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マスカット・ベーリーAに特化した第3弾『あっぱれ! 日本ワイン! 』  [オープンカレッジ]

4月20日、新宿御苑@JIPさんで、カレッジの課外講座『あっぱれ! 日本ワイン!』を行いました。
同講座は2012年にスタートしたので3回目になります!
今回は日本の固有品種マスカット・ベーリーA (MBA)にフォーカスしてみました。

第一部 Muscat Baily A マスカット・ベーリーA
text by Maki Oka

3つのキーポイント
(1)「日本のぶどうとワインの父」川上善兵衛が生んだ交配品種のひとつ
(2)ベーリー(Bailey) × マスカット・ハンブルグ(Muscat Hamburg) から生まれた品種
(3)甲州に続いて、2013 年に O.I.V. に登録
International Organization of Vine and Wine(国際ブドウ・ワイン機構)

川上善兵衛は、新潟県高田の大地主の家に生まれましたが、貧しい農民たちのためにぶどう栽培とワイン醸造を始めました。私財を投げ打って畑を広げ、日本の気候風土に適したぶどう品種の開発を目指して、約1万種の交雑品種の中からマスカット・ベーリーAをはじめ22品種の優良品種を世に送り出しました。
ワインの醸造にも工夫をこらし、今日の日本のワインづくりの基盤をつくり、「日本のワインぶどうの父」と称されるようになったのです。

1890(明治23)年、弱冠22歳の善兵衛は、自家の庭園をこわして畑を作り、『岩の原葡萄園』を開設しました。1922(大正7)年からは10,311 種の交雑を実施しています。1926(大正11)年には、メンデルの遺伝法をぶどうに応用して、そしてついに、昭和2年、マスカット・ベーリーA他、優良品種を誕生させます。


第一部の講師は昨年からタッグを組ませていただいているコーディネーターの岡真木さん

今日、日本のぶどう収穫量は、年間約21万トン(農水省統計2006年度/ これ以降のデータは無)。第1位の巨峰は、川上善兵衛がアメリカから初輸入したキャンベル・アーリー(第5位)を使った改良品種で、第3位のピオーネは巨峰を使った掛け合わせであることを考えると、上位5位までのぶどう品種のうち4つは善兵衛と関係があることがわかります。


品種収穫量(t)/シェア(%)
巨峰/66,900/32
デラウエア/40,300/19
ピオーネ/23,000/11
マスカット・ベーリーA/11,700/6
キャンベル・アーリー/ 11,400/5
その他/56,500/27
計209,800/100
計113,000/54
出典:農林水産省時計 ぶどう品種別収穫量(2006年度)

ナイアガラを初めて輸入したのも善兵衛です。
現在、日本で収穫されているぶどうの約60種が、善兵衛と関わりがあります。日本のぶどう・ワインづくりにおいて、いかに川上善兵衛が重要な人物であるかがおわかりいただけると思います。

マスカット・ベーリーAの表記
O.I.V.でデータベースに登録されるのは「Muscat Bailey」という英文表記だけですが、日本国内で使用するSynonym(同意語・同義語の意味)として、4種の表記が申請されています。
マスカット・ベーリーA(Muscat Bailey A)
マスカット・ベイリーA(Muscat BaileyA)
マスカット・ベーリA  (Muscat Bailey A)
マスカット・ベリーA  (Muscat Bailey A)

上記の中でベリー(Berry)は明らかな誤記ですが、多くのワインの表記が〝ベリー〟になっていることと、混乱は避けるという意味で、この4つの表記が申請されています。しかし、今後は徐々に修正が行われていくものと考えます。

5種のマスカット・ベーリーAをブラインドで試飲
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#1:蔵王スター 赤 タケダワイナリー・山形
山形県産マスカット・ベリーA 100%の軽やかで清々しい酸味の効いた赤ワイン。赤い果実を思わせるチャーミングな香りと、引き締まった酸、穏やかなタンニンが爽やかで心地よく、ぶどう本来の味わいが楽しめます。

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ゆかりのおにぎりとピッタリ! ご飯にオリーブオイルとレモン果汁を効かせ、ゆかりを混ぜただけのシンプルなもの。赤ワインと一緒にご飯も食べられますね。

#2:深雪花 赤  岩の原葡萄園・新潟
マスカット・ベーリーAを主体にメルローやブラック・クイーンをわずかにブレンドした赤。果皮や種からの香味成分がしっかりと抽出されていて、樽に寝かせたことも相まって、やさしいふくらみのある味わいが楽しめます。ブレンドの良さがうまく表現された赤です。タンニンが穏やかで、丸みのある味わいなので、どんな料理にもよく合いますが、例えば、焼きアスパラや煮ゴボウ、タコとアボカド+特製ドレッシング掛けにイケますね。

