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ブレンディングの業 by ドン・メルチョーのエンリケ・ティラド × スターシェフのブルーノ・メナール [チリワイン]

チリ初のアイコンワイン『ドン・メルチョー』

2年ぶりにドン・メルチョーのワインメーカー、エンリケ・ティラドさんが来日しました。今回はスターシェフのブルーノ・メナールさんと一緒にブレンディングの業(ワザ)について語りました!

ふたりは今年の3月にチリで対面。ティラドさんは7区画のカベルネ・ソーヴィニヨン(CS)を駆使したブレンド法でワインを造りますが、最終的なブレンディングでは、長年の知識とドン・メルチョーならではの〝バランスとフィネス〟を表現するための業を発揮しています。
今回、メナールさんは、ドン・メルチョーの〝キー〟となる香り(例:スモーキー、スパイシー、コーヒー)を徹底的にチェック。レシピの構成に関しては、ワインの味わいを分析し、それぞれの要素を、使用する食材の味覚や視覚に反映させました。「ワインと料理の共通点はエモーションであり、これは機械では絶対に置き換えられない」と強調していました。これこそ、職人芸です!


ワインメーカーのティラドさん&シェフのメナールさん

エンリケ・テイラドさんは1993年、コンチャ・イ・トロに入社。1997年から同社のトップワイン『ドン・メルチョー』のチーフワインメーカーに就任し、ドン・メルチョーを世界レベルのワインに押し上げました。また、『アルマヴィヴァ』でもファーストヴィンテージから携わるなど、チリを代表する醸造家として知られています。

ブルーノ・メナールさんは2008年に東京・銀座のレストラン『ロオジェ』がミシュランガイドで3ツ星を獲得した時のシェフ。2010年にはフランス農事功労章シュヴァリエ受章、2013年シンガポールを拠点にした料理コンサルティング会社を設立し、現在、世界を股にかけた活躍をしています。昨年からドン・メルチョーのアジアのアンバサダーに就任。

なぜドン・メルチョーを造ったのか


チリ最初のアイコンワイン、それがドン・メルチョーです。
なぜ、ドン・メルチョーを造ったのか?
それはチリのCSの銘醸地マイポ・ヴァレーにあるプエンテ・アルトのポテンシャルを表現したかったからです。それで、ボルドーにワインのサンプルを送り、ボルドー大学のエミール・ペイノー教授の指示を仰ぎます。その後、教授の右腕である故ジャック・ボワスノさんが後を継ぎ、現在はボワスノさんのご子息エリックさんと最終的なブレンディングを行っています。

アンデスの麓プエンテ・アルトにある小さくてユニークなアペラシオン
畑は全部で127㌶、90%がカベルネ・ソーヴィニヨン(CS)、7%がカベルネ・フラン(CF)、2%がメルロ(ME)、1%がプティ・ヴェルド(PV)。区画は小さく分けると142、大きく分けると7。毎年のブレンド比率は異なりますが、7つの区画のぶどうを使うことで、アンデスのもたらす気候、土壌をワインに反映させています。昼と夜の温度差(日較差)により、ぶどうに十分な果実味、酸味、アロマが備わるのも利点です。

プエンテ・アルトは3つの段丘になっていますが、ドン・メルチョーの畑は最も高い段丘で最も古い畑(やせた土地)。沖積土壌で、石灰、粘土、砂質等で構成されています。
ちなみに、CSとCFは古い畑(クローンはプレ・フィロキセラ・ストック)、MEとPVは若い畑で2006年に植樹したそうです。ここのPVは2015年と2016年ヴィンテージのワインに使用しています。

供出されたのはワインスペクテータ―で年間TOP100ワインに選ばれたヴィンテージ

会場はリーデル青山本店。協賛グラスがリーデル・ヴェリタスシリーズのカベルネ/メルロだったことで、ドン・メルチョーの良さがより際立ちました!

