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17年ぶりの来日! フィリップ・ドルーアンが語る有機栽培からビオディナミまで [来日したワイン生産者&関係者]

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輸入元三国ワイン(株)の招聘でボーヌが本拠地のメゾン・ジョゼフ・ドルーアン(以後ドルーアン)から栽培責任者フィリップ・ドルーアンさんが来日、プレス向け試飲セミナーを行いました。“畑を守る男”と形容されている彼は土壌への想いが強く、現地を離れることが少ないので、今回の訪日は実に17年ぶりのことです!
自社畑は77haで、内訳はコート・ドール(36ha)、シャブリ(38ha)、コート・シャロネーズ(3ha)、ドルーアンでは2007年に自社畑すべてにビオディナミの導入を完了しています。セミナーでは栽培担当者として活動するに至った経緯、有機栽培への取り組みからビオディナミへの移行、さらには現在研究を進めている課題等について語りました。

ドルーアンファミリーの役割分担
ドルーアンの創設者はジョゼフ・ドルーアン、二代目はヒトラーからワインを守った人々を綴った名著『ワインと戦争』にも登場するモーリス・ドルーアン、三代目は会長職を務めるロベール・ドルーアン、そして現社長は2003年に就任した三男のフレデリック・ドルーアン。ロベール会長の4人の子供たちはそれぞれの役割を忠実に守り、ファミリーを盛り立てています。来日した長男のフィリップさんは栽培を、次男ローランさんはアメリカを拠点に活動する販売統括責任者で、三男は現社長、長女のヴェロニクさんはオレゴンの醸造責任者&ボーヌの醸造担当として活躍しています。

土壌への取り組みについてIMG_9541 .JPG
フィリップさんは商業関係の勉強をしてから兵役に出て帰還。その後、ワイン醸造の高等専門学校で学びますが、87年当時は薬剤の使用で、土中に生息する害虫を捕食していたチフロドローム(ダニ目の一種)を全滅させてしまう事態になっていました。フィリップさんは農薬による土壌汚染や土に関する質問への回答を求めますが、明確な答えが得られない状況に疑問を抱き、有機栽培に目を向けるようになっていきます。

有機栽培からビオディナミへ
自分なりの解決法を見つけるために有機栽培を実践している人たちと会い、学んでいくうちに、薬剤を使って畑仕事をすることは、そこで働く人にとっても、ぶどう樹にとっても良くないという結論に達して有機栽培に転換。ここでも新たな問題点が。ボルドー液に含まれる銅の使用と病害の解決へのアプローチが個々の対処になっていることへの疑問です。最終的に「有機化合物の減少もしくは全廃」を目標に定め、ビオディナミを導入することに。1997年のことでした。フランス国内にビオディナミ研究グループを設立。メンバーにはドメーヌ・ラファルジュやラフォン等、後々にはロマネ・コンティも参入。研究グループではビオディナミについて学んだ事柄や畑での経験をメンバー全員で共有しています。

質と量への影響
生産量への影響はないものの、例外としてウイルスによる被害の場合は、樹を抜くこともあり、また灰色カビ病の場合は収穫が減少することもありうるとのことでしたが、ビオディナミがもたらす効果として、■合成化学薬品の残留がないこと、■ワインのなかにエネルギーが表現されていること、■クロード・ブルギニョンの研究でも示されているように根が地中深く伸びていることで、根周囲の細菌層の働きが活発になること等が挙げられ、年月を重ねることで、テロワールが明確になり、加えてビオディナミならではの“プラスアルファ効果”があることをフィリップさんは強調していました。

テイスティングワインは6アイテム
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#1:シャブリ レゼルヴ・ド・ヴォードン2010/上代:3000円+税
#2:シャブリ グラン・クリュ ヴォーデジール2009/上代10000円+税
#3:ボーヌ プルミエ・クリュ クロ・デ・ムーシュ ブラン2009(画像は2010)/上代13000円+税
#4:サヴィニ・レ・ボーヌ フルノー2008/上代5000円+税
#5:ボーヌ プルミエ・クリュ クロ・デ・ムーシュ ルージュ2009/上代13000円+税
#6:シャンボール・ミュジニー プルミエ・クリュ2008/参考出品

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#1はステンレスのみ。ピュアでチャーミング。2010年は元気な年!
#2は蜂蜜、きれいな酸味、2009年は太陽をイメージさせる年!
#4は果実味とスパイス風味(白胡椒)、タンニンもしっかりあり、酸味も豊か
#6は木目こまかなタンニンと滑らかさ、ぶどうの旨みと長い余韻、フェミニンなワイン!

