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NYワイン&グレープ財団主催 森覚講師の『NYワインの最新トレンド』テイスティングセミナー [ワイン]

 果敢に攻めるNYワイン
 
 ニューヨークワイン&グレープ財団主催、米国大使館農産物貿易事務所後援による
 テイスティングセミナーが開催されました。
 同財団プロモーションの統一テーマは“BOLDLY, NY. (大胆に、ニューヨーク)
  ~縮小するのではなく、その大胆な精神にスポットライトを当て、
                 ワインの革新、品質、経験の先駆者になる~



 講師はコンラッド東京エグゼクティヴソムリエの森覚さん
 ワインのナビゲーターは森覚ソムリエ
 セッション1のテーマは『NYワインの最新トレンド
 セッション2のそれは『NY州最大のワイン産地フィンガー・レイクスを深堀
 各回とも密を避けた15名限定で実施。



 私は前半の最新トレンドの回に参加させていただきました!


  NYワインの概要
  日本におけるNYワインの第一人者GO-TO WINEの後藤芳輝代表が全体像を解説

 ✥全米における生産量順位は第3位、全体の3.5%
 ✥7生産地域で11AVA、二大産地はフィンガー・レイクスとロングアイランド
 ✥ワイナリー数は471軒(2020年データ)、その多くは家族経営の小規模ワイナリー
 ✥冬は寒く、夏は温暖な気候

 NYワインが注目されはじめた要因は・・・
 (1)品質の向上
 栽培や醸造技術の向上、NY州とコーネル大学との産業協働、グローバル化による人的交流
 (2)トレンドの変化
 食のライト化 (パワフルよりエレガント)、ミレニアル世代の台頭(格付よりインスタ映え)
 (3)社会環境の変化
 東海岸でも地産地消が普及、サステイナブルな社会への取り組み、温暖化の影響



 NYの二大産地「フィンガー・レイクス」と「ロングアイランド」を比較


フィンガー・レイクスは1829年からワイン造りの歴史あり。寒いエリアであっても、水深のあるフィンガー・レイクスのおかげで水温は安定、ぶどう造りも可能になっています。土壌は頁岩(Shale/けつがん)、ワインはリースリングの評価が高く、赤ワインも果実味のあるタイプが台頭中。

ロングアイランドは海に面している海洋性気候、大西洋に近いのでマイルドな気候。赤ワインが多く、中心となるのはメルローやカベルネ・フラン。白はシャルドネで、リゾート地でもあるので、軽快なタイプ(樽を使わない)が人気、ロゼも好まれています。


 資料:ニューヨークワイン プロフェッショナルガイド
 フィンガー・レイクスは州西部、ロングアイランドはマンハッタンに近い州東部の島


      主要な白ぶどう
     資料:ニューヨークワイン プロフェッショナルガイド
  リースリング以外に、シャルドネ、ゲヴュルツトラミネール、ソーヴィニヨン・ブラン


      主要な黒ぶどう
     資料:ニューヨークワイン プロフェッショナルガイド
  メルロー、カベルネ・フラン以外には、カベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワール



             登場した5ワイナリーについて
     後藤さんは14社のワイナリーから60種のワインを輸入しています。
     今回のセミナーではそれらのなかから、8アイテムが供出されました。

             フィンガー・レイクス  
ドクター・コンスタンティン・フランク/NYワインの礎を築いた生産者
NYワインのパイオニア。ウクライナ出身のフランク博士が興したワイナリー。現在は4代目の才媛メーガン・フランクが仕切っています。
ハーマン・J・ウィーマー
ソムリエから「全米でNO.1のリースリング」との評価を受けているワイナリー。『Wine&Sprits』誌では過去12年間で9回も世界のトップ100ワイナリーに選出されています。
オズモート・ワイン
新進気鋭のワイナリー。NY 出身コーネル大学卒の ベンジャミン・リカルディが設立。NZや豪州でワイン造りを学び、2014年からワイン造りを開始。フィンガー・レイクスで敢えてシャルドネ造りに挑戦しています。
ラモロー・ランディング
70年代にぶどう造りからスタートしたワイナリー。ぶどう栽培に力を入れているので、それがワインの品質に反映しています。

             ロングアイランド 
ウォルファー・エステート
世界有数の避暑地で、夏にはNYのセレブが集まるザ・ハンプトンズにあるワイナリー。NYビジネスで成功を収めたドイツ出身のクリスチャン・ウォルファーが設立。NYのロゼワインの火付け役


