SSブログ

決定版『ファミーユ・ペラン』  ~ジャック・ペランに敬意を込めて~ PartⅡ  [ワイン]

PartⅠでは、ファミーユ・ペランのワインとうなぎのマリアージュや同社のこだわり等を過去ブログ&記事で見ていただきましたが、ここでは先日来日していたトーマス・ペランの試飲セミナーでの話を中心に、同社の要になっているぶどう品種、ここ20年来栽培面積を増やしている品種、2007年ヴィンテージ等、最新情報を交えながらまとめてみます。(敬称略)


主要ワインとシャトーヌフ・デュ・パプの表土を覆っているガレット(大きな丸石)

3代目に敬意を評したワインはオマージュ・ア・ジャック・ペラン
PartⅠでも触れましたが、同社におけるワイン造りはコート・デュ・ローヌ地方シャトーヌフ・デュ・パプ、クールテゾン村のシャトー・ド・ボーカステルから始まりました。4代目ジャン・ピエールの提案で1970年からネゴシアンスタイルのワイン造りを開始、そこで生まれたのが新ブランド、お手頃価格の『ラ・ヴィエイユ・フェルム』です。それから10年以上経過し、南ローヌの素晴らしさを表現したワインを造りたいと考えたジャン・ピエールの思いが実現し誕生したのがドメーヌ・ペランブランド。ケランヌやジゴンダス等のワインで、すべて所有する畑のぶどうから造られています。また同社のフラッグシップワインにはシャトーヌフ・デュ・パプ シャトー・ド・ボーカステル(赤・白)、トップレンジのオマージュ・ア・ジャック・ペラン(赤)があり、世界的に人気があります。

国道の区分けがAOCをニ分
1935年、この地にAOCが定められた時、区分け線となったのが国道でした。その結果、同社所有の130haの土地(実際のぶどう畑100ha)のうち、国道より南側にある4分の3のエリアはAOCシャトーヌフ・デュ・パプ(シャトー・ド・ボーカステル)に、国道より北側にあたる4分の1のエリアはAOCコート・デュ・ローヌ(クードレ・ド・ボーカステル)になっています。

ぶどう品種について
ジャック・ペランが見込んだ黒ぶどうはムールヴェードルです。南ローヌの土壌に適した長期熟成型の品種で、熟すのが遅く(10月中旬)、還元的なニュアンスがあります。グルナッシュはムールヴェードルより早熟(9月30日位)、酸化しやすい品種で高アルコールが特徴、単独で使うよりブレンド向きです。シラーは北ローヌに多く植樹されており、トーマスいわく「暑さに弱い品種」とのこと。各ぶどうは、ワインに仕込んだ時、それぞれ、力強さ&骨格、果実味、美しい色&スパイシーさ(コショウのような)を発揮します。


100万年前、ローヌ川の激しい流れはアルプスの岩を削り、それによって運ばれてきた石ころは磨耗してガレットに。ボーカステルの畑にあるガレットは鉄分を含んだオレンジ色でそれはそれは見事! 
ローヌは年間300日は晴天、降雨量は600mm、石ころが多いので水ハケ良好、1年の間で100日はミストラルが吹くので健全なぶどうが収穫でき、農薬を極力抑えた自然農法も採り入れやすいのです。

[るんるん]20年ほど前からドメーヌ・ペラン社が重要視している品種があります、それがクノワーズです。ムールヴェードル同様、晩熟型なのですが、過熟にならずドライなワインに仕上がるので南ローヌにはぴったり。潜在アルコール度数が高いグルナッシュを使う時など、アルコール数を全体的に下げる活用もあり、注目度大。シラーは暑さに弱いので、昨今少しずつ不安定になっている由、そのためクノワーズを活用する頻度は増しているそうです。ちなみに20年前と現在の栽培面積の変化はクノワーズが2~3haから8ha、一方のシラーは12haから8haです。好天に恵まれた2008、2009のシラーは特に問題はなかったようですが、2001、2003、2005のような暑い年は確実にクノワーズの比率が増えているとのこと。ボーカステルでは要チェックのぶどうです。
 
