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人気バローロの造り手ルチアーノ・サンドローネの2代目バーバラ・サンドローネ初来日 [来日したワイン生産者&関係者]

創始者が孫に託した新たなネーミング ~カンヌビ・ボスキスからアレステに~


伊ピエモンテ州ランガ地区バローロ村が拠点のルチアーノ・サンドローネ
ガレージで自らのワインを造り始めてから、2017年で丸40年を迎えた創始者ルチアーノさんと、孫のアレッシアさん&ステファノさん。
サンドローネのフラッグシップワイン、バローロ『カンヌビ・ボスキス』は2013年ヴィンテージ(VT)から、孫たちの名に由来するバローロ『アレステ』に変わりました。


新VT 『アレステ2013』と『カンヌビ・ボスキス2007』


2代目当主のバーバラ・サンドローネ女史が語る40年の歩み


輸入元ジェロボームの招聘で、ルチアーノさんの娘バーバラさんが初来日。1994年からファミリー・ビジネスに加わり、コミュニケーションや広報などあらゆる業務に従事。世界を飛び回り、父親が手掛けるワインを紹介しています。次世代を担うふたりの子供たちアレッシアさん(19歳)とステファノさん(17歳)はワイン醸造等を学んでいます。
バーバラさんはワインメーカーズディナー等で日本のサンドローネファンと交流していましたが、来日の主たる目的である、カンヌビ・ボスキスの名称変更の経緯についてもしっかりと発信できたようです。

ルチアーノ・サンドローネの沿革
ルチアーノさんの父親は家具職人だったので、ワインとは無縁の家系でした。15歳の時に家業を離れ、ワイン業界に。最初はジャコモ・ボルゴーニョ、その後はマルケージ・ディ・バローロの元で働きました。

1977年バローロの中心部にあるカンヌビ・ボスキスに畑(1㌶弱)を購入、1978年にマルケージ・ディ・バローロで働きながら、自らのワインも手掛け、自宅のガレージ内で約1500本のワインを生産。1981年ヴィニタリーにワインを出展。それがアメリカのワイン商の目に留まり、アメリカへの輸出がスタートします。

1990年マルケージ・ディ・バローロを辞めて独立。アルバの醸造学校を卒業したルチアーノさんの弟ルカさんが1992年にワイナリーに参画。1995年バローロに新しい土地を見つけて、1999年グラヴィティシステム(地下1階、地上2階)のワイナリーが完成。
現在、27㌶の畑の管理、6つの畑(5つがバローロ、1つがロエロ)で、栽培している品種は「ドルチェット」、「バルベーラ」、「ネッビオーロ」
直近の話題として、世界的に高評価を得ている『カンヌビ・ボスキス』が2013VTから『アレステ』に名称変更。

カンヌビ・ボスキスからアレステに変わった経緯
ルチアーノさんは孫のステファノさんが生まれる17年前頃から、「家族のため、次世代のために何かを変えたい」との思いを抱いていたようです。10年間にわたり、家族で話合いが行われていて、その結果、バーバラさんのふたりの子供たちの名に由来する、"アレステ"にすることで全員が同意。2013年VTからワイン名が変更になりました。
40年前に初めてカンヌビ・ボスキスをラベルに表記したルチアーノさんなので、決断に至るまでには、かなり悩んだことと思います。でも、この行動はルチアーノ・サンドローネの歴史の伝承、創始者が大切にしている家族&大事なワインを次世代に託した形象化だと思うので、サンドローネファンは十分に理解できると思っています。

ちなみに、プレスランチョンで、数年前に起きたサブリージョン表記問題(ボスキスを表記するのは違法との訴訟)の質問が出ました。裁判の結果は、カンヌビでもカンヌビ・ボスキスでも、どちらの表記を選択しても良いとの判決が出て、一件落着しているので、今回のネーミング変更の直接の要因ではないようです。