 森覚ソムリエによるワインコメント
 白ワインは5アイテム


#1:ドライ・リースリング2018/ドクター・コンスタンティン・フランク
ぶどう品種:リースリング100%/3,500円
#2:ドライ・リースリング2018/ハーマン・J・ウィーマ―
ぶどう品種:リースリング100%/4,200円
#1#2は同じヴィンテージで同じ品種、地域もフィンガー・レイクス。ともに明るい色調のレモンイエロー、若干グリーンのトーンを感じます。#1の方が輝きが強く、香りは酵母由来(シュル・リー)の若干スモーキーで香ばしいニュアンス。スワリングするとレモン、青リンゴ、そこに白い花(菩提樹やカモミール)。果実と花に加えてイーストからの香りが調和しているワインで、スモーキーさのなかにミネラルや湿った石、ほんのりとぺトロールを感じます。最初にインパクトのある酸が広がるタイトなボデイを持ったワインで、中盤から後半に酸と苦みを伴い、全体を引き締めるような印象。後半にはレモンピールや柑橘系の果実の皮を齧った時に感じる苦みを感じ、後半に息の長い酸が続いていくのが特徴です。料理は天婦羅や中華等、脂と良く合いますし、四川料理やベトナム、タイ料理にもお薦めできます。

#2はレモンイエローでも深みがあり、香りは閉じこもった印象で、スワリングすることで香りが出てきます。グラスで供出するより、ある程度の時間をかけてサービスしたいワインです。ミネラルの要素があり、温度を上げるとリンゴ、洋梨、ネクタリン等の果実、澱からのニュアンスも感じます。香りは控えめながら、味わいはしっかり出てきます。#1はアタックに強さを感じますが、#2は最初は穏やかな印象で、酸味・果実味・甘味のバランスが後半から出てくるタイプ。酸は緻密で、口中では縦だけでなく、横にも広がり、口全体を覆ってきます。Alc12%ながら、酸とのバランスがとても良く、中盤からの果実味が後半になって一体となって広がります。造りは全房で仕込み、自然酵母を使用、清澄や濾過はほとんどしていません。 #1 はグラスで(リースリングの特徴が出ているのでわかりやすい)、#2はリースリングに特化した人向きでレベルの高いワインです。料理はホワイトアスパラガスにオランデーズソースや、帆立貝のポワレにバターソース等、フレンチがお薦めできます。



#3:サーモン・ラン・リースリング2019/ドクター・コンスタンティン・フランク
ぶどう品種:シャルドネ51%、リースリング49%/2,800円
ブレンド比率が50%より1%多めと1%少な目の微妙なバランスです。色調は淡いイエロー、清澄や濾過も上手で醸造技術の高さを感じます。シャルドネだけだと抑制された香りになりがちですが、リースリングを合せることでアロマティックに広がります。第1アロマの印象が強く、熟した果実のコンポート、桃やカリン等の黄色い果実のニュアンスが良く出ていますし、ユリやオレンジブロッサム、カモミール、ジャスミン、果実の蜜。香りのまとまりが良く、ピュアで素直です。味わいはアタックがしなやか、全体的に丸いフォルムをもったチャーミングでジューシーなワインと言えます。ステンレスタンクで醸造、残糖は8.4%で、それが果実の香りに溶け込み、単体で飲んでも美味しいワインなので、グラスで出してインパクトを与えることができます。オールマイティーに使えるので、フュージョン系レストランにマッチすると思いますし、カジュアルワインやNYワインの入門編として使えます。今の時期なら鱒料理、瞬間燻製の鱒!


#4:シャルドネ2017 オズモート/オズモート・ワイン
ぶどう品種:シャルドネ100%/4,200円
外観は中程度のレモンイエローで若干グリーンやシルバーのトーン。粘性もしっかりあります。最初に感じるのは香ばしさ(スモーキーさ)で、樽による熟成やシュル・リー由来の複雑な香りを感じます。リンゴ、洋梨、ミネラル、イースト香。味わいには力強さや骨格があり、抑え気味な果実味が旨味を伴って後半に広がってきます。熟成させるとより滑らかなテクスチュアになるワインです。軽くバーナーで炙った山形牛にトマトのジュレに雲丹を乗せた一皿や鉄板焼き(サーロイン)が合います。


#5:シャルドネ2017/ウォルファー・エステート
ぶどう品種:シャルドネ100%/3,700円
黄色がしっかり出ている明るい色調で粘性は中程度からやや強め。香りには桃、カリン、洋梨のような果実。フローラルで若干のホワイトペッパーやイーストのニュアンス、ヨードを感じ、香りにはまとまりがあり、エレガントです。口中で横に広がる果実味があり、カリンののど飴をなめているような印象。集中力があり、果実の旨味(savory)が凝縮しています。みずみずしい“果汁感”があり、後半に甘みと軽い苦みを感じるワインです。料理は仔牛のカツレツ(ウィンナーシュニッツェル)のように脂肪分のあるものや、味わいに厚味を感じるものが合うので、気楽に楽しんで!

