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1889年設立のナパ『マヤカマス』から醸造家が初来日、WSで高評価を受けた2015年VTを披露 [来日したワイン生産者&関係者]

 ピューマの遠吠えの意味をもつマヤカマス・ヴィンヤーズ
ワイナリー名はマヤカマス山脈に由来。敷地は190㌶、うち18㌶にぶどう植を植樹、畑は標高550m〜750mの山岳地帯に位置しています。生産量は5,000~6,000ケースで、内訳はCH2,000、ME500~1,000、CS2,000~3,000。ロゴのMの中に描かれているのは2 匹のピューマ(マウンテンライオン)、アメリカン・インディアンのワッポ族の言葉でマヤカマスは「ピューマの遠吠え」を意味します。

マヤカマスの沿革 敬称略
ナパで最も古いワイナリーのひとつとして知られているマヤカマス・ヴィンヤーズは、サンフランシスコでピクルスの販売をしていたドイツ人のジョン・ヘンリー・フィッシャーが、1889年に別荘兼ワイナリーとして立ち上げたものです。場所は現在のマウント・ヴィーダーAVA (当時の呼称はレッド・ウッズ)。趣味で植えたぶどう樹(ジンファンデル等)からワインを造り、販売。荷馬車で2日間かけてサンフランシスコまで運搬していたという記録も残っています。1906年のサンフランシスコ大地震とそれに伴う火災が原因で自己破産に追い込まれたフィッシャーは止む無く施設を手放すことに。1910年、オークションにかけられたワイナリーは、わずか5000ドルで落札されます。余談ですが、購入した人物はカトリック系だったので禁酒法時代 (1920~1933年)にも合法的にワイン造りをしていたとのことです。

禁酒法解禁後、廃墟に近い状態になっていたワイナリーを英国人のジャック・テイラーが購入。重力移動式のワイナリーとして再建し、敷地にシャルドネとカベルネ・ソーヴィニョンを植樹。1965にワインメーカーとしてボブ・セッションズを雇用。彼は1971年まで働きました。1968年から所有者がテイラーからボブ・トラヴァース(1972年から2012年までワイン造りを担当)に変わります。機械工学を専攻した彼は、ワイン好きが高じて、ワイナリーを入手する以前には、ハイツ・セラーズでワイン醸造を学んでいました。

1976年に開催されたパリ・テイスティングで7位に入ったマヤカマス・カベルネ・ソーヴィニョン1971はボブ・セッションズが造ったワインです。この出来事以降、マヤカマスは評価を高め、さらに、2006年に行われたパリ・テイスティング30周年記念のテイスティングでは3位に輝き、長期熟成に耐えうるワインとしてマヤカマス・ヴィンヤーズは世界的に知れ渡るようになります。

2013年、トラヴァースが74歳の時に、現オーナーのショッテンスタイン財閥の傘下となり、スクリーミング・イーグルの元ワイン・メーカーのアンディ・エリクソンがワイン醸造を監修。ワイン造りは2月に来日した若きポープ、ブレイデン・アルブレクトが担当しています。
長期にわたり放ったらかしにされていた畑の大改革はカリフォルニアでオーガニック&バイオダイナミック農法のパイオニアとして知られているフィル・コトゥーリに委ねられ、マヤカマスは健全な土壌を取り戻すことに成功しました。



 細く長い林道の奥にあるマヤカマス・ヴィンヤーズ
 禁酒法時代にはスピークイージー(もぐり酒場)の場としても知られていた!?
 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』の映画を思い出して・・・ 


 1976年の『パリスの審判』でのランキング

 2006年は第3位に!



