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クリスチャン・ムエックスさんが目指す〝洗練されたカリフォルニアワイン〟 [来日したワイン生産者&関係者]

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クリスチャン・ムエックスさんと奥様のシェリーズさん@ エノテカ・ミレ銀座
オレンジ系ネクタイとスカーフで統一したおふたり、マダムの選択力はさすが!

愛好家垂涎のワイン、ボルドー地方ポムロ-ル地区の『シャトー・ペトリュス』の顔として長年貢献してきたクリスチャンさん。育ちの良さを感じさせる雰囲気は、そのままペトリュスの品格と重っていましたが、2011年ヴィンテージ(VT)から次世代(甥とご子息)にシャトーを委ねています。今後は30年以上頑張ってきたカリフォルニアワインにさらに力を入れていくそうですが、アメリカはマダムの母国でもあります。

ワイン愛好家へのこまやかな配慮
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エノテカの招聘で来日したクリスチャンさん。彼を囲むスペシャル・テイスティングが東京3会場で行われました。私は銀座店にお邪魔したのですが、彼の温かなホスピタリティーに愛好家の皆さんは大いに癒されていました。


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#1:レ・ロゾー・サン・テミリオン・セレクテッド・バイ・クリスチャン・ムエックス2012
#2:ポムロール・レゼルヴ・セレクテッド・バイ・クリスチャン・ムエックス2011
#3:シャトー・ベレール・モナンジュ2011

トロタノワとオザンナを2006年VTで比較
#4:シャトー・トロタノワ2006
2006年は良年。7.2㌶で生産量は約1,500ケース。ナポレオン1世の時代から耕すのが大変な土地(粘土と砂利)で、雨が降るとより堅固。〝tropennuyeux〟がシャトー名の由来で、固すぎて耕せないの意味。
クリスチャン:若干オレンジを含む綺麗に熟成した色調、果実味とボリューム感、香りの中にはトリュフ、ミート、なめし皮のニュアンス、味わいはリッチでまるみがあります。このワインは少し温度を下げて、17度くらいで飲むのがベスト。トロタノワはペトリュスのように骨格がしっかりした男性的なイメージ、ラ・フルール・ぺトリュスはトロタノワより女性的で繊細。土壌は砂利質がメインで大きな砂利が日中太陽の光を吸収してぶどうを温めてくれるので、一番最初に収穫できるシャトー。そのあと後、3週間ほどでサン・テミリオンの収穫。

#5:シャトー・オザンナ2006
1999年にセルタン・ジローを購入。ジローの名はそのままオーナーの家族が引き継いだので、別名を考案。
クリスチャン:エノテカ廣瀬社長と相談の結果、古いラテン語で、救いたまえ、賛美を意味する『オザンナ』に決定。ペトリュスやドミナスは男性的なので、「a」で終わる女性的な名前を考えました。
ポムロールの畑は全部で800㌶、中心部は約200㌶、なだらかな丘陵地。トロタノワ、オザンナ、ラ・フルール・ペトリュスの3つのシャトーはそれぞれ0.5㎞しか離れていないにもかかわらず、ワインの味はすべて異なる、そこがワインの面白いところです。ともに2006年VT、キャラクターは異なり、トロタノワよりなめらかでソフトなのがオザンナ、喜びのあるワインで余韻も長いです。


ジェネリックワイン 苦渋の決断
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これら2本はジャン・ピエール・ムエックス(J.P.M)がエノテカのために造るジェネリック・ワイン

#1:レ・ロゾー(〝葦〟の意味)はクリスチャンさんが居住するシャトー名
クリスチャン:2012年は良年、熟成を経てさらに良くなると思っています。果実味、チェリーのような甘さがあり、力強すぎないVTです。サン・テミリオンは石灰質土壌なので生き生きした酸味、土壌由来のフィネスが特徴です。
#2:10 年前からの定番ワイン。
クリスチャン:2011年は変化の激しい難しい年でした。スミレの香り、酸がやさしく、アプローチしやすいのがポムロールの特徴です。

