カリフォルニア研修ツアー2014 ~サンタ・バーバラを中心に(2) ~ [カリフォルニア・ドリーミング・ワインツアー]
(C)Discover California Wines
カリフォルニア全体を見ていただいてから
(C)Santa Barbara Vintners
セントラル・コーストにフォーカス、距離的にはロスから北に2時間、サンフランシスコから南に4時間半。ツアーはロスからソノマまで北上、連泊は1回(ソノマ)。あとは連日バスでの移動でした。
帰国後、ワインインスティテュート日本事務所(代表:堀賢一)主催のグランドテイスティングがあり、サンタバーバラ・ヴィントナーズ(サンタ・バーバラ・ワイナリー協会)代表のモーガン・マクローリンさんが初来日。〝サンタ・バーバラの多様性〟と題するセミナーを行いました。
堀代表は「カリフォルニアというと輸出市場ではナパやソノマが主流ですが、実は日本市場ではサンタ・バーバラのワインが人気で、最大の輸出先は日本だと言われています。これは日本にはピノ・ノワール好きな方が多いので」とあいさつ。
ブルゴーニュは2011年から3年続きで収量減、価格も高騰しています。ピノラバーさんは、この機会に、サンタ・バーバラのピノに注目なさってみてはいかがですか。
9月の現地訪問では初日がサンタ・バーバラ。口開けのセミナーがモーガン代表だったので、このブログでは東京での要点を織り交ぜつつ、まとめます。
サンタバーバラの概論
歴史:1700年代、ワインは宗教と結びつき、修道会によってミッション種が植樹されていきました。1804年に商業的なワイナリーが設立され、ワイン販売が始まりますが、1900年代初期の禁酒法の施行によりアメリカ全体が大きなダメージを受けます。1933年禁酒法が廃止され、1964年にサンタ・マリア・ヴァレーで初めて商業的なワイン生産が開始します
気候:場所によって気候は異なります。北からのカリフォルニア海流(寒流)とメキシコからの暖流がぶつかることで、大量の霧が発生。海流も複雑な流れに変わります。霧は大きな山脈がないサンタ・バーバラに最初に入り込み、その後、山脈に沿って内陸部に進行。夜間は海からの霧が谷を遡上、昼間は海に押し戻され、昼夜の日較差が生じることでワインにアクセントがつきます。
地形:非常に複雑な地域で、大陸移動によって衝突や回転、分断を繰り返し、沈降したプレートの上に位置しています。約2千万年前~4千万年前に、東太平洋海嶺(太平洋の中央海嶺)がカリフォルニアの南岸に衝突したことがサンアンドレアス断層の発端になりました。海からの大陸棚が陸の大陸棚を押し上げたことで西から東に向かって山脈が形成され、サンタ・バーバラはサン・ディエゴの北にあった陸地の一部が断片となって離れ、回転したことで今の地形になりました。
土壌:数百万年前の地殻変動によってできた土地で、畑の多くは比較的新しい堆積土壌。主要な2タイプは、粘土ローム質と砂質(水はけがよく、ミネラル分が多い。低収量の傾向)で、これらを含む50種ほどの多様な土壌があります。畑はヴァレーフロアか斜面下部の扇状地
6種類のテイスティング@東京
画像左から#1~#6
#1:バイロン ピノ・ノワール サンタ・マリア・ヴァレー2012/ファインズ輸入 3540円(税別)
ジャクソン・ファミリー・ワインズ所有、18の異なるPNを栽培、2012年は温暖だったことでワインには厚みとボディがあり、サンタ・マリア・ヴァレーの個性を反映した凝縮した果実味と綺麗な酸も
#2:ケネス・ヴォルク・ヴィンヤーズ ピノ・ノワール サンタ・マリア・ヴァレー2012/日本未輸入
2006年設立、夜間の手摘み収穫(涼しい時間の収穫により、高い酸が維持できます)、6つの畑のぶどうをブレンド、複雑味があり、フルボディ、樽はハンガリー産を使用
#3:ディアバーグ・ヴィンヤード ピノ・ノワール サンタ・マリア・ヴァレー2011/モトックス 5000円(同)