醸造面を見ると


醸造では2種類の発酵槽を使い分けています。ヴィンテージによっても異なりますが、基本的にはシラーやグルナッシュには「開放型の木樽」を、ムールヴェードルやサンソー、クノワーズには「コンクリート製タンク」を使います。その後、5,000Lのフードル(大樽)で各品種ごとに12ヶ月から18ヶ月熟成させます。ボルドーのような小樽を使わない理由、それは南ローヌのぶどうはたっぷりの太陽を受け、タンニンも多いので、大樽でゆっくりと空気と触れさせることでワインをなめらかにしていくためです。

テイスティングワイン&2007年ヴィンテージ

セミナーでは右から左の順で6アイテムのワインが供出されました。
すべて2007年ヴィンテージ、2007年の南ローヌは素晴らしい年で評価も高いです。
前年と比べると夏の期間は涼しいかったものの、8月最終週には45℃まで温度が上がり、9月の好天と9月中吹きまくったミストラルの影響で ぶどう畑は健全に成長しました。

#1:Chateau de Beaucastel Blanc AOC Chateauneuf du Pape
品種:ルーサンヌ80% グルナッシュ・ブラン15%、ピカルダン・クレレット・ブールブーラン・ピクプールの4品種計で5%。年間生産量1万本、ルーサンヌはジャック・ペランによって見出された長熟用のぶどう、ミネラル感があり酸はおだやか。エキゾチックな香りを感じる心地良いワイン

#2:Perrin Reserve Rouge AOC Cotes du Rhone
品種:グルナッシュ50%、シラー25%、ムールヴェードル25%
「3品種をブレンドすることで、果実味、スパイシーさ、力強さが表現できます」とトーマス講師

#3:Perrin Cairanne AOC Cairanne, Cotes du Rhone Village
品種:グルナッシュ80%、シラー20%
トーマス講師は「ケランヌは暑い場所なのでグルナッシュが良く育ち、シラーを使うことでワインの色調のきれいさが際立ちます」と解説

#4:Perrin Gigondas AOC Gigondas
品種:グルナッシュ80%、シラー15%、ムールヴェードル5%、
ヌフ・デュパプの弟分的存在のワイン。#3と#4の違いは前者は標高が高い分、ワインは繊細でエレガント。後者は素朴な味わい、長熟タイプ。

#5:Chateau de Beaucastel Rouge AOC Chateauneuf du Pape
品種:ムールヴェードル30%、グルナッシュ30%、シラー8%、クノワーズ8%、サンソー5%、ほか(ヴァケラス、テレ・ノワール、ミュスカルダン、クレレット、ピクプール、ピカルダン、ブールブーラン、ルーサンヌ)
「規定品種をすべて使用しているワインです。このエリアでは造り手が自由に品種を選択できるので、弊社では毎年13品種を使ってワインを仕込みます。たとえ1%しか使わなくてもそれは料理の味付けと同じで、塩やコショウのようなスパイス的存在になります」とトーマス講師。

[るんるん]フラッシュヒーティングシステム
SO2の添加を減らしたいとの目的で、ジャン・ピエールが導入。手摘みでの収穫が終わったら(一番早熟なサンソーは8月下旬、晩熟なクノワーズは10月下旬)ぶどうの梗を取り除き、粒選りにしてチューブの中に。チューブの外側にもう別のチューブあり そこに80℃の熱い蒸気を30秒間噴射します。その後、冷たい水をかけ、チューブを一気に冷やします。この作業で酸化しやすい酵素フェノールオキシダーゼの活性化を抑えることができるので、SO2の添加をしなくても済むとのこと。「ぶどうの皮に含まているアントシアニンが抽出しやすくなるので、凝縮感が出ます」とトーマス講師。

#6:Hommage a Jacques Perrin AOC Chateauneuf du Pape
品種:ムールヴェードル60%、グルナッシュ20%、シラー10%、クノワーズ10%


グラスの底が見えないくらい濃い目の青紫色、ゆったりとした粘性、凝縮感あり

ジャック・ペランが精魂を傾けたムールヴェードルの比率が高いワイン。ムールヴェードルの出来の良い年だけ生産。初リリースは1989年、以降1990、1994、1995、1998、1999、2000、2001、2003、2004、2005、そして今回の2007。フードルごとに試飲して最も優れたワインだけを使って造る年間生産量5,000本のワイン。誕生の経緯は1989年にジャン・ピエールがミスター・ボーカステルと呼ばれた父親のためにスペシャルキュヴェを造ろうと考え生産。「骨格がありスパイシーな要素にあふれています。まだ飲むには若過ぎ。今後20年は持ちます」とトーマス講師。
ロバート・パーカーは50年は保存出来ると語っています。パーカーポイント100点


