SSブログ

新カルトワイン『Scarecrow(かかし)』誕生のルーツは『The Wizard of Oz (オズの魔法使)』 [カリフォルニア]

5月中旬、〝映画とワイン〟にからむ素敵な時間を過ごすことができました。
輸入元の(株) 中川ワインの招聘でカリフォルニアから素敵なファミリーが来日したからです。

IMG_2882 .jpg
注目の赤ワイン J.J.コーン・エステートの『Scarecrow/スケアクロウ』 を前に、オーナーのブレット・ロペスさんと妻のミミ・デブラシオさん
商業カメラマンとして活躍していたブレットさんはリーヴァイスやホンダ、コカ・コーラなどの仕事を手掛けていましたが、1998年に引退し、祖父が興したエステートを継承。ミミさんがスタイリストだった時に出会い、素晴らしい仕事を遂行していくパートナーが人生のパートナーになりました。多彩なミミさんの現在の仕事はジュエリーデザイナーです。

プレミアム・ナパ・ヴァレー・オークションで史上最高額で落札された『スケアクロウ』
IMG_2905 .jpg
ブレットさんは3年に1回の割でワインをオークションに出品しています。ワイン界を驚かせた第1弾は2011年2月のオークション時に起きました。1ロット(60本)のスケアクロウ2009年ヴィンテージ(VT)が、12万5千ドルで落札され、史上最高額を記録したのです。さらに、その第2弾として、今年2月のオークションでは2012年VTが前回の倍の26万ドルで落札され、最高額を更新しました。スケアクロウは新カルトワインの王者としての地位を不動のものにしています。

上記の画像は今年2月のオークションのカタログです。ワインメーカーのセリア・ウェルチさんのプロフィール写真の上部にはScarecrow Wine、2012Cabernet Sauvignon、Toto's Opium Dream: Scene Ⅲという記載があります。オークション用のワイン名〝Toto's Opium Dream、SceneⅢ〟のトトは映画『オズの魔法使』で主人公のドロシーと旅を続けるワンちゃんの名前で、シーンⅢも映画の台本をイメージしたものです。そして・・・何より、〝スケアクロウ〟という名は、映画に登場する〝ブリキ男〟〝ライオン〟&〝かかし〟の3人のキャラクターのなかの〝スケアクロウ/かかし〟に由来しています。


映画『オズの魔法使』に込められた祖父へのオマージュ
IMG_2900 (2).jpg
スケアクロウのワインは映画の王道ハリウッドで活躍したブレットさんの祖父へのオマージュです。祖父J.J.コーンさんが製作に関わった『オズの魔法使』に出てくる〝かかし〟
ブレットさんは、ワイン造りを生業にするにあたり、「一番大事なことは農業であり、その象徴になるうるものがかかしであると考えました。畑の土にささっている姿は一度見たら忘れられない存在です。そして、このかかしと祖父の遺した映画とは切っても切れない関係にあります」とコメント

直接的な名前だと商標権に引っかかる場合もあり、現実的にはなかなか難しかったようです。当初はそのままJ.J.コーンにしようとしたらしいのですが、すでにB.R.コーンという類似の名があったので、これは断念。最終的にスケアクロウになりました。「この名に至るまで祖父の見守りを感じています」とブレットさん

J.J.コーンの足跡
ジョセフ・ジャドソン・コーン(J.J.コーン)さんは1895年生。ロシア移民の子で貧困のなかで育ちました。18歳で新聞社に入りますが、ここで、毛皮をつくるデザイナー、シェンクさんに認められ、NYへ。その後ハリウッドヘ。MGMに雇われ、22歳で、経理を総括する仕事を担当し、肩書は副社長に。祖母はキャプテンクックの子孫にあたる家柄で、前夫との間に息子がいました。その姓がロペスだったことから、ブレットさんはその名を引き継いでいます。

週末を過ごす別荘を探していた時に、バンク・オブ・アメリカのオーナーから、1875年に建てられた、8つのベッドルームと2つのリビングルーム、プラムが植えてある大邸宅を紹介されます。その邸宅はナパのラザフォードにありました。引っ越ししてほどなく祖母が亡くなり、コーンさんも1995年に100歳で他界します。

グスタフ・ニーバムとのご縁
隣家は1879年にフィンランド人のグスタフ・ニーバムが興した『イングルヌック』でした。コーンさんが所有する畑には2エーカーだけぶどう樹(1945年植樹のオールド・マン)が植えられ、斜面の上部には豊かな湧水がありました。グスタフ・ニーバムから「素晴らしい畑」との評価を受けており、造ったぶどうはイングルヌックに納入していました。

ナパで最古のカベルネ・ソーヴィニヨン
1960年~68年にかけて多収量のぶどう樹の開発が進められ、USデイビス校ではAxR#1の台木を推奨していました。多くのワイナリーがAxR#1を採用しましたが、その後、ナパを襲ったフィロキセラ禍で多くのぶどう畑は悲惨な状態になります。AxR#1にはフィロキセラに対する免疫力がなかったことが原因です。
コーンさんは1945年に植えたセント・ジョージアの台木のぶどうを死守していたことで、難を逃れることができました。ナパのなかで一番古いカベルネ・ソーヴィニヨンは、トカロン(現在ベクストファーが所有)とJ.J.コーン・エステート(25エーカー中2エーカーのみ)のぶどう樹とのことです。