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■チャーシュー /タコ糸で縛った豚肩ロースをベーリーA、醤油、蜂蜜、香味野菜で4時間煮込んだ一品 
■鴨フィレ肉の中華味噌和え/ローストして冷ました鴨フィレ肉をスライスし、サッと茹でたパプリカと中華味噌(甜麺醤、豆板醤、煮切った酒)で和えた一品
■焼きアスパラと煮ゴボウ/一度茹でたアスパラを香ばしくオリーブオイルでソテー。ゴボウはカツオ出汁に醤油を入れ炊いた一品
■牡蠣の山椒煮/牡蠣を醤油、酒、みりん、有馬山椒で煮たもの。人参は一番出汁に酒、塩で煮た一品 ←sorry~牡蠣がダメな私には代替え食材の帆立で(青木)
■タコとアボカド/大きめにカットしたボイルタコとアボカドを合わせ、オリジナルドレッシングで

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参加者を魅了した岡講師のオリジナルドレッシング(オリーブオイル、醤油、レモン汁、ワサビ)

#3:ヘリテージ 2011 岩の原葡萄園・新潟
樽の香りと複雑で奥深い香りが立ちあがってきます。何かが違うぞ!・・・と思わせるワインです。良く熟したぶどうを収穫できた年と聞いていますので、フレンチオークの新樽100%使用の15ヶ月熟成という条件にも負けずに存在感を醸し出しています。グラスの中で徐々に変化していく様子をみると、次第に風味の調和がとれ、全体がまとまってくるのがわかります。素性の良さとでもいうワインづくりの背景が伺えます。しっかりした味わいの牡蠣の山椒煮にも◎

#4:フジクレール マスカット・ベーリーA 樽熟成 2012 フジッコワイナリー・山梨
山梨県産マスカット・ベーリーAのワイン。ひとことで言えばバランスのとれたワイン。フレンチオークの小樽で熟成させていますが、樽が前面に出ずに、イチゴのようなかすかに甘い香りと、樽の要素がバランスよく溶け合って飲みやすいワインに仕上がっています。鴨フィレ肉と楽しめました。

#5:シャンテ Y・A ますかっと・ベリーA Y3 キューブ 2011 ダイヤモンド酒造・山梨
つくり手の熱い気持ちが感じられるワイン。とにかく、ぶどうの可能性に賭けていることは、2軒の契約農家のぶどうのみしか使わないことからもわかります。Y3キューブは、醸造家の雨宮吉男さんと、契約栽培農家のふたりの名前に“Yが付く事から、Y3と命名。力と複雑さも兼ね備えているので、じっくり煮込んだチャーシューと楽しめました。

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お陰様で定員を超える参加がありましたが、そのなかには東京農大の応用生物科学部醸造科学科の東和男講師もいらっしゃいました。ワインに関するご意見も伺うことができました、光栄です!
ちなみに先生は農大オープンカレッジの食育講座でご活躍中です。ご興味のあるかたは是非チェックなさってくださいませ。

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甲州でもマスカット・ベーリーAでも、日本のぶどう栽培・ワインづくりを間近に見て学べることは、自然の世界と本当のワインづくりを改めて見直す良い機会になるのではないでしょうか。
あっぱれ!日本ワイン!

第一部のワインに関しましては、岩の原葡萄園の坂田敏社長からヘリテージをご協賛いただきました。貴重なアイテムをありがとうございました。岡 真木



第二部 Sparkling Wine 泡の世界
text by Fumiko Aoki

ワインの分類
(1)スティルワイン(非発泡性ワイン)      例:赤、白、ロゼ
(2)スパークリングワイン(発泡性ワイン)    例:シャンパン、カバ
(3)フォーティファイドワイン(酒精強化ワイン) 例:シェリー、ポート
(4)フレーバードワイン(香付けワイン)     例:ベルモット、サングリア

また、スパークリングワインは製法によって以下のように分類できます。
(1)瓶内二次発酵(シャンパン方式)
(2)キュヴェ・クローズ(シャルマ)法
(3)炭酸ガス注入法

甘辛表示
(1)エクストラ・ブリュット 0~6g/リットル
(2)ブリュット        12g/リットル以下
(3)エクストラ・ドライ   12~17g/リットル
(4)セック          17~32g/リットル
(5)ドミ・セック       32~50g/リットル
(6)ドゥー          50g~/リットル
※ 3g/L以下、あるいは全く加糖をしていないワインには〝ブリュット・ナチュール〟〝ドザージュ・ゼロ〟の表示ができます。

