ニコラ・マイヤール来日特別講座@オープンカレッジ [オープンカレッジ]
いかに良いワインを造るか、いかにテロワールを表現するか
7月中旬、メゾン・ニコラ・マイヤールの当主ニコラ・マイヤールさんが来日しました。輸入元の豊通食料さんのご協力で日程を調整していただき、オープンカレッジで特別講座を行うことができました。ニコラ・マイヤールのシャンパンは2月の講座で取り上げたので、本当に贅沢な仕上げになりました。2月のリポートはコチラです。
ニコラ・マイヤールの概要
モンターニュ・ド・ランスに3つの畑(グランクリュのブジー、プルミエクリュのヴィレール・アルラン、プルミエクリュのエキュイユ)を所有。「ブジーは粘土質、粘土石灰質なので力強いワインになり、ヴィレール・アルランは熟成させるのにちょうど良いワインになります。また、砂質土壌のエキュイユはメゾンの本拠地であり、フルーティーさが表現できます」とマイヤールさん
栽培面積は16ヘクタール(比率は30%CH、55%PN、15%PM)、完全な有機栽培ではありませんが、自然に関与する形で行っています。ニコラ・マイヤールさんがメゾンに参入した2003年に醸造所の設備を重力利用のグラヴィティシステムに。小樽の導入(3年前からルロワの古樽使用)、区画毎・品種毎の仕込み。醸造面ではMLF一部実施。40%はオーク樽で熟成。リザーヴワインとして保存しているのは生産量の70%
テイスティングワインは全部で7アイテム (左から順に)
第1フライト
No1: ブリュット プラティーヌ プルミエ クリュ
ぶどう品種: PN80%、CH20%、ドザージュ:8g/L、デゴルジュマン:2011年11月
No2:エキストラ ブリュット プラティーヌ プルミエ クリュ
ぶどう品種:PN80%、CH20%、ドザージュ:2g/L、デゴルジュマン:2012年1月
マイヤール:No1とNo2のブレンド比率は同じです。樽で保管しているリザーブワインを45%使用することで、複雑味が出てきます。No1は瓶熟2年半、気泡は軽め、上品かつエレガントで洋梨やオレンジ、甘草やヴァニラのニュアンスがあります。中盤以降ボリューム感が広がり、最後はライトに終わるのでアペリティフにおすすめしたいシャンパンです。No2は瓶熟期間は5年。基本的にはNo1と同じ香りがあり、ミネラル感も感じます。アペリティフやシーフードで楽しめます。
自根について
エキュイユの砂質土壌の畑にある自根のピノ・ノワールから『レ・フラン・ド・ピエ エキストラ・ブリュット・プルミエ・クリュ』を造っています。フィロキセラは砂地では生息できないので、1973年に彼の父親が植樹したものです。ぶどう樹の出生について、「エキュイユにあったことはわかっていますが、詳細は不明です」とマイヤールさん。当初、自根のピノ・ノワールから収穫したワインはNVにブレンドしていたそうですが、マイヤールさんがメゾンを引き継いだ2003年に初めてヴィンテージものをリリース、それがNo5のラインです。
マイヤールさんいわく「地中から2メートルまでは砂質でも、その下に粘土があればフィロキセラにやられる可能性があるので、リスクはあります」と。講座生から「地中探索で調べられないのですか」との質問には、「経費が膨大になるので、なかなかできません」と答えていました。
ピノ・ノワールの樹齢は30年、マサル・セレクション※を行っています。また今回ニコラ・マイヤールが行っている新たなやり方も伺いました。それは接木したぶどう樹の上に土をかけて埋め、根が出てから切り離し、苗を増やす方法で、これはフィロキセラ以前、畑でぶどう樹の枝を土に埋め、根が出てから切り離す取り木(プロヴィナージュ)の変形です。
一番最後にマイヤールさんの画像があります。彼の右上部に、41Bという台木があり、その字の上に小山のように盛り上がった絵があるのがおわかりいただけますよね。それが増やし方の解説です。
※マサル(massal集団の)・セレクションは畑から優秀な株を複数選び、穂木をとって苗をつくり、もとの畑に戻す方法。マサル・セレクションを行うにはクローン苗を使っていない畑を選ばなければならない。
