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バレルトライアル&甲州の熟成具合取材して@マンズワイン [ワイン]

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太陽の中心にぶどうを配したロゴはマンズワインの「良いワインは良いぶどうから」の象徴

今年10月に創業50周年を迎えるマンズワインさんにお邪魔してきました。辰巳琢郎さんプロデュースの『今様』ロゼスパークリングのプレリリース会場で、茂木信三郎社長とお話させていただいたことがキッカケです。
訪問するにあたり、長野県の小諸ワイナリーでは「樽(バレル)違いのワインの比較」を、山梨県の勝沼ワイナリーでは「甲州の熟成具合を体感したい」とのお願いをしたところ、茂木社長の采配下、仕事冥利以上の体験をさせていただきました。

素晴らしいワインたち、また、それらが世に出るまでの現場での努力、苦労、工夫等が拙ブログを介して少しでもお伝えできれば本望です。

1万坪の敷地に日本庭園とワイナリーを併設
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明るい雰囲気の売店には今様ロゼや限定ワインが並んでいました!!

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故茂木七左衛門・元キッコーマン専務取締役が、国内外の庭園を参考にしながら10年構想で完成させた『万酔園(ばんすいえん)』は、信濃の山々を借景(しゃっけい)に、中央に池を配した回遊式庭園。お茶室もあり、流水の宴や野点等も楽しめる風流な造りになっています。

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さりげないところへの配慮も見事、(左)石畳にはぶどうのレリ-フ、(右)佐渡の貴重な赤石

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庭園内の『善光寺ぶどうの原木』は100年近い樹齢を誇っています。
絶滅しかけていたぶどうを同社が再発見した記念すべき原木で、長野市郊外からこの地に移植

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TINAJAティナハはラ・マンチャ地方で今でも使われているワインの発酵や醸造の容器

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マンズレインカットは、雨に弱い欧州系ぶどう品種のシャルドネ、カベルネ、メルロー、信濃リースリング等を完熟するまでぶどう樹にならせておくことができる優れもの
小諸ワイナリー訪問分は産経EXの4月26日掲載分に書きました。ご参考までに!
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120426/trd12042616320010-n1.htm

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ワイナリーの一角にはフランス系品種やドイツ系品種等が栽培されています。
収穫時に訪問し、ワインの原料になるぶどうをじかに感じてください!

ソラリスのテイスティングでは
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お洒落なステンドグラスにも注目

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新しくリリースされたワインも登場して
「日本から世界レベルのワインを送り出す」を信条にしているソラリス
マンズワインの品質主義の結晶が「ソラリス」シリーズです。

#1:ソラリス信州シャルドネ(CH) メソッド・トラディショネル・ブリュット2008
05年が初ヴィンテージのシャンパン製法によるスパークリングワインで今回が4回目のリリース。ブラン・ド・ブラン(CH100%)、タンクのみ使用。ドザージュ量5g/L、年間生産量1000本、ネット販売。軽快&爽快な香り、心地良い酸味、バランスの良さが特徴

#2:ソラリス信州ソーヴィニヨン・ブラン(SB)2010
SBのフルーティーさ、果実味、ミネラル感、ピュアさが魅力、ロワールのサンセールやプイイ・フュメを連想させる逸品。この2010年が初ヴィンテージ、タンクのみ使用、残糖2.5g/L、生産本数800本、樹齢8年、SBの品種香であるカシスの芽が鮮明

#3:ソラリス信州小諸シャルドネ樽仕込2009
参考出品(現在市場に出ているのは2010)、上品な樽香を前面に出したクラシックなスタイル、樹齢30年のCH、新樽100%(フランソワ・フレールの3種類の樽を使用)、収量44hl/ha、焼栗や蜂蜜、余韻に樽由来のロースト感、ふくらみあり、5年~10年熟成させて飲みたいワイン

#4:ソラリス信州小諸メルロー2008
#5:ソラリス信州東山カベルネ・ソーヴィニヨン(CS)2008
ともに2008年ヴィンテージ、長期熟成が楽しめるフラッグシップワイン。#4の土壌はワイン栽培以前は桑やアスパラを生産していたところなので、果粒を厳選し、徹底した収量制限(21hl/ha)を実施。Alc度数は14.2%、余韻に広がる温かさと甘さが印象的。無駄な栄養分を含まないやせた土壌から生まれる#5はぶどうの粒が小さく、凝縮しているので色調は深く濃い。収量は32hl/ha、Alc度数13.0%、芳醇な果実味、木目の細かなタンニン、余韻のロースト感、世界レベルの逸品