泡部門は全部で7アイテム用意しました。
参加者の皆さんには第一部でMBAの特徴を十分にご理解いただいたので、即、MBA100%の2アイテムを供出。スティルワインの時と比べて泡があることで印象がどう違うかを確かめながらテイスティングしました。

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第一フライト
2011年に岩の原葡萄園を訪問しましたが、解説してくださった坂田社長の熱い語りはとても強烈で思わず目がウルウル。その時のリポートは上・下2回にわけ、ワインのこころに載せました。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/111208/trd11120814160013-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/life/news/111215/trd11121514410015-n1.htm

#1:穂坂のあわ ロゼ2012 シャトー・メルシャン(山梨)
製法:炭酸ガス注入方式/品種:マスカット・ベリーA 100%
炭酸ガス注入タイプ。メルシャンでは「あわ」シリーズ完成までに様々なトライアルを行ってきました。世界の主要なスパークリング(シャンパン含)を集め、泡を取り去って、ベースとなる原酒を分析。いかに〝泡持ちの良いスパークリング〟を造るか徹底研究してきました。その成果が出ている『穂坂のあわ』
ベリー系の果実味にあふれ、クリーミーで心地良い食感があります。程よい酸味と香草のニュアンスがハーブのマリネに良く合いますし、青系野菜のアスパラガスとの相性は◎

#2:岩の原スパークリングワインロゼ マスカット・ベーリーA 岩の原葡萄園(新潟)
製法・瓶内ニ次発酵(シャンパン方式)/品種:マスカット・ベーリーA 100%
岩の原葡萄園のMBAは水分が少なく羊羹状の果肉に特徴があり、それが山梨のMBAの溌剌とした若々しい印象とはひと味違う大人びた風情になっています。きめ細かいタンニン(渋み)があり、それがあることで、料理も連想できます。口中に残る脂分を洗い流してくれるので、鰯のバリティーヌにも合いますし、日本的な凛とした酸味はがんもどきとプティトマトのピクルスにも合わせて楽しめました。

第二フライト
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#3:ロゼサクラ にごりスパークリング フジッコワイナリー(山梨)
製法・瓶内ニ次発酵(シャンパン方式)/品種:甲州 94%、シャルドネ+ベリーA+アリカント6%
ロゼ色はベリーAを2~3%使用

皆さんを笑顔にさせたサーモンピンクの可愛い泡、サイズはハーフ(375ml/1143円)です。
開栓前は透明なピンク色、王冠を開けるとボトル内の八重桜が瓶の口もとに上がってきます。あらら・・・ワインも白濁しています。

フジッコワイナリーの独自の技術によって誕生したワイン。発酵を途中でストップさせ、瞬間熱湯処理させることで甘口状態をキープしています。シャンパン方式の泡ものですが、瞬間熱湯は世界でも同ワイナリーだけのオリジナル製法。白濁が起きたのは瓶底にあった澱(酵母の死骸)が開栓(瓶内のガス圧により)で舞い上がったものです。視覚的(色の変化やきれいさ)&味覚的魅力で会場を賑わせていました。


第三フライト
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ここでは日本ワイン2本とスペインとフランス(ロワール)産各1本ずつの計4本を比較試飲

ブラインド供出は以下の順
#4:スパークリング今様2013 マンズワイン(山梨)
製法:キュヴェ・クローズ(シャルマ)方式/品種:山梨県産甲州73%、岩手県産ヤマブドウ27%
辰巳琢郎さんプロデュ―スのワインです。2012年の3月11日に新発売した泡もので、今年で3回目のリリース。これは2次発酵を大きなタンクで行うシャルマ法。古来より自生しているヤマブドウとシルクロードを経由して日本にたどり着いた甲州に思いを馳せながら、私がリクエストさせていただいた〝サーモンと菜の花のロール〟と合わせて。隠し味に使った和からしが良き仲介役をしていました。


#5:セグラヴューダス ブルート・ロゼ(スペイン)
製法・瓶内ニ次発酵(シャンパン方式)/品種:トレパット90%、ガルナッチャ10%
スペインのカバ、シャンパンと同じ製法です。トレパットはロゼ・カバに使用が認められており、ワインに果実味や新鮮さ、アロマや繊細さを与えます。一方のガルナッチャはロゼに深みのある味わいをもたらしています。#4の今様を飲んで、ベリー系果実の香りが口中から鼻孔にかけて残っているときに、#5を味わうと、爽快なミネラル感が口中に残ったベリー系果実の香りを払しょくしてくれる爽快感あり。料理全般との相性良。

