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“ビオ臭”に関する一考察 [ワイン]

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ビオディナミ転換中のオーストリアの『クロイツフーバー』
その農場で見かけた羊たちは表情&動作とも可愛すぎ!

今回は「ビオディナミで造ったワインにもビオ臭がしないものもあるのですね」という講座生からの質問がキッカケとなった一考察、“ビオ臭”がテーマです。

授業で供出したワインはシャンパーニュ地方で初めて“デメテル”を取得した『フリーリー』
ビオディナミ農法を導入している「フルーリーP&F」はもちろんのこと、「ニコライホフ」や「ドメーヌ・ドーボネ」、「ドメーヌ・デ・コント・ラフォン」、「M・シャプティエ」、「ルイ・ジャド」、「ドメーヌ・ペラン」などのワインはとてもピュア。心から惹きつけられる香りに溢れています!

では、ビオディナミのワインにあるといわれる“ビオ臭”とは、一体どのようなニオイを指しているのでしょうか? その謎を探求するため、『プロの流儀』の総括であるエノログの戸塚昭先生に質問してみました。

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ビオディナミでは牛糞から作った500、水晶から作った501、イラクサなど様々な調剤を使います

さて待つこと1週間、戸塚先生から回答が届きました、長文です!
>>> http://www.non-solo-vino.net/knowledge.html#3

私は今まで1)のフェノレをビオ臭と思っていました。
経堂に住んでいた頃、東京農大の横を通ると厩舎から風に乗って漂ってきた“臭い”の記憶と、野生酵母ブレタノマイセス由来のニオイに同じニュアンスを感じるのです。

いつも簡潔な表現で解説してくださるエノログの安蔵光弘氏は、 「この言葉の意味を完全に理解しているわけではありませんが、ビオ臭と呼ばれているニオイは、1) (濁っていることによる)還元臭、2) 酸化臭(アルデヒド=シェリーの香り)、3) ブレタノマイセスが作るニオイ(フェノレ)、の3つが主体となったものだと思います。個人の好みなので、こういうニオイを好まれる方がいるのは理解しますが、私の考えを申しますと、ワインは果物のお酒なので、果実由来の香りが一番大事だと思います」とおっしゃっていました。

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北ローヌ、タン・エルミタージュに本拠地があるM・シャプティエのワインはパワーたっぷり
2009年3月23日@シャプティエにて

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オーストリアが誇る生産者ニコライホフはどのワインも凛としてピュア!
2009年6月12日@ニコライホフにて

シャンパーニュ地方のジャック・セロスのメゾンを訪問 した時、当主のアンセルム氏は「1)ラベルにビオと書いてある生産者のワイン、2)造り手が畑のハーモニーを尊重しているワイン、に分けられる。前者はビオを売り物にしていることが多く、アンスゥイピッド(無味乾燥、つまらないの意味)。これはよく見極めなければダメだ。後者はサピッド(味のあるの意味)。人間は“見かけ”でごまかすことができる。その中身を知るには“人間性”を知らなくてはならない」と力説していましたが、ビオ臭のあるワインとそうでないワインにも同じことが言えると思っています。
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kuma

こんにちは。
いつも楽しく拝読しております。
戸塚昭氏の回答のなかで,
「「馬小屋臭」という人がいますが、その様に表現する人の全てが馬小屋(厩舎)のニオイを嗅いだことがあるのか疑問です」
との記載がありました。
私もこの表現を使うことがあります。本心では「馬糞臭」「牛糞臭」(両方とも嗅いだことがあります)との表現を使いたい(この表現がぴったりなのです!)ところなのですが,それはさすがに憚られるので,少しお上品に「馬小屋臭」といった表現にしているのが実情です。
そしてこのような極めて不快なワインが「自然派」と称して流通しているのも現実です。
いち消費者としてはインポーターやショップの責任でそのようなワインを流通させない努力をして欲しいと強く望みます。
日頃しばしば遭遇する臭いワインに閉口しておりまして,思わず書き込ませていただきました。
by kuma (2009-07-22 14:44) 

fumiko

Kuma-san, コメントありがとうございます。愛読ありがとうございます。
書き込みの内容十分理解できます。アンセルムさんのご指摘にもあったビオの名を売り物にしたワインの流通も問題です。

私がビオディナミのワインを初めて試飲したのは1990年代後半でした。
新井順子女史が扱っていた「ミュスカデ・レ・オート・ノエル」の素直な味わいに感激、それ以降、ビオディナミワインを出来るだけ試飲するようにしていました。
でも残念なことに、首をかしげたくなるワインが多かったのも事実です。その当時、巷で流行っていたセリフは「ビオディナミワインはすべて“美味しいとは限らない”」というものでした。変な話です。

そして今の流行りは「ビオディナミのワインにはビオ臭がある」という言い方、これが当たり前のように飛び交っています。

幸いなことに先に挙げた「ビオワインは美味しいとは限らない」という決めゼリフは完全に淘汰されました。多くの消費者はそのフレーズがいい加減なものであることを理解しています。ぶどう本来の味をきちんと表現している生産者のワインはピュアで美味しいものです! 
それはビオディナミだけには限りませんが・・・

>そしてこのような極めて不快なワインが「自然派」と称して流通しているのも現実です。
kuma-san、ビオ臭のする不快なワインの流通は現在進行形の問題ですよね。
今大事なことはエノログやジャーナリスト、ソムリエたちが正しい情報を伝達していくことだと思っています。その意味を含め、一考察した次第です。
少し時間はかかりますが、消費者の方々にワインを見極める力を付けていただけるように、あらゆる選択枝をあげながら問題提起をしていきたいと思っています。
まずは声をあげること、その積み重ねが大きな力になると思っています。
by fumiko (2009-07-22 21:01) 

happy-san

Fumiko先生

こんにちは。

とっっっても可愛い画像にココロから癒されました。
この写真、何か
絵本とかの表紙になりそうです。。。。

夏本番ですが
ご自愛遊ばされますように。


happy-san
by happy-san (2009-07-23 10:48) 