#6:ソラリス信濃リースリング クリオ・エクストラクション2010
1991年同社が品種登録をした信濃リースリング(シャルドネ×リースリングの交配種)。クリオ・エクストラクションはボルドー大学が研究していた製法で収穫したぶどうを冷凍してから搾って造るアイスワインスタイル、3kgのぶどうから1本しか造れない超贅沢な甘口ワイン。マスカット似の香り、色調から連想できる黄金糖やクリームブリュレの味わい、Alc度数も9.9%と低いので、ナイトキャップや秋の夜長におすすめ、母の日にも!!

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裏ラベルには詳細な情報が盛り込まれています。#1のスパークリングワインを例にすると、仕込日、ティラージュ(2次発酵のために酵母と蔗糖を添加する作業)日、デゴルジュマン(瓶内2次発酵を終えた後に生じる澱を取り除く作業)日の3段階表示。海外のスパークリング&シャンパンでもここまでの細かな表記をしているところはありません。

トヌリエ(樽の生産者)違いのワインを利く
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トップレンジ、ソラリス用ワインの樽、樽、樽

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第1フライトは『2011東山カベルネの樽違い』を比較左側の4本
1)VICARD社
2)SEGAN MOREAU社
3)DEMPTOS社
4)TRANSAUD社

第2フライトは樽内MLFの比較右側の3本
小諸ワイナリーでは赤ワインのみタンク内MLFを行っていますが、樽内MLFはトライアル中。
体験した5)6)は樽内、7)はタンク内のもの
マロラクティック発酵MLFはワイン中に含まれるリンゴ酸が乳酸菌の働きによって乳酸に変わる現象、酒質はまろやかに変化
5)樽内MLF/SEGAN MOREAU社
6)樽内MLF/VICARD社
7)タンク内MLF/SEGAN MOREAU社

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同社ではキッコーマン扱いのボリー・マヌー社とオージュ社を介して年間70本程度の樽を購入(ヴィカールだけは商社経由)しています。

1)VICARD社は焼きに特徴があり、それに由来するロースト風味
2)SUGAN MOREAU社はチョコやカカオ風味、色調も濃いめ
3)DEMPTOS社はビター風味、4つのなかで余韻が一番ソフト
4)TRANSAUD社は酸の広がり、上品さ、バランスの良さがあり、色調も濃いめ

4樽とも焼き具合やシーズニング(木材のなかの攻撃的なタンニンを緩和させるために屋外で行う自然乾燥)は同じとのことでしたが、2)4)にバランスの良さがあり、色調も濃いめで綺麗

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5)香り甘やか、乳酸のニュアンス、酸味上品
6)前面にロースト香や焙煎コーヒー、口中で若干の収れん味(苦み)、舌の上を粉っぽさがなぞるドライな印象
7)収れん味は感じるものの、6)より、まるみがあり、酸味とのバランス良

バレルトライアルは短期間で成果が出るものではなく、このような地道な研究の積み重ねによって素晴らしいワインが造り出されています。

ランチでの美食体験
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ソラリスのカベルネ・ソーヴィニヨン(左)とメルロー

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ホースラデッシュ添えのローストビーフと東山カベルネ・ソーヴィニヨンとの相性は絶品!

上田市塩田平東山地区のぶどう畑へ
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3月初旬に剪定作業を終え、壮観な景観のカベルネ・ソーヴィニヨン畑

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地殻変動により隆起してできた土壌には玉石(丸い石)がたくさん転がっています。
粘土と水はけの良い砂が入り混じり、余分な肥料が何もない理想的な土壌

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標高約550mの東山地区にある荒川園のぶどう畑
小諸市と東山のぶどう畑がある上田市との距離は20km、平均気温でみると約1度の差があり、結果として小諸までがシャルドネやメルロー、上田でカベルネ・ソーヴィニヨンを栽培しています。

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4月初旬の長野は冷涼で、体感温度が違いました

バレルテイスティングやワイナリーを案内してくださった松本信彦専務(中央)はボルドー大学ワイン醸造学研究所でワイン醸造士国家資格、ワインテイスティング適正資格取得後、マンズワインでソラリスの引導役として活躍中です。ソフトな語り口で丁寧な解説をしてくだる松本専務のお人柄に触れながら、多くを学ばせていただきました。
品質の良いぶどうが造れるようになった理由について、「レインカットはもちろんのこと、1993年から始めた収量規制も重要です。契約栽培農家に対して、15トン/haだったものを、その3分の1の5トン/haにまで規制しました。今では当たり前のように行われている収量規制ですが、当時はどこのワイナリーでも行っていませんでした」と松本専務は語っていました。

