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シャルル・エドシックのシリル・ブランシェフ・ド・カーヴが語るヴィンテージ&ブラン・デ・ミレネール [来日したワイン生産者&関係者]



シャルル・エドシックのシェフ・ド・カーヴ、シリル・ブラン氏が来日!
タイトなスケジュールを割いて7名のプレス&ソムリエとテイスティングセミナーをしました。

持続の精神を体現するシェフ・ド・カーヴ

似顔絵で描かれているのは歴代の4名のシェフ・ド・カーヴです。
上段が4代目(2015年から)シリル・ブラン氏
そこから時計回りに3代目(2011年から2014年)ティエリー・ロゼ、2代目(2002年から2011年)レジス・カミユ(現パイパー・エドシックのシェフ・ド・カーヴ)、初代(1976年から2002年)ダニエル・チボーの各氏

期待できる2018年ヴィンテージ
11日のセミナー時、「ちょうど2週間半前に収穫を終了し、最初のスティルワインをテイスティングし始めたばかりの段階です」とブラン氏。続けて、「2018年は歴史的なヴィンテージになることでしょう。どのエリアでも品質&数量ともに納得のいく出来になっています。ヴィンテージ、プレステージ・キュヴェともに造れますし、リザーヴワインとしてもキープできます」と語りました。
さらに「酸度は中程度から少し低め、豊かなフェノールに富んでいるので、シャルル・エドシックらしいヴィンテージと言えます。いつも聞かれる過去のどの年と似ているか、どの年と比較できるかという質問ですが、私的には1989年の豊かさと2002年の洗練さを持ち合わせていると思っています。答えは10年後にわかると思います」と。

2017年の収量を考えると、今年はダブルハーベストとも言えるので、シャンパーニュ地方のシェフ・ド・カーヴにはハッピーな年になっているようです。
今世紀は、「8」の付く2008年、2018年ともグレートヴィンテージ、覚えやすいです!


比較テイスティグに登場したヴィンテージについて
2006年は収穫日に差が出た年。収穫量は例年並み。酸は若干低め、果実味とボディは豊か。2005年は収穫はほぼ順調、自然糖度も良好、ピノ・ノワールよりシャルドネが健全生育。2004年は1990年や1982年を上回る記録的な収量年で、果実も健康、成熟度も、酸度も理想的な年。1995年は開花順調、夏は暑く、降雨も少なく、すべてが良好。アルコール度数は高く、酸度は例年並み、予想通りの成熟を見せた古典的な年。 
(出典:シャンパン/ガイアブック)

06年と05年の比較テイスティング
「対照的なヴィンテージ」とブラン氏
シャルル・エドシックに就任した2015年に、ちょうど2005年のブリュット・ヴィンテージがリリースされたばかりだった由。その折、「できれば2006年を先に出すべきだったのでは」と提言したというブラン氏。そのアドバイスの正しさを証明したテイスティングになりました。

第1フライトはブリュット・ヴィンテージ
IM
左が2006年、右が2005年、正反対の個性なのでTPOに応じて!

■2006年はローストしたナッツやアプリコットを連想させるシャンパン。熟成も程よい段階にまで進んでいて、今飲んで美味、香りは開いていて親しみやすく、優しい酸がなんとも魅力、 これから数年間は楽しめる。
■2005年はゴールデンカラーで、フェノール類も多く、より熟成感が出ていて、一本芯が通ったミネラル感も。「飲み始めるのはあと数年待ってから。その後長い熟成も可能」とブラン氏。
■データ
2006年:ピノ・ノワール60%、シャルドネ40%、ドザージュ10g/L
2005年:ピノ・ノワール59%、シャルドネ41%、ドザージュ10g/L
ともに9年間澱とともに熟成させ、デゴルジュマン後に1年熟成。

私的感想:2006年はとにかくチャーミング、フェミニンな印象。飲んで美味しさが伝わる1本。好感度の高いアイテムで、優しい酸が飲み手を大いに癒してくれます。
私の好みは2005年。熟成感があり、ミネラル豊か、層になって広がる旨味、ポテンシャルがあります。
例えとして・・・プロポーズの時に用意するなら、2006年がおすすめ! 
気持ちを和やかにしてくれる味わいなので、相手は「No」とは言わないはず。
同じ部屋に結婚式を控えたハッピーな殿方がいらしたので、彼は何のシャンパンを用意したのかなぁ~なんて考えながら思いついた例えです(笑)

第2フライトはロゼ
ロゼ・シャンパンの権威として知られていたブラン氏は、赴任後、上司にロゼのリリースについて、「2005年より2006年を先に出すべき」と提言しました。2005年を試飲した時、厳格でシャイな印象だったのでリリースするのはまだ早いと感じたからです。一方の2006は開いていてフレンドリーでした。結果、意見が聞き入れられ、2006年が先に市場に出ることに。これはシャルル・エドシック開始以来の出来事で、今までの伝統が破られた瞬間になったとのこと。
ちなみにロゼに使う赤ワインは最初の2日間は8~10度でコールドマセレーションを行い、酵母を添加して発酵させるときは18度で、20度超えないようにしているそうです。

2006年はフェミニン

2006年は過去のヴィンテージで言うと「リッチな1998年に類似しています」とブラン氏
開いていて、わかりやすく、フルーティで、熟成のニュアンスも。
2006年:ピノ・ノワール66%、シャルドネ34%、赤ワイン10%添加

2005年はマスキュラン

2005年は「複雑さがある1979年に似ています」とブラン氏。
豊潤で肉感的、口中では強い存在感、フェノールが豊かなヴィンテージ
「赤ワインをサービスしようか、ロゼ・シャンパンをサービスしようか、迷った時に、2005年のようなタイプを選ぶと間違いない」とブラン氏。
2005年:ピノ・ノワール73%、シャルドネ27%、赤ワイン8%添加
赤ワインの比率に関してブラン氏は「凝縮感があったので8%以上添加できませんでした。10%だと強すぎる」とコメント

私的感想:ロゼに関しては2015年のしっかりとした味わいより、2016年のエレガントなスタイルが好み。ただ、2015年には底力があるので、毎年定点観測していくとその実力がわかって興味深いものになると感じました。赤ワインは2016年より2%控めながら、口中の豊かなテクスチュアは印象的!