Ido

ビオ臭について、その原因とにおい物質をわかり易くご解説いただいたき、大変勉強になりました。薬学専攻ということもあり、ワインを科学的に分析することにも興味を惹かれます。しかしこれだけでは解明しきれないワインの奥深さ、永遠のテーマでしょうね。
by Ido (2009-07-23 12:44) 

fumiko

happy-san

「羊ちゃんたちに癒されました」との嬉しいコメント、ありがとうございます。私もそのお言葉に癒されました! 絵本の表紙なんて素敵ですね!!

面識ある“ビオディナミ”の生産者や、彼らが造るワインからは、いつも“ピュアさ”が伝わってきます。この子たちから感じ取れるような嘘のない空気感です。だからイメージ画像として登場させました。

happy-sanのように画像を見て癒し効果を感じていただければ、それこそ、ビオディナミの心がおわかりいただけるはず、な~んてね(笑)


Ido-san、まさにワインを科学する、ですよね。
ニオイの根源が何であるかをきちんと把握した上で、講座ではさらにわかりやすい話を展開していきたいと思っています。
よろしくお願いします!
by fumiko (2009-07-23 18:35) 

hako

凄いレポートですね。当方は幸いなことに、最初に頂いたシャプティエに
感動して以来、バイオダイナミクスという存在を知りましたので、ほとんど
贔屓に近い感情を持っています。その上、ニコライホーフの素晴らしさを
教えて頂き、さらに尊敬の念さえ持ってしまいました。
ホントに感謝しております。
ところで、確かに、この羊たちは特別な表情をしてますね。
環境が良いと、こんなに柔和な顔になるのかと感心しました。
人やワインにも共通するものがありそうです。
by hako (2009-07-25 03:34) 

fumiko

hakoさん、チェック&ご丁寧なコメント、ありがとうございます!

シャプティエのワインは私の100個目のniceのキリ番記念でhakoさんに差し上げたものですよね。懐かしいです。
ニコライホフは伊勢丹で買ってくださったのですよね。
2生産者ともに、香りも味も素直で美味しいでしょ、そうなんです!

“ビオ臭”に関しては、多くの方が関心を持ってくださっているようで、アップ後2~3日で、google&yahooともに「ビオ臭」検索すると拙ブログがトップページに登場しています。これはすごく嬉しいことです!
これからもワインに関する疑問は、“一考察”で展開していきたいです。

>ところで、確かに、この羊たちは特別な表情をしてますね。
はい、そうなんです。
私も「羊」検索で、いろいろな羊の顔を見てみたのですが(笑)、この子たちの表情は穏やかで・・・。
ビオディナミの効果の1つかも知れません。
by fumiko (2009-07-26 10:03) 

lunatic

はじめまして。
久しぶりにアクセスしたら、ビオ臭の話題があり、
以前から興味のあるテーマなので、少しコメントさせていただきます。
いわゆるビオ臭というのは、フェノレ+還元香だと思われます。
どちらも、SO2減少時に発生するものだからです。
ビオ臭は、ビオといいながら、実はワイン醸造過程に起因するもので、
戸塚さんが言われるような、
「ビオディナミ農法で造ったワインに共通して感知されるニオイ」
というのは誤った認識で、ビオの農法とは関係あるとは思えません。
ビオに熱心な醸造家は、SO2を減らし、それが原因となって生じると思われます。
というのは、ビオディナミで作ったワインでも、きちんと管理され、
少量ながらきちんとSO2を添加したものは、ビオ臭がしないからです
(例えばルロワ)。
最近、自然派ワインでもビオ臭のあるものは減ってきています。
同じワインでも、最近のボトルは、非常に改善されています
(例えばパカレ)。
僕がよく自然派ワインを飲んでいた4,5年前には、
2-3本に1本は、ビオ臭のするワインでした。
(全部、流し行きでしたが・・・)
そのころに書いたブログがありますので、参考まで。
http://plaza.rakuten.co.jp/lunatic/diary/200409030000/
http://plaza.rakuten.co.jp/lunatic/diary/200509050000/


by lunatic (2009-09-04 13:44) 

fumiko

lunatic様、初コメント、ありがとうございます!!

「ビオ臭」のことをブログとオフィシャルサイトにアップして1週間ほど過ぎた頃、googleとyahooのトップページに上がってきたので、1ページ目を熟読してみました。

その時、「早い時期からビオ臭についてきちんと書いている方がいらっしゃる」と思ったのですが、それがlunaticさんでした。ですから、貴ブログはじっくり拝読させていただいておりました。今回、そのような方に、丁寧な書き込みをいただきまして、とても光栄に思っております♪
ありがとうございます!

>それにしても、ビオ香として、ブレットの香りを珍重する傾向は、何とかならないものか。
>それは、不衛生な状態から来る、単なる異臭・腐敗臭にすぎないのであ
る。
2005年のブログの最後にある上記のご意見に同意です。

ルロワ、シャプティエ、ドメーヌ・ペラン、ドメーヌ・カズ、ニコライホーフ・・・ビオディナミを導入している秀逸な生産者のワインには不快なニオイなどありません。

lunaticさんがコメントしてくださったように、
>最近、自然派ワインでもビオ臭のあるものは減ってきています。
は、ホント何よりだと思っています。
今後とも、ビオに関する正しい認識の伝道、宜しくお願いいたします♪

by fumiko (2009-09-05 20:23) 

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