ぶどう畑から合流してくださった製造グループの掛川敏彦主査(右)からも貴重なお話を伺いました。
「小諸ワイナリーができたのが昭和48年で、その2年前に上田市の塩田地区に善光寺ぶどうの契約栽培の苗木を植え、昭和47年ワイナリーの周囲にも契約栽培の畑を広げました。そのような流れのなかで一番の大きな変化が、平成元年10月29日の積雪による善光寺ぶどう棚13haの倒壊です。収穫途中の出来事でした。これを契機に善光寺ぶどう一辺倒だった栽培を見直し、欧州系品種のメルロー、シャルドネ、信濃リースリングを導入、栽培法も棚式から垣根式に切り替えました。栽培農家の人たちも50代、60代だったので無理なく移行することができました。今、考えるとあの積雪はまさに“恵みの雪”であり、長野におけるワイン造りに大きな転機をもたらした出来事になりました。垣根栽培になったことで、栽培農家の人たちが高齢化した今でも楽な姿勢で作業をすることができますし、何より垣根式に転換したことでワインの品質が大幅にアップしています」と。

また栽培適地に絡んだお話で興味深かったのが“桜の開花とぶどうの適地”です。「ソメイヨシノは全国にありますが、長野の上田市の桜の開花は例年15日頃。小諸市では開花が20日で満開が23日頃です。それをぶどう樹に置き換えてみると、カベルネ・ソーヴィニヨンは4月10日頃に桜が咲くエリア、シャルドネは4月20日頃に咲くエリアが栽培適地と考えられ、3月に桜が咲くような場所では暖か過ぎるのでシャルドネやメルローには向きません。また5月に開花するようだと遅すぎます」とのご意見が。これをヒントにすると上田市以外にもぶどう栽培適地がまだまだありそうです。

マンズワインの竹村重雄主幹(左)はネットの責任者でもあり、同社と一般消費者との仲介に尽力しています。今回は佐久平駅到着からずっとお世話になりましたが、沢田研二が歌っていた同社のCMが入社の動機だった(100%本当かは別にして 笑)というお話を伺い、懐かしいジュリーの歌を思わず検索してしまいました!
「あなたに今夜はワインをふりかけ」、その時代をご存知の方はyou tubeに寄り道してみませんか♪

お天気にも恵まれ、身に余る光栄な時間を過ごすことができました。
茂木信三郎社長には細やかなご手配をしていただき、深く感謝しております。ありがとうございました! ソラリスにかけるマンズワイン栽培・醸造メンバー全員の情熱を十分に感じることができました!!



翌朝一路、勝沼ワイナリーへ
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佐久平からJR小海線で小淵沢に向かう車内はローカル色豊か、の~んびり
小淵沢からは甲府乗換えで目的地の塩山へ
ほうとうを食べて体もホット、勝沼ワイナリーへGoです!!!

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ここでは竹内潔品質保証部長から甲州の熟成具合について伺いました。
テイスティングの口開けはリュナリスシリーズの甲州バレル・ファーメンテンテーション2010(左)
同2008(右)。リュナリス(“月の”を意味する言葉)はソラリスのスタイルを継承しているワインです。

画像からも色調の違いがおわかりいただけますね。『Japan Wine Competition(国産ワインコンクール) 』で3年(2008年、2009年、2010年ヴィンテージ)連続金賞を受賞しているワインで、フレッシュな2010年には若干吟醸香のニュアンスがあり、甲州の果皮由来のビター感は塩気のある料理と合わせて美味しい要素だと思います。2008年はワインに溶け込んだ樽香とぶどうの凝縮感と旨味が相まった大人っぽさのあるワインでした!