自根のシャンパンを利く
接木と自根については、拙オフィシャルサイト『プロの流儀』の【栽培】の項をクリックしていただけば、安蔵光弘醸造家のわかりやすい解説が載っています。
>>>http://www.non-solo-vino.net/style.html
第2フライト
左から3、4、5の順、3と4は白ぶどうのみ、シャルドネ100%で、5は黒ぶどうのみ、ピノ・ノワール100%、色の違いがわかりますね
No3:2004 レ・シャイヨ・ジリ エキストラ・ブリュット・プルミエ・クリュ
ぶどう品種:CH100%、MLF無、ドザージュ:2g/L、デゴルジュマン:2011年4月
No4 :(タルラン)2000 ラ・ヴィーニュ・ダンタン
ぶどう品種:CH100%(自根)、MLF無、ドザージュ:2g/L、デゴルジュマン:2010年3月
No5:2005 レ・フラン・ド・ピエ エキストラ・ブリュット・プルミエ・クリュ
ぶどう品種:PN100%(自根)、MLF無、ドザージュ:2g/L、デゴルジュマン:2011年4月
マイヤール:No3~No5とも木樽熟成、MLF無、ドザージュ2g/Lという点が共通しています。これらは食事に合わせて楽しみたいワインです。
No.3にはパンを焼いたような香ばしさとミネラル感があり、力強さと酸が備わったシャンパンです。料理も同じように力強さがあるものが合います。
No4(他メゾン/タルラン)のミツのような香りに驚きました。古典的なシャルドネでNo3 よりも柔らかく、落ち着いた味わいです。まろやかでありながらボリューム感もあり、余韻はソフトに広がっていきます。上記2つのシャルドネはコート・デ・ブランの典型的なシャルドネとは異なります。シャンパンから感じるエスプリが似ています。
No5 からはオレンジやアーモンド、スパイスの香りを感じます。口中では繊細でシルクのような食感、優しい味わいです。料理は繊細なソースの魚料理が合うと思います。
私的感想:今講座の柱になるフライトで、とても興味深いものでした。No3は近代的なスタイル、今の時代に合ったシャルドネで、メリハリのある酸が特徴的でした。No4は酸味もやさしく、シャンパン全体がまろやか、酸も楕円形に近いニュアンスで口中に広がる印象でした。No5も穏やか、全体を優しく包み込む印象。No4とNo5の優しい円熟味が自根由来と感じている私ですが、まだまだ探究が必要だと感じています。
第3フライト
No6:2005 ブリュット・ミレジメ・プルミエ・クリュ
ぶどう品種:PN50%、CH50%、デゴルジュマン:2012年1月
No7:1995 プレステ―ジ・プルミエ・クリュ
ぶどう品種:PN50%、CH50%、デゴルジュマン:2010年12月
マイヤール: No6は個人的にも好きなシャンパンです。柑橘系果実やバターのニュアンスがあり、柔らかくてエレガントです。第1フライトと第2フライトを総括したようなスタイルだと思います。
No7は父親の代のシャンパンで、モカやタバコ、熟成した香りと味わいがあります。1995年はとても良いヴィンテージでした。あと10年位経過しても全然問題なく楽しめますし、酸は今よりもワインに溶け込んでいるはずです。
私的感想:No7 は古酒の醍醐味ともいえるコーヒーやモカのニュアンスがあり、第3アロマに由来する様々な熟成香が時間の経過とともに楽しめました。No6は供出されたマイヤールさんの6アイテム中、一番気に入りました。フレッシュ感が好印象でバランスが良く、マイヤールスタイルが表現されています。
2003年に父親のミシェルさんからメゾンを引き継いだ1977年生まれのニコラ・マイヤールさん
昨年暮れにお子さんも誕生し、お仕事も家庭も順風満帆のご様子でした。
今回2度目の来日で、明日(特別講座の翌日)は山梨のワイナリー訪問とのことでした。
お忙しいなか、お時間を割いていただき、ありがとうございました。
豊通食料の小永井さんにも御礼申し上げます!