【青木の私感】 グラスの拭き上げのせい(だったのか)、#5以外のすべてのグラス(ワイン)に、ロウ似のニオイを感じて、本来の香り&味わいを体験できなかったのが正直な感想です。 森講師が、このワインに対して、ホワイトペッパー、合わせたい料理にウィンナー・シュニッツェルを挙げていましたが、出来の良いシャルドネに顕著なホワイトペッパーのニュアンスやストーンフルーツの要素がある好感度の高いワインだったので、個人的に大好きなオーストリアのグリューナー・ヴェルトリーナーと若干重なるイメージもあり、仔牛のカツレツ発言にも大いに賛同できました。そのような理由から#5が当日のマイベスト!



 「NYワインは商材として非常に可能性がある」と森講師


 赤ワインは3アイテム

 

#6: T23 カベルネ・フラン2017/ラモロー・ランディング
ぶどう品種:カベルネ・フラン100%/3,800円
外観は明るいラズベリーレッド、若干紫色が入る色調。香りの第一印象は華やかで広がりがあり、砕いたラズベリーやポプリ、セイボリーハーブやグリーンペッパー、白檀のニュアンス。ピュアでエレガント、複雑性を伴う好感度のあるワイン。きれいな酸味と果実味が特徴。中盤から後半にスムーズで緻密なタンニン、Alcをほとんど意識しないで飲み続けることができる味わい。料理の前半から出せるワインで、サーモンや和食にも合わせやすく、金目の煮つけや煮物にも!


#7:カベルネ・フラン2018/ハーマン・J・ウィーマ―
ぶどう品種:カベルネ・フラン100%/5,500円
カベルネ・フランの品種の特徴が良く出ています。外観は#6より濃い目、やや赤みのあるラズベリーレッドで、粘性はありますが、Alc(12.5%)は低め。香りにはラズベリーやストリベリーのような赤系果実、バイオレット、ローズマリー、土っぽさがあり、マッシュルーム(きのこ)の印象も。味わいは#6より力強く、しっかりとした果実味・酸味・渋味があるので、ストラクチュアが感じられます。冷涼気候を反映したカベルネ・フラン。うなぎの蒲焼に山椒をたっぷりかけて食すと良く合います。


#8:カヤ、カベルネ・フラン2016/ウォルファー・エステート
ぶどう品種:カベルネ・フラン80%、メルロー19%、プティ・ヴェルド1%/6,800円
ラストはロングアイランドのワインで、ボルドーのようなストラクチュアがあります。外観は3つのなかで、一番濃く、縁にややオレンジのニュアンスを含む、深みのあるラズベリーレッド。香りに複雑性があり、カシスやワイルドベリーのような赤系から青系果実のニュアンス。香りにはバイオレット、バラ、グリーンペッパー、シナモン、丁子、ナツメグ、ミネラル等の表現力豊かなワイン。味わいは2016年ということもあり、練れてきている印象、滑らかで、タンニンも溶け込み、奥行きを感じます。ボルドーの右岸系の特徴を持ったワインで、今飲んでも美味しいフレンドリーなタイプ。スパイスやハーブを使い、ソースにも時間をかけたフレンチやグルマンな料理がお薦めです。


 ストラクチュアがしっかりとしたタイプのカヤ、カベルネ・フラン2016
 NY ロングアイランドのカベルネ・フランCFを試飲したのは初めて!
 数年くらい前から、国際的にも評価が高いアルゼンチンのカベルネ・フランに注目し、
 いろいろ試してきたので、両国のCFを利き比べたい気分になりました。

 当日のフルラインナップ


 テイスティングは上段左から右へ、下段左から右へ


[NEW]セミナーの仕切り役をなさった(株)ワイン・エブリィ・シーンの武田俊子代表から許可をいただきましたのでセッション1の動画をリンクさせていただきました!!


   最後は映画とワインで
   出典:Champagne images et imaginaire/Hazan

初めて“ロングアイランド”という地名を意識したのは、オードリー・ヘプバーンの映画『麗しのサブリナ』でした。当地の大富裕ララビー家の兄弟とお抱え運転手の娘サブリナとの恋を描いた作品は古き良き時代のアメリカを感じるお洒落な映画で、ここに登場していたのはシャンパン。微かに星が見えるので、モエ・エ・シャンドンだと思います。
リメイクされた映画『サブリナ』に出てくるのも、やはりシャンパン。この時はクリュッグで、パーティーで惜しげもなく供出されていたのがとても印象的でした。

今世紀製作するならスティルワインが出てきても良さそう、果敢に攻めるNYワインかな[わーい(嬉しい顔)]

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