古酒甲州の予備軍たちを利きながら熟成具合を学ぶ
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『古酒甲州』のデビューは1975年ヴィンテージです。同社の社内規定で10年以上熟成させたワインだけを“古酒”と呼んでいますが、フレッシュな状態のままで長期熟成をさせることができるのは、タンク内に窒素ガスを充てんしているからです。

#1:(タンクサンプル)甲州2011
残糖38g/L、Alc度数12.4% 古酒甲州候補の1年生なので爽やかでフレッシュ、アプリコットを連想させる香り、将来性を感じさせるワイン

#2:同2008
残糖43.5g/L、Alc度数10.7%  一番色調が濃く、カリンや黄リンゴ似の香り、口中に若干の渋み、年数から見ると少し熟成の変化が早い印象

#3:同2007
残糖39.8g/L、Alc度数10.5%  #2ほどではないものの、熟成が少し早め。酸味と甘味のバランスが良いので将来性に期待

#4:同2005
残糖34.9g/L、Alc度数10.7% 古酒甲州は10年間に2~3回しかリリースできない極上品で、その古酒甲州の“共通カラー”を備えたヴィンテージ、エレガントな熟成香、ひとり立ちできる素養あり

#5:ソラリス古酒甲州2000
残糖39.6g/L、Alc度数11.1%  最新ヴィンテージの2000年、古酒甲州が高く評価されている点の1つが色調。10年以上タンクで育成させますが、淡くて澄んだイエローカラーは多くのワインラバーを魅了しています。

ラストワン、古酒甲州の原点ワイン登場
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#6:ヴィンテージ甲州1967
45年の熟成を経たワインの登場、これはサプライズでした! コルクにも弾力があり、びっくりです!
Alc度数は11.2%、残糖は30g/Lとのことでしたが、甘口ワインならではの底力を感じました。
瓶詰当時のフルーティーさがまだ残っている、想像を超えたワインでした!!

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ドイツのガイゼンハイム大学に留学なさっていた部長も入社2度目の試飲というお宝ワイン

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勝沼ワイナリーの一角にコルク樫がありました。
暖かなところで育つ樹木ゆえ、小諸より勝沼で元気よく育っていました。

甲府の西高橋地区に行く途中で
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甲府までの移動中、竹内部長と一緒にもも園に立ち寄りました。

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今回の勝沼訪問では咲き乱れる桃たちを思い切り撮影したいと思っていたのですが、開花が大幅に遅れていたため、夢破れて~そんな私の気持ちを汲んでくださった竹内部長が連れていってくださった場所がココ

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赤い桃もあるのですね、知りませんでした。
「1本の樹に紅・白で咲くので源平の桃と呼ばれていて」と教えてくださったのが・・・

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桃を手入れ中だったおじさんです!  
花ももを数本カットしてプレゼントしてくれました。まさに、私にとっての花咲おじさんでした!
感激、温かな心を頂戴しました! 桃源郷は来年以降のお楽しみ・・・ということにします。

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甲州ぶどう棚下でお目にかかった『まるはし出荷組合』の萩原靖彦組合長とご子息

マンズワインに甲州とマスカット・ベーリーAを納入している『まるはし出荷組合』は20名前後の組合員で構成されており、メーカーと組合の信頼関係が厚いことが自慢です。コンクールにおける受賞ワインの生産組合という自負もあり、品質の良いぶどう造りに注力しています。
「良いワインは良いぶどうから」を形にするための最強のパートナー! 
各人がそれぞれの持ち場でベストを尽くすことで、大きな塊となり、最高のワインを造り出していることを実感しました。

小諸ワイナリーでは世界と肩を並べる品質のワイン造りをしています。勝沼ワイナリーはもう少しお気楽でフレンドリーなワインを中心にしたワイン造りをしています。今年の後半、収穫シーズンにはマンズワインの小諸&勝沼ワイナリ―でお好みのワイン探しをなさってください!!!
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グランマぴよ

fumikoさま

精緻なご取材を堪能。感謝。
小淵沢。懐かしい想い出の地。
二重の感謝でした。
  グランマ・ぴよ拝
by グランマぴよ (2012-05-06 09:53) 

fumiko

グランマぴよ様、ありがとうございます!
今回小淵沢まで、ゆる~りと移動しましたが、とってものどかでした。
ぴよ様たちの思い出の地だったのですね。
お目文字の折、お話を伺うことを楽しみにしております♪
by fumiko (2012-05-06 21:15) 

tsworking

飲めなくても、料理に使うワインは国産が良い!!
いつも思っているのですがお財布が追いつかず・・・。
でも、ますますその思いが強くなりました。

長野はポールウォーキング発祥の地でも有ります。
信州は研究熱心な土地なのかなと思いました。
by tsworking (2012-05-08 23:04) 

hako

済みません、次回時間を掛けて、読みますね。
凄いです。
by hako (2012-05-09 22:20) 

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