、ミストのように柔らかいのがオレゴンと表現していました。
宇宙をイメージしたラベル
AVNIシリーズのラベルは宇宙を表現した作品で、作者は版画家のタルマッジ・ドイル女史
これは〝Soil & Sun〟を意味しています。
先附け:春キャベツ 桜海老煮浸し、鱒利休揚げ 甘長唐辛子
AVNIはラリーさんのお名前“ストーン”の意味ですが、サンスクリット語でマザーアース、母なる大地。ラベルの作者はタルマッジ・ドイル女史
(左から)#3と#4
お椀:相並葛叩き 蕨 花弁人参 大根 木の芽
ラリーさんを満足させていたのが、お椀の出汁。昆布由来の塩分がピノの旨味とナイスハーモニー
お造り:鮮魚三種
鮪の脂分をピノが洗い流してくれる感じ、山葵を少し使ってあわせてバランス〇
焼き物:京鰆の酒盗焼き 焼き空豆 近江蒟蒻、 南京カステラ 葉地神
#4から#7のラべルは世界的なガラス作家、デイル・チフリーさんが描いています。
自動車事故で左目を失明してしまったチフリーさんは現在ガラス作品を自分で造ることができないので、下絵を描いて、それを配下の者に委ねて完成させているそうです。リングア・フランカのラベルはチフリーさんの下絵を使っています。
#5のタングン・チーク ピノ・ノワールの旨味、厚味、複雑味
温物:春野菜 白魚 小鍋仕立て、筍 若芽 新牛蒡 独活 芹 黒七味
酢の物:蛍烏賊 帆立貝焼き目 寄せ若芽 酢蓮根、うるい 柚子胡椒酢味噌
参加者全員が納得したのは、蛍烏賊とあわせても生臭さが出ることなく、魚介にうまく寄り添っていたピノの味わい。ラリーさんは「酢の物はワインに合わない」とおっしゃっていましたが、シャルドネ&ピノの品の良い酸が、酢の物の強すぎない酸とバランス〇
食事:桜蕎麦、山菜天麩羅 蕗の薹 たらの芽 こしあぶら、大根おろし 葱
桜湯を連想させるような、桜の香りほんのりのおそば
視覚と香りで風流を楽しむ一品。天麩羅の汁(醤油と出汁の風味)、蕗の薹やたらの芽のかすかな苦みがワインのロースト感、スパイシーさと相まって
エピローグ
その昔、ジャンシス・ロビンソンMWのワイン番組(BBC)をまとめたビデオに、ドミニク・ラフォンさんのメゾンを訪ねるシーンがありました。英国で人気の豪州産シャルドネを持参して、ドミニクさんに試飲してもらう構成でしたが、反応は、けんもほろろ。コメントもなく、吐き出しもメゾンの外で行うという具合でした。
あれから20年以上経過して・・・ブルゴーニュ至上主義のドミニクさんが、新天地オレゴンに食指を動かしたことが大きな驚きです。それだけにラリーさんとドミニクさんのコラボワインは本当に期待できます!
ラリーさんは「どれをとってもオレゴンワインですが、ブルゴーニュをイメージして造っているワインです」と語っていました。2015年ヴィンテージはすべて買いぶどうで造りましたが、ミネラル感があり、エレガント。2013年には自社畑28㌶に植樹したので、2016年産のワインには自社畑の若樹も少しだけ使うことも考えているようです。
ブルゴーニュの名醸造家たちの進出が続いているオレゴン、その動きから目が離せません!
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