2011年ヴィンテージは冷涼年、低収量。ミズーリ州でワイン造りをしていたディアバーグさんがセントラル・コーストのサンタ・マリア・ヴァレーに移り住み、ワイン造りを開始。13の異なるPNを生産。Alc度数13.5%、15ヶ月樽熟、100%フレンチオーク(30%新樽)
#4:フェス・パーカー・ワイナリー シラー サンタ・バーバラ・カウンティ2012/ラ・ラングドシェン 3400円(同)
フェス・パーカーさんはその昔ハリウッドスターで、1950~60年代にかけて映画『デイビークロケット』で名を馳せた由。その番組のロゴをワインに使用。ホテルビジネスを手がけたあと、700エーカーの畑を入手し、サンタバーバラでワイン造りに関わっています。18か月樽熟でアメリカンオークとフレンチオークを併用(新樽60%)、シラー100%
#5:ストルプマン・ヴィンヤーズ エステイト・クローン・シラー バラード・キャニオン2012/日本未輸入
2013年10月に承認されたAVA(2012年の段階で、瓶詰め、樽熟成中だったワインもAVA表記可)。コンクリートタンクで発酵、SO2の使用はほとんど無。2012年の温暖な気候下で果実の色調は深みがあり、濃厚。綺麗な果実味も出ています。石灰質土壌から収穫したシラー100%(年によってはヴィオニエも使用/ローヌタイプ)
#6:スター・レーン・ヴィンヤード カベルネ・ソーヴィニヨン ハッピー・キャニオン2009/モトックス 7000円(同)
カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロ等のボルドーブレンド。2009年は雨が少なく温暖な気候だったことで、ぶどうは完熟し、重厚なスタイル。20カ月樽熟成、2011年6月瓶詰
ディアバーグ/スターレーン訪問で
ツアー研修初日の午前中に訪問したスターレーンはディアバーグのオーナー、ジム&マリー・ディアバーグ夫妻が所有するワイナリーで、2009年に重力による醸造施設が完成しました。最高品質のピノ・ノワール&シャルドネを造るディアバーグと高品質のボルドー品種を造るスターレーンの2極スタイル
AVAについて
(C)Santa Barbara Vintners
冒頭にある2枚目の画像、オレンジ部分がサンタ・バーバラ・カウンティで、ここには5つのAVA※があります。ワイナリー数は200超(生産量は平均1万ケース以下)、栽培しているぶどう品種は50種類で、白ぶどうはシャルドネ(CH)、黒ぶどうはピノ・ノワール(PN)がメイン、 2003年以降はボルドー系品種やシラーが増えています。太平洋に沿って長い海岸線が続き、2つの山脈(サンタ・イネズ山脈とサン・ラファエル山脈)が東西に走っているので、山脈に沿って海からの冷たい空気が内陸部に引き込まれていきます。ゆえに海の影響を受ける冷涼なエリアではシャルドネやピノ・ノワールの栽培が可能となり、内陸部の奥深くまで冷たい空気が届きにくいこともあり、それらのエリアは温暖傾向になるので、シラーやカベルネを栽培することができます。
※アメリカ政府公認ぶどう栽培地域を意味し、TTB(酒類・タバコ・税取引局)によって認可されています。2012年10月現在、全米のAVAは206。ラベルにAVAを表示する場合、ワインに使われる85%以上のぶどうがその地域から産出されたものでなければなりません
5つのAVA
■サンタ・マリア・ヴァレー(1981年認定 )
最初に認可されたAVAで最大。1981年の認定後、2006年に面積拡大、2つのカウンティ(サンタ・バーバラとサン・ルイ・オビスポ)にまたがっています。海に向かって開けた地形、霧の影響で冷涼、風が強い。良質のシャルドネとピノ・ノワール、東部でシラーやピノを生産
■サンタ・イネズ・ヴァレー(1983年認定)
3つのサブAVAがあり、一番西(冷涼)にサンタ・リタ・ヒルズ(2001年) 中央にバラード・キャニオン(2013 年)、一番東(温暖)にハッピー・キャニオン・オブ・サンタ・バーバラ(2008年)
15度のカーブでAVAのレクチャー!
