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伝説的変身を遂げた『グランジ』 [ワイン]

1951年が初ヴィンテージの 『グランジ(当時の名はグラン・ハーミテージ)』は、ぶどう品種:シラーズ100%、ぶどうの産地:Magill Estate50%、Morphett Vale50%、生産量:160ケースでした。
『グランジ』はアメリカン・オークと相性がとても良いシラーズを主体に造られています。
カベルネ・ソーヴィニヨン(CS)をブレンドしていますが、比率は年によって異なり、多い年で13%、少ない年で1%程度です。ちなみにシラーズ100%で造られたヴィンテージは初ヴィンテージの1951以降、1952、1963、1999、2000年の5ヴィンテージのみ。
さて、『グランジ』がデビューした1950年代、どのような評価を受けていたのかを振り返ってみましょう。


画像データ:ペンフォールド社『The Rewards of Patience』より

初代のワインメ-カー、マックス・シューバートは20年以上の長期熟成に耐えうるボルドーのグラン・ヴァンのような赤ワインを造るのが夢でした。当時、南オーストラリアで栽培されていたボルドー系品種にはCSやマルベックがありましたが、採算を考え、主要品種として選ばれたのはローヌ系ぶどうの“ハーミテージ(Hermitage)”。Hermitageはフランスの北ローヌにある有名産地エルミタージュ(ワインはシラーから造られています)に由来し、オーストラリアではシラーズの別名として知られています。

マックス・シューバートは新樽を使い、原料ぶどうの良さを最大限に引き出す工夫をしながら、フルボディの赤ワインを造り続けました。「機が熟した」と考えた彼は、1951年から56年までの6ヴィンテージを同社の幹部始め、ワイン評論家を招いてのシドニーの試飲会で披露します。ところが、予想に反して『グランジ』への評価は低く、「野生の果実とつぶれた蟻の臭い」と酷評されたことが伝えられています。

同社のイメージダウンを危惧してなのか、1957年には本部から生産中止命令が出ています。彼はそれでもワインを造り続けました。この時、マックス・シューバートの後盾となって応援していたのが南オーストラリア地区のアシスタント・ジェネラルマネージャーのジェフリー・ペンフォールド・ハイランドです。とは言え、新樽購入も難しく、資金不足に耐えながらの作業でした。

1962年、オーストラリアで再開されたワイン品評会のクラレット部門に『グランジ』を出展するチャンスがあり、1955年ヴィンテージが“金賞”を得るに至ります。『グランジ』への評価を大きく変化させた出来事です。すでに10年以上の年月が経過していました。オーストラリアワインの最高峰とも称えられる『グランジ』にはこんな歴史があったのです。ペンフォールド社が刊行した『The Rewards of Patience』、タイトルに込められた『グランジ』への深い思いを感じます。


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Wino

え、すべてのヴィンテージ 
シラーズ100%だったのではなかったんですか!
驚きです。私が飲んだのはいくらかCSブレンドだったんだ!
グランジの生まれてくる苦労を知り、また味わいたくなりました。
by Wino (2006-10-23 21:52) 

hako

朝日新聞にも、最近のオーストラリアワインの人気が載ってました。
何でも、恐れずブレンドして、良い味を出しているとか。
きっとグランジ辺りが先鞭を付けて、普及したのかもしれないですね。
by hako (2006-10-24 01:05) 

ワイナリー和泉屋

以前、ピーター・ゲイゴ氏とワイン会を行った時、『Penfolds Grange』という
本を頂戴しました。1951年ヴィンテージから写真入りで説明されている本で私の宝物のひとつです。はい、もちろんピーター・ゲイゴ氏のサイン入りです。
エヘッ。
by ワイナリー和泉屋 (2006-10-24 20:39) 

fumiko

winoさんが飲まれたのは何年ヴィンテージですか?
ご一報くださればお調べしますよ。
「The story of Grange」の章を読みながら、Blogを書いていて、当時の思いを感じ、胸が熱くなりました。winoさんも是非読んでみてくださ~い。
読んでから飲むか、飲んでから読むか(笑)、さて?

