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ニコライホーフのクリスティーネ・サース夫人を囲んでのメーカーズ・ディナー@南青山ポルトゥス [来日したワイン生産者&関係者]

2000年の歴史を有すオーストリアの名門ニコライホーフ


世界遺産の地ヴァッハウにあるニコライホーフ、ウィーンから西に70㎞の場所に位置しています。
長い歴史のなかで修道院だった時代もあり、ウィーンのシュテファン寺院の古文書にニコライホーフ修道院のことが最初に記載されている由、当時から影響力があったことがわかります。



ニコライホーフは当主ニコラウスさんの曽祖父が124年前に買い取り、現在に至っています。
中庭のチャペルの前はアスタリスク(〝聖なる場所〟の意)のマークがあるスピリチュアルなエリア。ラベルにもこのロゴを載せています。

生命力のあるワイン


南青山のポルトゥスに20名ほどのニコライホーフファンが集い、サース夫人を囲んでスペシャルな時間を過ごしました。ニコライホーフのワインを熟知しているミシュラン星付きフレンチ出身の富樫陸也シェフと、オーストリアワイン大使の称号を持つ岩井穂純ソムリエの見事な料理展開にサースさんからも感激のお言葉が!


笑顔が良く似合うサースさん、ピンクのドレス姿も素敵でした!




ニコライホーフのワインは軽いけれどもパワーがあります。ディナーの最中、サースさんが多用していた言葉が〝生命力〟でした。これは〝種〟、土に戻って新しい命を育む種にすべてが凝縮され、それが生命力になっています。

「土壌にはストレスをかけず、除草剤や殺虫剤を加えないことが大事です」とサースさん。続けて「人工的なものを加えると、土壌にストレスを与えてしまうので、健全なぶどうは育たなくなります。それは子育てに例えることができます。子だくさんの母親がストレスを受けていると、ひとりずつの子供に十分な愛情を注げなくなるのと同じで、土壌が健康でないとぶどうも健全に育ちません」


ニコライホーフの中庭を感じさせる一皿


季節の野菜(ツルナ、キャベツ、イタリアの菜の花、からし菜)にレモンの皮を添えて。パスティスを加えたキャベツのピュレ × #1グリューナー・フェルトリーナー2013(以後GV)
ラベルの色とピュレの色が見事にマッチ!

GVは全オーストリアで36~37%の栽培面積を誇る代表的な品種。ぶどう畑、土壌、生産者の心意気で、エントリーレベルから高級レンジまでのワインが造れます。


ラベルのオレンジに料理がフィット。ハーブでマリネした静岡県産の富士レインボートラウト(功刀芳康さんが育てた鱒)、新玉ねぎのピュレ、ホワイトスター、炭の香りをつけたホワイトパウダー(つけると燻したニュアンスになる)を添えて × #2イム・ヴァイン・ゲビルゲ グリューナー・フェルトリーナー(GV)フェーダーシュピール2013

中央ヨーロッパで最も日照度が高いイム・ヴァイン・ゲビルゲ(〝ワインの丘〟の意)はオーストリアの守護聖人セヴァリンゆかりの地で、古文書にも最古のぶどう畑との記述があります。白コショウ、ミネラル、切れの良い酸が魅力の私のお気入りワイン!


手前の濃ブルー色のラベルがエリザベート2012
ウィーンの伝統的製法ゲミシュター・サッツ(畑に混植しているぶどうを一度に収穫して混醸するワイン)で、使用しているぶどう品種はGV、リースリング、ヴァイス・ブルグンダー、ノイブルガー、シャルドネ。各ぶどうの個性が合わさってひとつのハーモニーを表現。料理によってワインを構成している各品種の特徴が出るので、その時々で印象も異なり、面白さが広がります。

ニコライホーフの収穫は数回に分けて実施。ぶどうの熟度を見ながら手摘みで行います。
#1GV2013はニコライホーフの複数の畑から一番最初に穫れたぶどうで、樹齢は若樹から古樹まで様々。#2は2回目の収穫となるフェーダーシュピールで単一畑のぶどう、樹齢は50~60年(樹の植え替えは古樹を少しずつ)。3回目がスマラクト、4回目以降がアウスレーゼクラス


ニコライホーフのワインを使って蒸しあげたラングスティーヌ(手長エビ)、トマトのジュース、無菌のホワイトマッシュルームをスライスして × #3エリザベート2012


メインは低温でじっくりローストしたうさぎ、焼いた時の骨をダシに使い、アンズも一緒に煮詰めたソース。野菜はビーツ、辛み大根 × 2種のリースリング


(左から)
#4フォンシュタインリースリング フェーダーシュピール2006
ドナウ川の南側に位置するヴァッハウ産。9年間寝かせて瓶詰したにもかかわらずフレッシュさがあり、同時に力強さも併せもつ余韻の長いワイン。生命力を感じるワイン。
#5シュターナー・フント リースリングレゼルヴ2010
ドナウ川の北側にあるクレムスタール産。ミネラル、エレガント、クラシックなスタイル。ロバート・パーカーはシュターナー・フントを「世界最高のリースリング」と評価。毎回95~97点を得ています。

木樽で17年寝かせたヴィノテーク1995

ヴィノテーク・リースリング1995は一期一会のワイン



2004年6月、7500Lの大樽による長熟ワインに挑戦。完成したのがヴィノテーク・リースリング1990でした。ローマ時代からのセラーで14年間熟成させた後デビューさせ、ウィーンのワイン見本市でお披露目。その後、世界のワイン市場に向けて発売し、あっという間に1万本が完売。ヴィノテークシリーズとしては、グリュナー・フェルトリーナー1991、グリュナー・フェルトリーナー1993、そして、このリースリング1995年がデビューしました。

