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ワインで巡る世界ツアーでシャンパンと拮抗したスパークリングワインは・・・ [NHK文化センター青山教室]

今年最初の単発講座無事終了

ワインで巡る世界ツアーの第4弾は“世界の泡もの”にフォーカスしました。
ブラインドテイスティングで供出したのは、左から、スペインのカバ、米国のスパークリング、シャンパン、英国のスパークリング、イタリアのフランチャコルタです!


お片付け後の撮影だったので全員集合にはなりませんでしたが、ご参加くださった皆さま、ありがとうございました!

世界で最も消費されているイタリアのプロセッコ


一番元気な泡ものプロセッコ
ソロイタリアの林茂代表によると、DOCGで8,500万本、DOCで4億8,000万本(2017年データ)なので、出荷本数は6億本近いとのこと。シャンパーニュの2倍の数量になります。ちなみにプロセッコの輸出相手国ナンバーワンはドイツです。

講座のウェルカムスパークリングとしてお出ししたのはDOCプロセッコ、マッツェイ ヴィッラ マルチェッロ プロセッコ ミレジマート2017、品種はグレーラ85%、ピノ・ビアンコ15%、価格は1,970円(税別)、ファインズさん扱いの商品です。

製法はアルコール(一次)発酵したワインを、密閉したタンクのなかに入れ、糖分と酵母を添加して、2回目の発酵を行うシャルマ法です。マスカットのようなアロマティック品種を原料にして、その果実香や果実味を生かしたい場合に効果的。比較的生産コストが抑えられ大量生産も可能です。


シャンパーニュと英国に共通する白亜質

出典:ブドウ畑の自然環境 武田弘著

昨今、英国のスパークリングワインに注目が集まっています。
私も何度か英国の泡ものにフォーカスしていますが、まず、鉱物学の分野の第一人者武田弘先生から伺ったお話をお伝えしておきます。先生は「シャンパーニュの白亜質の地層は緑色に塗られていますが、これはドーバー海峡を挟んで続いています。イギリス側の海岸は白亜質の壁で有名ですが、これはシャンパーニュの白亜紀の地層と同じで、白亜紀の時代に古パリ海周辺で堆積したものです」とおっしゃっていました。
気候変動、地球温暖化の好影響下にある英国ではシャンパーニュ地方と同じ地層のエリアから、ワインコンクールで輝かしい成績を収める素晴らしいスパークリングワインが誕生しています。
ご参考までに、白亜紀より、一時代古い地層がジュラ紀です。つまり、「白亜質」を、「石灰質」という意味にとれば、両方の地層はともに石灰質なので同じということになります。ただし、 「白亜質」を「白亜紀という時代に堆積した地層」という意味で強調すると、違った時代のものということになります。

世界と日本のシャンパーニュデータ
シャンパンは、フランス北部シャンパーニュ地方の伝統製法(英語:champagne method, 仏語:méthode champenoise)によるスパークリングワインで、世界で最も良く知られています。シャンパーニュの特定地域、特定ぶどう品種等、厳しい規制に基付いて造られたもの以外はシャンパーニュとは呼べません。また、シャンパーニュと同じ伝統製法で造っても、シャンパーニュ以外の産地では、英語:traditional method, 仏語:méthod traditionnelleと呼称します。

2018年の総出荷数量は3億187万本(前比1.8%減)、金額は過去最高だった前年を0.3%上回る48億8707万ユーロ。フランス国内の消費は数量、金額ともに減少気味。国内と輸出の比率も逆転しています。 数量ベースでは、第1位が英国で2,676万本(前比3.6%減)、第2位はアメリカで2,371万本(前比2.7%増)。逆に金額ベースだと、第1位はアメリカで5億7,707万ユーロ(前比1.5%減)、第2位は英国 4億617万ユーロ(前比2.2%減)。
日本は今回も数量&金額ともに第3位で、1,358万本(前比5.5%増)と3億1,882万ユーロ(前比3.9%増)、確実な歩みを続けています。