#6:安心院(あじむ)スパークリングワイン ロゼ 安心院葡萄酒工房(大分)
製法・瓶内ニ次発酵(シャンパン方式)/品種:安心院産カベルネ・ソーヴィニヨン72%、安心院産メルロー28%
安心院と書いてAzimu(あじむ)です。同ワイナリーの泡との出合いは山梨で行われた国産ワインコンクールの公開テイスティング会場でした。ブリュットが金賞を受賞した2~3年前の話ですが、それ以降、安心院さんの泡はコスパも良いので、私のなかで、「日本産スパークリングのベスト1」になっています。ドザージュ量は公表していませんが、ブリュット既定の範囲内。日本的な清楚な酸がイイ感じです。脂分が残る料理に合わせていただくと口中をきれいに洗い流してくれる泡です。食中酒向けのロゼ・スパークリングと言えます。

#7:ラングロワ クレマン・ド・ロワール ロゼ ブリュット(フランス)
製法・瓶内ニ次発酵(シャンパン方式)/品種:カベルネ・フラン100%
世界遺産ロワール地方の歴史あるワイナリー、ラングロワ・シャトーはシャンパンメゾンの名門『ボランジェ』の傘下。赤系果実をイメージさせるロゼで、中盤以降、石灰粘土由来のキレの良い酸が口中に長く残ります。先日、ロワールワイン委員会の役員が来日してセミナーを開催していましたが、馴染み深い食材が多いロワール地方のワインは日本人の味覚に良く合います。カベルネ・フランはソーヴィニヨンほどタンニンも強くなく、マイルドな口当りが特徴。大山鶏のハムと竹の子に使っていた出汁や山椒と相性良〇


スパークリングに合わせた料理
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■花わさびとホタテの和えもの
茹でて冷水におとし、水気をきった花わさびを3cm幅に切る。同様にサッと茹で、冷水におとしたホタテを1/6カットし、花わさびと合わせ、塩で調味
■鰯のバロティーヌ
イワシとホタテ、卵をフードプロセッサにかけ、調味したものを、円柱状になるようラップとアルミホイルで包み、湯煎焼きに。冷まして、2cm幅にカットし、粉をして両面バターで焼く
■大山鷄のハムと竹の子
野菜の出汁に山椒と酒、塩をいれ、60℃にしムネ肉に火を通し、残った汁で竹の子を煮た一皿
■サーモンと菜の花のロール
ノルウェーサーモンをマリネする。スライスし、内側に和からしをぬり、茹でた菜の花を巻いて
■がんもどきとプチトマトのピクルス
水気をきり、裏ごした豆腐に、出汁でふくめた野菜、卵、大和芋を合わせ、調味、丸い形状にして揚げる

ブラインドテイスティングのあとで
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スペシャルゲストはマンズワインの茂木信三郎社長でした。
春にリリースした『今様』はドザージュ量が微妙に変化しています。初回は8g/L、2回目は3g/L、そして今回は0g/Lなのですが、実質的にはワイン内に糖分が3g/L程度あるとのこと。ラベルの色も毎回変化し、今年は軽快さを感じる黄色、〝暖色(ピンクや黄色)〟のパワーを再認識

もう1点、茂木社長が手にしているのは白ワイングラスなのですが、〝今様〟をシャンパングラスと白ワイングラスの2脚を使ってチェックしていただきました。#4は甲州ワインがベースなので、白ワイングラスで飲むことで泡ワインのまろやかな舌触り、酸味の繊細さが実感できます。茂木社長も白ワイングラスでの『今様』の味わいを認めてくださいました。

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ご参加くださった総勢32名の皆さんに心から御礼を申し上げます。
有志のみの画像ですが、講師にとって皆さんの素敵な笑顔は何よりの贈り物です。
終会後、皆さんから日本ワインの進化、MBAへの再認識等に触れたメールをいただきました。
微力ですが、変化している日本ワインの〝今〟をお伝えしていければ本望です。


第二部のワインに関しまして、岩の原葡萄園の坂田敏社長から『岩の原スパークリングマスカット・ベーリーA』、マンズワインの茂木信三郎社長から『今様2013』、三菱食品から『セグラヴーダスブルート・ロゼ 』をご協賛いただきました。ありがとうございました。青木冨美子

JIPの一ノ瀬社長にはいつも寛大なお気遣いをいただいております。遠藤店長、島崎シェフ、丸山様、青山様、スタッフの皆さん、お世話になりました。今後ともよろしくお願いいたします。

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