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ワイン造り6000年の歴史を有するレバノン ~シャトー・ミュザールの魅力を探る~ [ワイン]

シャトー・ミュザールの沿革

画像協力:(C)シャトー・ミュザール

レバノンは南北約200km、東西約50kmの小さな国です。シャトー・ミュザールは1930年、ガストン・ホシャールによって、シリアに接するアンチ・レバノン山脈とレバノン山脈の間のベッカー・ヴァレーに設立されました。現在のワイナリーはベイルートの隣、ガジィールに位置し、創設時に建てた施設(今は畑だけ)から40Km離れた所に移動しています。自社畑は180㌶、ミュザールという名は地名Mzarに由来。気候は大陸性で、標高は900㍍。最も高いところは3000㍍あるので、海や砂漠からの影響を遮ってくれます。

シャトー・ミュザール流テイスティングはロゼ、赤、白の順
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12月初旬、4日間の日程で3代目マーク・ホシャールさんが来日。プレス3者とのアットホームな会で6種類のワインをテイスティング。薬膳中華に合わせて相性チェックしました。

基本的に白もロゼも赤ワインと同じ温度で供出。天然酵母を使い、清澄もろ過もしていないワインなので、ワイナリー側はダブルデキャンターを薦めています。

シャトー・ミュザールでは赤、白、ロゼを生産。テイスティングはロゼ、赤、白の順です。
白ワインは開くのに一番時間がかかるからなのですが、その理由は■1000年以上にわたり、レバノンで栽培されてきた土着の2品種(オバイデ、メルワー)であり、■フィロキセラ(19世紀欧州のぶどう畑を壊滅状態にさせたぶどう害虫で、畑は荒廃。その救済策はアメリカ系台木にヴィテイス・ヴィニフェラ種を接木する)の害を受けていない自根なので、パワーがあるからです。ぶどう樹の樹齢は50年~180年とのこと。ちなみに黒ぶどうの樹齢は60~70年、セカンドワインに使うぶどう樹は15年から60年になります。

昨年開催したセミナーで、2代目のセルジュさんは「赤ワイン用のぶどう樹はフランスから運び、植樹したもので、自根ではありません。たかだか100年程しか経過していないので、白ワインのほうが数倍スケールが大きいのです。収穫時期も黒ぶどうは9月、白ぶどうは10月で、オバイデやメルワーはゆっくりと熟します」と語っていました。



ホタテ貝柱と押し豆腐ちウニの柚子風味和えにシャトー・ミュザールのロゼ2008を合わせました。ロゼは土着品種のオバイデ55~65%、メルワー30~40%にサンソーを5%ブレンド。暑い日にガンガンに冷やして飲むロゼではなく、食事と合わせて楽しむ正統派。柚子とロゼの酸味がフレッシュさを際立たせ、石灰土壌由来のミネラル感、塩味が料理を引き立てていました。


菊芋の甘酢ソース、紅玉リンゴとチコリとタコのサラダ、天草大王のやわらか蒸し 北京風ピリ辛胡麻ソース。ホワイト2006はリンゴの酸と良く合い、1999は万能タイプ!
マークさんお薦めの1999に合う組み合わせは、「チーズ、フォアグラ、白身肉、甲殻類」とのこと


赤のシャトーもの『シャトー・ミュザール・レッド』はカベルネ、サンソー、カリニャン。セカンドの『ホシャ―ル・ペール・エ・フィス・レッド』にはカベルネ、サンソー、グルナッシュをブレンドしていますが、マークさんは「男性的なカベルネは骨格、カリニャンやグルナッシュは筋肉、女性的なサンソーはそれらをコーティングするスキン」とコメント

マークさんに「シャトーものにはカリニャンを使っていますが、グルナッシュよりカリニャンのほうが勝れているからですか?」と質問したところ、「単体で飲んで良くなくても、ブレンドすることで大きく変わることがあります。シャトー・ミュザールではブレンド後のハーモニーを大事にしています。ゆえにカリニャンが勝れているからということではなく、〝ベストなバランス〟を生み出すための方策です」とのお返事でした。

カベルネやローヌ系品種の導入のきっかっけは祖父がレオヴィル・バルトンと親しく、そこからカベルネを譲り受けた由。祖父は1963年に薬学を学ぶために渡仏。レバノンはボルドーより暑いので、カベルネだけでなく、ローヌ品種のカリニャンやグルナッシュも持ち込んだそうです。