■サンタ・リタ・ヒルズ(2001年認定)
2005年に名称変更(チリにも同じ名があるので、Sta. Rita.Hills に) CH、PN
■バラード・キャニオン(2013 年認定)
水はけの良い砂や粘土ローム層、シラー、グルナッシュ
■ハッピー・キャニオン・オブ・サンタ・バーバラ(2008年認定)
夏は35度、ボルドー品種CS、ME、CS、 SB
17ワイナリーが集合したテイスティング
サンタ・バーバラの17ワイナリーがスターレーンに集合して行った合同試飲会
Star Lane/ Au Bon Climat/ Fess Parker Winery & Vineyard/ Flying Goat Cellars/ Longoria Wines Margerum Wine Company/ Martian Ranch & Vineyard/ Melville Winery/ Pali Wine Company / Pence/ Presqu'ile Winery/ Qupe/ Sandi & Domaine de la Cote/ Sevtap Winery/ Silver Wines/ Stolpman Vineyards/ William James Cellars
日本でも人気のオー・ボン・クリマ、酸のバランスとAlc度数13.5%の落ち着いたニュアンス!
供出ロゼは2アイテムだけでしたが、エレガントで、和食に合わせやすいタイプ
Presqu'ile Wineryのサンタ・マリア・ヴァレー・ロゼ・ピノ・ノワール2013は上質感あり
収穫作業中のワイナリーで
スターレーン・ヴィンヤードのワインメーキングディレクター、タイラー・トーマスさんが案内役。
メンバーが味わっているのは2時から4時までのナイトハーベストで収穫したばかりのカベルネ・フラン、しっかり糖分がのっていました。
高速の選果機の見事な作業
カベルネ・ソ-ヴィニヨンの粒が大きな黒いキャビアに見えます
カベルネ・ソーヴィニヨンの選果後の果梗
「ボルドー品種は梗を取り除き、ブルゴーニュ品種の場合は取らない場合もある」とタイラーさん
重力による醸造では上の階から順に作業が進んでいきます
今年、スターレーンではボルドー&ブルゴーニュ合わせて10社の樽メーカーを使っているそうです。タイラーさんの選択理由は「安定していること。赤ワインにとってテクスチュアがカリフォルニアを表現することになるので、それを反映してくれる樽が重要」
トップレンジ、2013年のアストラル
最終ブレンドはまだですが、アストラルには85%の自根(台木なし)ワインを使っているとのこと。土壌はフィロキセラに強い砂質ではなく、チョーク質。樹齢は16年前後
自然光の下でカジュアルランチ! テイスティングで飲んだワインも揃っていました
気になった『Margerum Riviera2013 San Luis Obispo County』
美しい色と爽やかな酸味が食欲そそります
タイラーさんからの台木の説明
スターレーン・ヴィンヤードのカベルネ・ソーヴィニヨン(CS)
CSの標高は500m、ソーヴィニヨン・ブランは200m程度
サンタ・バーバラは映画『サイドウェイ』の舞台になったことで、ピノ・ノワール人気に拍車がかかり、話題のエリアになりました。映画公開から今年で10年ですが、ピノ人気は一過性のものではなく、今でも安定しています。海に近い冷涼エリアから産出されるシャルドネやピノ、内陸寄りの温暖なエリアから生産されるボルドースタイルのワイン、多様な個性が詰まったサンタ・バーバラの底力を実感しました。
加えて、太陽の光を感じながら食べるランチは最高!!!
サンタ・バーバラ・ヴィントナーズの皆さま、大変お世話になりました。
この後、一行はパソ・ロブレスに移動、次回はサマーウッド・ワイナリー&インからスタートします。
2014-10-26 17:02
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