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【後編】ヨーロッパ最優秀ソムリエコンクールの覇者はラトビアのライモンズ・トムソン選手 [Wine Summit 2017]

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【前編】に続けて、The Best Sommelier of Europe Vienna 2017 における精鋭たちの熱戦の様子をお伝えします。

バルコニー席から撮影
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私は2階のバルコニー席だったので、会場全体を鳥瞰できましたが、舞台までの距離がかなりあったので、いつもより画像が粗めですみません<(_ _)>

口開けは日本酒の課題!


田崎真也ASI会長と2009アジア・オセアニア最優秀ソムリエの森覚さんのペア。アペリティフとして意欲をそそるような『SAKE』を薦める課題(2分30秒)。ワインクーラーの中には3アイテム(日本酒、焼酎、日本酒のスパークリング)

ルーマニア、ラトビア、ポーランドの3選手は純米酒萩の白露(浦霞・宮城県)をセレクト。前者2名は利き酒をしてからサーヴしていましたが、ポーランドとフランスは確認を怠ったこと、加えてフランスのビロー選手は焼酎を選択しまったのでマイナス評価になったと思います。

ピエトラス選手(ルーマニア)は冒頭 『明石鯛(兵庫県)』という固有名詞を出していましたし、トムソン選手(ラトビア)も仮想客のシーンで『白瀑(しらたき/秋田県)』を提案していたので、日本酒問題は必須だと思っていた印象。スカヴォ選手(ルーマニア)はラベルの日本語判読に苦労していた様子で、田崎会長ではなく、森さんにホストテイスティグをしていた点からも動揺が見えました。

ひとつめのテーブル(仮想客)に異なる国のビバレッジを提案
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パオロ・バッソさん(スイス)を含む4名が、ウィーンのホテルのファインダイニングで、田崎ASI会長就任6周年記念のスぺシャル・ディナーを行う設定。メニューの各コースに合わせて異なる国のビバレッジあるいはワインを提案、チーズに関しては仮想客から選手の提案とは別にもう一種ワインを、とのリクエストが(5分、メニューを見る時間20秒)

Menu
- Trilogy of ceviche sea bream, salmon, scallops
- Gambas parrillada
- Lamb tagine with prunes and glace quince, grilled sesame, Sweet potato puree
- 36 months Parmigiano Reggiano, Gorgonzola, Chestnuts and dry figs
- Apfelstrudel Cinnamon ice-cream

一番手のポーランドの選手はアペリティフにオーストリア(ランゲンロイス)のブルグンダー主体(ピノ系品種)の泡ものエクストラ・ブリュットを薦め、前菜にスペイン(リアス・バイシャス)のアルバリーニョ、豪州(南オーストラリア)グロセットのリースリング、スペイン(リオハ)のグラン・レゼルバ、そしてチーズにはフランス(ボルドー)のChベイシュヴェル2010、違うワインとして米国(ワシントン州)ヘッジスのカベルネ・ソーヴィニヨン、デザートにはカナダのヴィダル種のアイスワイン、ティーセレクションとして日本の煎茶、エチオピアのコーヒーを提案。食後酒について言及する前にタイムアウト

2番手のルーマニアの選手は、アペリテイフにドン・ペリニョンP2の1998、続けてオーストリア、スペイン、フランス、チーズにイタリアのマルサラ、ポルトガルのドゥロを選択。デザートまで行かないうちにタイムアウト

実は一番気になっていたのがフランスでした。2016年のアルゼンチン・メンドーサ大会で覇者のローゼングレンさんと息詰まるような接戦をしていたダヴィッド・ビロー選手です。アぺリティフにはモエ・エ・シャンドン1998、その後、欧州第2の大河ドナウが流れている国々のワインを提案していました。ハンガリーのフルミント種を使った辛口トカイ、オーストリアのブリュンデル・マイヤーのグリューナー・フェルトリーナー種(以後GV)による『リード・ラム』、クロアチアの代表的な黒ぶどうプラヴァツ・マリ種を使った赤ワイン、チーズはドイツのエゴン・ミュラーのアウスレーゼ、品種はリースリング&スペイン(マラガ)の甘口ワインという流れ。この構成は見事でした。

優勝したトムソン選手はアペリティフに英国のスパークリング『ナイティンバー2007』を薦め、続いて日本の『純米大吟醸白瀑(しらたき)』、スペインのアレハンドロ・フェルナンデスの『アレハイレン』、オーストリアの『クノ-ル GV スマラクト ロイレンベルグ』、チーズにポルトガルのラモス・ピント『トゥニー・ポート40年』、もう1つ別のワインはイタリアのアレグリーニ『アマローネ』、シナモンアイスにはドイツのJJプリュムのアウスレーゼ、そして食後酒に日本の『響17年』やメキシコのテキーラ、ホセ・クエルボの『クエルボ・レゼルヴァ・デル・ファミリア』。聞いていてワクワクするような組立で、表現もわかりやすくキレイ! 