税金対策の選択肢がワイン造り
祖父が亡くなり、エステートが競売にかけられることになります。5億からスタートして7億・・・最後は30億になりました。入札者はロスチャイルド家(ロバート・モンダビと)、ベクストファー・ヴィンヤードのオーナー、アンディ・ベクスターそしてブレット・ロペスさん(フランシス・コッポラと)の3組。コッポラは競売の際、表面には出ず、すべてブレットさんひとりが立ち回っていました。結果的に75~80エーカーのうち、3分の1の25エーカーと湧水、エステートをブレットさんが取得し、残りはコッポラにわたりました。

余談ですが、1975年、イングルヌックの歴史の重さに惹かれたコッポラは『ゴッドファーザー』の収益で敷地の一部を購入し、『ニーバム・コッポラ・エステート』を設立。そして1995年の『ドラキュラ』で大成功し、その収益金で残りの全敷地を入手しています。そのことが記憶にあったので、ブレットさんに「ドラキュラで得た収益が役に立ったのでしょうか」と伺ってみたところ、「コッポラは7つの会社を所有していたので、ドラキュラだけのお金ではないと思うよ」とのお返事が。とは言え、『イングルヌック』のグスタフ・ニーバムとつながっていたコーンさん、その歴史を引き継いだコッポラも映画人であるという流れにはワクワクするものがありますね。


ワイン造りをするにあたり、著名なワインメーカーを探すために、人選のアドバイスをしてくれたのが、アメリカのスコット・トレーシーさんで、何人かのワインメーカーに接触。ここで、前述したセリア・ウェルチさんが登場することになります。

パーカー・ポイント100点騒動
ファーストリリースは2003年で、これを試飲したロバート・パーカーが98点をつけました。発表された当日は朝から電話が鳴り続け、PCはパンク! 次のVTを待つ人が6000名にのぼりました、生産量は平均して1000ケース、エステートの記録用にキープすべき本数があるので、潤沢に供給出来ないのが悩みです。


ナパで新たな伝統を築いていくロペスファミリー
IMG_2888 .jpg
初来日のロペスファミリー。中央は愛娘ココさん。ファミリーのなかでは一番ワインに造詣が深く、現在、ワインメーカーのセリアさんから多くのことを学んでいるそうです。

ブレットさんにお目にかかるにあたり、『映画でワイン・レッスン』を持参。『カサブランカ』を例に本の内容を説明させていただきました。映画のセンス、芸術的センスがある方なので、とても喜んでくださいました。記念画像に拙著を入れてくださった気配りに感謝です。

IMG_2889 .jpg
『スケアクロウ』の写真本にサインをしているブレットさん

IMG_2893 (2).jpg
ミミさんのお洒落なセンスが光ります。

(2)3434.jpg
スケアクロウのアイコンマークのチョコレート!
セント・ヘレナにあるWoodhouse製、口中でのとろけ具合が優しくて幸せ気分に!

質問に答えて
パーカーポイント100点をゲットした後の、今後の目標は?
A:家族のなかで伝説を作っていくことです。ナパに住んでナパを感じながらファミリーの歴史を代々につないでいきたいと思っています。ふたりの娘は映画や音楽に関わっているので、我々夫婦のたどってきた道を継承しており、ワイン造りという新たな仕事も加わりました。孫も3人います。

ワインメーカーのセリア・ウェルチさんの最大の強みはなんですか?
感性、直観力、洞察力、判断力のある女性です。「私がワインメーカーよ」という風に前面に出てくるような人ではないところも魅力です。何より人間性があります。


ワインテイスティング
ワインは3時間前に抜栓。外観は黒系果実(プラム、ブラックチェリー等)の要素、木目の細かなタンニンながら、最初は舌の上を軽くなぞるドライなニュアンスがあり、時間の経過とともにグラス内での変化が顕著に。ソフトな酸味は心地よく、繊細なタンニンは、なめらかで優しく 上品な口当たりになっていきました。オールド・マン由来のミネラルも感じます。ロペスさんいわく「理想は7~8時間前に抜栓」を。
青木私感:女性ワインメーカーらしい、優しさ、上品さがあると感じました。慌ただしい生活をしている人ではなく、人生の一コマ一コマを大切にしている人に良く似合うワイン、飲んで欲しいワインです。

ブリキ男のワインも
J.J.コーンエステートではスケアクロウとムッシュ・エタンを造っています。前者のスケアクロウはオールド・マンの区画から収穫したワインのほか、J.J.コーン・エステートの秀逸な区画のワインをブレンドして造ります(オークション用はオールド・マンのワインのみ)。後者のラベルにはブリキ男のイラストがついています。この絵柄はブレットさん考案で、ムッシュ・エタンは映画のなかのブリキ男の本名。オズつながりは、すべて偉大なる祖父への想いに重なっています。ナパで生まれたレジェンド・・・それがスケアクロウなのです!

スケアクロウのHPでワイン本(私がいただいた)に載っている画像を見ることができます。また、ブレットさんはじめ、エステートで働くメンバーを紹介したページには各人をユニークな単語を使って紹介しています。是非お立ち寄りくださいませ。

ロペスファミリーは古都京都への旅も満喫なさったようです。タイトなスケジュールのなか、予定の時間を30分もオーバーしてインタビューに答えてくださったブレットさん、ミミさん、ココさん、ありがとうございました。同席のマットさんにも感謝です。
中川社長、山村さん、高村さん、お世話になりました。ますますのご発展を!


nice!(7)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:グルメ・料理

nice! 7

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0