『The World Most Admired CHAMPAGNE BRANDS 2019』のランキング
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毎年、Drinks International のランキングを興味深く見ているのですが、本年度のトップはポル・ロジェ! 昨年シャンパーニュ研修で訪問したペリエ・ジュエも8つ上って12位、今秋訪問予定のジュセフ・ペリエも初登場しているので嬉しいです。
今回、単発講座用のシャンパンとして、ポル・ロジェのピュア(ノン・ドゼ)を選びました、理由は2つあります。まず、対抗馬として考えていたスペインとイタリアの泡ものがノン・ドゼであること。その昔、ポル・ロジェのパトリス・ノワイエル前社長がピュア発売に際して語っていた 「弊社の看板NVのブリュットに糖分を添加しないで造ったシャンパンの味わいに納得できず、その後、再度試行錯誤を繰り返し、NVより、さらに良い畑のぶどうを厳選して使うことで、ピュアな味わいのシャンパンを完成させることができた」というお言葉が強烈でした。それゆえ、ノン・ドゼなら、ピュアと決めていました。アイテム決定後、ジェロボームさんから今年のランキングを伺い、選択にさらに自信を深めました。

シャンパンに拮抗するハンブルドン?!
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2015年から英国産スパークリングワインについて講座やブログでも取り上げています。
英国に本部があるBB&Rさんが輸入しているリッジヴュー、ガズボーン・エステイト、キャメル・ヴァリー等を体験し、大いに満足。今回は今まで供出していない造り手にフォーカスしたいと思い、銘柄選択をしていた時、ジャンシス・ロビンソンMWやMSたち12名による『シャンパーニュvsイングリッシュスパークリング』のブラインドテイスティングで、1位になったハンブルドンを見て決断。私自体、テイスティングではワクワクでした!


スペインDOカバの変化

カバの生産量は2億5,251万本、輸出量は1億6,222本。


カバは熟成期間で4つに分類されます。

最上級のカバ・デ・パラへ・カリフィカードにはホログラム

長熟を旨とし、ビオデイナミ農法を導入して極上の泡もの造りをしているグラモナのシール

コルピナット表記

今年1月、カバ・デ・パラへ・カリフィカードに属していたグラモナがDOカバを脱退し、長熟タイプのカバ造りをしている仲間と正式にコルピナットをスタートさせました。グラモナのラベルがコルピナット表記となって日本上陸するのは来年以降だと思いますが、カバの新たな動きについては、ワインのこころで紹介しています。


カルフォルニアのスパークリングはアイアンホース
昨年6月、ナパ取材があり、帰国後に、単発講座としてナパワインの魅力をお伝えしました。今回はナパから離れ、ソノマのスパークリングワインを選択、連続5 代のアメリカ大統領の公式ワインとして提供されたアイアンホースです。
最初は冷戦を終結させた歴史的なレーガン-ゴルバチョフ首脳会談、ブッシュ政権、クリントン政権、ジョージW.ブッシュ政権では英ブレア首相との商談ディナー、新婚のチャールズ皇太子とカミラ夫人を迎えた際のレセプションでは乾杯用ワインとして、今回取り上げた『ウェディング・キュヴェ』が供されました。オバマ政権では世界各国の大使を招いた外交レセプションでふるまわれています。

2018年12月までの1年間の推定出荷量を見ると、伝統製法による造り手として、コーベル、ドメーヌ・シャンドン(モエ・エ・シャンドン)、マム・ナパ(G.H.マム)、ロデレール(ルイ・ロデレール)、シュラムスバーグ(ナパの伝統ある造り手)、グロリア・フェラー(スペインのフレシネグループ)、ドメーヌ・カーネロス(テタンジェ)、そしてソノマのアイアンホースが名を連ねています。


























1870年からの長い歴史を有すフランチャコルタ

昨年11月下旬、イタリア・ロンバルディア州のバローネ・ピッツィーニ(BP) から、日本文化や食に造詣が深いシルヴァーノ・ブレシャニーニ取締副社長(フランチャコルタ協会副会長&技術顧問)が来日し、5種のフランチャコルタを銀座いわ815の岩央泰氏のお鮨に合わせて探究しました。