赤ワインの素性を探る課題


赤ワインの特徴について述べ、特定する課題(3分)。4選手中3名が、イタリア・ピエモンテ、品種はネッビオーロと回答。ピエトラス選手(ポーランド)はバルバレスコ2012、ピロー選手(フランス)はピエモンテの2010。トムソン選手(ラトビア)はピエモンテのバローロ2008。スカヴァ選手(ルーマニア)だけがボルドー、サン・ジュリアンのカベルネ・ソーヴィニヨン。グラス、デキャンターをするタイミング、供出温度、マリアージュ等について各選手とも言及していましたが、価格ついて触れていたのはトムソン選手(30€)だけだったと思います。

さて、その赤ワインですが、正体はスペインの『トンドニア・グランレセルバ2004(ロペス・デ・エレディア・ビーニャ・トンドニア)』でした。ヴィンテージは違いますが、ご参考までにトンドニアを紹介

ふたつめのテーブル(仮想客)にはブラウフレンキッシュをデカンタージュ
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ホストはセルジュ・デュプスさん(フランス)、2016年の世界最優秀ソムリエのローゼングレンさん(スウェーデン)を含む4名にオーストリアの黒ぶどう品種ブラウフレンキッシュのワインをデキャンターしてサーヴ。作業途中で同品種の説明や他品種と比較も問われる課題(5分)

Livestreamの4時間50分の箇所にトムソン選手のこの実技が映っています。
これは見る価値大!
ホストへの対応、デキャンター中の所作(利き酒のため、ワインをグラスに注いで香りを確認し、それをデキャンターに移してリンスしてから、味見をしていたトムソンさん)、作業中も審査員からの質問にポイントをつかんだ受け答え(ぶどうの栽培エリア、2つの土壌に由来する味わいの違い、ピノと似た酸味、シラーと似たスパイシーさ等)、ゲストへの丁寧なワインサービス、作業後の整理整頓。これらを規定の5分で仕上げた手腕、素晴らしいです、高点数だったと思います。

黒いグラス6種のブラインド
6つのグラスの中に共通する材料のものが2つずつある。それが何番と何番なのか。オリジン、タイプ、できれはブランドまで言及する課題(3分)
1:Pisco WAQAR  チリのピスコワカー(マスカット種から造る蒸留酒/ぶどう)
2:Vins de Constance 南アフリカのヴァン・ド・コンスタンス
(ミュスカ・ド・フロンティニャン種から造る甘口ワイン/ぶどう)
3:The IRISHMAN アイルランドのアイリッシュマン(アイリッシュウィスキー/穀物)
4:DRAMBUIE  ドランブイ(ウィスキーをベースにハーブや蜂蜜をブレンド/穀物)
5:Calvados Pierre Huet フランスのカルヴァドス(りんご)
6:IS CIDER  スウェーデンのアイスサイダー(りんご)

(出場順の回答)
ポーランドは1と4、2と6、3と5(カルヴァドスは正解)
ルーマニアは1と3(ウィスキー正解)、2と4、5と6(この2つの組み合わせは正解)
フランスの選手は1と4、2と6、3と5
 
トムソン選手(ラトビア)は1と2、3と4、5と6が共通と答えていました。
1はグラッパ(伊)、2はモンバジアック(仏)で原料はぶどう
3はスコッチウイスキー(スコットランド)、4はウイスキーにハーブ&ハニーを添加、原料は穀物
5はミラベル(仏)、6はプラムワイン(日本)、原料はプラム、惜しかったです。

4種の甘口ワインのブラインド
オリジン、品種、ヴィンテージを答える課題、ワインの説明は不要(4分) 
※ヴィンテージは一部不明

1:Disznókö 1413 Tokaji ディズノク1413  ハンガリー・トカイ レイトハーベスト/フルミント、ハールシュレヴェリュ、マスカット/2014
2:Monbazillac モンバジャック  フランス 貴腐ワイン/セミヨン&SB
3:Peter Schandl Beerenauslese ピーター・シャンドル オーストリア ベーレンアウスレーゼ/ピノ系品種?
4:Berncasteler Doctor (Dr.H.Thanisch)ベルンカステラー・ドクトール (ドクター・ターニッシュ家) ドイツ モーゼル・ザール・ルーヴァー/リースリング