7月中旬、メゾン・ニコラ・マイヤールの当主ニコラ・マイヤールさんが来日しました。輸入元の豊通食料さんのご協力で日程を調整していただき、オープンカレッジで特別講座を行うことができました。ニコラ・マイヤールのシャンパンは2月の講座で取り上げたので、本当に贅沢な仕上げになりました。2月のリポートはコチラです。
ニコラ・マイヤールの概要
モンターニュ・ド・ランスに3つの畑(グランクリュのブジー、プルミエクリュのヴィレール・アルラン、プルミエクリュのエキュイユ)を所有。「ブジーは粘土質、粘土石灰質なので力強いワインになり、ヴィレール・アルランは熟成させるのにちょうど良いワインになります。また、砂質土壌のエキュイユはメゾンの本拠地であり、フルーティーさが表現できます」とマイヤールさん
栽培面積は16ヘクタール(比率は30%CH、55%PN、15%PM)、完全な有機栽培ではありませんが、自然に関与する形で行っています。ニコラ・マイヤールさんがメゾンに参入した2003年に醸造所の設備を重力利用のグラヴィティシステムに。小樽の導入(3年前からルロワの古樽使用)、区画毎・品種毎の仕込み。醸造面ではMLF一部実施。40%はオーク樽で熟成。リザーヴワインとして保存しているのは生産量の70%
テイスティングワインは全部で7アイテム (左から順に)
第1フライト
No1: ブリュット プラティーヌ プルミエ クリュ
ぶどう品種: PN80%、CH20%、ドザージュ:8g/L、デゴルジュマン:2011年11月
No2:エキストラ ブリュット プラティーヌ プルミエ クリュ
ぶどう品種:PN80%、CH20%、ドザージュ:2g/L、デゴルジュマン:2012年1月
マイヤール:No1とNo2のブレンド比率は同じです。樽で保管しているリザーブワインを45%使用することで、複雑味が出てきます。No1は瓶熟2年半、気泡は軽め、上品かつエレガントで洋梨やオレンジ、甘草やヴァニラのニュアンスがあります。中盤以降ボリューム感が広がり、最後はライトに終わるのでアペリティフにおすすめしたいシャンパンです。No2は瓶熟期間は5年。基本的にはNo1と同じ香りがあり、ミネラル感も感じます。アペリティフやシーフードで楽しめます。
自根について
エキュイユの砂質土壌の畑にある自根のピノ・ノワールから『レ・フラン・ド・ピエ エキストラ・ブリュット・プルミエ・クリュ』を造っています。フィロキセラは砂地では生息できないので、1973年に彼の父親が植樹したものです。ぶどう樹の出生について、「エキュイユにあったことはわかっていますが、詳細は不明です」とマイヤールさん。当初、自根のピノ・ノワールから収穫したワインはNVにブレンドしていたそうですが、マイヤールさんがメゾンを引き継いだ2003年に初めてヴィンテージものをリリース、それがNo5のラインです。
マイヤールさんいわく「地中から2メートルまでは砂質でも、その下に粘土があればフィロキセラにやられる可能性があるので、リスクはあります」と。講座生から「地中探索で調べられないのですか」との質問には、「経費が膨大になるので、なかなかできません」と答えていました。
ピノ・ノワールの樹齢は30年、マサル・セレクション※を行っています。また今回ニコラ・マイヤールが行っている新たなやり方も伺いました。それは接木したぶどう樹の上に土をかけて埋め、根が出てから切り離し、苗を増やす方法で、これはフィロキセラ以前、畑でぶどう樹の枝を土に埋め、根が出てから切り離す取り木(プロヴィナージュ)の変形です。
一番最後にマイヤールさんの画像があります。彼の右上部に、41Bという台木があり、その字の上に小山のように盛り上がった絵があるのがおわかりいただけますよね。それが増やし方の解説です。
※マサル(massal集団の)・セレクションは畑から優秀な株を複数選び、穂木をとって苗をつくり、もとの畑に戻す方法。マサル・セレクションを行うにはクローン苗を使っていない畑を選ばなければならない。
自根のシャンパンを利く
接木と自根については、拙オフィシャルサイト『プロの流儀』の【栽培】の項をクリックしていただけば、安蔵光弘醸造家のわかりやすい解説が載っています。
>>>http://www.non-solo-vino.net/style.html
第2フライト
左から3、4、5の順、3と4は白ぶどうのみ、シャルドネ100%で、5は黒ぶどうのみ、ピノ・ノワール100%、色の違いがわかりますね
No3:2004 レ・シャイヨ・ジリ エキストラ・ブリュット・プルミエ・クリュ
