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シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原メルロー 垂直試飲 ~30年の歴史を利く~ [ワイン]

世界に誇る桔梗ヶ原メルローの30年を振り返って
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9月初旬、パレスホテル東京の〝桔梗の間〟で開催された試飲セミナーは長野県塩尻市桔梗ヶ原地区産のぶどうを100%使用したメルシャンのフラッグシップワイン『シャトー・メルシャン桔梗ヶ原メルロー』、1985年がファースト・ヴィンテージなので今年が30年の節目になります。

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供出ワインは(左から)信州桔梗ヶ原メルロー1985、同1990、同1998、トップレンジの桔梗ヶ原メルロー シグナチャー2005、同2011を利きながら、30年間を振り返りました。

桔梗ヶ原メルローとポール・ポンタリエさんとの出会い
2年前(2013年)、シャトー・マルゴーの最高醸造責任者ポール・ポンタリエさんが来日しました。ポンタリエさんは1998年からシャトー・メルシャンの醸造アドバーザーに就任しています。私はそのセミナーで、ポンタリエさんの忌憚ない意見&アドバイス、およびメルシャンサイドの努力を感じ、双方の思いが、日本が誇るワインを造りあげてきたのだと実感しました。中身の濃いセミナーで、産地等についても細かく言及していたので、今回の30周年の垂直試飲セミナーの導入部として載せておきます。
http://non-solo-vino.blog.so-net.ne.jp/2013-09-30

藤野シニアワインメーカーによる解説
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麻井宇介(浅井昭吾)先生の信念
品種の転換:ぶどう生産者に対して、コンコード、ナイヤガラからメルロー栽培への転換を依頼し、同年からメルローの栽培に着手。この決断について、麻井宇介先生の著書を参考に要点をまとめると・・・1976年1月、長野県塩尻市街にある桔梗ケ原の中央公民館で、100名を超す果樹栽培者を前に、「甘味果実酒の原料ぶどうを転換するなら、欧州系の本格的な品種に」と先生は提案。欧州系品種への改植、生ぶどう酒産地に生まれ変わる必要性を説き、桔梗ヶ原を熟知している林農園の林五一翁の後継者幹雄さんの「どうしてもやるのであれば・・・メルロー」という発言を受けて、栽培家にメルローへの取り組み(棚栽培)を促します。
参考資料『ワインづくりの思想』

産地:標高は平均700m、ぶどう成熟期の9~10月にかけて、昼夜の寒暖差が大きくなり、色づきの良いぶどうが収穫できます。秋雨の量は比較的少なめ。冬の寒さは厳しく、マイナス10度になることも珍しくないので、凍害によって枯死する樹もあります。

栽培・醸造:垣根式栽培(1999年~)と棚式栽培を採用。味わいは前者が力強さと凝縮感、後者は落ち着きと複雑味。どちらが優れているということではなく、双方の味わいの特性をうまく生かしながらバランス良く原酒を組み合わせ、『シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原メルロー』が誕生!
2002年にフィネス&エレガンスのワイン造りを目指して木桶(発酵)、選果台を導入。2010年にはワイナリーをリニューアル(設備・樽育成庫)、区画ごとの仕込みも可能になり、2011年からは2段階選果も導入しました。

海外からの評価:1991年、世界最優秀ソムリエ等が審査を担当したグルメ雑誌『ゴー・ミヨ』主催@パリのブラインドテイスティングで、『信州桔梗ヶ原メルロー1985』はボルドーの銘醸ワインを抜いて最高点をゲット。また、1989年に『信州桔梗ヶ原メルロー1985』がリュブリアーナ国際ワインコンクールで大金賞を受賞。続く1986年ヴィンテージも大金賞を得て、日本ワインの可能性を国・内外に示しました。ちなみに最新ヴィンテージ2011の『桔梗ヶ原メルロー』もリュブリアーナ国際ワインコンクール2015で金賞を受賞しています。

1971年産の甲州も登場したテイスティング
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ポンタリエさんと親しく、1989年から91年まで桔梗ヶ原メルローの生産に関わっていたシニア・ワインメーカーの藤野勝久講師。背後にあるのはリュブリアーナ国際ワインコンクールの大金賞の賞状

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シャトー・メルシャンのゼネラル・マネージャー松尾弘則講師
松尾さんとは初対面でした。1986年入社で藤沢工場から研究所、91年からシャトー・メルシャン(当時はメルシャン勝沼ワイナリー)で3仕込みほど体験してアメリカのマーカムに赴任。2年間の活動後、帰国して昨年12年ぶりにシャトー・メルシャンに復帰して工場長として活躍中です。

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口やすめに登場したボルドーの伝統的な焼き菓子カヌレ。若いワインより熟成したボルドーワインに合います。語源について藤野講師から「Cannele(カヌレ)は植物の維管束の木部を構成する主要素の導管(道管)のことです」との説明がありました。