プレスランチョンで8アイテムをテイスティング

#1:ドルチェット・ダルバ DOC2015 
最新VT、畑はモンフォルテ・ダルバ、ノヴェッロで標高350~450m、収穫は例年9月第2週、ステンレスタンクのみ使用(10ヶ月熟成)、10区画(2つの畑)のワインをブレンド、7月末に瓶詰、9月リリース。フレッシュ&チャーミング、色調はルビーやバイオレット、ベリー系果実、リコリス、辛口ながら余韻にドルチェット(ドルチェ)由来の甘やかさ。ワインだけでも料理と合せても万能。
#2:バルベーラ・ダルバ DOC2015
最新VT、畑はモンフォルテ・ダルバ、ノヴェッロで標高350~450m、風が強い区画、収穫は9月下旬から10月初旬。バルベーラは酸が高く、多産なので収量のコントロールが大事。溌剌とした酸味があり、タンニン分が少ないので、スランス産トノー500㍑(新樽30~35%)で12ヶ月熟成。7区画のワインをブレンド。深みのある濃紫色、黒系果実(ブラックベリー、プラム)、ココア、コーヒー、長熟な品種なので10~15年楽しめる。


タナロ川を越えたロエロ地区にあるヴァルマッジョーレ(大きな谷の意)は扇状の地形で東から西向きの畑、65~70度の急傾斜、土壌は砂質。6~8区画に分けて収穫を行うが、機械は入れないので全て手作業。ルチアーノさんは28人の畑の所有者に地道に交渉し、1990年畑を購入。現在3㌶を所有。
#3:ネッビオーロ・ダルバ ヴァルマッジョーレDOC2015
最新VT、ぶどう品種はネッビオーロ、畑はヴェツァダルバ(ロエロ地区)、明るいルビー色、砂質に由来するフィネス、赤系果実満載の香り、新鮮な摘みたてのストロベリーやラズベリー、タンニンはソフトでシルキー
#4:同 DOC 2010  (Sibi et Paucis)
ぶどう品種はネッビオーロ、畑はヴェツァダルバ、赤系果実が熟したニュアンス、スパイス、豊潤でエレガント

#5:バローロ レ・ヴィーニュDOCG 2013
最新VT 、収穫時期は10月10日頃、ぶどう品種はネッビオーロ、畑はバローロ、ノヴェッロ、新しく購入したカステリオーネ・ファレット&セッラルンガダルバ、4つの区画のワインをブレンド、500㍑のフレンチオークで18ヶ月熟成、粘土石灰質土壌で一部砂質混在、ドライフラワー、プラム、レザー、スパイス、上質な酸味、木目細やかながら存在感のあるタンニン、熟成による変化が楽しみなアレステの弟分的ワイン。
#6:同 DOCG 2007 (Sibi et Paucis)
ぶどう品種はネッビオーロ、畑はバローロ、ノヴェッロ、モンフォルデダルバ(2区画/契約畑)で、4つの区画のワインをブレンド、プラム、ブラックベリー、スパイス、ミント、溶け込んだタンニン、バランス良好

#7:バローロ アレステ DOCG 2013
最新VT、単一畑、ぶどう品種はネッビオーロ、標高300mほどで畑がボール状、粘土石灰質の土壌、500㍑のフレンチオークでMLF後、24ヶ月熟成、赤系&黒系果実、甘草、レザー、ミネラル、凝縮感、複雑味、ポテンシャルあり、余韻も長い
#8:同 カンヌビ・ボスキス DOCG 2007 (Sibi et Paucis)
単一畑、ぶどう品種はネッビオーロ、果実とタンニンと酸味がワインに溶け込み、継ぎ目のないスムースな食感、アーシー、タバコ、レザー、きのこ、リキュール、旨味、時を経たネッビオーロが本領発揮した印象