トーマス・ペラン講師の丁寧な解説はわかりやすく、ボーカステルへの愛が伝わってきました。

2007年からじっくり関わらせていただいたドメーヌ・ペラン! 歴史に裏打ちされた奥深さ、真髄がたくさん見えてきて、非常に有意義な体験をすることができました。現地でお世話になったマークさん、来日したトーマスさん、本当にありがとうございました!
輸入元ジェロボームにも御礼申しあげます、そしてスーパー才女山下陽子さんのサポートに心から感謝です!ありがとうございました!!
nice!(13)  コメント(8)  トラックバック(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 13

コメント 8

fumiko

vientre-dolorさん チェックありがとうございました!

gillmanさん、nice、ありがとうございます!

グランマ・ぴよ様、あたたかな気配りに感謝です!

winoさん、チェック、ありがとうございました!

REIさん、チェック感謝です♪

SORIさん、nice、ありがとうございました!


by fumiko (2010-08-01 22:16) 

hako

素晴らしい講義ですね。ペランさんのブランド、今後注意して、
出会えるチャンスを見つけたいと思います。
ミストラルって、北西風で冷たいのですね、地中海のイメージがあって
勘違いしてましたが、フランス製ウィンドサーフィンのブランドで、憧れでした。
映画A good yearの中で、石ころばかりのワイン畑という台詞が印象的
でしたが、こういう雰囲気なのですね、納得です。
by hako (2010-08-02 20:29) 

fumiko

hakoさん、チェック&コメントありがとうございます!
昨年3月ローヌ訪問時、AM中は雨降りだったのですが、午後から晴天、
同時にものすごいミストラルで立っているのも大変でした。
確かに『Good Year』の秘密の畑、石ころだらけでしたね。

ちょうど今日、トーマスさんからお礼メールをいただきました。
拙ブログは英語バージョンがないのですが、喜んでいただけたようです!


Shin・sionさ~ん、nice、ありがとうございました♪
by fumiko (2010-08-03 00:16) 

hiro

御無沙汰して居ります。。。>,<

先日、カベルネソーブィニョンと、やまブドウを山梨大学の教授が交配した、ヤマソーヴィニョンを生産されている、農場を視察させて頂きました。

やまブドウと交配する事で、日本のテロワールにもマッチした品種と言う事でした。(醸造は素人ですが、樽熟成に向いた品種だとか・・・)

取れたブドウは酒税法に違反しない様に、一定の数量はワイナリーに販売し、残りは自分たちで自家醸造するそうです。

自分も、そんな事を自分をしてみたい!!

広島の田舎には不釣合いな、ブドウ畑を視てそう思いました。


by hiro (2010-08-04 17:58) 

hiro

追記でごめんなさい。。>,<
>自分も、そんな事を自分をしたい!!

正確には・・自分も、そんな事を、自分自身でしてみたい!!

です。。ごめんなさい。。。>,<

by hiro (2010-08-04 18:06) 

fumiko

kojiさん、チェック、ありがとうございました!

hiroさん、2回にわたるコメント、ありがとうございました!
以前、麹谷 宏先生の前衛的なお茶会の席に登場していたのが、
志太ヤマソーヴィニヨン、日本で生産しているヤマソーヴィニヨンの
中ではトップクラスだと思いました。ご参考 ↓
http://www.asahi.com/food/column/wine_saijiki/TKY200712040237.html

hiroさんが書いていらっしゃるように、広島の土壌に合ったぶどう品種の
開発が進み、多くの苗を植樹出来るようになるといいですね。
by fumiko (2010-08-06 02:11) 

hiro

fumikoさまに甘えて追記致します。

こちらのワインを購入し、勉強させて頂きたい!!!と思います。
有難う御座います。

めざせ!!食文化の発信!!田舎のオーベルジュ!!です。

度々すみません・・・
by hiro (2010-08-06 19:09) 

fumiko

hetianさん、はじめまして、チェックありがとうございました!
レスが大幅に遅れてしまいました。何卒ご容赦願います。


松本さん、チェック、ありがとうございます!
by fumiko (2010-08-11 22:38) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0