(奥 左から) シャトー・メルシャン信州桔梗ヶ原メルロー1985、同1990、同1998、シャトー・メルシャン桔梗ヶ原メルロー シグナチャー2005、同2011 (手前左から) シャトー・メルシャン信州桔梗ヶ原メルロー1989(6㍑ボトル)、シャトー・メルシャン甲州1971

#1:シャトー・メルシャン信州桔梗ヶ原メルロー1985
ファーストヴィンテージ& リュブリアーナ国際ワインコンクール大金賞受賞
色調はブラウン、腐葉土や湿った枯葉、フェンネル、しっかりとした酸、ただ、ピークは過ぎた印象

#2:シャトー・メルシャン 信州桔梗ヶ原メルロー1990
ポンタリエさんが初めて利き酒したヴィンテージ
藤野さんが麻井先生から厳命されていた毎日朝・晩タンク(80)のワインをチェックしていた思い入れのあるヴィンテージ。当日は3本抜栓したようですが、私のグラスはブショネ(泣)。2年前のポンタリエさんのコメントを見ていただければ幸いです。

#3:シャトー・メルシャン信州桔梗ヶ原メルロー1998
ポンタリエさんが醸造アドバイザーに就任したヴィンテージ
天候不順で苦労が多かったヴィンテージ。社員がぶどう畑に出向いて収穫を手伝うようになった行動年。香りは控えめ、スワリングで果実香、若干の青臭さ、時間の経過でまろやかに。

#4:シャトー・メルシャン桔梗ヶ原メルロー シグナチャー2005
桔梗ヶ原メルローの発売から20周年の記念ヴィンテージ
#5:シャトー・メルシャン桔梗ヶ原メルロー シグナチャー2011

サププライズワインとして登場した
#6:シャトー・メルシャン信州桔梗ヶ原メルロー1989(6㍑)
26年経過しているにもかかわらず、まだ本領を発揮していない印象。今後の熟成の変化に注目。
#7:シャトー・メルシャン 甲州1971
秘蔵の甲州、黄金色でキャラメルやローストした風味、甲州ぶどうのポテンシャルを感じる1本。

両講師のコメント
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藤野講師:85年はかなり熟成していて飲み頃は過ぎていますが、良好年であったことを思わせる歴史的なファースト・ヴィンテージの味わいになっています。90年は仕込みの統括を担当した2年目のワインです。30年振りの好天に恵まれた秀逸年で、骨格もしっかりしています。熟成は進んでいてボトル差もありますが凝縮感があります。98年は天候の難しさを克服するために多くの努力をしました。その努力が反映した丁寧な仕込みの香味を感じさせるワインです。2005年はフィネス&エレガンスを実践して数年目のワインで、質感の滑らかなタンニンを感じます。今後の熟成が期待できるワインです。2011年は今まで発売してきたなかで最も完成度が高く、明確に〝フィネス&エレガンス〟が表現できているワインです。今でも飲めますが、5年から10年後にはさらにおいしくなっていると思います。89年は桔梗ヶ原メルロー(85)を新発売した年で、仕込みの統括1年目。試験的に6Lに詰めたものです。大容量なので、まだ熟成が可能なワインです。シャトー・メルシャン甲州1971は、ワイナリーストックの長期熟成品で、改めて、甘口甲州の美味しさを感じることができる味わいになっています。

松尾講師:85年はこれから先も持つのかと言うと今が飲み頃だと思います。30年前にこのようなワインができていたことに感動します。90年は85年にくらべると熟成が進んでいる印象。98年には若干の青臭さがありますが、3ヴィンテージともタンニンがしっかり出ていて、骨格があるタイプです。造りが変わった2005年はやわらかでソフト。これからどのように熟成するかを見極めていきたいですし、2011年は2段階選果(房選り、粒選り)を行ったワインで、フィネス&エレガンスを感じます。89年は熟成感がまだ表現されていないので、今後10年くらいは熟成可能だと思います。

シャトー・メルシャンの秘蔵っ子『桔梗ヶ原メルロー シグナチャー』
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棚式20年、垣根式4年、オーク小樽(新樽100%) 19ケ月間育成、Alc12.8%、生産本数約1,000本。
2005年ヴィンテージは黒系果実、乳酸のニュアンス、きめ細かなタンニン、スマートでエレガント。桔梗ヶ原メルローのさらに上をいくなめらかな舌触り

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当日のマイベスト!
2011年は垣根式ぶどう100%、オーク小樽(新樽94%) 約18カ月間育成、Alc12.9%、生産本数約1,300本。邪魔するものが何もないバランスの良さ。インパクトのある芳香。豊かな赤系果実、ピュアな酸、やわらかなタンニン、控えめな樽香、時間の経過で香りと味わいがより豊潤に。2011年ヴィンテージはメルシャンが桔梗ヶ原にかけた30年の歴史が凝縮されている感じです!

藤野シニア・ワインメーカーが次のような発言をしていました。
「ポンタリエさんとアッサンブラージュした2013年ヴィンテージは2011年より、さらに素晴らしく、2年後くらいにリリースします」と。とっても楽しみです。
日本ワインをリードする『シャトー・メルシャン桔梗ヶ原メルロー』には更なる期待をしています !!


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