バニャドーレ2009と白子とのマリア―ジュでは、樽使いの旨さと白子の焦がし具合が相乗し、口中でトロリと溶け合う食感が最高でした!
16世紀にフランチャコルタでスパークリングワインが誕生し、1967年にDOCとして認証され、1995年にはDOCGに昇格。1870年創業のBPは有機栽培でフランチャコルタを造った最初のワイナリーであり、環境への配慮も考え、ソーラーパネル、自然冷却システム、植物による浄水システム等、様々な取り組みをしています。
ブレシャニーニ取締副社長はシャンパンを超えるフランチャコルタであることを自負していました。彼の前で「シャンパン」という言葉は禁句(笑)なのですが、マリア―ジュの絶妙さがとても印象に残ったので、今回、選択肢に入れました。



シャンパンに拮抗する世界のスパークリング

(左2本目から6本目まで)
#1:グラモナ“トレス・ルストロス”グラン・レセルバ ブリュット ナチュール2011
生産者:グラモナ(スペイン)
品 種:チャレロ75%、マカベオ25%
ドザージュ:3g/L以下
価 格:9,000円(税別)/ 生産本数:33,800本
輸入元:金井事務所
コルク栓を使い、澱と共に84ヶ月以上熟成させたカバ。色調は淡いベージュ、ペトロール香、オイル、黄桃やカリン、ブリオッシュや乾燥イチジク、ナッツやクルミ、気泡はワインに溶け込み、口中クリーミー、シームレス。かなりしっかりしたペトロール香があり、シャンパーニュのぶどう品種とは明らかに異なる個性。支持した講座生2名。

#2:アイアンホース ウェディング・キュヴェ2013
生産者:アイアンホース・ヴィンヤーズ(米国)
品 種:ピノ・ノワール75%、シャルドネ25%
価 格:6,500円(税別)/ 生産本数:5,900ケース(12本入)
輸入元:(株)リエゾン
5つの中で一番濃い色調(黒ぶどう75%)、香りにラズベリー、オレンジピール、ブラッドオレンジ、酸味は5つのなかで一番ソフト、余韻に甘味、素直ながら様々な要素を感じさせるアイテム。支持した講座生4名。

参加者を惑わせた#3と#4
#3:ポル・ロジェ ピュア エクストラ ブリュットNV
生産者:ポル・ロジェ(フランス)
品 種:ピノ・ノワール33%、シャルドネ33%、ムニエ33%
ドザージュ:0g/L
価格:9,000円(税別)
輸入元:ジェロボーム(株)
最初から香りは華やか、白系果実、柑橘系果実、フレッシュバター、イースト、ミネラル、酒質が綺麗で超フレッシュ、溌剌かつエレガント。支持した講座生8名。

IMG_3999 上から.jpg

#4:ハンブルドン クラシック キュヴェNV
生産者:ハンブルドン(英国)

ハンブルドンのシャルドネのぶどう畑、石灰土壌 画像協力:BB&R日本支社

品 種:シャルドネ40%、ピノ・ノワール29%、ムニエ31%
ベースワインは2014年(95%)、2010年のリザーブワイン5%(タンク94%、樽6%)
ドザージュ:7g/ L
価 格:5,840円(税別)
輸入元:BERRY BRO&RUDD
ポル・ロジェと比べると香りは控め、酸は多め、ミネラルは同質。白い花、青リンゴ、すもも、アンズ、パン、ハーブ、フレッシュバター、軽いビター感、バランス良好。支持した講座生6名。

私的感想:ノン・ドゼのポル・ロジェの後に、7g/Lのハンブルドンを味わうと、糖分の違いを明確に感じます。ところが、何度か交互に利き比べていくうちに、最初に感じた糖分の差はそれほど感じなくなり、それより、柑橘果実のニュアンス、ミネラル感、フレッシュバターの風味、酒質がとても似ていることに気が付きました。双方ともに燐としたシャンパンスタイルです。
このことを輸入元のBB&Rさんに伝えました。担当の中嶋さんはつい先日、ハンブルドンを訪問なさっていたようで、当主のイアンさんから、ハンブルドンは元々ポル・ロジェの手助けがあってワイン造りをしていたこと。コンサルタントのエルヴェ・ジェスタンさんを紹介してくれたのもポル・ロジェだったとの連絡を受けました。何と何と、びっくり情報でした。ハンブルドンが目指すところは、英国王室御用達のポル・ロジェスタイルなのかも知れません。今まで、英国産スパークリングにはシャンパンより、強い酸を感じることが多かったのですが、ハンブルドンはより洗練された酸で、見事に調和していました。