サースさんは2013年の来日時、「ワインは子育てと同じです。1990年ヴィンテージをリリースした段階で、私たちは素晴らしいワインができたと確信しました。ヴィノテークは毎年リリースしていませんが、7500L、5000L、3500L等の木樽で熟成させています」とおっしゃっていました。

#6ヴィノテーク・リースリング1995は、17年間木樽で熟成させていますが、信じられないくらいの若さを備えています。グラス内の温度変化で複雑味が増してきました。「ロバート・パーカーは今まで辛口リースリングに100点を付けたことはなかったのですが、これはPP100です」とサースさん。ワインは完売しているので、まさに一期一会のワインになりました。余談ですが、100点をゲットした後、オーストリアのネットで販売されたヴィノテークは350~1万€になったとか。


サースさんのピンク色のドレスにぴったりの、きれいなさくらをイメージしたデザート!


ビオディナミの調剤


サースさんは結婚した1971年に、夫の友人の医者からルドルフ・シュタイナーの人智学の本を譲り受け、その教えに心酔。ぶどう栽培やワイン醸造に導入していきます。当時はまだ、ビオディナミという言葉すらなかった時代で、周囲からは変人にみられることもあったとのこと。そのような経緯から言って、世界に先駆けてビオディナミを導入したワイナリーと言えます。この日はビオディナミ農法に欠かせない調剤をオーストリアから持参して披露してくれました。

(左から)
501は石英、珪石、長石、正長石の練り物状で、粉末にして水を加えたものを雌牛の角に入れて夏中、地中に埋めて晩秋に取り出す。茎や葉の成長を刺激し、葉緑素の同化作用を促進
502は鹿の膀胱に包まれたノコギリ草で、カリウム作用を適正化し、硫黄分を供給
503は牛の腸に詰めたカミツレ(カモミール)で、カルシウムの作用を適正化し、有害な結実を除去、石灰分を供給
504は乾燥させたイラクサで、樹液を循環させ、土壌に鉄分と窒素を与える
505はヨーロッパ・ミズナラ(オーク)で、樹皮を砕いたものを家畜の頭蓋骨に詰めて、ひと冬埋めておく。その効果は植物の力を強め、病気への抵抗力をつける
506は西洋タンポポで、頭花を乾燥させて圧縮し、牛の腸間膜に包み、ひと冬埋めておく。宇宙から放射される珪酸を取り込み、カリウムとの適正な相互関係を作る

調剤はほかにもまだありますが、この日は6種の色や香りを体験。存在感を主張する調剤は503と502がキングとクイーンでした。特に503は強烈で、匂い(土っぽさ、発酵臭)の効能も。自然界にあるものだけを使った調剤です。


上から見た調剤の色や形もご覧ください。

サースさんと一緒に満月の夜のワイン・メーカーズ・ディナーを楽しませていただきました。輸入元ファインズ様には大変お世話になりました。ありがとうございました!!


聖なる収穫祭のお祝い


ニコライホーフの家族と親しい仲間だけで祝う新酒の洗礼式にお声がけいただき、昨年11月にお邪魔してきました。サーフ夫人が進行役を務め、家族を紹介。ニコライホーフの建物は文化財指定になっているので、改装ができなかったそうですが、国からの許可が下りたので、「プライベートルームも増築できた」との思わずにっこりの報告もありました。



儀式はローソクだけを灯したセラー内で行われました。
司教さんは、「毎日ミサで説教をしていますが、新しいワインのために話をするのは年に1度、この日だけです」とあいさつ。キリストのパンとワインの話をしてくださいました。



2015年のヴィンテージは長男ニコラウスさんが醸造責任者になって10回目の新酒でした。
「冬は雨が少なかったのですが、春になって3日間豪雨が続いたので、水分も潤い、9月19日から開始した収穫も順調に進みました。質も量も理想的なので、2016年4月の瓶詰が楽しみです」と解説、その後、全員が新酒で乾杯しました。


収穫祭を祝うディナーでは

イチョウに名前が! 翌日、このイチョウはニコライホーフのお庭に戻されて土に戻る準備



サースさんの実妹2名 (最右)はガイヤホーフのイルゼさん、そのお隣はトラウディさん。ちなみにトラウディさんは愛媛伊予生まれの自然派農法の先駆者故福岡正行さんに傾倒。サースさんが来日していた今時期に、四国88ヶ所巡礼を遂行しました。

ニコライホーフのゲストハウス


サース家の4人の子供たちは親の教えと人智学に多大なる影響を受けています。長女エリザべートさんはワイン名にもなっていますが、ゲストハウスのオーナーで、ホテルも自然との融合を大事にしています。次女クリスティーネさんはお医者様。長男ニコラウスさんは2005年から醸造責任者として活躍。次男マーティンさんはデメターの化粧品に関わっています。

ニコライホーフの化粧品


サースさんがお土産にくださった化粧品の主たる原料はグレープシードオイルです。
「種は命の根源。種から花が咲き、実をつけて、また、土に戻り、新しい種となって、再生する」とおっしゃっていました。多忙な現代社会ではストレスからくる肌へのダメージや大気汚染からの影響もあります。心の窓ともいえる“皮膚”には水分補給や保湿を与えてあげることがとても大事。私は女性の年が出ると言われる首回りのケアに使っています(笑)

サースさんが語っていた、今、一番の宝物!
それは次世代、ニコラウスさんに引き継いだ健康な〝ぶどう畑〟とそこから生まれる〝ワイン〟だそうです。サースご夫妻にとって4人の子供たち、7人の孫も、素晴らしい宝物、財産ですよね。

いつも私をやさしく迎えてくださるサース家の皆様、本当にありがとうございました!

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