ぶどう品種:CH100%、MLF無、ドザージュ:2g/L、デゴルジュマン:2011年4月
No4 :(タルラン)2000 ラ・ヴィーニュ・ダンタン
ぶどう品種:CH100%(自根)、MLF無、ドザージュ:2g/L、デゴルジュマン:2010年3月
No5:2005 レ・フラン・ド・ピエ エキストラ・ブリュット・プルミエ・クリュ
ぶどう品種:PN100%(自根)、MLF無、ドザージュ:2g/L、デゴルジュマン:2011年4月
マイヤール:No3~No5とも木樽熟成、MLF無、ドザージュ2g/Lという点が共通しています。これらは食事に合わせて楽しみたいワインです。
No.3にはパンを焼いたような香ばしさとミネラル感があり、力強さと酸が備わったシャンパンです。料理も同じように力強さがあるものが合います。
No4(他メゾン/タルラン)のミツのような香りに驚きました。古典的なシャルドネでNo3 よりも柔らかく、落ち着いた味わいです。まろやかでありながらボリューム感もあり、余韻はソフトに広がっていきます。上記2つのシャルドネはコート・デ・ブランの典型的なシャルドネとは異なります。シャンパンから感じるエスプリが似ています。
No5 からはオレンジやアーモンド、スパイスの香りを感じます。口中では繊細でシルクのような食感、優しい味わいです。料理は繊細なソースの魚料理が合うと思います。
私的感想:今講座の柱になるフライトで、とても興味深いものでした。No3は近代的なスタイル、今の時代に合ったシャルドネで、メリハリのある酸が特徴的でした。No4は酸味もやさしく、シャンパン全体がまろやか、酸も楕円形に近いニュアンスで口中に広がる印象でした。No5も穏やか、全体を優しく包み込む印象。No4とNo5の優しい円熟味が自根由来と感じている私ですが、まだまだ探究が必要だと感じています。
第3フライト
No6:2005 ブリュット・ミレジメ・プルミエ・クリュ
ぶどう品種:PN50%、CH50%、デゴルジュマン:2012年1月
No7:1995 プレステ―ジ・プルミエ・クリュ
ぶどう品種:PN50%、CH50%、デゴルジュマン:2010年12月
マイヤール: No6は個人的にも好きなシャンパンです。柑橘系果実やバターのニュアンスがあり、柔らかくてエレガントです。第1フライトと第2フライトを総括したようなスタイルだと思います。
No7は父親の代のシャンパンで、モカやタバコ、熟成した香りと味わいがあります。1995年はとても良いヴィンテージでした。あと10年位経過しても全然問題なく楽しめますし、酸は今よりもワインに溶け込んでいるはずです。
私的感想:No7 は古酒の醍醐味ともいえるコーヒーやモカのニュアンスがあり、第3アロマに由来する様々な熟成香が時間の経過とともに楽しめました。No6は供出されたマイヤールさんの6アイテム中、一番気に入りました。フレッシュ感が好印象でバランスが良く、マイヤールスタイルが表現されています。
2003年に父親のミシェルさんからメゾンを引き継いだ1977年生まれのニコラ・マイヤールさん
昨年暮れにお子さんも誕生し、お仕事も家庭も順風満帆のご様子でした。
今回2度目の来日で、明日(特別講座の翌日)は山梨のワイナリー訪問とのことでした。
お忙しいなか、お時間を割いていただき、ありがとうございました。
豊通食料の小永井さんにも御礼申し上げます!
タグ:ニコラ・マイヤール
久しぶりに1番乗り~ v^^
by vientre-dolor (2012-08-05 02:13)
vientre-dolorさん、私も久しぶりのアップで~(笑)
tsworkingさん、応援こころ強いです、感謝!
by fumiko (2012-08-05 09:45)
こんなカッコいい男性に教わるなんていいですね!!
by toki (2012-08-05 11:38)
楽しそう!参加出来なかったけれど詳細なレポを読んで想像を巡らせています。タルランとのBdB比較、楽しそうですね~。確か講座の日は関東はとても涼しかったからテイスティングも快適だったかと想像。
by miumiu (2012-08-06 01:29)
tokiさん、マイヤールさんが大喜びしそうなお言葉!
miumiuさん、講座報告なんとかお伝えできて良かったです。
白のジャケットが羽織れたので、確かに快適な温度だったかも。
ミレジメ2005がおすすめです!
by fumiko (2012-08-07 00:47)