ポル・ロジェの『ピュア』に、いつも以上にフレッシュさを感じたので、輸入元のジェロボームさんに入荷の時期を確認しました。担当の山下さんから「4月です」とのお返事をいただきました。
なるほど!  エペルネを離れてまだ日が浅かった分、超フレッシュなニュアンスだったようです。
4月と5月はシャンパン講座でエルヴェ・ジェスタンさんの『シャトーダヴィズ』とルクレール・ブリアンを取り上げたばかりです。ジェスタンさんから、海中シャンパン『Abyss』を講座生と味わうにあたり、素晴らしいメッセージを頂戴したのも記憶に新しいところです。ハンブルドン、ジェスタンさんに不思議で嬉しいご縁を感じています!

#5:バローネ・ピッツィーニ“バニャドーレ”ノン・ドサート・リゼルヴァ2012
生産者:バローネ・ピッツィーニ(イタリア)
格 付:DOCG フランチャコルタ
品 種:シャルドネ60%、ピノ・ネロ40%
ドザージュ:0g/L
価 格:7,000円(税別)
輸入元:アルカン
バニャドーレの名前は共同経営者のひとりが住んでいた場所に由。唯一の単一畑で、面積は3㌶(シャルドネ2㌶、ピノ・ネロ1㌶)、樹齢20年以上のぶどう樹から、作柄の良い年だけ生産。温度管理したステンレスと樽で発酵、ティラージュ前の熟成もステンレスと樽(6ヶ月)、瓶熟60~70ヶ月。ミネラル、酸の溌剌さ、旨味、バランス良好。昨年白子と合せたのは2009年ヴィンテージでした。瓶内の熟成具合がとても良く、焦がしたニュアンスが好印象だったので、それと比べると、2012年はフレッシュさが前面に出ていて、MLFをしないワインスタイルなので、より酸が強調されていた気がします。支持した講座生3名。


<番外編>
5月末、オーストリア取材がすべて終わった後、延泊してニコライホフへ。大好きなクリスティーネ当主夫人と再会できて最高でした。今回の特別講座のために、日本未入荷のゼクト『リースリング2014』とアプリコップジャムを持ち帰りました。



2017年4月、英国のチャールズ皇太子とカミラ夫人がオーストリアを訪問なさった折、ホーフブルク宮殿でのレセプションにサース家を代表してクリスティーネさんが出席。その時のアペリティフが、『リースリング ゼクト2014 』、このゼクトです!

その後、『イム・ヴァインゲビルゲ グリューナー・フェルトリーナー スマラクト2009』、食後酒は『アプリコットのシュナップス(アンズの蒸留酒)』がふるまわれました。

リースリング ゼクトの初ヴィンテージは2012年、ドザージュは5g/Lでした。2013年は生産していません。2014年が現行ヴィンテージで、ノン・ドゼに変わっています。ニコライホフのいくつかの畑のリースリングをブレンドしており、ヴァッハウの原生岩を感じる凛としたスタイルのスパークリングです。

ニコライホフのアンズ畑

ワインと同じくらいのお気に入りがアンズです!
この画像は以前クリスティーネさんが送ってくださったものなのですが、ここから収穫されたのが・・・

IMG_3990.jpg
このアンズジャム、私は世界一美味しいと思っています!
ご参加くださった皆さんの感想は、慢心の笑顔から読み取れました(笑)
双方の相性にもご納得いただけたようです。

さて、来週は6月のシャンパーニュ講座です。
準備完了、今月もご期待くださいませ[ぴかぴか(新しい)]
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