クリスチャンさんの決断
ネゴシアンのJ.P.Mではぶどうを買い付けて醸造、ブレンドしています。#1や#2はエノテカのために生産しているジェネリック・ワインです。「ボルドーでは2011、2012、2013とぶどの収穫が難しかったため、原料調達が難しくなっています」とクリスチャンさん。続けて「ボルドーには9000のシャトーがあり、私でも400くらいのシャトーしか知りません。ぶどうの生産も良い年は問題ないのですが、難しい年は品質を維持することが困難です。品質が維持できなければやめるしかないと考え、私は今ある分を最後に生産を中止する決断をしました」と。
これにより、エノテカのみならず世界中で生産していたJ.P.M ジェネリック・ ワインの生産が終わることになります。

チャーミングだった祖母と天使の名を持つワイン
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#3
クリスチャン:2008年にべレール購入、1952年に父がシャトー・マグドレーヌを購入しており、2008年以降、INAOの承認を受け、2つのシャトーを併合することに。『べレール・モナンジュ』が誕生しました。ワインは花のような香り、繊細でやわらかい桜のようなイメージです。時間の経過でまるみが出てきます。石灰質土壌由来の酸がしっかりあり、サン・テミリオンらしいワインです。ボルドーにべレールという名は124あり、差別化したいとの思いから、マイ・エンジェル(私の天使)と祖母の名(モナンジュ)に由来する『モナンジュ』と付けました。ラベルの天使はドイツの画家の作品で16世紀に存在するラベルをコピーしています。長い歴史を持つべレールには古樹が多く、古いものでは1816年VTがあります。

カリフォルニアの『オテロ』
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日の丸をイメージしたラベル、デザインに精通するマダム・ムエックスが手掛けました。

#6:エノテカだけのアイテムで、このワインも廣瀬社長と京都の鴨川を散歩中に考案。命名にあたっては日本人が苦手な「r」が入らない工夫も。カリフォルニアのナパに30年以上前にたちあげたドミナス 、弟分の『ナパヌック』に次ぐ三男坊の『オテロ2009』。
クリスチャン:グラン・ヴァンのラトゥ―ル、セカンドワインのレ・フォール・ド・ラトゥ―ル、サードワインのポイヤック・ド・ラトゥ―ルと同じとらえ方で、オテロはジェネリック・ワインになります。濃い色調で、香りはタイム、スパイス、松林を歩いているような印象です。しっかり主張しているワインでパワーがあり、舌の上でスパイシーさが広がります。飲みやすいですが、寿司や刺身ではなく、煙が漂っているような場所で食す焼き鳥に良く合います。まだフィネスが足りないかもしれませんが、その上を行くのがナパヌック、さらにその上がドミナスです。

カリフォルニアでの挑戦ついて質問したところ、
クリスチャン:30年以上にわたり挑戦してきましたが、〝洗練されたカリフォルニアワイン造り〟が究極の目標です。カリフォルニアのワイン造りではまだ技術面が強調されているので、私は文化をもたらせていきたいと思っています。カリフォルニアでは土壌と向き合っていきたいです。

〝洗練〟こそがカリフォルニアでの目標
過熟を嫌うクリスチャンさんは2010年VTのオテロ生産を中止しました。メルロの熟しすぎが原因です。ミスター・メルロの異名を持つクリシャンさんですが、「メルロは良いタイミングでの収穫が大事で、カベルネ・ソーヴィニヨン(CS)よりデリケート」とコメントしていました。

基本的にナパではメルロではなく、CSが主要品種になっています。2006年が初VTのオテロのブレンド比率も2009年はCS94%、PV6%で、近年メルロは使用していません。ドミナスとナパヌックに関してもメルロは使用していません。

最後に・・・クリスチャンさんの人柄を感じさせる発言を
「オテロ2009は約6ヶ月の樽熟成、その期間を1年間にしていたら、もう少し〝洗練〟していたかもしれない。今飲んでみてそう思う。やっぱり自分はまだまだ学んでいるんだよね」

「自分としては98点や99点の方がいい。伸びる可能性や次回こそもっといいものができるという希望を持ち続けていたいから」(ドミナスの高評価を受けて)
偉大なワインの造り手のおごることのない言動から、ワインがより魅力的なものに感じられました。〝品格〟のあるクリスチャン・ムエックスさん、素晴らしい方です!

製品についてのお問い合わせはエノテカまで ℡03-3280-6258

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