■ポーランドの選手は1:ドイツ、モーゼル/リースリング/2013、2:フランス、ソーテルヌ/セミヨン&SB/2012、3:イタリア、ヴェネト レイトハーベスト/ガルガネーガ/2012、4:ハンガリー、トカイ/ピノ系品種/2005
■ルーマニアの選手は1:ハンガリー・トカイ、レイトハーベスト/フルミント、ハールシュレヴェリュ/2011、2:オーストリア、アウスレーゼ/GV/ 2013 、3:オーストリア、ルスター・アウスブルッフ/ピノ・ブラン&シャルドネ/2012、4:フランス、ソーテルヌ 貴腐ワイン/2010
■フランスの選手は1:オーストリア、ブルゲンランド ベーレンアウスレーゼ/ヴェルシュリースリング/2014、2:フランス、ソーテルヌ/セミヨン&SB/2013、3:ドイツ、モーゼル アウスレーゼ/リースリング/2015、4:イタリア/ミュスカ/2014 
■ラトビアの選手は1:フランス、ロワール・コート・デュ・レイヨン 貴腐、レイトハーベスト/シュナン・ブラン/2014、2:フランス、カディヤック/セミヨン&SB/2013、3:フランス、ベルジュラック レイトハーベスト/プティ・マンサン&グロ・マンサン/2015、4:オーストリア、ルスター・アウスブルッフ/ヴェルシュ・リースリング/2012 
 
1番目のワインをハンガリー、3番目をオーストリアと答えていたスカヴォ選手(ルーマニア)。若干コメントをしていた様子から混乱を感じたのですが、おさえるところはきちんとおさえています、素晴らしいです。

間違い探し
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8枚の画像が表示され、各ページ(3アイテムの記載あり)には1ヶ所間違いがある。1コマ30秒の間にミスを指摘する課題

ピエトラス選手(ポーランド)は中国の赤ワイン以外、7問正解。ビロー選手はフェッラーリ、ロンバルディアで「ヴェネチア」と回答、これは予想外

Sparkling Wine
-Ferrari Brut NV, Lombardia, Italy Trentino Alto Adige
White Wine
-Dagueneau Les Jardins de Babylone 2015, Pouilly Fume, France  Jurancon
-Franz Hirtzberger Honivogl Smarad Gruner Veltliner2013, Austria Smaragd
-Felton Road Bannockburn Chardonnay2015, Marlborough, New Zealand Central Otago
Red Wine
-Ao Yun Carbernet Sauvignon 2011, Yunnan, China first VT 2013
-Noemia Marbec 2013, Mendoza, Argentina Patagonia
-Hardys The Dead Arm Shiraz 2008, Mclaren Vale, South Australia, Australia d'Arenberg
Sweet Wine
-Chateau d'Yquem 2012,Sauternes, France not exist


トムソン選手が苦労していた間違い探しのワン・シーン
Ao-YunはLVMHが中国・雲南省2600mの場所で取り組むプロジェクト、2013年がファースト・ヴィンテージ!


試合の合間には生演奏
2~3種類の木・金管楽器を使い、場を盛り上げていた女性奏者


最後は4人同時に画像問題に挑戦
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8枚のスライド(15秒間)を見て答える課題


マルケス・デ・リスカルの画像は全員クリア


今年デキャンター誌でマン・オブ・ザ・イヤーに選ばれたステーヴン・スパリュアさん

ライモンズ・トムソン選手、おめでとうございます!

田崎ASI会長から優勝者の名が発表されました!



最後の出場だったので、待ち時間も長く、集中力を保つのが大変だったと思いますが、終始、品よく、タイトな時間のなかで、落ち着いた態度でした。
ASI、候補者たちへの感謝、そして第2の父と慕うシェフ、愛息と愛娘と愛妻、パーソナルトレーナー、ラトビアのソムリエ仲間への言葉が爽やかでした。
余談ですが、トムソン選手の声は、耳に心地よいですね。
今回改めて声の質の大事さも感じました。
世界最優秀ソムリエコンクールに向けてさらなる躍進を!

モエ・エ・シャンドンからシャンパン贈呈
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優勝はラトビア、2位はポーランド、そして3位がルーマニア&フランス、おめでとうございます!
オフィシャルパートナーのモエ・エ・シャンドンからトムソン選手にシャンパンの贈呈

歴代の優勝者の名が刻印されているモエ・エ・シャンドンのシルバートロフィーも狙ってください!

仮想客で参加の森さん、岩田&井黒両選手も観戦


Livestreamの3時間地点で、MCのズラティックさんが森さんにインタビューしています。来年京都で開催するアジア・オセアニア大会を見据え、そのための視察と出場する若き候補者2名を伴って来たことを語っているので、岩田さん&井黒さんもしっかり映っています!

コンクールの結果予想について、「ラトビアがフランスを抜くかも」と語っていた森さんのお言葉通りでした。岩田さんは「トムソン選手のサービスは素晴らしく、それが見れたことは凄い勉強になりました」と語っていたので、観戦で受けた刺激によって、さらなる飛躍が期待できそうです。

ヨーロッパ最優秀ソムリエコンクールを仕切っていたASIの田崎会長をはじめとするメンバーの皆さま。審査に関わった皆さま、進行役のバッセさん、長丁場で大変だったと思います。AWMBのクリンガー会長にも大変お世話になりました。
貴重な機会を共有させていただき、こころから御礼申しあげます。
ありがとうございました!!

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