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クロ・デ・ムーシュは1920年代に2代目モーリスが購入した最初の畑で、昔はピノ・ノアールとシャルドネのぶどう樹を一緒に植え、2つをブレンドしてワインを造っていました。ブラン誕生はまさに偶然。ある年、ぶどうの熟度の違いから別々に仕込んでみたところ、シャルドネから素晴らしいワインができたので、それ以来、ルージュ(ピノ・ノアール)とブラン(シャルドネ)を造るようにしたそうです。
ドルーアンと三国ワインの表記はピノ・ノアール
#3(左)の樹齢は35~37年、軽いロースト感と蜜蝋のニュアンス、#5は赤系果実(ラズベリー、ブラックベリー等)や甘草、ぶどうの凝縮感

セミナー後感
ドルーアンではPNとCHの改良、台木や接ぎ木の改良、ビオディナミに使うプレパラシオン(調剤)の継続的な実験に加え、接ぎ木なしの実験を進めています。これは自根(franc de pied)への取り組みです。
現在はまだ研究途中とのことですが、「フィロキセラからぶどう樹が身を守るためには、従来からの接ぎ木(オメガ式)に問題があるのではないかと考え、現在新しい接ぎ木の方法に取り組んでいること。および砂地でない土壌でも、ビオディナミならぶどう樹に自己防衛能力が備わることもありえる」との考えを示していた栽培責任者フィリップさんの研究成果を楽しみに待ちたいと思いました。

試飲展示会場で
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所有するコート・ドールの畑の90%がプルミエ・クリュもしくはグランクリュだけに、
試飲会場に並んでいるワインも逸品揃い!

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ブース担当者の説明にも熱が入っていました!

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グラン・エシェゾーの垂直試飲では贅沢なる3ヴィンテージが登場!
左からシルクのような舌触りの2006年、果実味豊かな2007年、酸味主体の2008年

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ドルーアン社ゆかりの素敵な女性たち、30年以上醸造長を務めたローレンス・ジョバール女史と、その後を引き継いだヴェロニク・ドルーアン!!  この『クロ・デ・ムーシュ ルーヴレ・デ・ダム(“女性の作品”の意味)2005』は、その名の通り、彼女たちの共同作品。通常のクロ・デ・ムーシュと異なるのが、現在の醸造機器を一切使わずに造り上げたところです。女史最後の仕事となった2005年、また創業125周年の記念の年という意味を込めた1000セットの限定品(58000円+税)です

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4月25日に出荷を開始したばかりのロゼ・スパークリングは、“ウチ飲みワインにおすすめ”です!
スペインの名門トーレス社がチリに所有するミゲル・トーレス社。パイス種から造ったロゼはレモン風味の爽やかさと、アフターに感じるピンクグレープフルーツ似の軽い渋みが魅力

[わーい(嬉しい顔)]同日12時から行われた『ワールドプレミアムワイン試飲商談会2012春』では、1ケースの注文につき1000円を(社)日本ソムリエ協会を通じて、日本赤十字社東日本大震災義援金口座に寄付(同日~20日の注文分)。三国ワイン(株)では2011年12月末までに総額400万円を、日本赤十字社を通じて東日本大震災義援金として寄付しています。



後れ馳せながら・・・
昨年暮れの三国ワイン(株)主催『8シャトーを味わう晩餐会』の画像をアップしておきます!!

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1885年グラン・クリュ格付け審議会の会長フィリップ・カステジャさんが所有するシャトー・ランシュ・ムーサをはじめとする8つのシャトー関係者が集い、シャトー自慢のワインと『ラ・ロシェル山王』の料理を楽しみました。

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カステジャさんと旧知の間柄なのが『ミクニ』の三國清三シェフ、話が弾んでいました!

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シャトー・ジスクール&シャトー・デュ・テルトルの広報・マーケティング部門の責任者ロールさん

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シャトー・タルボのディレクター、ジャン・ピエール・マーティーさん

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シャトー・ラフォン・ロシェのテクニカル・デイレクター、ルカさん

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シャトー・スミス・オー・ラフィットのコマーシャル・ディレクター、ダヴィッド・オルノンさん

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シャトー・ド・レイヌ・ヴィニョーのテクニカル・マネージャー、アンヌさん

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長野県産、蕪のムースと魚介/ Chスミス・オー・ラフィット ブラン2008と合わせて

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海老芋のフランに熱々の栗のスープ、フォアグラポアレとともにポートワインで煮た和栗のアクセント、トリュフのシャンティ/ Chスミス・オー・ラフィット2007、Chランシュ・ムーサ2003と合わせて

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オマール海老をそのムースで包み竹炭のパン焼きにして、国産西洋ねぎの軽い煮込み ジロール茸とエスプーマと赤ワインソース/ Chラフォン・ロシェ2007、Chデュ・テルトル2006と合わせて

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蝦夷仔鹿ロース肉のベーコン巻きロースト 杜松の実と胡椒の効いたジュ ビーツのピューレー
Chトロット・ヴィエイユ2006、Chジスクール2006と合わせて

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国産洋梨とソーテルヌのサヴァイヨン ジャスミンの香りを添えて
Chド・レイヌ・ヴィニョー2007と合わせて

晩餐会にも出ていたChスミス・オー・ラフィット!
2012年になってから、ロバート・パーカーがワイン・アドヴォケイト(2012年2月号)で2009年ヴィンテージに高得点をつけたことで価格が高騰。Chスミス・オー・ラフィットは126%もアップしたようです!!

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コメント 2

tsworking

本当によい物を作ろうとして、努力されている姿を知る事が出来てうれしかったです。
こんなワインなら飲んでみたいと思うところですが・・・・
なので、ワインビネガーが作られているならご紹介願います!!
是非手に入れたい!!
by tsworking (2012-05-01 00:30) 

fumiko

tsworkingさんはalcに弱い方なので、
ワインを飲んでいただけないのが残念ですが、
ワインヴィネガーについてすこし調べてみますね。
by fumiko (2012-05-01 11:03) 

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