ワインは手前から#1~ #4 、奥左から # 5~#8

エレガントな砂質土壌のネッビオーロ

左から#3#4
ヴァルマッジョーレは若い2015年VTのほうが色調も淡く、味わいは繊細でエレガント。得も言われぬ魅力があり、惹かれました。
色調の違いが何に由来しているのか、伺ったところ、ひとつは土壌、ひとつは醸造(新樽の使用)とのこと。「砂質土壌で育つネッビオーロは若いうちは色が淡く、熟成するにつれて、濃い色調になり、複雑味が出てきます。醸造面では新樽を使わず、2~3年の使用樽を用いています。バローロは熟成すればするほど深みを増し、茶色やレンガ色のトーンになるのですが、ヴァルマッジョーレは樽を使ってもバローロと違って新樽は一切使わないので、その特徴がより顕著に出ています」とのお返事でした。

2004年から導入したSibi et Paucis(熟成プロジェクト)

バーバラさんが手にしているボトルのラベル右下にご注目
熟成プロジェクト“シビ エ パウチ”のロゴがあります。

イタリア人の哲学者でワイン醸造家でもある友人の言葉からヒントを得たネーミングで、シビはラテン語で“私自身”、 パウチは“限定された友”を意味しています。
バーバラさんは「家族のためにワインを遺すこと。そして、限られた数量のワインを大事な人たちとわかちあうためのファミリーライブラリーで、構想は父がジャコモ・ボルゴーニョにいた時に、ネッビオーロの熟成プログラムの大事さを体験したことがベースになっています」と語っていました。

ネッビオーロの熟成の変化がわかる

対象のアイテムはネッビオーロのワイン『ヴァルマッジョーレ』、『レ・ヴィーニェ』、『カンヌビ・ボスキス』で、それぞれ生産量の10%だけストックしておきます。ヴァルマッジョーレは6年間、レ・ヴィーニェとカンヌビは10年間、セラーでさらに瓶熟させて、その後再リリースさせるプロジェクト。
余談ですが、バローロの規定は樽熟2年、瓶熟1年ですが、サンドローネでは瓶熟期間を2年にしているので計4年。いかに熟成期間を大事にしているかがわかります。

熟成プロジェクトに関して、「ネッビオーロは若いうちはタンニンが強く、飲みにくいことがあるのですが、熟成するとそれがまるくなり、アプローチしやすくなります。父には熟成したバローロを知って欲しいという思いがあり、ワイナリーが完成した時にスペース的にも余裕ができたので、実行しています」とバーバラさん。

バローロをOUTの黒トリュフパスタと合わせて
たっぷりの黒トリュフ、お部屋中に香りが広がりました!


土地のワインと土地の食材との言わずもがなのマリアージュ
#8のカンヌビ・ボスキスの枯葉的な要素、溶け込んだタンニンのまるみがトリュフと合わせると口中で渾然一体。シビエパウチの素晴らしさも実感できました!

バーバラさんはネッビオーロで造る3アイテムのワインについて、「同じ品種のワインですが、ヴァルマッジョーレは砂質土壌、レ・ヴィーニェは粘土石灰質に若干の砂質が混在、カンヌビは粘土石灰質なので同じ言語を話していますが、生まれた場所が違うので、それぞれ異なるアクセントで話しかけてくるワイン」と表現していました。何というお洒落な言い方!
イタリアの土着品種“ネッビオーロ”に対する強い愛を感じました。


ユニークなOUT


お店のコンセプトは、ひとつの料理(トリュフのパスタ)、ひとつのワイン(リッチな赤ワイン)、ひとつの音楽(レッド・ツェッペリンのサウンド)の三位一体感。来店者は販売機でチケットを購入するシステムになっています。
店舗構想を立ち上げたのは、豪州メルボルンでレストランを経営するデビッド・マッキントッシュさん、起業家のトム・クレイゴさん、東京でフードコンサルタントとして活躍するセーラ・クレイゴさんの3人。
私がお邪魔した時は、“ひとつのシャンパン(ポル・ロジェ)”も仲間に加わっていました。できれば、ウインストン・チャーチルを黒トリュフのパスタに合わせてみたいです!

■ワインについてのお問い合わせは輸入元ジェロボーム(株) ℡03-5786-3280

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