ドン・メルチョーは初VTの1987年から94年までCS100%、95年がCS97% ME3%、96年から98年&2000年がCS100%、2001年以降はブレンド比率が変化しています。
(奥左から右に)1988年、2005年、2010年 (手前左から右に)2013年、2011年
#1:ドンメルチョー1988/WS91(TOP100の74)
品種:CS100%
熟成:フレンチオークで12カ月熟成(新樽60%、2回目の樽40%)
#2:同2005/WS96(TOP100の12)
品種:CS97% CF3%
熟成:フレンチオークで14カ月熟成(新樽70%、2回目の樽30%)
#3:同2010/WS95(TOP100の9)
品種:CS97% CF3%
熟成:フレンチオークで15カ月熟成(新樽76%、2回目の樽24%)
#4:同2011(新発売)/WS94 (Top Wine of Chile)/希望小売価格11,000円(税抜)
品種:CS99% CF1%
熟成:フレンチオークで15カ月熟成(新樽70%、2回目の樽30%)
#5:同2013(日本未発売)WA93
品種:CS91% CF9%
熟成:フレンチオークで15カ月熟成(新樽66%、2回目の樽34%)

ドン・メルチョーとアルマヴィヴァとの違いは
ドン・メルチョーもアルマヴィヴァもプエンテ・アルトにあり、ともに最高のワイン、最高のブレンドというスタンスですが、明確なスタイルの違いがあります。


ドン・メルチョーはCS(CFが若干)が主体、異なる7つの区画のCSが奏でるハーモニー


ドン・メルチョーの畑に隣接するアルマヴィヴァは、バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルドとコンチャ・イ・トロ社とのジョイントベンチャーで1998年にリリースされたワイン。こちらはカベルネ・ソーヴィニヨン、カルメネール、カベルネ・フラン、メルロー、プティ・ヴェルドをブレンド。異なる品種が奏でるハーモニー

ティラドさんとメナールさんによるブレンディングの業(わざ)
1988 × ソバの実とゆかりの黒トリュフ風味のリゾット
~スモークしたウナギとフォアグラをのせて~

オレンジ色を帯びた色調、若干の田舎っぽさ、まだ果実味もあり、タンニンはソフトで滑らか

ティラド:エルニーニョの影響を受けたヴィンテージ。複雑で、ミント、チョコレート、スモーキーでスパイシー、柔らかく滑らかなタンニン


メナールさんからのプレゼントはノルウェーの伝統的なスモーク・ヴァイキングソルト(フランス産
サーモンを燻さないでスモーキーに仕上げられる調味料で、中国茶も若干ブレンド

メナール:ソバの実とゆかり(酸味とハイビスカス似の香りが表現できる)を使った黒トリュフ風味のリゾットに、スモークしたウナギとフォアグラを加えることで、ワインのリッチさと料理の豊かさが相乗。ワインはCS100%ですが、まだまだ新鮮で、果実味やエネルギーがあります。ドン・メルチョーにはロースト香やコーヒーのニュアンスがあり、時間の経過でグラス内のワインが変化するのが素晴らしい。

2005 × みそとマーマレードを塗り込んだ鴨フィレ肉のロースト
~ヴェルジュソースとキャロットムース、きのこの包み、トリュフポテトを添えて~

濃いルビー色、インパクトがあり、甘やかで凝縮した果実味、滑らかに広がる長い余韻
14年間日本在だったメナールシェフの料理には日本のテイストが盛り込まれています!

ティラド:1988年とは異なる気候、2005年は通常より温かいヴィンテージ。ワインは甘くてタフィーのような印象。鉛筆の芯、黒鉛、コーヒー、口中スムーズで温かなアタック。タンニンは柔らかでフレッシュ

メナール:血を閉じ込めてある鴨の外側に(日本の西京焼きのように)味噌とマーマレードとヴェルジュ(ぶどう果汁)を塗り込んでローストしました。マリアージュのポイントはソースで、ヴェルジュソースの酸味はワインのフレッシュさと良く合い、鴨をキャラメリゼした後、コーヒーとカルダモン(隠し味的に)を使っています。経験から言うと、香川県のかめびし醤油の古醤油(15年、20年)を少し使うと味が引き立ちます。