シャトー・ミュザール・レッドのスタイルは3品種を3分の1ずつ使うのが黄金比率。これは2代目セルジュさんが1959年にワイナリーを引きついで、17年かけて出した結果で、1977年ヴィンテージから実践しています。
ワインは品種ごとに発酵させますが、セメントタンクで1年、その後、木樽(新樽率は白20%、赤14%)で1年、ブレンドして再度セメントタンクに戻して1年、通算3年かけた後、瓶熟5年、出荷というパターンです。

Dieu vin 神のワイン!

シャトー・ミュザール・レッド1991をテイスティングしている時に、マークさんが2日前にパリに住むレバノン人からもらったというメールを披露してくれました。メールの主は過去に飲んでインパクトを受けたベガ・シシリア1989、オーパス・ワン1990、リッジ・モンテベッロ1999、ミュザール1991を挙げた後、ミュザール1991については「dieu vin(神のワイン)」と表現。私もその形容には同意です!

良い意味で飲み手を混乱させる白ワイン
ホワイト1999は最初にシェリーのような酸化したニュアンスがあり、スワリングでバターやはちみつの要素が。グラス内での変化が顕著。口中なめらかでスムース、終始フレッシュさを持続しています。「ミュザールの白は、熟成により、マディラやジュラ地方のヴァン・ジョーヌ、さらに進むとウイスキー似の印象も」とマークさん。良い意味で飲み手を混乱させるワインです!
 
同時に供出されたシャトー・ミュザール・ホワイト2006はフラワリー、果実味、酸味豊かでハーブのニュアンスも。本領発揮までもう少し時間を要するワインです。バランスが良く、理想的な熟成状態にある1999を味わった後、2006に戻ると、若さゆえのシンプルさがよくわかります。熟成が楽しみなワインです。


レンコン・大根・クコの実・鶏肉の煮込みスープにシャトー・ミュザール1999を合わせて
シャトー・ミュザール・ホワイトの使用品種オバイデとメルワーについてワインのこころで紹介しました。葉の形状による分析は20~30年前に行い、判定結果が出ていますが、DNA鑑定はぶどうの根を提出しなければならず、検疫の煩雑さからまだ実施はしていません。



白菜と挽き肉の中華風豆乳リゾット/イチゴをのせた杏仁豆腐
胃腸の働きを促進してくれる優しい食感、白1999と合わせて


2代目セルジュ・ホシャールさんを偲んで


昨年2月にアメリカンクラブで行ったセミナーで
輸入元ジェロボームの招聘で来日したホシャール家2代目セルジュ・ホシャール(中央)さん&マークさん。同年12月31日、不慮の事故で帰らぬ人となったセルジュさんはシャトー・ミュザールのワインスタイルを確立した偉大な方でした。間もなく一周忌、こころからご冥福をお祈りいたします。

参加者からの質問にユニークな切り口で返答していたセルジュさん
〝ワインメーカーにとっての仕事はワインを造ることではなく、どのようなワインを造りたいかを見つけること〟、〝ワインは口の中で感じた味わいではなく、飲んだ後の余韻の長さが大事、ワインこそ、記憶につながる飲み物〟という言葉は、彼らしいお言葉。私のなかに刷り込まれています。


15年ほど前に2代目セルジュさんが、世界のソムリエやジャーナリストを招いて行った1959年から1981年までの垂直試飲で、「古いヴィンテージを若いヴィンテージ、若いヴィンテージを古いヴィンテージと判断する人が多かった」とマークさん。続けて、「15年から40年位の熟成期間でアロマは変化しますが、色調はほとんど変わりません。今、1959年を味わったらbabyワインと思うかもしれません」と語っていましたが、シャトー・ミュザールの摩訶不思議な点は、熟成を経れば経るほど若返っていく印象です。ブラピが演じた映画『ベンジャミン・バトン』のような若返り、そんな形容ができるワインだと思いました。

2010年からシャトー・ミュザールで活躍しているマークさん
シャトーの後継者としてますますの飛躍を期待しています。
シャトー・ミュザールに関する問合わせはジェロボーム℡03-5786-3280まで

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