ロゼの色決めは黒いグラスを使って
ブラン:視覚の影響を受けないようにすることと味覚で判断することが大事です。そのために黒いグラスを使っています。トライアングルブラインドテイスティングと呼ばれるもので、3つのグラスを使い、そのなかの2種類は同じワインにして行うやり方です。

ヴ-ヴ・クリコにいた時に考えた方法で、ヴーヴでは銘醸畑クロ・コランから造られた赤ワインは他の畑のものより色が濃いので、色を見ただけですぐにわかります。それで黒グラスを使うようになりました。その時のやり方を応用しています。

ロゼに使う赤ワイン造りで大事なこと
ブラン:シャンパーニュのアイデンティティーであるチョークのニュアンスやミネラル感を備えているべきだと考えています。ポイントは ぶどうの熟度だと思うので、潜在アルコール度数が11~11.5%であることが大事です。ぶどうが熟し過ぎてしまうと、そのような部分がなくなってしまいます。地球温暖化とともにぶどうをより熟させるという誘惑にかられることがあるかも知れませんが、我々はブルゴーニュではないので、ブルゴーニュ以下の熟度であることが必要です。それがシャンパーニュのアイデンティティーと考えています。
今、現実問題として危惧しているのが、シャンパーニュの新しい生産者のなかに、地球温暖化のことは知っていても、シャンパーニュのアイデンティティーが何かを知らない人たちがいることです。それにより、ぶどうが過熟する方向に進んでしまう危険性を感じています。


第3フライトはブラン・ド・ブランの逸品ブラン・デ・ミレネール
ブラン・デ・ミレネールはダニエル・チボー氏のコンセプトによって誕生したアイテムで“テロワール”を重視しています。生産本数は通常6万~7万本。リリースしたのは初ヴィンテージの83年、85年、90年、95年、そして2004年の5回だけ。


2015年11月撮影
2回目にリリースされたのが1985年、旨味と複雑味と長い余韻、素晴らしい体験でした!

ぶどう品種はシャルドネ100%、クラマン、アヴィーズ、オジェ、メニル・シュル・オジェ、ヴェルテュの5ヶ村を20%ずつ使用。
チボー氏は各村の個性を分析しており、その特徴については、「クラマン村が柑橘の香り、アヴィーズ村はエキゾチックでトロピカル、オジェ村はボディとフレッシュ感、ル・メニル・シュル・オジェ村はスモーキーさとミネラル、そして、ヴェルテュは花のような香りで、全体の繋ぎをする役目」と。製法はスタート時から一切変えていません。

最新ヴィンテージ2004年はチョーキー

繊細で木目の細かい気泡、レモン、フレッシュバター、アーモンド、中盤以降口中に残る酸の余韻


1995年ヴィンテージは豊潤

市場には流通していないヴィンテージ
チボー氏お気に入りのヴィンテージで通常より多めの生産。2004年より、さらに細かい気泡、泡はワインに溶け込みクリーミー、シームレス、蜂蜜、白コショウ、パン・デピス、果実のコンポート、凛としたスタイル

ブラン氏が興味深い話をしてくださいました。
「今春、セラーに保存していた1995年の最後のバッチ(管理する量の単位)をデゴルジュマンしました。その折、Mytikミティック※1を使い、Jettingジェッティング※2を施しました。将来どこかで、1995年ヴィンテージが出てくるかも知れません」と。楽しみです!

※1TCA(ブショネの原因となるトリクロロアニソール)を100%除去したDIAMディアムのスパークリングワイン用コルク
※2シャンパーニュで近年導入し始めた「ジェッティング(噴射)」は、デゴルジュマンの時に、水と亜硫酸をごく少量(0.15マイクロリットル)噴霧することで、ヘッドスペースの空気を排出させる。これにより、酸素含有量の一貫性が保証され、亜硫酸添加の必要性も低減する。還元的な状態になるので熟成期間も長く保たれ、ボトル差もほとんどなくなる。元々ビール業界で長年行われてきた技法


左は2004年VTでミティック、右は1995年VTでナチュラルコルク
シャルル・エドシックでは2020年頃までをめどに全アイテムをミティックにする予定



画像は左からブリュット・ヴィンテージ2006、同2005、ロゼ・ヴィンテージ2006、同2005、ブラン・デ・ミレネール2004、同1995

“飲めばわかる、それがシャルル・エドシック”
2018年ヴィンテージがリリースされた時に、このフレーズが大いに活用されそうです!

11月6日にシャルル・エドシックを3年振りに訪問します。新装されたテイスティングルームでの試飲も楽しみですが、シリル・ブランシェフ・ド・カーブと再会をお約束できたことが嬉しいです!

■製品のお問い合わせは輸入代理店日本リカー(株) ℡03-5643-9770

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