2010 × グリオットと赤ワインのグラニテとチョコレートビスキュイ
~リコリスと5種のスパイスのシャンティをのせて~

深みのある濃いルビー色、赤系果実の凝縮感、エレガントな酸味、ミネラル、フレッシュな余韻

ティラド:2010年は冷涼年で、ブレンド比率は2005年と同じです。2005年(温かい年)にCFを5%使ったのはフレッシュ感を出すためで、2010年はCFを5%入れたことでバランスが良くなりました。ぶどうは遅摘み、エネルギーがあります。小粒の赤い果実、洗練されたミネラル感、口中ではまるく、まろやかなタンニン、爽やかな酸、アンデスの土壌や気候由来のフレッシュさやキャラクターが感じられます。

メナール:デザートと赤ワインを合せるのはチャレンジではありません。ワインから感じられる赤い果実を使いますが、ラズべリーやストロベリーは甘すぎるので、ここでは力強い風味で、赤い色がワインに良く合うグリオット・チェリーを選びました。層になっているデザートで、2番目の層はグラニテ。オレンジピール、バニラ、シナモン、スターアニス(八角)がブレンドしてあるので、体が温まる感じです。頂上部分の冷たいクリームの中には五香粉、甘草が入っています。最初の冷たい食感からミドル部分に降りていくにつれ温かくなる感じは、ワインを試飲した時の印象と同じです。

8月に出荷を開始した2011年ヴィンテージ

深みのあるルビー色、チョコレート、黒鉛、シルキーでバランスの良い味わい、柔らかなタンニン

ティラド:2011年は2010年より冷涼で、赤い果実や凝縮したミネラル感があります。ブレンド比率はCS99%、CF1%で、CSにとって素晴らしい年でした。デリケートでバランスが良くシルクのような感触です。
メナール:フォアグラとチョコレート(南米ヴェネズエラ産のカカオ61%)で、イチジクのピュレ、梅干(酸味とフローラルさが表現できる)、ラズベリーのビネガーと合わせています。これらのコンビネーションがワインに良く合います。現在、コンチャ・イ・トロでは南米のカカオと合せるコラボレーションや世界中の胡椒とワインを合せるコラボも実施しているところです。

2013(日本未発売) × 赤ビーツのタルタル
~カカオヴィネガーとハーブを添えて~

マイベスト! 
濃い赤紫色、アロマ豊か、乳酸のニュアンス、果実味と酸味とタンニンのバランス良好

テイラド:コンチャ・イ・トロにとって最も冷涼だった年が2013年。赤い色の果実、CSの素晴らしいキャラクター、花やミント、肉のようなニュアンスもあります。若い果実味、バランスの良いタンニン、テクスチュアがあります。

メナール:料理のすべてに〝赤〟を入れています。これはタルタルですが、肉ではなく、ビーツ。ワインに土っぽい要素があるので、トリュフ(さらに土っぽさを加える意味で)を合わせました。またフローラルな要素もあるので、2~3kgのタルタルに、ゼラニウムのエッセンスを4滴入れてブレンド。最後にカカオヴィネガーを加えることで味が引き締まります。
 
ブルーノ・メナール シェフのスペシャルメニュー

メナールシェフの料理は映像で紹介されました。
ドン・メルチョーのブレンドの妙、一品の料理の裏に隠されたブレンドの妙、お見事でした!
あまりに美味しそうなメニューだったので、ドン・メルチョーと合わせて食べてみたかったです。
まずは、いただいたスモーク・ヴァイキングソルトでウナギとワインの相性診断をすることにします。奥深いレクチャー、ありがとうございました!

商品についてのお問い合わせは日本リカー(株)商品部 ℡03-5643-9772

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gillman

ライトを通すとワインの微妙な色の差が顕著になるのが素晴らしいですねぇ。
by gillman (2016-09-14 19:58) 

fumiko

gillmanさん
カメラに精通していらっしゃるgillmanさんに言われると嬉しいです!
私はグラスの下の白紙に浮かびあがるルビー色と微妙に異なる影が、
好きで、備忘録かたがた撮っています。
ドン・メルチョーはチリ最高のワインの1つなので、本当に美味です!
チリワインの素晴らしさを日本中のワインラバーさんに伝道したいです。
by fumiko (2016-09-17 15:49) 

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