2月に来日した醸造家ブレイデン・アルブレクトさんと輸出部長キャシー・コーンさん
アルブレクトさんの家族はラザフォードに畑を所有していたので、幼少期から土に馴染み、自社畑で獲れた野菜等を食べていたそうです。ソノマに転居し、高校生の時はワイン造りにはまり、カリフォルニア大学バークレー校に進学して農業を専攻。インターンシップでフィル・コトゥリーの元で学び、彼の哲学にほれ込みます。その恩師から紹介されたのがマヤカマスで、ワインメーカーとして現在に至っています。

 ブレイデン・アルブレクトとのテイスティング・タイム

バランスの取れたマヤカマス・ヴィンヤーズ シャルドネ ナパ・ヴァレー2014、2017
「2017年は山火事がありましたが、シャルドネはカベルネと醸造施設が異なるので生産することができました」とアルブレクトさん


樹齢40年のぶどう樹、無灌漑、発酵は小樽(新樽率5~10%)とパンチョンとステンレスタンクを使用。ノン・マロ、シュル・リーで12ヵ月(約15年位の使用樽)樽熟、その後6ヵ月ステンレスタンクで熟成させ瓶詰め。2017年は温暖な気候だったので、ワインの味わいを締める意味で6ヵ月ステンレスを使用



(左から) マヤカマス・ヴィンヤーズ CS マウント・ヴィーダー ナパ・ヴァレー 2012、2013、2015
2012年はボブ・トラヴァースが所有していたので栽培にも収穫にも関わっていないヴィンテージ。2013年から現オーナーのショッテンスタイン家が管理。栽培から収穫、醸造に至るまで全ての工程を自分たちで行った。納得できるヴィンテージで質も量も潤沢。温暖な2015年は結実不良があったものの酒質は良く、長期熟成タイプ。この年は2019年ワインスぺクテーター誌のTOP100で堂々の第2位!

 和牛ヒレ肉のカツサンド 
(左から)同2003、2005、2010
温暖だった2003年は果実味とタンニンの調和が取れたヴィンテージ。2005年は2015年と比べると穏やかな年だったが若干青っぽさがあり現段階では酸が際立つ。冷涼で雨が多かった2010年は、数年続いた干ばつ後の年になるので樹勢が強く、通常より、若干水分を感じるヴィンテージ

カベルネに関しては、糖度が上がりきらない状態(=酸が残っている状態)で、収穫を早めに行うことを心がけている由。ぶどうは房ごとに選果を行い、100%除梗、コンクリートタンクとステンレスタンクと蓋なしのフュードルの3つの容器を使い発酵させる。スキンコンタクトは14~21日、プレス、樽熟成(マヤカマスでは3年間)。ここでは1960年代から続けている醸造方法で、最初の2年は大きめのカスク(ものによっては1929年代や1940年代の樽、年季の入った大樽)で熟成。3年目は225㍑のフレンチオークが主体。新樽率は5~10%、年によっては新樽使用率ゼロのことも。4年目に瓶熟成を1年間行ってから出荷。VTによっては更なる熟成を加えることもあるそうです。

アルコール度数が13.5%~14%程度で収まっている理由について、アルブレクトさんは「標高が550m以上なので、畑は霧の上にあり、ぶどうは陽を浴びても涼しい環境にいるので、糖度が上がらなくてもぶどうはきちんと熟すことができます。ゆえに果実味とフェノール分を備えつつ、アルコール度数を低くおさえることができるのです。日照時間は長くても、標高が高く、涼しいので、ぶどうは加熟になりません」と語りました。

 10年違いのヴィンテージを発売

同2005、2015
数年前から、最新VTと10年前にさかのぼったVT(今回を例にすると2015年と2005年)を同時発売し、若いワインと熟成したワインの双方を楽しんでもらおうという試みをしています。2020年の12月には2016年と2006年、来年は2011年と2007年をリリース予定です。

2017年は山火事があり、ぶどうへの害はなかったものの、火事がひどくてテイスティングルームも燃えてしまったとのこと。停電と断水のため、醸造中のワインのメンテができなかったことから2017年は発売しません。ただし、ワイナリー用として250ケースはキープしています。そのような経過から、未発売だった2011年を2017年の代わりに発売することに決めたそうです。

      焙じ茶最中アイスとカベルネ

取材を終えて
初来日のおふたりは大のスキー好き。仕事が終わり次第、「ニセコに行く予定」と語っていました。スキーのイロハを教えてくれたアルブレクトさんのお父様と合流するとのことでした。北海道では1月末にCOVID-19の感染者が出ていたので少し気がかりでしたが、なんとかすり抜けたようです。
初めての日本訪問の印象が少しでも良いことを願っています!

◍製品についてのお問い合わせはWine in Style
Tel:03-5413‐8831

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