hakoさ~ん、いつも温かな応援、ありがとうございます♪
グランジの創設時の苦労は、今となっては伝説ですね。最高のものを造り出すために、先駆者として果敢に挑戦していたのかもしれませんね。

ワイナリー和泉屋新井社長殿、お久し振りです。
『Penfolds Grange』のサイン本? いいな、いいな!
私はゲイゴさんから『The Rewards of Patience』をいただきましたが、残念!サインをもらい忘れました。次回、来日時、サインをお願いしてみます♪
ゲイゴさんって、数学・科学教師から、南オーストラリア州率大学ローズワーシィ校で醸造学博士号を取得、ペンフォールドのチームに加わった華麗なる転身組ですね。
by fumiko (2006-10-24 23:02) 

Tom Anderson

記載がありませんが、2001年もシラー100%の筈です。JOの点数は最近では1996年が一番高くて98点、2001年は95点です。尚、RPは2001年に一応98点をつけています。
by Tom Anderson (2007-07-30 02:31) 

fumiko

Tom Anderson-san,

こんにちは、当ブログにお立ち寄り、ありがとうございました♪

>記載がありませんが、2001年もシラー100%の筈です。

2006年9月27日に、ペンフォールド社の4代目チーフワインメ-カー
ピーター・ゲイゴ氏が来日した時、10本のワインを試飲しました。

9番目に『グランジ2001(参考上代:42500円でした)』が出て、説明してくださったのですが、
「最新のリリースです。9はカベルネ・ソーヴィニヨンが1%、これはブレンドする際この割合が一番良いと判断したからです」とコメントし、その後、「過去において100%シラーズで造ったグランジは、1951、1952、1963、1999、2000年の5ヴィンテージしかありません」とおっていたので、間違いないと思いますが・・・どうでしょうか。

インポーターのファインズさんにも確認してみます。
by fumiko (2007-07-30 09:36) 

Tom Anderson

私のような投資家はデータを詳しく分析しております。Robert ParkerのWine Advocate#167 (Oct.2006)にシラー100%と記載されていますし、Penfoldsのホームページも確認しました。正直どうでも良いことなので、お騒がせしました。私は、安いPenfolds自体は結構飲むのですが、グランジは飲んだことがありません。 評判が非常に良い2002年のグランジ(これはシラー100%ではありません)を思い切って投資目的で購入しようかと検討している処です。
by Tom Anderson (2007-07-30 23:41) 

fumiko

Tom Anderson-san,

ご丁寧な書き込み、ありがとうございました。
只今、現地に問い合わせをしていますので、少しお時間をください。
宜しくお願いいたします。
by fumiko (2007-07-31 16:18) 

fumiko

Tom Anderson-san,

長らくお待たせいたしました。過日の「グランジ2001」の件でお返事させていただきます。
インポ-ターであるファインズ様がグランジのチーフワインメーカー、ピーター・ゲイゴ氏に確認してくださったものです。
以下、お返事をそのまま掲載いたします。何卒宜しくお願いします。

>ピーターとも連絡がとれ、以下の通り回答いたします。
>グランジ2001年ヴィンテージの使用ブドウ品種は 99%シラーズ、1%カベルネソーヴィニヨンで間違いありません。
>ペンフォールドHPのテイスティングノートには100%シラーズとは書いていませんが、「使用ブドウ品種シラーズ」では
>誤解を与えかねないので訂正するように伝えました。
>ワインアドヴォケイトの件も本社へ連絡してありますので、あちらで対応いたします。
>ペンフォールドの本 (The Reward of Patience, p.220)に書いてあるのはミスプリであり、今度の改訂時に訂正になります。

ということで、ご了解いただけましたら幸いです。
by fumiko (2007-08-06 11:24) 

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